長引く咳やたくさんの痰。「いつものことだ」と諦めていたり、「ただの風邪のぶり返し」だと思ったりしていませんか。そのつらい症状は、空気の通り道である気管支が壊れて広がり、元に戻らなくなってしまう「気管支拡張症」が原因かもしれません。
この病気は、気管支にたまった痰が原因で感染を繰り返し、さらに気管支の破壊が進むという悪循環に陥りやすいのが特徴です。過去の肺炎や百日咳だけでなく、最近では新型コロナウイルス感染症がきっかけで発症する可能性も指摘されています。
この記事では、気管支拡張症の詳しい原因や症状、そしてご自身の状態に合わせた治療法について詳しく解説します。病気と正しく向き合い、つらい症状の進行を食い止めるための第一歩として、ぜひご一読ください。
気管支拡張症の概要
気管支拡張症とは、空気の通り道である気管支が傷つき、広がったまま元に戻らなくなってしまう病気です。一度壊れた気管支の壁は、本来の働きを失ってしまいます。
正常な気管支と壊れた気管支では、次のような違いがあります。
- 浄化作用の低下 気管支の壁が壊れると、痰を外へ送り出す力が弱まります。そのため、気管支の中に汚れた痰がたまりやすくなります。
- 感染を繰り返す たまった痰は、細菌にとって絶好のすみかになります。その結果、気管支炎や肺炎などの感染症を繰り返しやすくなります。
- 出血のリスク 広がった部分の血管はもろく、切れやすくなっています。そのため、痰に血が混じる血痰や、咳と一緒に血が出る喀血(かっけつ)が起こることがあります。
このように感染と炎症を繰り返すことで、気管支の破壊がさらに進み、病気が悪化するという悪循環に陥りやすいのが特徴です。
治療が長期間にわたることも多く、患者さんやご家族の負担は少なくありません。海外のある研究では、この病気のお子さんが年間で約12日学校を休んでいたという報告もあります。
また、症状が悪化して入院が必要になると、医療費が高くなる傾向が指摘されています。気管支拡張症は、ご本人だけでなくご家族の生活にも影響を与えることがある病気なのです。
気管支拡張症の種類
気管支拡張症は、原因によって大きく2つのタイプに分けられます。 生まれつきの要因で起こるものと、生まれた後に発症するものです。
1. 生まれつきの気管支拡張症(先天性) 生まれながらに気管支の壁がもろかったり、 汚れた痰を体の外に出す機能が弱かったりすることが原因です。
2. 生まれた後になる気管支拡張症(後天性) 気管支拡張症のほとんどが、この後天性のタイプです。 生まれた後に、次のような病気がきっかけとなり発症します。
- 過去にかかった重い感染症 肺炎や結核、子どもの頃にかかった百日咳などが、 気管支の壁にダメージを与えて原因となることがあります。
- 非結核性抗酸菌症(ひけっかくせいこうさんきんしょう) 結核とは違う種類の菌が肺にゆっくりと感染し、 長期間にわたって炎症を起こす病気です。
- アレルギー反応 特定のカビ(アスペルギルスなど)に対するアレルギーが、 気管支に炎症を引き起こすことがあります。
- 免疫の病気 関節リウマチなど、自分の体を誤って攻撃してしまう病気に伴い、 気管支にも炎症が及ぶことがあります。
感染を繰り返して症状が悪化すると、入院が必要になることがあります。 海外の研究では、入院費が医療費の大部分を占めると報告されています。 また、この病気のお子さんは、年間で約12日学校を休んでいたというデータもあります。 ご自身の状態を正しく知り、適切な治療につなげることが大切です。
気管支拡張症の原因
気管支拡張症が起こる原因は一つではありません。 生まれつきの体質が関係する場合もありますが、 多くは生まれた後に経験した病気がきっかけとなります。
感染症がきっかけとなる場合
最も多い原因は、過去にかかった呼吸器の感染症です。 特に、子どもの頃にかかった重い肺炎や百日咳、 はしか(麻疹)などが引き金になることがあります。
これらの感染症を繰り返すと、気管支に強い炎症が起こります。 炎症で気管支の壁はダメージを受け、弾力を失ってしまいます。 そして、じわじわと広がり、元に戻らなくなってしまうのです。
一度広がった気管支は、汚れた痰を外に出す力が弱まります。 たまった痰は細菌の温床となり、さらに感染を繰り返します。 この悪循環が、病気をさらに悪化させる原因となります。
最近の研究では、新型コロナウイルス感染症も原因になりうると報告されています。 感染後に息切れが続く患者さんの肺をCT画像で調べたところ、 気管支拡張症が見つかるケースがあったのです。
その他の原因
感染症以外にも、次のような病気や状態が原因となることがあります。
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原因となる病気や状態
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アレルギー反応<br> カビの一種(アスペルギルスなど)へのアレルギーで、<br> 気管支に炎症が起きてしまうことがあります。
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免疫の病気<br> 関節リウマチなど、自分の体を攻撃してしまう病気が、<br> 気管支に影響を及ぼすことがあります。
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気道の閉塞<br> 誤って吸い込んだ異物や腫瘍などが気道をふさぎ、<br> その先の気管支が広がってしまうことがあります。
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また、年齢を重ねることも発症に関係すると考えられています。 ある研究では、年齢が上がるほど肺のCT画像で異常が見つかりやすくなることが示唆されています。 長引く咳や痰など気になる症状があれば、原因を特定するためにも一度専門医に相談することが大切です。
気管支拡張症の症状
気管支拡張症で現れる症状は、人によってさまざまです。 自覚症状がほとんどない方もいれば、つらい症状に悩む方もいます。 ご自身の状態を知るため、代表的な症状を確認してみましょう。
- 長引く咳とたくさんの痰(たん) 気管支のお掃除機能が弱まるため、汚れた痰がたまりやすくなります。 体をきれいにしようと、痰を外に出すために咳が長く続きます。 細菌に感染すると、痰が黄色や緑色になることがあります。
- 息切れや呼吸の苦しさ 病気が進み肺の働きが落ちると、息苦しさを感じやすくなります。 階段を上るなど、少しの動きでも息切れすることがあります。 ある研究では、鍼(はり)治療が呼吸困難の症状を和らげ、 生活の質を高める可能性があると報告されています。
- 痰に血が混じる、血を吐く 広がった気管支の血管は傷つきやすく、咳の刺激で出血します。 痰に血が混じる「血痰(けったん)」や、 血そのものを吐く「喀血(かっけつ)」も特徴的な症状です。
- 繰り返す感染症と発熱 気管支にたまった痰は、細菌が繁殖しやすい環境です。 そのため、気管支炎や肺炎などの感染症を繰り返しやすくなります。 感染すると熱が出たり、痰の量が普段より増えたりします。
これらの症状は、一つだけではなく複数が同時に現れることもあります。 気になる症状が続く場合は、早めに専門の医師へご相談ください。
気管支拡張症の検査・診断
長引く咳やたくさんの痰といった症状から、 気管支拡張症が疑われる場合、いくつかの検査を行います。 診断は一つの検査だけで決まるわけではありません。 複数の検査結果をパズルのように組み合わせて、 総合的に判断することが非常に大切です。
体の中をのぞく画像検査
気管支の状態を直接見るための大切な検査です。 特にCT検査は、診断の決め手となることが多いです。
- 胸部X線(レントゲン)検査 健康診断などで病気が見つかる「きっかけ」になります。 気管支の壁が厚くなっている様子などが写ることがあります。
- 胸部CT検査 気管支の状態を最も詳しく調べられる重要な検査です。 体を輪切りにした鮮明な画像で、気管支の広がりをみます。 近年の研究では、新型コロナ感染後に息切れが続く場合、 呼吸機能検査で異常がなくてもCTで異常が見つかると報告されています。 このようにCTは、症状の本当の原因を探るのにとても役立ちます。
肺の働きや感染の原因を探る検査
画像だけでなく、肺の機能や感染の原因も詳しく調べます。
- 呼吸機能検査 「肺の体力測定」のような検査で、肺活量などを調べます。 思いきり息を吸ったり吐いたりして、肺の働きを評価します。
- 喀痰(かくたん)検査 痰(たん)の中に悪い細菌がいないかを調べる検査です。 感染を起こしている菌の種類を特定することで、 その菌に最も効果のあるお薬を選ぶことができます。
これらの検査で診断がついた後も、治療は長く続くことがあります。 治療法も日々進歩しており、体全体のことを考えることが重要です。 例えば、新しい治療薬の研究では、薬の効果だけでなく、 口の中の状態など、他の部分に影響がないかも慎重に調べられます。 正確な診断は、その後の適切な治療への第一歩なのです。
気管支拡張症の治療
気管支拡張症の治療は、一度広がった気管支を元に戻すことではありません。 主な目的は、つらい症状を和らげ、病気の進行をゆるやかにすることです。 気管支にたまった汚れた痰を体の外へ出し、気道をきれいに保つことが基本です。
治療法は一つではなく、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、 お薬による治療と、お薬以外のケアを組み合わせて行います。
お薬による治療
お薬を上手に使い、症状のコントロールや感染の予防を目指します。
- 去痰薬(きょたんやく) ネバネバして出しにくい痰をサラサラにして、咳を楽にします。
- 気管支拡張薬 息苦しさの原因となる、狭くなった気管支を広げて呼吸を楽にします。
- 抗菌薬(抗生物質) 細菌による感染が起きたときや、感染を繰り返さないために使います。 気管支の炎症を抑える目的で、少ない量を長く飲み続けることもあります。
- 止血剤 咳の刺激で血管が傷つき、痰に血が混じる(血痰)ときなどに使います。
お薬以外の治療
お薬とあわせて、ご自身で行う日々のケアや専門的な処置も大切です。 病気と上手に付き合っていくための重要な治療法です。
- 呼吸リハビリテーション 重力を利用して痰を出しやすくする体の向き(体位排痰法)や、 楽に息をするための呼吸法(口すぼめ呼吸)などを練習します。
- その他の治療 血液の中の酸素が少なくなった場合に自宅で酸素を吸入する「酸素療法」や、 血痰が止まらない場合に血管をつめる処置などを行うことがあります。
現在、気管支のしつこい炎症に関わる物質の働きを抑える、 新しいタイプの治療薬の開発も世界中で進められています。 ある研究では、開発中の薬が歯周病の状態に悪い影響を与えないか、 という点も慎重に調べられました。 その結果、新しい薬は歯周状態に影響を与えないことが示唆されています。 安心して治療を受けるため、このような多角的な安全性の確認も行われているのです。 どのような治療を受けるにしても、感染予防の基本として、 お口の中を清潔に保つ習慣は非常に大切です。