統合失調症

「考えや気持ちがまとまらない」「誰かに監視されている気がする」。もし、あなたや大切な人がこのような悩みを抱えているなら、それは決して特別なことではありません。統合失調症は、生涯で約100人に1人がかかるとされ、日本だけでも約80万人もの方が向き合っている身近な病気なのです。

かつては治りにくいというイメージがありましたが、今は違います。新しい薬や治療法の進歩により、早期に適切なケアを始めれば半数以上の方が回復し、社会生活を送ることが可能になっています。

この記事では、統合失調症の症状や原因、そして回復への具体的な道筋を詳しく解説します。一人で抱え込まず、正しい理解への第一歩を踏み出してみませんか。

統合失調症の概要

統合失調症は、脳の中で情報の交通整理がうまくいかなくなり、考えや気持ちがまとまりにくくなる病気です。

このため、現実と非現実の区別がつきにくくなるなど、行動や気分、人間関係といった生活の様々な面に影響が出ることがあります。

この病気は決して珍しいものではありません。 生涯のうちに約100人に1人がかかるとされ、日本では約80万人もの方がこの病気と向き合っています。

決して一人で悩むような特別な病気ではないのです。

この病気の主な特徴は、以下のとおりです。

  • 症状の核心 脳の情報をまとめる機能に不調が生じ、幻聴(ないはずの声が聞こえる)や、妄想(誤った内容を強く信じる)などが現れます。
  • 治療による回復 以前は回復が難しいと思われていましたが、今は違います。 新しいお薬も登場し、早く治療を始めれば回復が十分に可能です。
  • 長期的な見通し 長い目で見ると、半数以上の方が回復すると報告されています。 重い症状が残るのは2割程度で、多くの方が社会生活を送っています。

近年の研究では、睡眠による記憶の整理に影響が出ることも分かってきています。

このように、統合失調症は心だけでなく、脳の様々な機能に影響するため、ご本人の心にかかる負担は非常に大きくなります。

症状が重くなる前に気づき、適切な治療を続けることが、その後の回復への大切な鍵となるのです。

統合失調症の種類

統合失調症の症状は、人によってさまざまです。 しかし、症状の現れ方から大きく3つのタイプに分けることができます。

この分類を知ることで、ご本人や周りの方が状態を理解しやすくなります。

症状の種類

特徴

イメージ

陽性症状

健康なときにはなかった状態があらわれる

心の働きに「足し算」された症状

陰性症状

健康なときにあったものが失われる

心の働きから「引き算」された症状

認知機能障害

考える、覚えるなどの能力が低下する

脳のコンピューター機能の低下

陽性症状

本来はないはずのものを、現実にあるように感じてしまう症状です。 脳の働きが過敏になっている状態で、病気の急性期に現れやすいです。

  • 幻覚 実際にはないものを、あるように感じる感覚の異常です。 周りの人には聞こえない悪口や命令する声が聞こえる「幻聴」がよくみられます。
  • 妄想 明らかに誤った内容を強く信じ込むことです。 周りが訂正しようとしても受け入れられません。 「誰かに監視されている」「嫌がらせを受けている」といった被害妄想が代表的です。
  • 思考の混乱 考えをまとめることが難しくなる状態です。 話にまとまりがなくなり、会話が成り立たなくなることもあります。

陰性症状

本来持っていた意欲や感情の豊かさなどが失われてしまう症状です。 陽性症状が落ち着いた後も、長く続くことがあります。

  • 感情の平板化 喜んだり怒ったりといった感情の表現が乏しくなり、表情が硬くなります。
  • 意欲の欠如 何をするにもやる気が起きなくなります。 自分の身の回りのことにも無関心になることがあります。
  • 社会的引きこもり 人と関わることを避け、自室に閉じこもりがちになります。

認知機能障害

記憶力や集中力、判断力といった知的な能力が低下する症状です。 日常生活や社会生活を送るうえで、さまざまな困難が生じることがあります。

  • 注意・集中力の低下 物事に集中し続けることが難しくなります。
  • 記憶力の低下 新しいことを覚えるのに時間がかかります。
  • 判断力・実行機能の低下 計画を立てて物事を実行することが苦手になります。

最近の研究では、睡眠による記憶を整理する働きが、健康な人と比べて弱まることがわかっています。 このため、新しい情報を覚えたり、物事の手順を身につけたりすることが難しくなるのです。

統合失調症の原因

統合失調症の正確な原因は、まだはっきりとわかっていません。 一つの原因だけで発症するのではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

主な要因として、以下の3つが挙げられます。

  • もともとの要因 遺伝的な影響など、生まれ持った脳の働きの特徴が関係します。 しかし、これだけで発症が決まるわけではありません。
  • 環境の要因 仕事や人間関係の大きなストレスがきっかけとなることがあります。 進学や就職といった人生の転機も、脳に負担をかけます。
  • 脳の働きの問題 脳内の情報を伝える物質のバランスが崩れることが関係します。 特にドーパミンという物質の働きが過剰になることが指摘されています。

最近の研究では、脳の働きの中でも特に「睡眠」が注目されています。 健康な人の脳は、眠っている間にその日の出来事を記憶として整理します。

しかし、統合失調症の方では、この睡眠中の情報整理がうまく働かない可能性が指摘されています。 ある研究では、特に体を動かして覚える記憶を、睡眠中に定着させる力が弱まることが示されました。

このように、もともとの要因にストレスなどが加わり、脳の機能に影響が及ぶことで、統合失調症が発症すると考えられています。

統合失調症の症状

統合失調症の症状は、大きく3つのタイプに分けられます。 人によって症状の現れ方は異なり、複数が重なって見えることもあります。

ご本人や周りの方が症状を正しく理解することが、回復への第一歩です。

陽性症状

健康なときにはなかった状態が現れる症状です。 脳の働きが過敏になり、情報の交通整理がうまくいかないために起こります。

症状の種類

具体的な内容

幻覚

実際にはないものを、現実にあるように感じる感覚の異常です。特に、悪口や命令する声が聞こえる「幻聴」が多くみられます。

妄想

明らかに事実と違うことを、強く信じ込んでしまうことです。「誰かに監視されている」「嫌がらせをされている」などが代表的です。

思考の混乱

考えをまとめることが難しくなり、話の筋道が立たなくなります。会話の内容が急に飛んだり、つじつまが合わなくなったりします。

陰性症状

もともと持っていた意欲や感情の豊かさなどが失われる症状です。 周りからは「怠けている」と誤解されやすいですが、病気によるものです。

  • 感情の平板化 喜んだり悲しんだりといった感情の表現が乏しくなります。 表情が硬くなり、周りの出来事に関心が薄れているように見えます。
  • 意欲の低下 何事にもやる気が起きなくなり、お風呂や着替えなど、 身の回りのことにも無頓着になることがあります。
  • 社会的引きこもり 人と関わることを避け、自分の部屋に閉じこもりがちになります。 他者とのコミュニケーションが大きな負担に感じられます。

認知機能障害

記憶力や集中力、判断力といった知的な能力が低下する症状です。 日常生活や社会生活を送る上で、さまざまな困難が生じることがあります。

  • 注意・集中力の低下 本を読んだりテレビを見たりしても、内容が頭に入りにくくなります。 一つの物事に集中し続けることが難しくなります。
  • 記憶力の低下 新しいことを覚えるのに時間がかかったり、物忘れが多くなったりします。 最近の研究では、睡眠による記憶を定着させる働きが、 弱まることも指摘されています。 特に、体を動かして覚える記憶(手続き記憶)が、 睡眠をとっても身につきにくい傾向があることがわかっています。
  • 判断力・実行機能の低下 計画を立てて物事を実行することが難しくなります。 仕事や家事の段取りをスムーズに組めなくなることがあります。

統合失調症の検査・診断

統合失調症には、血液検査などでわかる特別な指標がありません。 そのため、診断は一つの検査だけで決まるものではないのです。

医師による丁寧な問診を中心に、他の病気の可能性を確かめます。 そして、得られた情報を総合的に判断して診断に至ります。

診断は、以下の3つのステップで慎重に進められます。

  1. 医師による丁寧な問診 診断において、最も大切なのがご本人やご家族からのお話です。 ご本人が感じているつらさや、生活の変化を詳しく伺います。
  • どんな症状がありますか? 幻聴や妄想の有無、意欲が出ないなどの症状を確認します。
  • いつから始まりましたか? 症状が出始めた時期や、その後の経過を教えていただきます。
  • 生活にどんな影響がありますか? 仕事や学業、人間関係の変化など具体的な困りごとを伺います。
  • 睡眠はとれていますか? 最近の研究では、睡眠による記憶整理への影響も指摘されています。
  1. 他の病気の可能性を調べる検査 統合失調症と似た症状は、他の体の病気が原因でも起こります。 そのため、可能性のある病気を一つひとつ除外していきます。

検査の種類

目的

身体検査・血液検査

甲状腺の病気など、体の不調が隠れていないか調べます。

画像検査(CT・MRI)

脳腫瘍など、脳自体の病気がないかを確かめます。

  1. 国際的な診断基準による最終判断 問診と検査の結果をすべて集め、国際的な診断基準と照合します。 アメリカ精神医学会の「DSM-5」などが、その基準として用いられます。
    この基準では、特徴的な症状が一定の期間続いていることや、 社会生活に大きな支障が出ているかなどを基に最終的に診断します。

統合失調症の治療

統合失調症の治療は、お薬とリハビリを組み合わせるのが基本です。 この2つを車の両輪のように、バランスよく進めることが回復への鍵です。

薬物療法

治療の中心は、脳の情報の交通整理を助ける「抗精神病薬」です。 このお薬で幻覚や妄想などの症状を和らげ、心を落ち着かせます。

症状が良くなっても、ご自身の判断でお薬をやめると再発しやすいです。 お薬の調整は、必ず医師と一緒に相談しながら進めましょう。

お薬には副作用が出ることがあります。 気になる症状があれば、遠慮なく医師や薬剤師に伝えてください。

  • 一般的な副作用 眠気や、ふるえ、からだのこわばりなどが見られることがあります。
  • 注意が必要な副作用 一部のお薬(アリピプラゾールなど)では、衝動的な行動が副作用として報告されています。 ある研究レビューでは、ギャンブルが最も多く報告されました。 これらの衝動は、お薬の開始後30日以内に現れやすい傾向があります。 ご自身の性格の問題ではなく、お薬の影響かもしれないのです。

また、治療が難しい場合や、ご自身を傷つける危険性が高い場合には、 「クロザピン」というお薬が有効なことがあります。 このお薬は、自殺を防ぐ効果が他のお薬より優れていると報告されています。

心理社会的治療

お薬で症状を安定させながら、社会生活に戻るための練習も行います。 患者さん一人ひとりの状態に合わせて、様々な方法を組み合わせます。

治療法の種類

内容

心理教育

ご本人やご家族が病気を正しく理解し、上手な付き合い方を学びます。

生活技能訓練(SST)

人との関わり方やストレスへの対処法など、社会生活の技術を練習します。

作業療法

料理や手芸などの作業を通して、集中力や意欲の回復を目指します。

就労支援

働きたいという希望を持つ方へ、仕事探しから職場定着までを支えます。