細菌性結膜炎
「朝、目やにでまぶたが開かない」「ドロッとした黄色い目やにが出る」。そんな目の不調、単なる「ものもらい」や疲れ目だと思っていませんか?実はそれ、人にうつることもある「細菌性結膜炎」のサインかもしれません。風邪をひいた後や、体の抵抗力が落ちた時など、原因はごく身近に潜んでいます。
自然に治ることもありますが、放置すると長引いたり、原因菌によっては視力に影響が及ぶ危険性もゼロではありません。信頼性の高い研究では、適切な抗菌薬を使うと症状が改善する可能性が約1.26倍高まることもわかっています。この記事では、細菌性結膜炎の正しい知識と治療法を詳しく解説します。自己判断で悪化させる前に、ご自身の症状と照らし合わせてみてください。
細菌性結膜炎の概要
細菌性結膜炎は、目の中に「細菌」が入り込んで、炎症を起こす病気です。 一般的に「ものもらい」やウイルスが原因の「はやり目」と混同されがちですが、それぞれ原因が異なります。
細菌性結膜炎の主な特徴として、以下のような症状が挙げられます。
- 目の充血 白目の部分が、血管が浮き出て赤くなります。
- ねばねばした目やに 黄色や緑色がかった、膿(うみ)のような目やにが出ます。 朝、目やにでまぶたがくっついて目が開きにくくなることもあります。
- 目のゴロゴロ感 目に砂が入ったような、異物感を感じることがあります。
私たちの体に備わっている力で自然に治ることもあります。 しかし、抗菌薬(抗生物質)の目薬を使うことで、より早く回復へ向かうことがわかっています。
信頼性の高い複数の研究をまとめた報告があります。 それによると、抗菌薬の目薬を使った場合、使わなかった場合と比べて、症状が良くなる可能性が約1.26倍高まることが示されています。 さらに、原因となる細菌が目からいなくなる確率も約1.53倍高まることがわかっています。
人にうつることがあるため、ご家族や周りの人への配慮も大切です。 気になる症状があれば、早めに眼科を受診しましょう。
細菌性結膜炎の種類
ひとくちに細菌性結膜炎といっても、原因は一つではありません。 原因となる細菌の種類によって、かかりやすい年代や特徴が異なります。
代表的な細菌性結膜炎は、原因菌によって次のように分けられます。 特に、体の抵抗力が影響しやすいお子さんやご高齢の方で注意が必要です。
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かかりやすい年代 |
主な原因となる菌 |
特徴 |
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お子さん |
インフルエンザ菌 肺炎球菌 |
かぜをひいた後などに続けて起こりやすいです。 「インフルエンザ菌」は、冬に流行するインフルエンザウイルスとは別の細菌です。 |
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ご高齢の方 |
黄色ブドウ球菌 |
体の抵抗力が落ちたときに感染しやすくなります。 治りにくく、繰り返しやすい傾向があります。 |
黄色ブドウ球菌は、健康な人の皮膚やのどにもいる「常在菌」です。 普段は問題ありませんが、ケガや病気で抵抗力が落ちたときに、悪さをして感染症を引き起こすことがあります。
また、頻度は低いですが、特別な治療が必要になる細菌性結膜炎もあります。
- 淋菌性結膜炎
性感染症として知られる淋菌が、目に感染して起こります。 治療が遅れると、黒目の部分(角膜)に影響が及び、視力が低下する危険性があります。 - クラミジア結膜炎
こちらも性感染症で知られるクラミジアが原因です。 症状が軽くても、長引きやすい特徴があります。
このように、原因となる細菌はさまざまです。 そのため、自己判断せず、眼科で原因に合わせた抗菌薬(抗生物質)による適切な治療を受けることが大切です。
細菌性結膜炎の原因
細菌性結膜炎は、細菌が目の中で増えてしまうことで起こる病気です。 私たちの手や顔、空気中など、身の回りには目に見えない細菌がたくさんいます。
しかし、普段は涙が細菌を洗い流してくれたり、体の抵抗力(免疫)が細菌と戦ったりして、目を守っています。
では、なぜ感染してしまうのでしょうか。 それは、目を守る力が何らかの理由で弱まってしまうときです。 具体的には、以下のような状況で感染しやすくなります。
- 体の抵抗力が落ちたとき かぜをひいたり、疲れていたり、寝不足だったりすると、細菌と戦う力が弱まります。
- 目にケガをしたとき 目にゴミが入ったり、目をこすって小さな傷がついたりすると、そこから細菌が入り込みやすくなります。
- 汚れた手で目を触ったとき 手に付いていた細菌が、直接目の中に入ってしまうことが原因になります。
原因となる菌で特に多いのが「黄色ブドウ球菌」です。 この菌は、健康な人の皮膚やのどにもいる「常在菌」の一種です。
常在菌とは、普段は体に害を与えず、おとなしく暮らしている菌を指します。 しかし、体の抵抗力が落ちるなど、何かのきっかけで悪さをして、結膜炎を引き起こすことがあるのです。
このように、原因は特別な菌だけでなく、私たちの身近にいる菌がきっかけになることが多いと知っておきましょう。
細菌性結膜炎の症状
細菌が目の中で増えると、体はそれを追い出そうと反応します。 その反応が、目に現れるさまざまなサイン、つまり「症状」です。 ご自身の状態と見比べられるよう、チェックリストを用意しました。
【細菌性結膜炎の症状チェックリスト】
- □ 黄色や緑色の、ドロッとした膿(うみ)のような目やにが出る
- □ 朝起きると、目やにでまぶたがくっついて目が開きにくい
- □ 白目が赤くなる(充血)
- □ 目の中に何か入っているようなゴロゴロ感や、軽い痛みがある
- □ まぶたが腫れぼったい
細菌性結膜炎で最も特徴的な症状は、膿のような目やにです。 これは、体の中の免疫細胞である白血球が細菌と戦った証拠です。 戦い終えた白血球などが混ざるため、黄色や緑色で粘り気が出ます。
また、細菌と戦うために目の血管が広がり、血液が集まります。 そのため、白目の部分が赤く充血して見えるのです。 目にゴミが入ったようなゴロゴロ感や、軽い痛みを感じることもあります。
一方で、アレルギー性の結膜炎と比べると、強いかゆみは少ない傾向です。 はじめは片方の目だけでも、数日後にもう片方の目にうつることもあります。 これは、無意識に目をこすった手で、反対の目に触れてしまうためです。
これらの症状は、感染した細菌の種類やその人の体の抵抗力によって、あらわれ方が異なります。 気になるサインがあれば、自己判断せずに眼科を受診しましょう。
細菌性結膜炎の検査・診断
細菌性結膜炎が疑われる場合、自己判断は禁物です。 眼科では、本当に細菌が原因なのかを確かめるために、丁寧な診察を行います。 主に、患者さんからのお話と、目の状態を直接見ることで診断を進めます。
問診(お話を聞くこと)
診断の第一歩として、症状や生活習慣について詳しくお伺いします。 次のような質問は、原因を特定するための大切な手がかりになります。
- いつから、どんな症状がありますか? 症状の始まった時期や、目やにの色や量などを確認します。 これにより、病気の勢いや種類を推測します。
- コンタクトレンズは使っていますか? 誤った使い方をしていると、レンズが細菌の温床になることがあります。
- 周りにはやっている人はいませんか? 人にうつりやすいウイルス性の結膜炎(はやり目)との区別に役立ちます。
診察(目で直接見ること)
次に、目を拡大して観察できる「細隙灯(さいげきとう)顕微鏡」を使います。 この機械で、医師は目の隅々まで詳しく見て、炎症の状態を判断します。
白目の充血の程度やまぶたの裏側の状態、目やにの粘り気などを確認します。 膿のようなドロッとした目やには、細菌性結膜炎の大きな特徴の一つです。
細菌培養検査(原因菌を特定する検査)
症状が長引く場合や、重症のときには、原因菌を特定する検査をします。 綿棒のようなもので目やにをそっとぬぐい取り、どんな細菌がいるかを調べます。
原因となる「犯人」の細菌を特定することで、最も効果的な抗菌薬を選べます。 ある研究では、原因菌に合った抗菌薬を使うことで、菌がいなくなる確率が約1.53倍高まることがわかっています。
これらの結果を総合的に判断し、一人ひとりに合わせた治療方針を決定します。
細菌性結膜炎の治療
細菌性結膜炎の治療は、目の中で悪さをしている細菌を退治することが目的です。 この戦いの主役になるのが、抗菌薬(抗生物質)という成分が入った目薬です。
抗菌薬の目薬を使うと、治療の効果が高まることが研究でわかっています。 信頼性の高い複数の研究をまとめた報告では、次のことが示されました。
薬を使わなかった場合と比べて、症状が良くなる可能性が約1.26倍高まります。 さらに、原因の細菌が目からいなくなる確率も約1.53倍に上がることがわかっています。 このように、抗菌薬はつらい症状を和らげ、早く治すための強い味方です。
治療をしっかり進めるためには、いくつか大切なポイントがあります。
- 処方された薬は最後まで使い切る 症状が良くなっても、目には見えない細菌がまだ残っていることがあります。 ここで薬をやめると、細菌が再び増えてぶり返す危険があります。 医師から指示された期間は、必ず薬を使い続けましょう。
- 市販の目薬は成分をよく確認する 市販薬を選ぶときは注意が必要です。 「抗菌」と書かれていても、細菌に効く成分が入っていない薬もあります。 購入する前に、薬剤師さんに相談するのが安心です。
市販の目薬を2〜3日使っても良くならない場合は、眼科を受診してください。 目の痛みが強い、目やにがとても多い、といった場合も受診のサインです。 眼科では、原因の細菌に合った、より効果的な薬を処方できます。
特に、淋菌やクラミジアが原因の場合は、目薬だけでは不十分です。 飲み薬での治療も必要になるため、早めに専門の医師に相談しましょう。 自己判断せず、適切な治療を受けることが、目を守るために最も大切です。













