急性出血性結膜炎

ある日突然、鏡に映った自分の目が真っ赤に出血していたら、誰でもパニックになるはずです。その衝撃的な症状は、ウイルスが原因の「急性出血性結膜炎」かもしれません。アポロ11号が月面着陸した頃に大流行したことから、通称「アポロ病」とも呼ばれています。

この病気の恐ろしさは、感染してからわずか1日という速さで発症し、涙や目やにを介して非常に強い感染力で広がることです。法律で定められた感染症のため、医師の許可が出るまで学校や園を休む必要があり、家族や周囲への配慮が欠かせません。

この記事では、急性出血性結膜炎の詳しい症状や原因、そして最も重要な周りの人へうつさないための具体的な対策について解説します。突然の目の出血に慌てないためにも、正しい知識を身につけておきましょう。

急性出血性結膜炎の概要

ある日突然、目が真っ赤に出血したら、誰もが驚くはずです。 これは「急性出血性結膜炎」という病気かもしれません。

ウイルスが原因で起こる、目の感染症の一つです。 白目の表面をおおう「結膜」という薄い膜で出血が起こります。 そのため、白目がべったりと赤く染まって見えるのが特徴です。

この病気には、知っておくべきいくつかの大切な特徴があります。

  • 非常に強い感染力
    涙や目やにの中に、原因となるウイルスがたくさん含まれています。 ウイルスがついた手で目をこすったりすると、簡単にうつります。
  • すぐに症状が出る
    ウイルスに感染してから、わずか1日ほどで症状が出始めます。 このウイルスが体の中に隠れている期間を「潜伏期間」と呼びます。
  • 「アポロ病」という別名
    アポロ11号が人類で初めて月に行った1969年ごろに、 世界中で大流行しました。そのため、このような別名があります。

急性出血性結膜炎は、法律で「人にうつすおそれのある病気」と 定められています。 そのため医師が許可するまで、学校や園をお休みする必要があります。

ほとんどは1週間ほどで自然に良くなります。 しかし、家族や周りの人にうつさないための対策がとても重要です。

急性出血性結膜炎の種類

急性出血性結膜炎は、主に2種類のウイルスが原因で起こります。 どちらも「エンテロウイルス」というウイルスの仲間です。 お腹の風邪などを起こすウイルスも、このグループに含まれます。

原因となるウイルスは、以下の2つです。

急性出血性結膜炎の原因ウイルス

  • エンテロウイルス70型(EV70) 急性出血性結膜炎を引き起こす、代表的なウイルスの一つです。
  • コクサッキーウイルスA24変異型(CA24v) もう一つの主な原因ウイルスで、EV70と同じような症状を起こします。

どちらのウイルスに感染しても、目に現れる症状はほとんど同じです。 白目が真っ赤に出血したり、ゴロゴロとした痛みが出たりします。 そのため、医師が診察で目の状態を見ただけでは、どちらのウイルスが原因かを見分けることは難しいです。

また、どちらのウイルスが原因でも治療の方針は変わりません。 したがって、原因ウイルスを特定するための特別な検査は、通常は行わないことが一般的です。

急性出血性結膜炎の原因

急性出血性結膜炎は、ウイルスが目に感染することで起こります。 原因となるウイルスは、主に以下の2種類です。

  • エンテロウイルス70型(EV70) 急性出血性結膜炎の代表的な原因ウイルスです。
  • コクサッキーウイルスA24変異型(CA24v) EV70と同じように、激しい目の症状を引き起こします。

この2つは「エンテロウイルス」というウイルスの仲間です。 お腹の風邪の原因になることもあり、私たちの身近に存在するウイルスです。

重要なのは、これらのウイルスが「どのようにして」目に入るかです。 感染した人の涙や目やにには、ウイルスがたくさん含まれています。 ウイルスが付いた手で目をこするなどして、感染が広がります。 これを「接触感染」と呼びます。

どちらのウイルスに感染しても、目に現れる症状はほとんど同じです。 そのため、ウイルスの種類によって治療法が変わることもありません。 原因ウイルスを特定する検査は、通常は行わないのでご安心ください。

急性出血性結膜炎の症状

ウイルスに感染してから、わずか1日という非常に短い時間で、 突然さまざまな症状が現れるのが、この病気の大きな特徴です。 症状は「目に現れる症状」と「体に現れる症状」に分けられます。

目に現れる主な症状

最も特徴的なのは、ほとんどの方に見られる結膜下出血です。 これは白目の血管が破れて、べったりと赤く染まる状態を指します。 その他にも、以下のようなつらい症状がみられます。

急性出血性結膜炎でみられる目の症状

  • 結膜下出血(けつまくかしゅっけつ) 白目の表面をおおう「結膜」の血管が破れて出血します。 なぜこのウイルスで出血が起きやすいのか、詳しい原因は まだ明らかになっていません。
  • 強い目の痛みやゴロゴロ感 目に何か物が入っているような、強い不快感(異物感)があります。
  • 光を異常にまぶしく感じる 「羞明(しゅうめい)」と呼ばれる症状で、普段は平気な光でも つらく感じて、目を開けているのが困難になることがあります。
  • まぶたの腫れ まぶたがパンパンに腫れあがり、目が開けにくくなることもあります。
  • 水っぽい目やに 涙のようにサラサラとした、水っぽい目やにがたくさん出続けます。
  • 白目のむくみ(結膜浮腫) 白目の部分がゼリーのようにブヨブヨと盛り上がります。 この症状は、特にご高齢の方によく見られる傾向があります。

はじめは片方の目だけに症状が出ることが多いです。 しかし、翌日にはもう片方の目にも症状が広がることが珍しくありません。

体に現れる主な症状

目の症状に加えて、風邪によく似た全身の症状をともなうこともあります。

  • 頭痛
  • 発熱
  • 咳や鼻水といった呼吸器の症状

これらの全身症状は、目の症状と同じように1週間ほどで良くなります。

ただし、ごくまれに注意が必要な合併症が報告されています。 目の症状が治ってから半年~1年ほど経った後に、 手足に力が入らなくなる「運動麻痺」が起こることがあります。 何か気になる症状があれば、必ず医師に相談してください。

急性出血性結膜炎の検査・診断

目が真っ赤に出血していると、とても心配になりますよね。 急性出血性結膜炎の診断は、主に医師が目で見て判断します。 特別な機械を使うことは少なく、症状を詳しくお聞きし、 目の状態を丁寧に観察することから診断が始まります。

診察では、この病気に特徴的なサインがないかを確認します。 特に大切なのが、白目の表面に現れる点状の出血です。 この出血は、患者さんの7割から9割に見られる重要な特徴です。

【お医者さんが確認する主なポイント】

  • 白目の出血 白目に、ペンで点を描いたような小さな出血があるか見ます。
  • 目の充血 白目全体が真っ赤になっていないかを確認します。
  • まぶたの裏のぶつぶつ まぶたの裏側をめくり、ウイルスと戦った跡である 小さなぶつぶつ(濾胞)ができていないか調べます。
  • リンパ節の腫れ 耳の前にあるリンパ節を触ります。ここが腫れて痛むのは、 体がウイルスと戦っているサインです。

原因ウイルスを特定する詳しい検査もあります。 しかし、発症後3日以内と検査できる期間が非常に短く、 保険も使えないため、普段の診察で行うことはまれです。

何より、原因のウイルスがどちらの種類であっても、 治療の方法は変わらないため、ご安心ください。 そのため、症状から診断することが一般的となっています。

急性出血性結膜炎の治療

急性出血性結膜炎の原因ウイルスに直接効くお薬はありません。 これは風邪のウイルスに特効薬がないのと、少し似ています。 基本的には、ご自身の体が持つ力でウイルスを追い出すのを待ちます。

そのため治療の目的は、つらい症状を和らげることになります。 これを「対症療法(たいしょうりょうほう)」と呼びます。 また、他の細菌による二次感染を防ぐことも、とても大切です。

眼科では、主に以下のような目薬を使って治療を進めます。

急性出血性結膜炎の主な治療薬

  • 炎症を抑える目薬 目の痛みやゴロゴロ感、充血といったつらい症状を和らげます。 不快な症状を軽くして、少しでも楽に過ごせるようお手伝いします。
  • 細菌の感染を防ぐ目薬(抗菌薬) ウイルスと戦って弱った目に、別の細菌が入り込むのを防ぎます。 この二次感染が起こると、治りが遅れる原因になることがあります。

ほとんどの方は、ご自身の力で1週間ほどで自然によくなります。 ごくまれに炎症がひどい場合は、ステロイドの目薬を使うこともあります。

自己判断で市販の目薬を使うと、かえって症状を悪化させる恐れがあります。 目が赤く、つらい症状があるときは、必ず眼科を受診してください。