症候性てんかん

てんかんと聞くと、突然意識を失い、全身がけいれんする姿を想像する方が多いかもしれません。しかし、突然言葉がうまく話せなくなる、片方の手足にしびれを感じるといった症状も、実はてんかん発作の可能性があることをご存知でしょうか。

脳梗塞や頭のケガなどが原因で起こる「症候性てんかん」は、脳卒中を経験した方の約10〜20%に見られるとも報告されており、決して他人事ではない病気です。原因となる脳の場所によって症状は千差万別のため、見過ごされてしまうケースも少なくありません。

この記事では、あまり知られていない症候性てんかんについて、その多様な症状から原因、最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身やご家族に思い当たる症状がないか、ぜひ確認してみてください。

症候性てんかんの概要

「症候性てんかん」とは、脳の病気やケガが原因で起こるてんかんです。 原因がはっきりとしない「特発性てんかん」とは区別されています。 原因となる脳の異常が、てんかん発作の引き金となっている状態です。

原因には、生まれた時の脳の損傷や、成長してからの病気などがあります。 例えば、以下のようなものが症候性てんかんの原因として知られています。

  • 脳梗塞や脳出血 脳卒中になった方の約10〜20%にみられると報告されています。
  • 交通事故などによる頭のケガ
  • 脳腫瘍
  • 脳炎や髄膜炎などの感染症

てんかん発作と聞くと、全身がけいれんする姿を想像するかもしれません。 しかし、症状は原因となっている脳の場所によって大きく異なります。 例えば脳出血が原因となり、突然言葉をうまく話せなくなる症状もあります。

これは失語症(しつごしょう)と呼ばれ、発作そのものとして現れる場合や、 発作の後に一時的に言葉が出なくなる場合があることが報告されています。 このように、症候性てんかんは非常に多様な症状を示す病気なのです。

症候性てんかんの種類

症候性てんかんは、発作が脳のどこから始まるかによって分類されます。 この分類は、原因を特定し治療方針を決める上でとても重要です。 大きく分けて「部分てんかん」と「全般てんかん」の2種類があります。

1. 部分てんかん(焦点てんかん)

脳の一部分から、神経の異常な興奮が始まるタイプのてんかんです。 症候性てんかんの多くが、この部分てんかんにあたると言われています。 ある調査では、入院中の成人患者さんの約8割が部分てんかんだったとされます。

異常が起きる脳の場所によって、現れる症状が異なるのが大きな特徴です。 原因となっている病気(脳梗塞や脳腫瘍など)の場所と一致します。 主な部分てんかんの種類と症状の例は、以下の表のとおりです。

種類

脳の役割

主な症状の例

側頭葉(そくとうよう)てんかん

記憶、感情、聴覚

・何かこみあげるような前兆

・意識がぼんやりして反応が鈍くなる

・口をもぐもぐさせるなどの無意識な動き

前頭葉(ぜんとうよう)てんかん

運動、思考、判断

・発作の時間が数十秒と短い

・突然、奇声を発したり手足をバタつかせたりする

・寝ている間に起こりやすい

頭頂葉(とうちょうよう)てんかん

感覚(触る、痛いなど)

・片方の手足のしびれ

・チクチクするような異常な感覚

後頭葉(こうとうよう)てんかん

視覚(見る)

・光がチカチカ見える

・一時的に物が見えにくくなる

2. 全般てんかん

脳の広い範囲で、ほぼ同時に神経の異常な興奮が始まるタイプです。 部分てんかんのように、特定の場所から始まるわけではありません。 発作が起きると、最初から脳全体が影響を受けるため意識を失います。

主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 強直(きょうちょく)発作 全身の筋肉が硬くなり、突っ張るような状態になります。
  • 間代(かんたい)発作 手足をガクガクとリズミカルに震わせる、けいれんが起こります。

これらの発作は、適切な治療でコントロールを目指すことが重要です。 ご自身の症状がどのタイプかを知ることは、治療への大切な第一歩です。

症候性てんかんの原因

症候性てんかんは、脳にできた「傷跡」が原因で起こるてんかんです。 この傷跡は、過去の病気やケガによってできたもので、神経細胞が過敏になり、てんかん発作の引き金となってしまいます。

その原因は非常に多岐にわたりますが、大きく分けると以下のようになります。

  • 脳の血管のトラブル 脳梗塞や脳出血など、血管が詰まったり破れたりする病気です。
  • 頭のケガ(頭部外傷) 交通事故や転倒などで、脳に直接的なダメージが加わった場合です。
  • 脳の感染症や腫瘍 脳炎や髄膜炎、脳にできる腫瘍などが原因となることがあります。
  • 生まれつきや出産時の問題 生まれたときから脳の形に特徴があったり、出産時に酸素が不足したりした場合です。

例えば、脳の血管が破れる脳出血の後にてんかんが起こることがあります。 ダメージを受けた脳の神経が、異常な電気信号を出すようになるためです。 この場合、突然言葉が話せなくなる「失語症」として発作が現れることも報告されています。

また、頻度は低いものの「後方可逆性脳症候群(PRES)」という病気も原因になります。 これは、脳の血管の機能に問題が生じ、血液の流れがうまく調節できなくなることで、けいれん発作などを引き起こす状態です。

このように、症候性てんかんの原因はさまざまで、年齢によっても異なります。 適切な治療のためには、MRIなどの検査で脳の状態を詳しく調べ、原因を特定することが何よりも大切になります。

症候性てんかんの症状

症候性てんかんの症状は、原因となる脳の場所によって大きく異なります。 脳は場所ごとに違う役割を持っており、異常な電気がどこで起きるかで、 体に出るサインが変わってくるのです。

発作は大きく分けて、脳の一部分で起きる「部分発作(焦点発作)」と、 脳全体で起きる「全般発作」の2つのタイプに分けられます。

部分発作(焦点発作)

症候性てんかんの多くは、この部分発作にあたります。 脳の一部分から異常な電気が発生し、その場所に応じた症状が現れます。

発作が起きやすい場所

脳の役割

主な症状の例

側頭葉(そくとうよう)

記憶、感情

・胃から何かがこみあげる前兆がある

・一点をぼんやり見つめて反応が鈍くなる

・無意識に口をもぐもぐさせたりする

前頭葉(ぜんとうよう)

運動、思考

・発作の時間が数十秒と短い

・突然奇声をあげたり、手足をバタつかせたりする

・寝ている間に起こることが多い

また、脳出血が原因となり、突然言葉が話せなくなる「失語症」も、 てんかん発作の症状として現れることが報告されています。 発作中に言葉が理解できなくなる場合や、発作後に一時的に話せなくなる場合があるのです。 急に言葉の症状が出た際は、てんかんの可能性も考える必要があります。

全般発作

脳の広い範囲で、ほぼ同時に異常な電気が発生するのが全般発作です。 脳全体が影響を受けるため、発作が始まるとすぐに意識を失います。

代表的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 突然、意識を失って倒れる
  • 全身の筋肉が硬くなり、体を突っ張らせる
  • 手足がガクガクとリズミカルにけいれんする

これらの症状はあくまで一例です。ご自身の症状がどのタイプか、 また本当にそれがてんかん発作なのかを自己判断するのは危険です。 気になる症状があれば、必ず専門の医療機関に相談しましょう。

症候性てんかんの検査・診断

症候性てんかんの診断では、2つの大きな目的があります。 1つは「本当に、てんかん発作が起きているか」を証明すること。 もう1つは「脳のどこに、どんな原因が隠れているか」を特定することです。 このため、主に「脳波検査」と「画像検査」を組み合わせて診断します。

脳波検査

てんかんの診断には欠かせない、脳の活動を調べる検査です。 頭に小さな電極を貼り付け、脳が出す微弱な電気信号(脳波)を記録します。 この検査で、てんかん発作に特徴的な「トゲトゲした波」が出ていないか確認します。

* 目的 てんかん発作が起きている証拠を見つけ、脳のどの部分から始まるかを特定します。 * 方法 リラックスした状態や睡眠中、光の点滅で脳に軽い刺激を与えた時の脳波を記録します。

画像検査

脳の形や構造を直接見ることで、てんかんの原因となる異常を探します。 脳梗塞の跡や脳腫瘍など、発作の引き金となる「傷跡」を見つけるために行います。

検査の種類

特徴

CT検査

X線を使って、脳の断面図を素早く撮影する検査です。

急な頭痛や意識障害がある場合の、脳出血の確認などに役立ちます。

MRI検査

強力な磁石と電波を使い、脳の状態をより詳しく調べます。

CTでは見つけにくい小さな異常の特定に、非常に有効な検査です。

その他の検査

近年では、画像検査の技術が進歩し、微細な脳の異常も見つけやすくなりました。 さらに、血液検査などで診断の助けとなる特別な物質(バイオマーカー)を調べる研究も進んでいます。 これらの検査結果を総合的に判断し、一人ひとりに合った治療方針を立てていきます。

症候性てんかんの治療

症候性てんかんの治療は、まず原因に目を向けることから始まります。 脳腫瘍や脳梗塞など、てんかん発作を引き起こす病気が原因の場合、 その病気の治療を最優先することが、根本的な解決につながります。

原因の病気が良くなることで、発作が自然と減ることもあります。 しかし、原因の治療が難しい場合や治療後も発作が続く場合は、 発作そのものを抑えるための治療を並行して行います。

お薬による治療(薬物療法)

発作をコントロールするための基本となるのが、お薬による治療です。 抗てんかん薬を毎日飲むことで、脳の神経の異常な興奮を抑え、 発作が起こりにくい安定した状態を目指します。

お薬の種類はたくさんあり、発作のタイプや年齢などを考え、 一人ひとりに合ったものが慎重に選ばれます。

最近の研究では、人それぞれの「遺伝子」の違いが、 薬の効き目や副作用の出やすさに関わることがわかってきました。 将来的には遺伝子検査で、より効果的で安全な薬を選べる、 そんな「個別化医療」が進むと期待されています。

手術による治療(外科手術)

お薬を正しく使っても発作を十分に抑えられない場合は、 「難治性てんかん」と呼ばれ、手術による治療も選択肢になります。 てんかんの方の約2〜3割が、このタイプにあたるとされています。

手術には、主に以下のような方法があります。

  • 焦点切除術 てんかんの原因となっている脳の異常な部分を、 ピンポイントで取り除く手術です。
  • 遮断手術 異常な電気が脳全体に広がるのを防ぐため、 電気信号の通り道を断ち切ります。
  • 迷走神経刺激療法 首にある神経を電気で優しく刺激することで、 脳の過剰な興奮を落ち着かせる治療法です。

生活で気をつけること

お薬や手術による治療とあわせて、毎日の生活習慣も大切です。 特に睡眠不足や過度なストレスは、脳を疲れさせてしまい、 発作の引き金になりやすいことが知られています。 規則正しい生活を送り、脳をしっかり休ませることを心がけましょう。