機能性尿失禁

トイレに行きたいのに間に合わずに漏れてしまう。そんなつらい経験から「歳のせいだから仕方ない」と諦めていませんか?おしっこを作る・ためる機能は正常なのに、体の動きや頭の働きの問題で起こる尿もれ、それが「機能性尿失禁」です。

実は、尿トラブルを抱える女性は肥満の指標であるBMIや血糖値が高い傾向にある、という研究報告もあり、原因は膀胱だけでなく生活習慣とも深く関わっている可能性が指摘されています。

この記事では、機能性尿失禁の本当の原因を解き明かし、薬だけに頼らない治療法や、日常生活を快適にするための具体的な工夫を詳しく解説します。ご自身やご家族に合った対策を見つけるための第一歩として、ぜひお役立てください。

機能性尿失禁の概要

おしっこを作る・ためる機能自体は正常なのに漏れてしまう。 これを「機能性尿失禁」と呼びます。 トイレに行きたいのに間に合わない、そんな状態を指します。

主な原因は、体の動きや頭の働きの低下にあります。 具体的には、以下のような状況が考えられます。

  • 体の動きの問題(運動機能の低下)
  • 足腰が弱り、トイレまで歩くのに時間がかかります。
  • 病気やけがで麻痺があり、素早く動けません。
  • 手の指がうまく動かず、衣服の着脱に手間取ります。
  • 頭の働きの問題(認知機能の低下)
  • 認知症などで、トイレの場所がわからなくなります。
  • 尿意を感じても、トイレでするという認識ができません。

このように、おしっこをする機能以外の問題が原因となります。 近年、尿のトラブルは生活習慣とも深く関わることがわかってきました。 ある研究では、尿トラブルを抱える女性はそうでない方と比べ、肥満の指標であるBMIや血糖値、コレステロール値が高い傾向にあると報告されています。

これらの生活習慣の乱れは、将来的に体の動きや頭の働きに影響をおよぼす病気のリスクを高めます。 その結果、間接的に機能性尿失禁につながるのです。 そのため、治療ではお薬だけでなく、生活環境を整えることが重要になります。

機能性尿失禁の種類

機能性尿失禁は、原因となる体の状態によって、大きく2つの種類に分けられます。 ご自身やご家族がどちらにあてはまるかを知り、適切な対応策を見つけましょう。

種類

主な原因

具体的な状況の例

運動機能の問題

体を動かす機能の低下

・足腰の痛みや麻痺で、トイレまで歩くのに時間がかかる<br>・手の指がうまく動かず、衣服の着脱に手間取る

認知機能の問題

考える力や判断力の低下

・トイレの場所がどこか分からなくなる<br>・尿意を感じても、トイレでするという行動に結びつかない

このように、機能性尿失禁は、お腹に力が入った際にもれる「腹圧性尿失禁」とは原因が異なります。 腹圧性尿失禁の場合、骨盤の底にある筋肉を鍛える体操などが有効です。 ある研究では、体操とあわせて磁気の力で筋肉を刺激する治療を行うと、より改善効果が高まる可能性が示されています。

さらに、治療が難しい場合には、手術で体の組織の回復を助ける特殊なシート(生分解性足場)を用いる方法の研究も進められています。 しかし、機能性尿失禁はトイレに行くまでの一連の動作や判断の問題です。 そのため、治療法も異なり、生活環境の整備や介助の工夫が重要になります。

機能性尿失禁の原因

おしっこの機能は正常なのに、なぜ漏れてしまうのでしょうか。 その原因は、膀胱や尿道そのものではありません。 尿意を感じてからトイレで排尿するまでの一連の行動が、 スムーズにできなくなることで起こります。

原因は大きく2つに分けられます。

  • 体を動かす力の問題(運動機能の低下) 体の自由がきかないため、トイレに間に合わない状態です。 脳梗塞の後遺症による麻痺で、トイレまで歩けません。 関節の痛みや筋力の衰えで、素早く動けません。 指先がうまく動かず、衣服の着脱に時間がかかります。
  • 物事を判断する力の問題(認知機能の低下) 物事を認識したり判断したりする力が衰える状態です。 認知症によって、トイレの場所そのものが分からなくなります。 尿意を感じても、「トイレに行く」という行動に移せません。 トイレの正しい使い方が分からなくなってしまいます。

さらに、これらの原因に加えて、他の尿トラブルが隠れていることも。 特に「過活動膀胱」が同時に発生していることは珍しくありません。 過活動膀胱は、急に我慢できない尿意を感じる状態を指します。

ある研究では、過活動膀胱と生活習慣の乱れとの関連が示唆されています。 過活動膀胱の女性は、そうでない方と比べて肥満度の指標であるBMIや、 ウエストのサイズが大きい傾向にあることが報告されました。 血糖値や悪玉コレステロール(LDL)の値も高い傾向にあったのです。

このような生活習慣の乱れは、将来的に体の動きや判断力を低下させる病気のリスクを高めます。 結果として、間接的に機能性尿失禁につながる可能性も考えられるのです。

機能性尿失禁の症状

機能性尿失禁の症状は、原因によって現れ方が異なります。 おしっこを作る機能は正常なのに、なぜ漏れてしまうのでしょうか。 具体的な症状を、原因ごとに見ていきましょう。

体の動きが原因の場合

体の動きが不自由だと、トイレまでの一連の動作が難しくなります。 脳梗塞の後遺症や、関節の痛みなどが背景にあることが多いです。

  • トイレに間に合わない 尿意を感じてトイレに向かっても、歩くのに時間がかかります。 そのため、トイレのドアの前で漏らしてしまうことがあります。
  • 衣服の着脱に手間取る 手の指がうまく動かず、ズボンや下着を下ろせません。 焦っているうちに、間に合わなくなってしまいます。
  • 動作がスムーズにできない ベッドから起き上がったり、車いすに移ったりする動作に、 時間がかかり、その間に漏らしてしまうこともあります。

頭の働きが原因の場合

認知症などで判断する力が低下すると、排尿行動が困難になります。 尿意を感じても、その後の行動にうまくつなげられません。

  • トイレの場所が分からない いつも使っているはずのトイレが、どこにあるか分からなくなります。
  • 行為を認識できない 尿意はあっても、「トイレで排尿する」という行為が結びつきません。 そのため、場所や状況に関係なくおもらしをしてしまいます。

隠れている他の尿トラブル

機能性尿失禁の方では、他の尿トラブルを合併していることがあります。 特に「過活動膀胱」という、急に強い尿意を感じる病気は少なくありません。

ある研究では、過活動膀胱の女性は、そうでない方と比べて、 肥満の指標であるBMIやウエストサイズが大きい傾向が示されました。 血糖値や悪玉コレステロール(LDL)の値も高い傾向にあったのです。 このような体の状態が、尿失禁の背景に隠れている可能性も考えられます。

機能性尿失禁の検査・診断

機能性尿失禁の診断は、まず他の病気がないかを確認します。 体の動きや頭の働きが原因と考える前に、治療できる病気が、 隠れていないかを見つけることが、とても大切になります。

具体的には、次のような検査を丁寧に行っていきます。

  • 問診と診察 いつ、どのような状況で尿もれが起きるのかを、 詳しくお伺いします。麻痺の有無など体の動きや、 認知の状態も丁寧に確認し、原因を探ります。
  • 尿検査 尿の中に細菌や血液が混じっていないかを調べます。 膀胱炎などの感染症は、頻尿の原因になるためです。
  • 残尿測定検査 排尿後に、膀胱に尿が残っていないかを確認します。 お腹に超音波の機械をあてるだけで、痛みはありません。

これらの検査で、おしっこの機能に問題が見つからなかった場合、 「機能性尿失禁」と診断されます。

特に、咳やくしゃみで漏れる「腹圧性尿失禁」との区別は重要です。 なぜなら、尿失禁の種類によって治療法が全く異なるからです。 例えば腹圧性尿失禁では、手術で尿道を支えることがあります。 この手術で使うシート(メッシュ)は、長期間の使用で、 性質が変わる可能性も研究で報告されています。

このように、治療法にはそれぞれ特徴があります。 どのタイプの尿失禁かを正確に診断することが、 ご本人に合った適切な対応への第一歩になるのです。

機能性尿失禁の治療

機能性尿失禁の治療は、お薬で治すというよりは、 ご本人が快適に過ごせるように工夫することが目標です。 尿もれが起きにくい状況を、周りの人たちと一緒につくります。

治療の柱は、原因への働きかけと環境の整備です。 これらを組み合わせて、最適な方法を見つけていきます。

原因となっている機能へのアプローチ

体の動きや頭の働きに合わせて、練習や対応の工夫をします。

  • 体の動きに問題がある場合 体の動きを取り戻す練習(リハビリ)を行います。 痛みを和らげたり、筋力をつけたりすることで、 トイレでの一連の動作がスムーズになることを目指します。 特に骨盤の底にある筋肉を鍛える体操が役立ちます。 ある研究では、この体操と磁気の力で筋肉を刺激する方法を 組み合わせると、より改善が期待できると報告されています。
  • 頭の働きに問題がある場合 ご本人の排尿のリズムを周りの方がよく観察します。 「そわそわ歩き回る」など、トイレに行きたいサインを見つけ、 タイミングよくトイレへお声がけをすることが大切です。

環境の整備と道具の活用

日常生活を送りやすくするために、環境や身の回りのものを工夫します。

工夫のポイント

具体的な方法

おうちの工夫

・寝室からトイレまでに手すりをつける<br>・部屋の段差をなくし、歩きやすくする<br>・トイレのドアに印をつけ、場所を分かりやすくする

服や道具の工夫

・自分で脱ぎ着しやすい、ウエストがゴムのズボンを選ぶ<br>・お部屋で使えるポータブルトイレなどを活用する<br>・吸収力の高い下着やおむつ、パッドを上手に使う

合併している尿トラブルの治療

他の種類の尿失禁が隠れている場合、その治療も重要です。 例えば、咳やくしゃみで漏れる「腹圧性尿失禁」です。 この場合、手術で尿道を支える治療を考えることがあります。

手術では、昔からポリプロピレンという素材のシート(メッシュ)が 使われてきました。しかし、この素材は長期間体の中にあると、 性質が変わる可能性も研究で報告されています。

そのため、最近では手術後に体の中で溶けて組織の回復を助ける、 特殊なシート(生分解性足場)の開発も進められています。 このように治療法は進化しており、より体に優しい選択肢も 研究されています。ご本人の状態に合わせて、 最適な方法を専門家と一緒に探していくことが大切です。