粘液嚢腫

唇や頬の内側をうっかり噛んでしまい、ぷくっとした水ぶくれのようなものができた経験はありませんか?痛みはほとんどないのに、一度できると気になってしまい、いつの間にか潰れてもまた同じ場所にできてしまう…。その繰り返す膨らみの正体は、「粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)」かもしれません。

粘液嚢腫は、唾液がうまく外に出られずにたまってしまうことでできる良性の嚢胞です。特に子どもや10代に多く、ある海外の研究では、お口の病気で検査を受けた子どもの約3割がこの症状だったと報告されているほど、実はとても身近な存在なのです。

この記事では、粘液嚢腫ができる原因や種類、そして再発を防ぐための治療法について詳しく解説します。ご自身の症状の正体を知り、気になる小さな悩みを解消するための一歩としてお役立てください。

粘液嚢腫の概要

粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)とは、お口の中や指にできる、ゼリーのような液体がたまった袋状の膨らみです。多くの場合、痛みなどの症状はなく、健康に大きな影響をおよぼすものではありません。

粘液嚢腫は、できる場所によって呼び方が変わることがあります。お口の中にできるものは「粘液嚢胞」、指や足の指にできるものは「指趾粘液嚢腫」と呼ばれます。

特にお口の中にできる粘液嚢胞は、子どもたちによく見られる病気の一つです。ある海外の研究では、お口の病気を詳しく調べた子どものうち、約3割がこの粘液嚢胞だったと報告されています。診断のピークは12歳から16歳の年齢層で、女の子にやや多い傾向があります。

粘液嚢腫の主な特徴を以下にまとめました。

  • 見た目
    大きさは5mm程度が多く、半透明でドームのようにぷくっと膨らみます。
  • 場所
    主に下唇や頬の内側、舌の裏側などに見られます。
  • 症状
    痛みを感じることは、ほとんどありません。
  • 特徴
    破れやすいですが、中身が出た後に同じ場所にくり返しできることがあります。

粘液嚢腫の種類

「粘液嚢腫」とひとくちに言っても、実はできる場所によっていくつかの種類に分けられます。主に、お口の中にできるタイプと、手や足の指にできるタイプがあります。

お口の中にできる粘液嚢腫(粘液嚢胞)

最もよく見られるのが、お口の中にできる「粘液嚢胞」です。ある海外の研究では、お口の病気の検査を受けた子どものうち、約3割がこの粘液嚢胞だったという報告もあります。

粘液嚢胞は、つば(唾液)がうまく外に出られずにたまることでできますが、たまり方の違いから、さらに2つの種類に分けられます。

  • 粘液溢出嚢胞(ねんえきいっしゅつのうほう)
    つばを出す管が傷つくことで、つばが周りにあふれ出てたまるタイプです。
  • 粘液貯留嚢胞(ねんえきちょりゅうのうほう)
    つばを出す管が詰まってしまい、風船のようにふくらんでたまるタイプです。

また、舌の付け根あたりにできた大きな粘液嚢胞は、「ガマ腫」という特別な名前で呼ばれることもあります。

手足や関節にできる粘液嚢腫

お口の中以外にも、手や足の指、関節の近くにできることがあります。代表的なものを下の表にまとめました。

種類

できる場所

主な特徴

指趾粘液嚢腫

手や足の指の関節

(特に爪の近く)

爪がでこぼこに変形してしまうことがあります。

ガングリオン

手首など、関節の近く

ゼリー状のかたまりで、大きさは様々です。

このように、粘液嚢腫はできる場所によって呼び方や特徴が少しずつ異なります。

粘液嚢腫の原因

粘液嚢腫ができる主な原因は、できる場所によって少し異なります。 お口の中にできる場合と、指にできる場合に分けて見ていきましょう。

お口の中にできる場合

お口にできる粘液嚢腫は、つば(唾液)のトラブルが原因です。 お口の中には、つばを作る「小唾液腺」という小さな器官がたくさんあります。

この小唾液腺からつばを出すための管が傷ついたり詰まったりすると、 つばがうまく外に出られず、粘膜の下にたまってしまいます。 これが、ぷくっとした膨らみの正体です。

管が傷つくきっかけには、次のようなことがあります。

  • 唇や頬を噛む
    食事中などに、うっかり粘膜を噛んで傷つけてしまうこと。
  • 口内炎などの傷
    口内炎が原因で、つばを出す管がふさがれてしまうこと。
  • 継続的な刺激
    歯の尖った部分や矯正器具が、いつも同じ場所に当たること。

ある海外の研究では、お口の病気で検査を受けた子どものうち、粘液嚢胞と診断されたのは12歳から16歳が最も多く、女の子に多い傾向がありました。 この時期は、部活動や運動で口元をぶつけたり、無意識に唇を噛む癖があったりすることも関係しているかもしれません。

指にできる場合

指にできる粘液嚢腫の詳しい原因は、まだはっきりとわかっていません。 しかし、主に2つのタイプがあると考えられています。

  • 関節の液体がもれ出るタイプ
    関節の中には、骨の動きを滑らかにする液体(関節液)があります。 この液体が、関節を包む袋からもれ出てたまるタイプです。
  • 粘液が作られすぎるタイプ
    皮膚にある細胞が、粘液のもとになる成分(ヒアルロン酸など)を、 必要以上にたくさん作ってしまい、たまることでできるタイプです。

関節の使いすぎや、年齢による変化なども関係していると言われています。

粘液嚢腫の症状

粘液嚢腫は、からだのどこにできるかによって症状が少し違います。 主に「お口のなか」と「手足の指」にできることが多く、 それぞれの特徴を、詳しく見ていきましょう。

お口のなかにできる場合(粘液嚢胞)

お口のなかにできるタイプは「粘液嚢胞」と呼ばれます。 特に下くちびるや頬の内側にできやすいのが特徴です。 痛みを感じることは、ほとんどありません。

ある海外の研究では、お口の病気で検査を受けた子どものうち、 粘液嚢胞と診断されたのは12歳から16歳が最も多いと報告されています。

  • 見た目 直径5mmほどの、半透明でドーム状のぷくっとした膨らみです。 色は透明だったり、少し青紫色に見えたりすることもあります。
  • 特徴 表面の膜はうすくて破れやすく、中からネバネバした液体が出ます。 一度つぶれても、数日でまた同じように膨らんでくることが多いです。

手足の指にできる場合(指趾粘液嚢腫)

手足の指にできるタイプは「指趾粘液嚢腫」と呼ばれます。 指の第一関節(爪に一番近い関節)の近くによくできます。 こちらは、どちらかというと中年以降の人に多く見られます。

  • 見た目 水ぶくれのような、半透明で少し硬さのある膨らみができます。
  • 特徴 痛みはあまりありませんが、大きくなると指を動かしにくくなります。 特に爪の生えぎわにできると、嚢腫が爪の根元を圧迫します。 その結果、爪に縦の溝ができたり、でこぼこに変形したりします。

できる場所

主な症状

特徴

お口のなか

(下くちびる、頬など)

・透明感のあるぷくっとした膨らみ

・大きさは5mm程度が多い

・痛みはほとんどない

・破れやすいが、何度も再発する

・12〜16歳くらいの若い人に多い

手足の指

(関節や爪の近く)

・水ぶくれのような硬い膨らみ

・爪に溝や変形がみられることがある

・痛みは少ないが、違和感が出ることも

・爪に影響が出ることがある

・中年以降の人に比較的多い

粘液嚢腫の検査・診断

粘液嚢腫の検査は、お医者さんが目で見てさわるだけで、 ほとんどの場合、どのような病気か見当がつきます。 特に、ある研究では12歳から16歳くらいのお子さんの唇にできる、 できものの多くが粘液嚢腫だったと報告されています。

より正確に診断したり、他の病気と区別したりするために、 次のような詳しい検査を行うこともあります。

  • 穿刺吸引(せんしきゅういん) 細い注射の針で、ふくらみの中身を少し吸い出す検査です。 粘液嚢腫であれば、ネバネバした透明な液体がとれます。 この検査だけで診断がつくことも珍しくありません。
  • 画像検査(超音波・MRI検査) ふくらみが深い場所にある場合などに行われることがあります。 超音波(エコー)などを使って、ふくらみの大きさや、 周りとの関係を詳しく調べることができます。
  • 病理組織検査(びょうりそしきけんさ) 手術で取り除いた組織の一部を、顕微鏡で調べる検査です。 これにより、「粘液嚢腫で間違いない」という確定診断ができます。

これらの検査は、体に大きな負担がかかるものではありません。 気になるふくらみを見つけたら、まずは皮膚科や歯科、 口腔外科を受診して、専門の先生に相談してみましょう。

粘液嚢腫の治療

粘液嚢腫は、健康に大きな影響をおよぼすものではありません。 そのため、必ずしも急いで治療が必要なわけではありません。 しかし、自然に消えることはまれで、再発をくり返すことも多いです。

特に、お口にできる粘液嚢胞は子どもや10代の若い世代に多いです。 ある研究では、お口の病気の検査を受けた子どものうち、 約3割がこの粘液嚢胞だったと報告されているほどです。 食事のときに邪魔になったり、見た目が気になったりする場合には、 ご本人やご家族の希望に応じて治療を行います。

治療法には、主に次の3つの選択肢があります。 それぞれの特徴をくらべて、自分に合った方法を見つけましょう。

治療法

内容

メリット

デメリット

穿刺・吸引

注射器で中の液体を吸い出す

体への負担がとても少ない

袋が残るため、再発しやすい

凍結・レーザー治療

液体窒素で凍らせたり、

レーザーで焼いたりする

手術よりも手軽な場合がある

痛みを伴うことや、

再発の可能性がある

切除手術

麻酔をしてメスで取り除く

再発が最も少ない根本的な治療

他の方法より体への負担がある

① 注射器で中身を吸い出す方法(穿刺・吸引)

注射器の針でふくらみを刺して、中にたまっている液体を吸い出します。 体への負担が最も少なく、とても簡単な方法です。 しかし、液をためていた袋そのものは残るので、また液体がたまり、 再発しやすいという特徴があります。

② 凍らせたり焼いたりする方法(凍結療法・レーザー治療)

マイナス196℃にもなる液体窒素でふくらみを凍らせたり、 レーザーで焼いたりして、原因となっている組織を壊す方法です。 手術よりは手軽ですが、治療の際に少し痛みを伴うことがあります。

③ 手術で取りのぞく方法(切除手術)

局所麻酔という部分的な麻酔をして、ふくらみをメスで切り取ります。 ふくらみの原因である「小唾液腺」という、つばを作る小さな工場ごと 取り除くため、最も再発の可能性が低い根本的な治療法です。

どの治療法が良いかは、できた場所や大きさ、生活スタイルによっても 異なります。まずは専門の医師とよく相談して、 納得のいく治療法を一緒に決めていきましょう。