お子さんが突然38度以上の高熱を出し、意識をなくしてけいれんを起こす姿を見たら、保護者の方なら心臓が止まるほど驚き、パニックになってしまうことでしょう。しかし、それは「熱性けいれん」と呼ばれる症状で、決して珍しいことではありません。
実は、熱性けいれんは日本の子どもの約8%、つまり100人に8人が経験する、乳幼児期には最も多い神経系の病気の一つです。多くは成長とともに自然に起こらなくなり、後遺症の心配もほとんどありません。
とはいえ、中には注意深く観察が必要なケースも存在します。いざという時に冷静にお子さんの安全を守れるよう、この記事では熱性けいれんの種類や原因、ご家庭での正しい対処法までを詳しく解説します。ご家族の安心のために、ぜひご一読ください。
熱性けいれんの概要
お子さんが急に高い熱を出し、けいれんを起こしてしまうと、保護者の方は心臓が止まるほど驚き、不安に感じることでしょう。しかし、これは「熱性けいれん」とよばれるもので、決して珍しいことではありません。
熱性けいれんは、主に生後6か月から5歳くらいのお子さんが、38度以上の熱を出したときに起こるけいれん発作です。脳そのものの病気が原因ではなく、急な発熱に発達途中の脳がうまく対応できずに起こる、一時的な症状と考えられています。これは、お子さんがかかる神経の病気の中で最も多いものの一つです。
熱性けいれんには、以下のような特徴があります。
- 起こりやすい年齢 生後6か月から5歳頃に多くみられます。
- 経験する子の割合 日本の子どもの約8%、つまり100人に8人くらいが経験します。
- 繰り返す可能性 約30%、つまり3人に1人くらいのお子さんが繰り返すことがあります。
- その後の経過 年齢が上がるにつれて起こらなくなり、6歳頃にはほとんどみられなくなります。
多くの場合、けいれんは数分でおさまり、後遺症が残る心配もありません。将来てんかんへ移行する割合は3〜5%ほどと報告されていますが、ほとんどの場合は心配いりません。
熱性けいれんはお子さんの成長過程で多くみられる症状だからこそ、保護者の方が正しい知識を持ち、いざという時に落ち着いて対応することが、お子さんの安全とご家族の安心につながります。
熱性けいれんの種類
熱性けいれんは、けいれんの様子によって大きく2つのタイプに分けられます。それが「単純型(たんじゅんがた)」と「複雑型(ふくざつがた)」です。熱性けいれん全体の約8割は、後遺症の心配がほとんどない単純型にあたります。
単純型熱性けいれん
ほとんどの熱性けいれんが、この単純型です。以下の3つの特徴すべてに当てはまるものを指します。
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特徴
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説明
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発作の時間
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15分以内でおさまります。
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けいれんの様子
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体の左右対称に、全身がガクガクと震えます。
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くり返しの有無
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1回の発熱の期間に、けいれんは1回だけです。
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単純型は、その後の経過が良いことがほとんどです。そのため、けいれん予防の薬は副作用の可能性も考え、基本的には使いません。これは、熱性けいれんの良性な経過をふまえた世界的な考え方でもあります。
複雑型熱性けいれん
一方で、以下のチェックリストのうち、1つでも当てはまる場合は複雑型と呼ばれ、より注意深い観察が必要になります。
- けいれんが15分以上と長く続く
- 体の片側だけなど、部分的なけいれんが見られる
- 1回の発熱期間(24時間以内)に、けいれんを何度もくり返す
複雑型の場合は、脳炎や髄膜炎など、他の病気が隠れていないか調べるために、詳しい検査を行うことがあります。
どちらのタイプかを判断するためには、保護者の方が落ち着いてお子さんの様子を観察し、医師に正確に伝えることが非常に重要です。この情報が、お子さんのための適切な診断と治療につながります。
熱性けいれんの原因
熱性けいれんが起こる一番のきっかけは、その名の通り「発熱」です。 特にお子さんの体温が38℃以上に急上昇するときに起こりやすいです。 これは、生後6か月から5歳頃のお子さんの脳がまだ発達の途中だからです。 大人の脳に比べて、急な体温の変化といった刺激に敏感に反応します。
発熱を引き起こす病気はさまざまですが、主にウイルスや細菌の感染症です。
- 熱性けいれんの主なきっかけ 風邪、インフルエンザ、突発性発疹、中耳炎、咽頭炎など
また、熱性けいれんには遺伝的な要因も関係があると考えられています。 ご両親のどちらか、または両方が子どもの頃に経験している場合、 お子さんが発症する可能性は2〜3倍高くなるとの報告もあります。
さらに、発症には様々な要因が関わっていることもわかってきました。 例えば、完全母乳で育ったお子さんでは、熱性けいれんの発生が 少ない可能性を示唆する研究結果があります。
ごくまれですが、ソトス(Sotos)症候群のような特定の病気があるお子さんで、 熱性けいれんが起こりやすいことも報告されています。 ある研究では、この病気のお子さんの約26%に熱性けいれんがみられました。 このように、熱性けいれんはお子さんの体質やその時の状況が、 複雑にからみ合って発症すると考えられています。
熱性けいれんの症状
お子さんが突然38℃以上の熱を出し、けいれんを起こす姿は、保護者の方にとって本当に衝撃的な光景だと思います。どのような症状が出るかを知っておくことが、いざという時の冷静な対応につながります。
熱性けいれんの代表的な症状は、突然意識をなくすことです。そして、体が硬く突っ張る「強直性(きょうちょくせい)けいれん」や、手足がガクガクと震える「間代性(かんだいせい)けいれん」が起こります。
お子さんの様子を観察する際の参考に、以下のチェックリストをご確認ください。私たち医師も、これらの情報を元に診断を行います。
- 意識がなくなる 呼びかけたり、体をゆすったりしても反応がありません。
- 目の動きがおかしい 白目をむいたり、視線が合わず一点をじっと見つめたりします。
- 顔色が悪くなる 呼吸が一時的に浅くなるため、唇や顔が紫色になることがあります(チアノーゼ)。
- 体が硬くなる 全身に力が入り、弓なりに反り返るように突っ張ります。
- 手足が震える 自分の意思とは関係なく、手足がガクガク、ピクピクと動きます。
けいれん中はおしっこやうんちをもらしてしまうこともあります。けいれんがおさまった後は、ぼーっとしたり、そのまま眠ってしまったりすることがほとんどです。
ほとんどの熱性けいれんは、お子さんの成長過程で起こる一時的なものです。しかし、ごくまれにソトス(Sotos)症候群のような特定の病気が背景にあることもあります。ある研究では、この病気のお子さんの約26%に熱性けいれんが見られたと報告されています。気になる症状があれば、医師に相談することが大切です。
熱性けいれんの検査・診断
熱性けいれんの診断は、特別な機械を使うことから始まるわけではありません。 何よりも大切なのは、保護者の方からいただく「けいれんの時の情報」です。 お子さんの様子を一番近くで見ていた方の言葉が、診断の最大のてがかりになります。
診察では、お子さんの状態を正しく知るために、いくつか質問をします。 私たち医師が、診断のために特に知りたいのは、以下の点です。 落ち着いて正確に伝えていただくことが、適切な診断につながります。
▼ 診察でお聞きするチェックリスト
- けいれんの時間 何分くらい続きましたか?(15分が単純型と複雑型を分ける目安です)
- けいれんの様子 全身でしたか?体の片側だけでしたか?(左右非対称だと複雑型を疑います)
- 意識や目の状態 白目をむいていましたか?視線は合いましたか?
- 顔色や唇の色 紫色になっていませんでしたか?(チアノーゼの有無)
- ご家族の経験 ご両親やご兄弟に、子どもの頃に熱性けいれんを経験した方はいますか?
多くの場合、けいれんが短時間でおさまる「単純型熱性けいれん」であれば、特別な検査は必要ありません。 しかし、髄膜炎や脳炎といった他の病気が隠れていないか調べることも重要です。
国際的な指針においても、CTやMRIのような脳の画像検査や髄液検査は、全てのケースで行うわけではありません。 医師が必要と判断した場合に限定して行うことがすすめられています。 これは、お子さんの体への負担をできるだけ少なくするための世界共通の考え方です。 標準化された管理と、保護者の方への丁寧な説明がとても大切だとされています。
必要に応じて、以下のような検査を検討します。
- 血液検査 発熱の原因や、低血糖などけいれんを起こす他の原因がないか調べます。
- 脳波検査 けいれんを繰り返す場合などに、てんかんとの区別をするために行います。
- 髄液検査 髄膜炎などが強く疑われる時に、背中から特別な液体を採って調べます。
どの検査を行うかは、お子さん一人ひとりの状態に合わせて医師が総合的に判断しますので、ご安心ください。
熱性けいれんの治療
熱性けいれんの多くは、数分でおさまるため特別な治療はいりません。 しかし、けいれんが5分以上続く場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 病院では、まずけいれんを止めるためのお手当てを行います。
けいれんを抑えるお薬(抗けいれん薬)をおしりから入れたり、 点滴で血管から直接入れたりして、発作を落ち着かせます。 けいれん中は呼吸が浅くなることもあるため、酸素のマスクを使うこともあります。
「けいれんが怖いから、毎日お薬を飲んで予防したい」と思うかもしれません。 しかし、熱性けいれんの多くは後遺症なく自然によくなります。 そのため、毎日お薬を飲むことによる副作用のリスクも考え、 予防のお薬は基本的には使いません。
これは、日本だけでなく海外の多くの国の指針でも推奨されている考え方です。 熱性けいれんが良い経過をたどることが多いという事実に基づいています。 ただし、けいれんを繰り返す可能性が高い場合などには、 発熱した時にだけ使う、けいれん予防の座薬をお渡しすることもあります。 治療方針はお子さん一人ひとりの状態に合わせて医師が判断しますので、 不安な点は遠慮なく相談してください。