気管支喘息発作

突然の激しい咳や「ゼーゼー」という呼吸音に、ご自身やご家族が苦しんでいませんか。国内の患者数が400万人を超える気管支喘息は、発作が起きると命の危険もあるため、正しい知識を持つことが大切です。

この記事では、喘息発作が起こる原因から症状の重症度を見分ける方法、医療機関での治療法まで詳しく解説します。重症度を客観的に測る酸素飽和度(SpO2)の目安や、近年の小児治療に関する新しい知見もあわせて紹介します。

ご自身やご家族の発作がどの段階にあるかを把握し、適切な初期対応や受診のタイミングを見極められるようになります。冷静に対処するための知識を身につけ、発作への不安を和らげましょう。

気管支喘息発作の概要

気管支喘息発作とは、ふだんから炎症が続いている気管支が、何らかの刺激をきっかけに急激に狭まり、呼吸困難や激しい咳などが起こる状態のことです。「急性増悪」とも呼ばれます。

喘息の患者さんの気道は、慢性的な炎症によって非常に過敏になっています。

そこにダニやハウスダストなどのアレルゲン、あるいは風邪のようなウイルス感染が加わると、気管支の筋肉がけいれんを起こし、気道が狭まることで発作が誘発されるのです。

主な症状は、突然の息苦しさ、激しい咳、そして呼吸するたびに聞こえる「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)です。

これらの症状は、自律神経の働きや気温の変化などの影響を受け、特に夜間から早朝にかけて現れやすいという特徴があります。

日本国内の喘息患者数は400万人を超えており、決して珍しい病気ではありません。

発作の重症度を客観的に評価するうえで重要な指標が、血液中の酸素の量をあらわす「酸素飽和度(SpO2)」です。指先にセンサーを付けて測定し、一般的に95%を下回る場合は中等症以上の発作が考えられます。

特に小児の呼吸困難に対する酸素投与の基準については、新たな知見も出てきています。例えば、酸素投与の目安となるSpO2の基準値を従来より低い88%に設定しても、安全性に影響なく入院期間を短縮できたという研究結果が報告されています※。これは、過剰な酸素投与を避けることにもつながる可能性を示唆するものです。

気管支喘息発作の種類

気管支喘息の発作は、症状の強さによって大きく4つの段階に分けられます。ご自身やご家族の発作がどのレベルにあるかを客観的に把握することは、自宅での初期対応や医療機関を受診するタイミングを見極めるうえで非常に重要です。

発作の強さは、呼吸の状態、会話がスムーズにできるか、そして血液中の酸素飽和度(SpO2)などを基に判断します。発作のレベルごとの具体的な症状の目安を、下表に整理します。

発作の強さ | 主な症状の目安 | SpO2の目安

小発作 | ・息苦しさはあるが、横になって休める ・歩行は可能 ・日常生活への支障は少ない | 96%以上

中発作 | ・苦しくて横になれず、座らないと呼吸が楽にならない ・会話が途切れがちになる ・夜間に発作で目が覚める | 91~95%

大発作 | ・苦しすぎて一歩も歩けない ・話すことも、単語を言うのがやっとの状態 ・肩を上下させて必死に呼吸する | 90%以下

重篤な発作 | ・意識が遠のき、呼びかけに反応が鈍くなる ・呼吸が弱く、止まりそうになる ・唇や爪が紫色になるチアノーゼが見られる | 90%以下

表にあるSpO2は、発作の重症度を客観的に評価するための重要な指標といえます。

特に小児の呼吸困難では、酸素投与の目安となるSpO2の基準値を従来より低い88%に設定しても、安全性に問題なく入院期間を短縮できたという研究結果が報告されています※。これは、過剰な酸素投与を避けることにもつながる可能性を示唆するものです。

発作の強さによって、使用する薬剤や治療法は大きく変わります。ご自身の発作がどの段階に当てはまるかを見極め、特に「中発作」以上の症状が見られた場合は、ためらわずに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶようにしてください。

気管支喘息発作の原因

気管支喘息の発作は、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)や、それ以外のさまざまな刺激が引き金となって起こります。

喘息の患者さんの気道は、症状がないときでも常に軽い炎症がくすぶっており、非常にデリケートな状態です。そのため、健康な人では何ともないようなわずかな刺激にも過剰に反応し、気管支が急に縮んでしまうことで、あの苦しい発作につながります。

発作の引き金は、大きく「アレルゲンによるもの」と「アレルゲン以外の刺激」の2つに分けられます。

アレルゲン(アレルギーの原因物質)

アレルゲンを吸い込むと、それを異物と認識した免疫システムが過剰に働き、気道を攻撃することで炎症が悪化し、発作につながります。特に小児喘息では、約9割がこのアレルギー体質に関連していると考えられています。

具体的には、以下のようなものが身近なアレルゲンです。

・ハウスダスト: チリやホコリ、特にその中に含まれるダニのフンや死骸が強力なアレルゲンとなります。

・ペットの毛やフケ: 犬や猫などのペットの毛や、皮膚から剥がれ落ちたフケ、唾液なども原因になり得ます。

・カビの胞子: 浴室やキッチン、エアコン内部などで発生する目に見えないカビの胞子。

・花粉: スギやヒノキ、ブタクサなど、特定の季節に飛散する植物の花粉。

アレルゲン以外の刺激

アレルギーとは直接関係なく、日常生活に潜むさまざまな要因が発作を誘発することも少なくありません。

刺激の種類 | 具体的な内容と発作が起こる理由

感染症 | ・風邪やインフルエンザなどのウイルス感染は、発作の最も多い原因の一つです。 ・ウイルスが気道の粘膜を傷つけ、ただでさえ過敏になっている気道の炎症をさらに悪化させるため、発作が起こりやすくなります。

環境・天候 | ・運動: 特に冷たく乾燥した空気を吸いながらの激しい運動は、気道を直接刺激し「運動誘発喘息」を引き起こすことがあります。 ・気象の変化: 気温・湿度・気圧の急激な変化は自律神経のバランスを乱し、気管支が収縮しやすくなります。

生活習慣 | ・タバコの煙: ご自身の喫煙はもちろん、周囲の人が吸うタバコの煙(受動喫煙)も、煙の粒子が気道を直接刺激し、強い炎症を引き起こします。 ・過労やストレス: 心身のストレスは自律神経や免疫の働きを乱し、喘息をコントロールしにくくする要因です。

その他 | ・大気汚染: PM2.5や黄砂などの微小な粒子は、気道の奥深くまで侵入し、炎症を悪化させます。 ・薬剤: 解熱鎮痛薬の一部が原因で発作が起こることもあります。

感染症が引き金となる発作は、特にお子さんで重症化し、入院が必要になるケースも少なくありません。ご家族の心配は計り知れないものですが、近年の研究では、入院したお子さんへの酸素投与の基準を従来より慎重に設定しても、安全性に影響なく入院期間を短縮できる可能性が示唆されています※。これは、お子様の体への負担をできるだけ抑えながら治療を進めるという、医療の進歩の一例といえます。

これらの原因は一人ひとり異なり、複数が複雑に絡み合っていることも珍しくありません。ご自身の生活を振り返り、「どんなときに発作が起きやすいか」を把握することが、発作を予防し、上手に付き合っていくための第一歩です。

気管支喘息発作の症状

気管支喘息の発作では、気道が急激に狭まることで、特徴的な3つの症状がほぼ同時に現れます。

それは「喘鳴(ぜんめい)」「呼吸困難」「咳」です。これらの症状は、自律神経の働きや気温の変化に影響され、特に空気が冷え込む夜間から早朝にかけて現れやすい傾向があります。

発作のサインとして、主に以下のような症状が見られます。

・喘鳴(ぜんめい)

狭くなった気道を空気が無理やり通ることで、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という笛のような音が鳴ります。特に息を吐くときに聞こえやすいのが特徴です。

・呼吸困難

気道が狭くなっているため、肺の中の空気を十分に吐き出せなくなり、息苦しさを感じます。空気を吸うことよりも、吐き出すことの方が難しくなる傾向があります。

・咳

狭くなった気道を広げようとする体の反応や、気道にたまった痰を外に出そうとして、一度出始めると止まらないような激しい咳が続きます。

発作が強くなると、苦しさのあまり横になることもできず、座らないと呼吸が楽にならない状態になります。

さらに悪化すると、言葉を発するのも困難になり、単語を言うのがやっとの状態に陥ります。唇や爪が紫色になる「チアノーゼ」が見られたり、意識がもうろうとしたりする場合は、命に関わる危険なサインです。

小さなお子さんの場合、自分で「息が苦しい」と的確に訴えられないことも少なくありません。

代わりに、「咳き込んで吐いてしまう」「横になると泣き出したり機嫌が悪くなったりする」といったサインでSOSを出している可能性があります。普段と違う様子に気づいたら、喘息発作を疑うことが大切です。

医療現場では、発作の重症度を客観的に判断する指標として、血液中の酸素の量を示す「酸素飽和度(SpO2)」を測定します。近年の研究では、呼吸困難で入院したお子さんに対し、酸素投与を開始する基準値を従来よりも少し低い88%に設定しても、安全性に影響なく入院期間を短縮できたことが報告されています※。

これは、お子さんの体への負担を考慮し、過剰な酸素投与を避けるという新しい考え方を示すものです。このような症状に気づいたら、自己判断せずに速やかに医療機関を受診してください。

気管支喘息発作の検査・診断

気管支喘息発作の診断は、症状の詳しい聞き取り(問診)と診察、そして客観的な数値を測る検査を組み合わせて総合的に行われます。

発作の苦しい中で多くの質問に答えるのは大変かもしれませんが、いつから、どんな状況で発作が起きたかなどを伺うことは、原因や重症度を把握するうえで非常に重要です。そのうえで、次のような診察・検査を行い、客観的な評価を下します。

・診察(聴診・視診)

医師が聴診器を胸に当て、喘息発作に特徴的な「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴)が聞こえるか、その強さはどの程度かを確認します。同時に、呼吸の回数や、肩を上下させて苦しそうに呼吸していないか(肩呼吸)といった様子も目で見て判断します。

・血中酸素飽和度(SpO2)の測定

指先にクリップのようなセンサーを付けるだけの、痛みのない検査です。血液中にどれだけ酸素が取り込まれているかを「SpO2」という数値で示し、呼吸の苦しさを客観的に評価します。この数値は、発作の重症度を判断し、酸素投与が必要かどうかを決めるための重要な指標です。

近年では、呼吸困難で入院したお子さんを対象に、酸素投与を始める基準を従来の92%から88%に引き下げた場合でも、安全性に問題なく入院期間が短縮できたという研究報告があります※。これは、患者さんの状態を慎重に見極めながら、体への負担がより少ない治療を選択していくという、医療の進歩の一例といえます。

・肺機能検査(ピークフロー測定)

気道がどのくらい狭くなっているかを調べるため、息を思いきり吐き出す勢い(速さ)を測定します。「ピークフローメーター」という簡易的な器具で測定することが多く、この数値はご自宅での体調管理の目安にもなります。

これらの基本的な検査に加えて、必要に応じて以下のような検査を行うこともあります。

検査の種類 | 目的

血液検査 | ・アレルギーの関与が疑われる場合に、原因物質を特定する手がかりを探します。

胸部レントゲン検査 | ・肺炎や心不全など、喘息と似た症状を引き起こす他の病気ではないことを確認するために行われます。

気管支喘息発作の治療

気管支喘息発作の治療は、狭くなった気道を速やかに広げて炎症を抑え、呼吸を楽にすることが最優先です。治療は主に、発作の強さに応じて以下の3つの柱で構成されます。

・酸素投与: 体に取り込む酸素量を補う

・気管支拡張薬: 狭くなった気道を広げる

・ステロイド薬: 気道の強い炎症を鎮める

それぞれの治療がどのような役割を担うのか、具体的に見ていきましょう。

酸素投与

発作によって気道が狭まると、体は十分な酸素を取り込めない「低酸素状態」に陥ります。これを改善するために行われるのが酸素投与です。マスクや鼻につけたチューブから酸素を吸入し、血中の酸素濃度(SpO2)を安定させます。

特に、呼吸困難で入院したお子さんへの酸素投与については、新しい考え方が広がっています。

近年の研究では、酸素投与を開始する基準となるSpO2の値を、従来の92%から88%に設定しても、安全性に影響なく入院期間を約17.6時間も短縮できたことが報告されました※。

これは、お子さんの体への負担をできるだけ抑えながら治療を進めるという、医療の進歩の一例といえます。

薬物療法

薬物療法は、発作治療の核となるものです。「気管支を広げる薬」と「炎症を抑える薬」の2種類を、発作の重症度に応じて使い分けます。

薬剤の種類 | 役割と特徴

気管支拡張薬 (短時間作用性β2刺激薬) | ・発作で収縮した気管支の筋肉をゆるめ、空気の通り道を広げる即効性の薬です。 ・「ネブライザー」という専用の機械で薬を霧状にして吸入し、気道の奥深くまで直接届けます。

ステロイド薬 | ・発作の根本原因である気道の強い炎症を鎮める薬です。 ・中等症以上の発作では、吸入薬だけでは効果が不十分なため、点滴や飲み薬で全身に作用させ、強力に炎症を抑え込みます。

気管支拡張薬が今ある苦しさを取り除く「対症療法」なのに対し、ステロイド薬は炎症という火事の原因そのものを消し止める役割を担います。

重篤な発作の場合

上記の治療を行っても呼吸状態が改善しない、命の危険が迫るような重篤な発作では、さらに強力な治療が必要です。

・アドレナリンの注射: ステロイド薬でも効果が見られない場合に、気管支を強力に広げるために用いられます。

・気管挿管・人工呼吸器管理: 呼吸をする筋肉が疲れ果て、自力での呼吸が困難になった場合の最終手段です。のどから気管へチューブを入れ、機械で呼吸を補助します。

忘れてはならないのは、これらの発作治療はあくまで「鎮火活動」に過ぎないということです。最も重要なのは、そもそも発作という火事が起きないように、日頃から気道の炎症をコントロールする「長期管理(予防治療)」を毎日続けることにあります。