急性副鼻腔炎

かぜをひいた後、いつまでも治らない鼻水や鼻づまり。「また長引いているだけ」と、やり過ごしていませんか。その不快な症状、実は「急性副鼻腔炎」という、かぜとは異なる病気が原因かもしれません。

これは誰にでも起こりうる非常に身近な病気で、米国では年間の受診件数が約3,000万件にものぼると言われています。日本でも、抗生物質が処方される一般的な理由の一つであり、多くの人が知らず知らずのうちに経験しているのです。

放置すれば、一般に「蓄膿症」として知られる慢性的な状態に移行してしまう可能性も。この記事では、つらい症状の本当の原因から正しい対処法までを詳しく解説します。ご自身の状態を正しく理解し、早期回復への大切な一歩を踏み出しましょう。

急性副鼻腔炎の概要

かぜをひいた後、鼻水や鼻づまりがなかなか治らず、つらい思いをしたことはありませんか。 それは「急性副鼻腔炎(きゅうせいふくびくうえん)」という病気かもしれません。

私たちの顔の骨の中には、「副鼻腔」という空っぽの部屋のような空間があります。 具体的には、左右のほっぺたの奥、両目の間、おでこの部分に位置しています。 急性副鼻腔炎とは、この副鼻腔をおおっている粘膜に炎症が起きた状態のことです。

鼻の中(鼻腔)と副鼻腔は、細いトンネルでつながっています。 そのため、炎症は両方で同時に起こることがほとんどです。 医学的には「急性鼻副鼻腔炎」という呼び方が、より状態を正確に表しています。

これは誰にでも起こりうる、とても身近な病気の一つです。 米国では年間の受診件数が約3,000万件にのぼるともいわれるほどです。 また、抗生物質が処方される理由として、最も一般的なものの一つでもあります。

副鼻腔炎は、症状が続く期間によって、以下のように分けられます。

種類

症状が続く期間の目安

急性副鼻腔炎

4週間未満

亜急性副鼻腔炎

4週間から12週間

慢性副鼻腔炎

12週間以上

再発性副鼻腔炎

1年に4回以上繰り返す

一般的に「蓄膿症(ちくのうしょう)」として知られるのは、このうち症状が長く続く「慢性副鼻腔炎」のことです。 まずは急性副鼻腔炎について正しく理解することが大切です。

急性副鼻腔炎の種類

副鼻腔炎は、症状が続いている期間によって、いくつかの種類に分けられます。 この分類は、治療の方針を決める上でとても重要なものさしになります。

世界中の専門家たちが、たくさんの経験をもとに話し合って決めた共通のルールです。 これを「コンセンサスに基づく分類」と呼びます。 ご自身の状態がどこにあてはまるか、見ていきましょう。

種類の名前

症状が続く期間

特徴

急性鼻副鼻腔炎

4週間未満

かぜなどをきっかけに急に症状が出ます。<br>多くの場合はこのタイプにあてはまります。

亜急性鼻副鼻腔炎

4週間~12週間

急性の症状がすっきりと治りきらずに、<br>長引いてしまっている状態を指します。

慢性鼻副鼻腔炎

12週間以上

3ヶ月以上にわたって症状が続く状態です。<br>「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれます。

再発性急性鼻副鼻腔炎

年に4回以上繰り返す

一度治ったと思っても、またすぐにぶり返します。<br>症状のない期間をはさんで繰り返すのが特徴です。

このように、症状の期間によって呼び方や状態が異なります。 ご自身の症状がどのタイプに近いかを知ることは、治療への大切な第一歩です。 症状が長引いたり、繰り返したりする場合は、自己判断せず早めに受診しましょう。

急性副鼻腔炎の原因

急性副鼻腔炎の多くは、かぜをきっかけに始まります。 かぜのウイルスが鼻から侵入し、粘膜で炎症を起こすことが原因です。 鼻の奥にある副鼻腔という部屋にまで、炎症が広がってしまうのです。

具体的には、次のような順番で症状が悪化していきます。

  1. ウイルスの侵入 かぜのウイルスが鼻の粘膜に感染して、粘膜が腫れあがります。
  2. 出口がふさがる 鼻と副鼻腔をつなぐ細いトンネルが、粘膜の腫れでふさがります。
  3. 細菌が増える 出口を失った鼻水が副鼻腔にたまり、細菌がそこで増殖します。 この状態が、ウイルス感染に細菌感染が加わった二次感染です。

このように、最初はウイルスが原因でも、後から細菌が悪さをします。 そのため、急性副鼻腔炎は抗菌薬(抗生物質)が処方されることが多いです。 これは、米国でも抗生物質が使われる一般的な理由の一つになっています。

ごくまれですが、副鼻腔の炎症が脳を包む膜まで広がることがあります。 特に高熱や強い頭痛を伴う場合は、早めの受診がとても大切です。

また、かぜ以外にも、次のようなことが原因となる場合があります。

  • アレルギー性鼻炎 鼻の粘膜が常に腫れているため、炎症が起きやすくなります。
  • 虫歯 上の奥歯の根っこは副鼻腔に近いため、虫歯菌が原因になることがあります。
  • 顔のけが 顔面の骨折などが、副鼻腔の炎症につながる場合もあります。

急性副鼻腔炎の症状

かぜが長引いていると感じる時、それは急性副鼻腔炎のサインかもしれません。 症状を正しく知ることが、適切な治療への大切な第一歩です。 研究でも、患者さん自身が症状を正確に評価することの重要性が示されています。

ご自身の状態を客観的に把握するため、以下のリストで確認してみましょう。

【急性副鼻腔炎の症状チェックリスト】

  • 鼻の症状
  • 黄色や緑色の、ねばり気のある鼻水が出ます。 副鼻腔にたまった膿(うみ)が混じるため、このような色や状態になります。
  • 鼻がつまって息苦しく、においも分かりにくくなります。
  • 鼻水がのどの奥に落ちる感じがします。 これを後鼻漏(こうびろう)と呼び、咳やたんの原因にもなります。
  • 痛みや重さ
  • 頬(ほお)やおでこ、目の奥に痛みや圧迫感を感じます。 特に、頭を前に下げると痛みが強くなるのが特徴的です。
  • 頭全体が重い感じがしたり、ズキズキとした頭痛がしたりします。
  • 上の奥歯が浮いたように感じたり、痛んだりすることもあります。
  • 全身の症状
  • 熱が出たり、体のだるさや疲れやすさを感じたりします。
  • 口の中のにおいが気になることもあります。

これらの症状は、日常生活での集中力を大きく下げる原因となります。 まれに炎症が目の奥や脳まで広がり、重い状態を引き起こすこともあります。 特に、生まれつきの持病がある方は注意が必要です。

今までにないほどの強い頭痛や高熱、ものが二重に見えるといった場合は、 すぐに医療機関を受診するようにしてください。

急性副鼻腔炎の検査・診断

急性副鼻腔炎の診断は、まず患者さんのお話を聞くことから始まります。 どのような症状で困っているかを詳しく教えてもらうことが、的確な診断への第一歩です。 お医者さんはいくつかのステップで、病気の正体を探っていきます。

問診(もんしん)で詳しくお話を聞きます

まず、お医者さんは症状について詳しく質問します。 これは「問診」と呼ばれる、とても大切な診察です。 患者さん自身の言葉が、診断の最も重要な手がかりとなります。

最近の研究でも、患者さんが症状を正確に評価することが、 診断の質を高めるために重要であると報告されています。 以下の点について、できるだけ詳しくお伝えください。

  • 鼻水の様子 黄色や緑色など、鼻水の色やねばり気を教えてください。
  • 痛みの場所や強さ 頬やおでこなど、顔のどこが痛むかを確認します。 頭を下げると痛みが強くなるかどうかも大切な情報です。
  • 症状が始まった時期 いつから症状が続いているかをお聞きします。

鼻の中を直接見て診察します

次に行うのが、鼻の中を直接観察する診察です。 細いカメラ(内視鏡)などを使って、鼻の奥の状態を確かめます。 これにより、炎症の程度や場所を正確に把握できます。

  • 粘膜(ねんまく)の状態 鼻の中をおおっている粘膜が、赤く腫れていないかを見ます。
  • 膿(うみ)の確認 膿のような鼻水がどこから出ているかを探します。 これにより、どの副鼻腔で炎症が起きているか特定します。

必要に応じて詳しい検査も行います

問診や鼻の診察だけで診断がつくことがほとんどです。 しかし、症状が重い場合や長引く場合には、 より詳しく調べるために画像検査を行うことがあります。

検査の種類

わかること

レントゲン検査

副鼻腔の中に膿などが溜まっているかを、<br>影として確認することができます。

CT検査

骨の形や炎症の広がりを、より詳しく<br>立体的に見ることができます。

これらの検査結果をパズルのように組み合わせ、総合的に判断します。 そして、症状が4週間未満であれば「急性副鼻腔炎」と診断が確定します。

急性副鼻腔炎の治療

急性副鼻腔炎の治療は、まず体を休ませることが基本です。 多くはウイルスが原因なので、体の抵抗力を高めることが大切になります。 その上で、つらい症状を和らげる「対症療法」を行います。

治療法は、主に以下の3つのアプローチを組み合わせます。

  • お薬での治療 症状を楽にしたり、必要に応じて細菌を抑えたりします。
  • 耳鼻咽喉科での処置 鼻の中にたまった膿をきれいにし、薬を直接届けます。
  • ご自宅でのセルフケア 鼻を温めるなど、ご自身でできる症状を和らげる工夫です。

お薬を使った治療

症状に合わせて、次のようなお薬を使います。

  • 去痰薬(きたんやく) ねばねばした鼻水を出しやすくして、鼻の通りを良くします。
  • 鎮痛剤(ちんつうざい) つらい頭痛や顔の痛みを和らげるために使います。
  • 抗菌薬(こうきんやく) いわゆる抗生物質です。ウイルスには効果がありません。 そのため、細菌感染が強く疑われる場合にのみ使用します。

最近の研究では、植物由来の成分にも注目が集まっています。 複数の信頼できる研究をまとめた報告によると、 「シネオール」や「ミルトル」などの精油成分が効果的です。 これらは、鼻づまりや頭痛などの症状を和らげることが示されています。

また、「ペラルゴニウム・シドイデス」という植物の抽出物もその一つです。 体がもともと持っている病気と戦う力(免疫機能)を調整し、 回復を助ける働きがあるのではないかと期待されています。

耳鼻咽喉科での専門的な処置

クリニックでは、より直接的な治療も行います。

  • 鼻水の吸引 専用の機械で、鼻の奥にたまった膿を吸い出し、すっきりさせます。
  • ネブライザー療法 霧状にした薬を鼻から吸い込み、炎症部分に直接薬を届けます。

症状が長引いたり、痛みが強かったりする場合は我慢しないでください。 自己判断で様子を見ずに、専門のクリニックを受診することが大切です。