特発性てんかん
突然ぼーっとする、呼びかけに反応しない。そんなお子さんの様子に、不安を感じていませんか? 病院で脳を調べても「特に異常はない」と言われた場合、それは「特発性てんかん」かもしれません。これは脳に目に見える原因がないにもかかわらず発作が起こる病気で、実は100人から300人に1人が抱えている、決して珍しくない状態なのです。
特に子どもや思春期の若い世代に多く見られますが、希望もあります。適切な治療によって、約8割もの方が発作をコントロールできているという事実をご存じでしょうか。この記事では、特発性てんかんの種類ごとの症状から最新の治療法、そしてご家族ができるサポートまでを詳しく解説します。正しい知識が、不安を乗り越えるための大きな力になります。
特発性てんかんの概要
特発性てんかんは、脳を調べる検査で原因が見つからないてんかんです。 「特発性」とは、原因がはっきりとは分からない、という意味です。 脳のCTやMRIなどの画像検査を受けても、特に傷や病気は見当たりません。 それなのに、てんかんの発作が繰り返し起きてしまう状態を指します。
そもそも「てんかん」とは、脳の神経細胞が関係する病気です。 私たちの脳は、電気信号で情報をやりとりして体を動かしています。 この電気信号のバランスが一時的に崩れて、脳が過剰に興奮します。 その結果、けいや意識が遠のくなどの「発作」が起こるのです。
特発性てんかんには、主に次のような特徴があります。
- 原因 脳の画像検査では、はっきりとした異常が見つかりません。
- 発症しやすい年齢 主に子どもから思春期にかけての若い世代に多く見られます。
- 病気の経過 成長するにつれて、発作が自然に治まることも少なくありません。
この病気は決して珍しいものではなく、有病率は100人から300人に1人です。 ご自身やご家族が診断されても、まずは病気を正しく知ることが大切です。
特発性てんかんの種類
特発性てんかんは、ひとつの病気ではなく、いくつかの種類に分類されます。 発症する年齢や、どのような発作が起こるかによって分けられます。 脳全体が一度に興奮する「特発性全般てんかん」が代表的なグループです。
このグループには、主に以下の4つの種類(症候群)があります。 どの種類かによって治療方針も変わるため、正しい診断がとても大切です。
- 小児欠神(しょうにけっしん)てんかん 主に幼児期から学童期のお子さんに多く見られるタイプです。 数十秒ほど、突然ぼーっとして意識が遠のく発作が特徴です。 会話が急に途切れたり、呼びかけに反応しなくなったりします。
- 若年(じゃくねん)ミオクロニーてんかん 思春期ごろに発症することが多いタイプになります。 朝起きたときなどに、腕や肩が自分の意思とは無関係にピクンと動きます。 この動きを「ミオクロニー発作」と呼びます。
- 若年欠神(じゃくねんけっしん)てんかん こちらも思春期ごろに発症することが多いです。 小児欠神てんかんと同じように意識が遠のく発作が起こります。 しかし、発作の回数は比較的少ない傾向にあるのが特徴です。
- 覚醒時大発作(かくせいじだいほっさ)てんかん 思春期以降に多く、朝起きた直後などに発作が起きやすいです。 意識を失い、全身が硬直してけいれんする「大発作」が主になります。 これは「全般強直間代発作(ぜんしんきょうちょくかんだいほっさ)」とも呼ばれます。
このほかにも、まぶたがピクピクする発作を伴うタイプなども存在します。 どの種類のてんかんかによって治療薬の選び方が変わるため、正確な診断がとても重要です。
特発性てんかんの原因
脳の画像検査で異常が見つからないのに、なぜ発作が起きてしまうのでしょうか。 現在の研究では、脳の神経細胞がもつ「個性」が関係すると考えられています。 これは目に見える傷などではなく、脳の働き方の特徴が原因となるのです。
主な原因として、次の2つが挙げられます。
- 神経細胞の性質 脳の中では、電気信号を出す「アクセル」役の神経と、 それを抑える「ブレーキ」役の神経がバランスを取っています。 特発性てんかんでは、この「アクセル」が少し敏感な状態です。 健康な人なら反応しない刺激でも、脳が過剰に興奮してしまいます。
- 遺伝的な要因 神経細胞が興奮しやすい背景には、遺伝的な要因が関係します。 これは「生まれ持った体質」のようなものと考えてください。 しかし、親がてんかんだからといって、必ず遺伝するわけではありません。 あくまで「発作を起こしやすい体質」が受け継がれる可能性がある、ということです。
このように、特発性てんかんは脳の機能的な特徴によって起こります。 脳に目に見える病気があるわけではないことを、まずご理解ください。
特発性てんかんの症状
特発性てんかんの症状は、脳のどこで電気が乱れるかによって変わります。 脳全体で一度に乱れるか、脳の一部から乱れが始まるかの違いです。 この違いによって、現れる発作の様子は大きく2つに分けられます。
脳全体が興奮する「全般てんかん」の症状
脳全体が同時に興奮してしまうタイプで、特に子どもや若い世代に多いです。 発作が起きている間は、意識がなくなってしまうことが特徴になります。
- 欠神(けっしん)発作 突然、会話やしていることが止まり、数十秒ほどぼーっとします。 周りから呼びかけても反応がなく、ご本人には発作中の記憶がありません。 そのため、授業に集中していないなどと、誤解されてしまうこともあります。 手足が大きくガクガクと震えるような、けいれんは少ない傾向です。
脳の一部が興奮する「部分てんかん」の症状
脳の一部分から電気的な興奮が始まるタイプです。 発作が起きているときの意識の状態によって、症状が異なります。
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意識の状態 |
主な症状の例 |
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意識がある場合 |
・手足がしびれる、ピクピク動く ・チカチカした光が見える ・急に汗をかく、顔が赤くなる |
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意識がない (もうろうとする)場合 |
・口をもごもごさせる ・意味もなく服を触り続ける ・周りをキョロキョロと見回す |
意識がない場合に見られる無意識の行動を「自動症」と呼びます。 ご本人は発作中のことを覚えていないため、周りの方の観察が大切です。 発作の様子を記録しておくと、診断の際にとても役立ちます。
特発性てんかんの検査・診断
特発性てんかんの診断は、パズルを組み立てるように丁寧に進められます。 患者さんやご家族からのお話と、いくつかの専門的な検査を組み合わせます。 いつ、どんな発作が起きたかなどの詳しい情報が、診断の大きな助けになります。
医師はまず、発作が起きたときの状況を詳しくお伺いします(問診)。 もし可能であれば、発作の様子を動画で撮影しておくと非常に役立ちます。 正確な診断のために、主に次のような検査を組み合わせて行います。
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検査の種類 |
検査の目的と内容 |
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脳波検査 |
頭に小さな電極を貼り、脳の電気活動を記録する検査です。 てんかん診断の中心となり、特有の異常な波形がないかを探します。 検査中に眠ったり、光の点滅を見たりして脳波の変化を調べます。 |
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画像検査 (MRI・CT) |
脳の形を詳しく見る「脳の写真撮影」のような検査です。 特発性てんかんは、脳に目に見える異常がないことが特徴です。 そのため、この検査で異常がないことを確認することが重要になります。 |
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血液検査など |
全身の状態を把握し、てんかん発作に似た症状を起こす他の病気がないか調べます。 例えば、血糖値の異常などが隠れていないかなどを確認する目的があります。 |
これらの問診や検査の結果を、医師が総合的に判断して診断を下します。 一つの検査だけで決めるのではなく、多角的な視点で慎重に評価します。 必要に応じて、脳の血流などを調べる特殊な検査を行うこともあります。
特発性てんかんの治療
特発性てんかんの治療目標は、発作を上手にコントロールすることです。 そして、日常生活への影響をできるだけ少なくすることを目指します。 治療の基本は、お薬を毎日飲む「薬物療法」になります。
治療の主役となる「お薬(抗てんかん薬)」
治療の中心は、脳の過剰な興奮を抑える「抗てんかん薬」です。 お薬は、てんかんの種類や発作の症状、年齢などを考えて選びます。 医師が一人ひとりに合ったものを、慎重に判断して処方します。
適切な抗てんかん薬で治療すれば、約8割の方が発作を抑えられます。 しかし、発作が起きていないからと、ご自身の判断でお薬をやめてはいけません。 自己判断で中止すると、再び発作が起きる可能性が非常に高いです。
特に、若年ミオクロニーてんかんという種類では注意が必要です。 お薬をやめた後の再発率は78%にのぼる、という報告もあります。 これは、10人中8人近くが再び発作に悩まされるということです。
お薬と一緒に行う「生活での工夫」
お薬とあわせて、発作のきっかけを避ける生活習慣も大切です。 脳が興奮しやすくなる「スイッチ」を押さないように心がけましょう。
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発作の主なきっかけ |
具体的な対策 |
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睡眠不足 |
夜更かしを避け、毎日決まった時間に寝るように心がけます。 |
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強い光の刺激 |
テレビゲームやスマートフォンの画面のチカチカした光などです。 |
他のタイプのてんかんでは手術を考えることもあります。 しかし、特発性てんかんは脳に目に見える原因があるわけではありません。 そのため、基本的に手術が行われることはありません。













