耳下腺炎

耳の下がぷくっと腫れて痛む…「もしかしておたふく風邪?」と自己判断していませんか。その症状は「耳下腺炎」と呼ばれ、原因は一つではありません。実は、ウイルスや細菌の感染だけでなく、唾液の石や、免疫が関わる全身の病気が隠れている可能性もあるのです。

特にお子さんが何度も腫れを繰り返す場合、それは見過ごせない重要なサインかもしれません。大人の症状とは異なり、背景にシェーグレン症候群のような病気が潜んでいるケースも報告されており、専門家による正確な診断が求められます。

この記事では、耳下腺炎の4つの主な種類から、隠れた病気の可能性、そして最新の検査・治療法までを詳しく解説します。ご自身やご家族の症状と照らし合わせながら、適切な対処法を知るための第一歩としてお役立てください。

耳下腺炎の概要

耳下腺炎とは、耳の前から下にかけて腫れて痛む病気です。 この場所には「耳下腺」という、唾液(つば)を作る大切な臓器があります。

この病気の基本的なポイントを、まずは確認してみましょう。

  • どこが痛くなる?
  • 耳の前からあごにかけての部分にある「耳下腺」です。
  • どんな症状?
  • ぷくっと腫れたり、痛みが出たり、熱が出ることもあります。
  • なぜなるの?
  • ウイルスや細菌に感染することが主な原因です。

特にお子さんが何度も耳下腺炎を繰り返す場合は注意が必要です。 大人の場合と異なり、口の渇きなどの症状がはっきりと出ないことがあります。

繰り返す耳下腺炎は、シェーグレン症候群のような全身の病気のサインかもしれません。 そのため、耳鼻咽喉科だけでなくリウマチ科といった他の専門家と協力し、原因を探ることがあります。

複数の専門の医師がチームを組むことで、より良い評価と治療ができる可能性があります。 耳の下に腫れや痛みを感じたら、まずは医療機関に相談することがとても大切です。

耳下腺炎の種類

ひとくちに耳下腺炎といっても、原因によっていくつかの種類に分けられます。 それぞれ特徴が違うため、どの種類の耳下腺炎かを知ることが大切です。

耳下腺炎は、主に以下の4つの種類に分けられます。

種類

主な原因

特徴

流行性耳下腺炎

ムンプスウイルス

「おたふく風邪」とも呼ばれ、ワクチンで予防できます。

反復性耳下腺炎

ウイルス、自己免疫など

耳下腺の腫れを何度も繰り返します。

急性化膿性耳下腺炎

細菌

細菌が原因で、うみがたまることがあります。

唾石症による耳下腺炎

唾石(石)

唾液の通り道に石が詰まることで腫れます。

特に、お子さんが耳の下の腫れを何度も繰り返す「反復性耳下腺炎」には注意が必要です。 背景にシェーグレン症候群のような、自分の体を攻撃してしまう病気が隠れていることがあります。

大人のシェーグレン症候群では目や口の渇きが主な症状です。 しかしお子さんの場合、そうした乾燥の症状より先に、耳下腺の腫れを繰り返すことが多いのです。

そのため、耳鼻咽喉科だけでなくリウマチ科といった他の専門医と協力することがあります。 複数の専門家がチームで診ることで、より詳しく原因を調べ、適切な治療につなげることができます。

耳下腺炎の原因

耳の下が腫れて痛くなる耳下腺炎には、さまざまな原因が隠れています。 なぜ腫れてしまったのか、その原因を突き止めることが治療への大切な一歩です。

原因は大きく分けて、ウイルスや細菌が体に入る「感染症」と、それ以外の理由があります。

  • ウイルスによる感染
  • ムンプスウイルス 「おたふく風邪」として知られる流行性耳下腺炎の原因です。 咳やくしゃみで飛び散ったウイルスを吸い込むことで感染します。
  • その他のウイルス おたふく風邪以外のウイルスが原因で、耳下腺の腫れを何度も繰り返す「反復性耳下腺炎」になることがあります。
  • 細菌による感染
  • 口の中にいる細菌などが耳下腺に入り、炎症を起こします。
  • これは「急性化膿性耳下腺炎」と呼ばれ、うみがたまることもあります。

また、感染症以外にも、耳下腺炎を引き起こす原因があります。

原因の種類

具体的な病気や状態

唾液の石

唾石症(だせきしょう): 唾液の成分が固まってできた石が、唾液の通り道をふさいで炎症を起こします。

自己免疫疾患

シェーグレン症候群など: 体を守る免疫が、間違って自分の唾液腺を攻撃してしまう病気です。

特にお子さんが耳下腺の腫れを何度も繰り返す場合、注意が必要です。 背景にシェーグレン症候群という病気が隠れていることがあるためです。

大人の場合、この病気は目や口の渇きが主な症状として現れます。 しかしお子さんの場合は、そうした乾燥の症状より先に、耳下腺の腫れを繰り返すことが多いのです。

そのため、耳鼻咽喉科だけでなく、免疫の専門家であるリウマチ科と協力し、原因を詳しく調べることが重要になります。 原因が複雑なこともあるため、専門の医師による正確な診断がとても大切です。

耳下腺炎の症状

耳下腺炎のサインで最もわかりやすいのは、耳の下が腫れて痛むことです。 頬の後ろからあごにかけての部分が、片方、あるいは両方ぷくっと腫れます。

原因によって熱が出たり、他の症状が一緒に出たりすることがあります。 どんな症状が出るのか、原因ごとに見ていきましょう。

原因ごとの主な症状

耳下腺炎は、原因によって症状の現れ方が少しずつ違います。 自分の症状がどれに近いか、チェックしてみましょう。

種類

主な症状

流行性耳下腺炎(おたふく風邪)

・耳の下の腫れ、押すと痛む

・ものを噛んだり飲み込んだりするときの痛み

・38度以上の熱が出やすい

・のどの痛み

反復性耳下腺炎

・耳の下の腫れを何度も繰り返す

・熱は出ないか、出ても微熱のことが多い

・数日で症状が良くなることが多い

急性化膿性耳下腺炎

・急な強い痛みと、パンパンに硬く腫れる

・腫れた部分の皮膚が赤くなる

・高熱が出ることがある

唾石症(だせきしょう)

・食事のたびにあごの下や耳の下が腫れて痛む

・しばらくすると腫れがひくのを繰り返す

お子さんの症状で注意したいこと

特にお子さんが耳の下の腫れを何度も繰り返す場合は、注意が必要です。 まれに、自分の体を守る免疫が間違って自分を攻撃してしまう病気が隠れていることがあります。

その一つが「小児シェーグレン症候群」です。 大人の場合、この病気は目や口が乾く症状が先に出ることが多いです。 しかし研究によると、お子さんの場合は乾燥の症状より先に、耳下腺の腫れを繰り返すことが多いとわかっています。

口の渇きや目の乾きなどの症状がはっきりしないこともあります。 そのため、繰り返す耳下腺炎は、より詳しい検査が必要なサインかもしれません。

重い合併症に注意

特に流行性耳下腺炎(おたふく風邪)では、まれに他の病気を引き起こすことがあります。

  • 髄膜炎(ずいまくえん) ウイルスが脳を包む膜に入り、強い頭痛や吐き気、高熱が出ます。
  • 難聴(なんちょう) 片方の耳の聞こえが急に悪くなることがあります。
  • 睾丸炎(こうがんえん)/卵巣炎(らんそうえん) 思春期以降にかかると、精巣や卵巣が腫れて痛むことがあります。
  • 膵炎(すいえん) お腹の上のほうに激しい痛みが出ます。

これらの症状が見られたら、すぐに医療機関を受診してください。 気になる症状があれば自己判断せず、早めに医師に相談することが大切です。

耳下腺炎の検査・診断

耳の下が腫れて痛むとき、原因を突き止めるためにいくつかの検査を行います。 まずはお話を詳しく聞き、腫れている部分を優しく触って確認することから始まります。

その上で、原因を特定するために以下のような検査を進めていきます。

基本的な検査

体の中で何が起きているかを知るために、基本的な検査を行います。

検査の種類

何を調べるの?

血液検査

・体の中の炎症の強さ(白血球数、CRP)

・唾液腺のダメージ具合(アミラーゼ)

・おたふく風邪のウイルスと戦った証拠(抗体)

画像検査

・超音波(エコー)やCT検査で耳下腺の中を写真で確認します。

・唾石(だせき)という石がないか、腫れの程度を見ます。

これらの検査は、診断への大切な手がかりとなります。 多くの場合、これらの検査で原因の見当をつけることができます。

繰り返すときに行う詳しい検査

基本的な検査で診断が難しい場合や、症状を何度も繰り返す場合に専門的な検査をします。 その一つが「唾液腺内視鏡検査」です。

これは、髪の毛ほどのとても細いカメラを唾液の出口からそっと入れて行います。 唾液腺の中を直接観察できるため、診断が難しいケースの原因特定に役立ちます。

研究によると、この検査は診断だけでなく治療にもつながることがあります。 例えば、小さな唾石を見つけて、その場で取り除くといったことも可能です。

特に、お子さんが耳下腺炎を何度も繰り返す場合には、この検査がとても有効です。 耳鼻咽喉科だけでなく、リウマチ科など他の専門医と協力して原因を探ることもあります。

検査結果を総合的に判断し、一人ひとりに合った治療方針を丁寧に決めていきます。

耳下腺炎の治療

耳下腺炎の治療法は、その原因によって全く異なります。 まずは原因を正確に突き止めることが、治癒への大切な第一歩です。 治療は主に、つらい症状を和らげる治療と、原因そのものを取り除く治療に分かれます。

原因ごとの主な治療法

あなたの耳下腺炎がどのタイプかによって、お薬や治療法が変わります。

原因の種類

主な治療法

ウイルスが原因のとき

(おたふく風邪など)

ウイルスに直接効くお薬はありません。

熱や痛みを和らげる解熱鎮痛剤を使い、安静にして水分をたくさんとることが治療の中心になります。

細菌が原因のとき

(化膿性耳下腺炎)

細菌をやっつけるための抗菌薬(抗生物質)を使います。

痛みが強い場合は、痛み止めも一緒に使います。

石が原因のとき

(唾石症)

小さな石なら自然に出てくるのを待ちます。

症状が続く場合は、手術で石を取り出すこともあります。

繰り返す耳下腺炎の特別な治療

何度も耳下腺の腫れを繰り返す場合は、より専門的な治療を考えます。 近年、診断と治療を同時に行える「唾液腺内視鏡」が注目されています。

これは、髪の毛ほどの細いカメラを使い、唾液腺の中を直接見ながら治療する方法です。 ある研究では、診断が難しい複雑な耳下腺炎を持つ患者さんの約9割で症状が改善したと報告されています。

特にお子さんが耳下腺炎を繰り返す場合、原因を詳しく調べる必要があります。 海外の研究では、耳鼻咽喉科と免疫の専門家であるリウマチ科がチームを組んで治療にあたることが、より良い結果につながると報告されました。

シェーグレン症候群という病気が隠れている場合は、免疫の働きを調整するお薬を使うこともあります。 一人ひとりの原因に合わせ、最も良い治療法を一緒に探していきますので、ご安心ください。