お子さんの長引く咳や、夜中に聞こえる「ゼーゼー」という呼吸音。「ただの風邪かな?」と思っていても、実は気管支喘息のサインかもしれません。小児喘息は決して珍しい病気ではなく、多くのお子さんが小学校に入学する頃までに何らかの症状を経験するといわれています。
特に、小児喘息の約9割はアレルギーが関係しており、赤ちゃんの頃のアトピー性皮膚炎から喘息へと移行する「アトピーマーチ」というケースも少なくありません。しかし、原因はアレルギーだけでなく、風邪や運動、気温の変化といった意外なものが引き金になることもあります。
この記事では、お子さんの喘息の原因や種類、ご家庭でできる環境整備から最新の治療法までを詳しく解説します。正しい知識で不安を解消し、お子さんが毎日を元気に過ごせるよう、一緒に学んでいきましょう。
気管支喘息(こども)の概要
気管支喘息は、息をするときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と音が鳴り、呼吸が苦しくなる発作を繰り返す病気です。
この発作は、空気の通り道である気管支が、常に軽い炎症を起こしているために生じます。炎症で気道が敏感になり、風邪やホコリ、気温の変化などのささいなきっかけで、気道がむくんで狭くなってしまうのです。
多くの場合、2〜3歳ごろに初めての発作を経験します。そして、小学校に入学する頃までには、ほとんどのお子さんが何らかの症状を経験するといわれています。
また、気管支喘息は他のアレルギー疾患と深く関わっています。特に、赤ちゃんの頃にアトピー性皮膚炎だったお子さんが、成長とともに気管支喘息を発症する流れは「アトピーマーチ」と呼ばれています。
この背景には、以下のような共通のメカニズムがあると考えられています。
- 皮膚のバリア機能の問題 お肌の守る力が弱く、アレルギーの原因物質が体に入りやすい状態です。
- 2型炎症 アレルギー反応を起こしやすい共通の体質のことです。
これらの要因から、アトピー性皮膚炎と喘息は関連して発症することが多いのです。
きちんと治療を続ければ、多くは成長とともに症状が出なくなります。しかし、一部は大人になっても治療が必要になることがあります。お子さんの健やかな学校生活のためにも、症状をしっかりコントロールすることが大切です。
気管支喘息(こども)の種類
お子さんの気管支喘息は、発作を引き起こす原因によって、大きく2つのタイプに分けられます。
原因を知ることは、お子さんに合った治療法を見つける大切な一歩です。どちらのタイプか、あるいは両方の特徴を持つのかを理解しましょう。
アトピー型喘息
アレルギー反応が原因で発作が起きるタイプです。小児喘息のお子さんのうち、約9割がこのタイプにあたるといわれています。
特定の物質(アレルゲン)に体が過剰に反応することで、気管支の炎症が起こります。
このタイプのお子さんは、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎など、他のアレルギー疾患も持っていることが多いです。
赤ちゃんの頃のアトピー性皮膚炎が、成長とともに喘息へとつながる流れは「アトピーマーチ」と呼ばれています。
これは、皮膚の守る力(バリア機能)が弱いことが関係します。アレルゲンが体内に入りやすくなり、アレルギー反応を起こしやすい「2型炎症」という共通の体質が作られてしまうのです。
血液検査などで、どのアレルゲンに反応しているか調べることができます。
非アトピー型喘息
アレルギー以外の、さまざまな刺激がきっかけで起こるタイプです。アレルギー検査をしても、はっきりとした原因が見つからないこともあります。
主なきっかけは以下のとおりです。
- ウイルス感染 風邪をひいた後に、咳が長引いて発作につながることがあります。
- 運動 運動中に冷たく乾いた空気を吸い込むことで、発作が誘発されます。
- 環境の変化 タバコの煙、冷たい空気、季節の変わり目の気温差、PM2.5なども刺激になります。
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種類
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主な原因
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特徴
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アトピー型
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アレルゲン(ダニ、ハウスダストなど)
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・他のアレルギー疾患を合併しやすい<br>・皮膚のバリア機能低下や「2型炎症」が関係
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非アトピー型
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ウイルス感染、運動、タバコの煙など
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・アレルギー検査で原因が特定できないことがある
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気管支喘息(こども)の原因
お子さんの気管支喘息は、一つの原因だけで起こるわけではありません。 お子さん自身の体質と、まわりの環境という要因が重なり発症します。
原因は大きく、以下の2つに分けられます。
1. 体質的な要因
お子さん自身がもともと持っている、体の性質に関わる要因です。
- アレルギー体質 ご本人やご家族に、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などがある場合です。喘息のお子さんの多くに、何らかのアレルギー体質がみられます。
- 気道の過敏性 気道が刺激にとても敏感な体質のことです。健康な子なら平気なホコリや冷たい空気でも、咳が出やすくなります。
- 生まれてすぐの腸内環境 最近の研究では、赤ちゃんの頃の腸内細菌のバランスも関係すると考えられています。帝王切開での出産や、生後早い時期の抗生物質の使用が、腸内環境に影響し、喘息の発症リスクと関連する可能性が示唆されています。
2. 環境的な要因
喘息の発作を引き起こす、身のまわりのきっかけです。
- アレルゲン(アレルギーの原因物質) ダニ、ハウスダスト、ペットの毛やフケ、カビ、花粉などです。
- アレルゲン以外の刺激
- 風邪などのウイルス感染
- 運動、大笑いや大泣き
- 気温や気圧の変化(季節の変わり目や台風)
- タバコの煙(受動喫煙)、花火の煙
- 疲れやストレス
また、お母さんのお腹の中にいる間の栄養も、お子さんの呼吸器の健康に関係するかもしれません。 妊娠中にお母さんがビタミンCやビタミンEを十分に摂ることで、赤ちゃんの喘鳴のリスクが低くなる可能性がある、という研究報告もあります。
これらの様々な要因が、気道の「慢性的な炎症」につながるのです。
気管支喘息(こども)の症状
お子さんの気管支喘息のサインは、咳だけではありません。 いくつかの特徴的な症状を知ることで、早期発見につながります。
代表的なサインは、息をするたびに聞こえる音です。 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)が有名です。 これは、炎症で狭くなった気道を空気が通る時に鳴る音です。
また、呼吸の仕方に変化があらわれます。 息を吸うときよりも、吐き出すときに時間がかかり苦しそうです。 ひどくなると、以下のような見た目のサインも出てきます。
- 肩で息をする 肩を上下させて、一生懸命に呼吸しようとします。
- 胸がへこむ 息を吸うときに、のどの下や胸がペコペコとへこみます。
特に、赤ちゃんの頃にアトピー性皮膚炎だったお子さんは、 注意深く様子を見る必要があります。 皮膚のかゆみから、喘息のぜーぜーとした呼吸へ症状が進むのは、 「アトピーマーチ」と呼ばれるアレルギーの進行パターンです。 気になる呼吸のサインがあれば、早めに受診することが大切です。
発作の強さには段階があり、お子さんの状態を知る目安になります。
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発作の強さ
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状態の目安
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小発作
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・ゼーゼーしていても、会話ができる。<br>・比較的元気に遊び、食事もとれる。
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中発作
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・息苦しさで、食事や睡眠が十分にとれない。<br>・横になるのを嫌がり、座りたがる。
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大発作
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・呼吸がとても苦しく、動いたり話したりできない。<br>・唇や顔色が悪くなる(チアノーゼ)。
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大発作の場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。 また、小さな子どもでは喘鳴がなく、長引く咳が唯一の症状のこともあります。 気になる症状があれば、自己判断せず早めに専門医へご相談ください。
気管支喘息(こども)の検査・診断
お子さんの咳や「ゼーゼー」という呼吸が本当に喘息なのか、また、どのくらい気道に炎症があるのかを詳しく調べるために、いくつかの検査を行います。
まずは、どんな時に症状が出るかなど、詳しいお話をおうかがいします。そして、聴診器で胸の音を聞き、「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)がないかを確認します。これらは診断の第一歩です。
必要に応じて、次のような詳しい検査を組み合わせて、診断を確定させていきます。
- 呼吸機能検査 機械に向かって思いきり息を吐き、その勢いや量を測る検査です。 空気の通り道である気道が、どのくらい狭くなっているか客観的に評価できます。
- アレルギー検査 血液検査で、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を調べます。 ダニやハウスダストなど、何にお子さんが反応するのかがわかります。
- 呼気NO(一酸化窒素)検査 吐いた息に含まれる一酸化窒素の濃度を測る、痛みのない検査です。 気道にアレルギー性の炎症があると数値が高くなるため、炎症の程度がわかります。
- 血中酸素飽和度測定 指先にクリップのような機械をつけ、血液中の酸素が足りているか調べます。 発作が起きている時の重症度を判断する上で、とても大切な情報になります。
これらの検査で、喘息のタイプや炎症の程度が詳しくわかります。特に血液検査では、「好酸球」というアレルギー反応に関わる細胞の数を調べることが重要です。
好酸球が多いタイプの喘息は「好酸球性喘息」と呼ばれ、近年、このタイプに合わせたお薬の研究が世界中で進んでいます。年齢や人種、体重によってお薬の効き方が少し違うこともありますが、多くのお子さんで同じように効果が期待できることもわかってきました。
このように、検査結果をパズルのピースのように組み合わせることで、お子さん一人ひとりに合った最適な治療法を見つけていきます。
気管支喘息(こども)の治療
お子さんの気管支喘息の治療目標は、とてもシンプルです。 それは、発作が起きない状態を長く保ち、元気に毎日を過ごすことです。 お友達と同じように、思いっきり遊び、学校生活を楽しめるようにします。
治療は、大きく2つの柱で進めていきます。
- 発作を予防する「守りの治療」(長期管理)
- 発作を鎮める「攻めの治療」(発作時治療)
守りの治療(長期管理)
発作がない時でも、気道では目に見えない炎症が続いています。 この「気道の火事」をしっかり消し、発作が起きにくい状態にする治療です。 治療の中心は、お薬を毎日続けることです。
- 吸入ステロイド薬 気道の炎症を直接抑える、最も基本となるお薬です。
- ロイコトリエン受容体拮抗薬 アレルギー反応をブロックする飲み薬です。
症状がないとつい忘れがちですが、自己判断でやめないことが大切です。 また、ダニなどを減らすお部屋の掃除や、体力づくりの運動も重要です。
攻めの治療(発作時治療)
もし発作が起きてしまったら、すぐに気道を広げるお薬を使います。 狭くなった空気の通り道を広げ、苦しい呼吸を楽にする治療です。 主に「気管支拡張薬」という吸入薬を使います。
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治療の種類
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主な目的
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使うタイミング
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守りの治療(長期管理)
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気道の炎症を抑え、発作を起こしにくくする
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症状がない時でも毎日
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攻めの治療(発作時)
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狭くなった気道を広げ、呼吸を楽にする
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発作が起きた時
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基本的な治療でコントロールが難しい重症の喘息もあります。 その場合、12歳以上のお子さんには特別な注射薬も選択肢になります。 例えば「ベンラリズマブ」というお薬です。
これはアレルギーに関わる「好酸球」が多いタイプの喘息に有効です。 最近の研究では、人種や体重が違っても効果が期待できると報告されています。
インターネットなどで、ビタミンDが良いという情報を見るかもしれません。 しかし、現時点では、子どもの喘息に対する有効性ははっきりわかっていません。 複数の研究で、ビタミンDを補うことが症状改善につながるという、十分な科学的証拠は示されていないのが現状です。
治療はお子さんの年齢や重さで変わります。 根気よく治療を続け、発作のない生活を目指しましょう。 医師とよく相談しながら、一緒に治療を進めることが大切です。