思春期遅発症

「周りの友達と比べて、自分のからだの変化が遅い」「うちの子だけ、同級生より幼く見える」など、思春期の成長には個人差があるとわかっていても、不安に感じてしまいますよね。実は、こうした「思春期遅発症」は10代のおよそ2%、つまり100人に2人に見られる、決して珍しくない状態です。

その多くは、病気ではない「体質性」のもので、過度な心配はいらないことがほとんどです。しかし、まれにホルモンの異常や他の病気が隠れていることも。ただの個人差なのか、それとも専門家への相談が必要なサインなのか、その見極めがとても大切になります。

この記事では、思春期遅発症の原因から種類、受診の目安までを詳しく解説します。ご自身やお子さんの状態を正しく理解し、不要な不安を解消するためにお役立てください。

思春期遅発症の概要

「周りの友達は声変わりしたのに、自分はまだ…」 「うちの子は同級生より、からだつきが幼い気がする」 思春期の成長には個人差があると分かっていても、心配になりますよね。

思春期遅発症(ししゅんきちはつしょう)とは、 大人のからだつきへの変化(二次性徴)が、 同じ年齢の多くの人と比べてゆっくりな状態を指します。

具体的に、どのような場合に思春期遅発症を考えるか、 以下のような目安があります。

性別

こんなときは受診を考えてみましょう

女の子

・13歳になっても胸のふくらみが始まらない

・15歳を過ぎても初めての生理(初経)がこない

男の子

・14歳になっても精巣(せいそう)が大きくならない

思春期遅発症は、10代のお子さんのおよそ2%に見られます。 これは、100人いれば2人くらいの割合です。 女の子よりも男の子に多い傾向があります。

その多くは「体質性」と呼ばれるもので、病気ではありません。 ご家族にも思春期が遅めだった方がいるなど、 遺伝的な要因が関係していることが非常に多いです。 この場合、時間はかかりますが自然に成長が始まるため、 過度な心配はいらないことがほとんどです。

しかし、まれにホルモンの異常や他の病気が原因のこともあります。 そのため、からだの変化で気になることがあれば、 一人で悩まずに専門の医療機関へ相談することが大切です。

思春期遅発症の種類

思春期がなかなか始まらない「思春期遅発症」には、 原因によっていくつかの種類があります。 大きく分けると、病気が原因ではない「体質性」のものと、 何らかの病気が隠れているものに分けられます。

体質性思春期遅発症

これは病気ではなく、成長のペースがゆっくりなタイプです。 思春期遅発症のなかで最も多く、男の子の約6割、 女の子の約3割がこのタイプにあたります。 骨の成長もゆっくり進むため、身長が低い傾向にあります。 ご家族にも思春期が遅かった方がいるなど、 遺伝的な要因が関係していることが非常に多いです。 時間はかかりますが、自然に思春期は訪れるため、 過度な心配はいらないことがほとんどです。

病気が原因の思春期遅発症

体のどこかに原因があって、思春期が遅れている状態です。 脳からの命令と、それを受け取る精巣・卵巣の反応によって、 さらに細かく分類されます。

分類の名称

脳からの命令

精巣・卵巣の反応

どんな状態?

高ゴナドトロピン性

性腺機能低下症

たくさん出ている

ない・弱い

脳は命令を出すが、精巣や卵巣がうまく働けない状態。

低ゴナドトロピン性

性腺機能低下症

出ていない・少ない

命令がないため

反応できない

脳自体が、命令を出すことができない状態。

慢性疾患や

栄養不良によるもの

影響を受ける

影響を受ける

全身の病気や栄養不足で、思春期を始めるエネルギーがない状態。

脳は「ゴナドトロピン」というホルモンで命令を出します。 この命令を受け取って、精巣や卵巣が性ホルモンを作ります。 この流れのどこに問題があるかで、種類が分かれるのです。

例えば、ターナー症候群やクラインフェルター症候群といった 染色体の病気では、精巣や卵巣の働きが弱くなります。 また、脳腫瘍や、嗅覚の異常を伴うカルマン症候群などでは、 脳からの命令自体が出にくくなることがあります。

このように、ただ成長が遅いだけなのか、 あるいは病気が隠れているのかを見分けることが重要です。 気になることがあれば、自己判断せずに専門医に相談しましょう。

思春期遅発症の原因

思春期の開始が遅れる原因は、一つではありません。 その多くは心配のいらない「体質性」のものですが、 なかには治療が必要な病気が隠れていることもあります。

原因は、大きく4つのタイプに分けられます。

  • 体質や遺伝によるもの
    思春期遅発症で最も多いのが、このタイプです。 男子の約6割、女子の約3割がこれにあたります。 病気ではなく、成長のペースがゆっくりな体質なのです。 ご両親や兄弟など、血縁者に思春期が遅かった方がいるなど、 遺伝的な要因が関係していることが多くあります。
  • 全身の病気や栄養状態によるもの
    体は、思春期を迎えるために多くのエネルギーを必要とします。 過度な運動や極端なダイエットで栄養が不足したり、 体に他の病気があったりすると、 思春期を始めるためのエネルギーが足りなくなってしまいます。
  • 精巣や卵巣の問題によるもの
    脳からは「性ホルモンを作りなさい」という命令が出ています。 しかし、その命令を受け取る精巣や卵巣自体に問題があり、 うまく性ホルモンを作れない状態です。 これを「高ゴナドトロピン性性腺機能低下症」と呼びます。 染色体の病気(ターナー症候群、クラインフェルター症候群)や、 過去の治療などが原因となることがあります。
  • 脳からの指令の問題によるもの
    脳の「視床下部」や「下垂体」という司令塔に原因があります。 性ホルモンの分泌を促す指令そのものが出せない状態です。 これを「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」と呼びます。 脳腫瘍や、嗅覚の異常を伴うカルマン症候群などが原因として考えられます。

思春期遅発症の症状

思春期遅発症の症状は、大人の体つきへの変化が、 まわりの友達よりもゆっくり現れることが特徴です。 「自分だけ違うのかな?」と不安に感じるかもしれません。 具体的にどんなサインがあるか、一緒に見ていきましょう。

男の子と女の子では、現れる体の変化が異なります。 以下のようなサインが、思春期遅発症を考える目安です。

性別

主な症状

男の子

・14歳を過ぎても精巣(せいそう)が大きくならない

・15歳になっても陰毛が生えてこない

・声変わりやひげなど、他の変化も見られない

女の子

・13歳になっても胸のふくらみが始まらない

・胸がふくらみ始めてから5年経っても生理がこない

・15歳を過ぎても初めての生理がこない

これらの体の変化に加えて、体格にも特徴が見られます。 成長のピークである「成長スパート」が遅れてくるため、 一時的に同級生より身長が低いことがあります。 また、骨の成長ぐあい(骨年齢)が、 実際の年齢より若いことも少なくありません。

体の変化だけでなく、心への影響もとても大切な症状です。 周りと違うことに、ご本人がコンプレックスを感じたり、 「からかわれたらどうしよう」と悩んだりすることもあります。 こうした心理的なストレスも、見逃してはいけないサインです。 気になることがあれば、一人で抱え込まずに相談してください。

思春期遅発症の検査・診断

「成長がゆっくりなのは、うちの子の個性なのかな?」 「それとも、何か病気が隠れているのかな?」 思春期遅発症の検査は、この疑問に答えるための大切な一歩です。 心配のいらない「体質性」のものか、治療が必要な病気か、 その原因を正しく見極めるために、いくつかの検査を行います。

主に、体の成長ぐあいや、思春期を進めるための指令を出す 「ホルモン」という物質の働きを詳しく調べていきます。 具体的には、以下のような検査を組み合わせて診断します。

  • 問診と診察 ご本人やご家族に、丁寧にお話を聞くことから始まります。 ご家族に思春期がゆっくりだった方がいるか(家族歴)や、 食事、運動の習慣など、生活背景も重要な情報です。 その後、身長や体重を測り、二次性徴の進み具合を診察します。
  • 骨年齢の検査 手のレントゲン写真を撮って、骨の成熟度(骨年齢)を調べます。 骨の成長は、からだ全体の成熟度を知るための良い指標です。 実際の年齢と骨年齢を比べることで、 成長のペースが体質的にゆっくりなのかどうかを判断する ための、とても大切な手がかりになります。
  • 血液検査 血液を採って、思春期に関わるホルモンの量を測定します。 脳からの指令(性腺刺激ホルモン)と、 それを受け取る精巣や卵巣が出すホルモン(性ホルモン) の両方を調べることで、どこに原因があるのかを探ります。 また、成長に影響する他の病気がないかも同時に確認できます。

検査の種類

主に調べること

骨年齢検査

手のレントゲンで、からだ全体の成長の進み具合をみます。

血液検査

思春期に必要なホルモンの量や、からだの健康状態を調べます。

画像検査

必要に応じて、脳や卵巣の状態をCTやMRIでくわしく見ます。

これらの基本的な検査で原因がはっきりしない場合や、 脳の病気などが疑われるときには、脳のMRI検査や、 生まれつきの体質を調べる遺伝子検査を行うこともあります。 検査結果を総合的に判断し、一人ひとりに合った対応を考えます。

思春期遅発症の治療

思春期がゆっくりな原因は、一人ひとり違います。 そのため治療方法も、原因に合わせて慎重に選ぶことが大切です。 まずは検査で原因をしっかり見つけることから始めます。

治療は、主に次の3つの方法から考えていきます。

1. 成長のペースを見守る(経過観察)

思春期が来るのがゆっくりな「体質性」の場合です。 これは病気ではなく、その子の個性ともいえます。 そのため、特別な治療はせず、自然に大人の体が 作られるのを待つのが基本的な考え方です。

ただ、ご本人が周りとの違いに強く悩んでいたり、 身長の低さが気になったりすることもあるでしょう。 そのような心への負担が大きい場合には、 思春期を後押しするホルモン治療を短期間だけ 行うことも選択肢の一つになります。

2. 原因になっている病気の治療

栄養不足や過度な運動、他の病気が原因のこともあります。 この場合、まずはその原因を解決することが最優先です。 例えば、食事や生活習慣を見直したり、 原因の病気の治療をしっかり行ったりします。 体の状態が良くなることで、自然と思春期が始まることも 少なくありません。

3. 足りないホルモンを補う治療(ホルモン補充療法)

脳からの命令がうまく出ない場合や、 精巣・卵巣がホルモンを作れない「性腺機能低下症」 と診断された場合に行う治療です。 足りない性ホルモンを薬で少しずつ補っていきます。

対象

主な治療法

男の子

テストステロン(男性ホルモン)を補充します。

女の子

エストロゲン(女性ホルモン)などを補充します。

この治療は、大人の体つきに近づけることが目的です。 骨の成長ぐあいなどを定期的に確認しながら、 数年かけてゆっくりとホルモンの量を調整します。 ご本人やご家族とよく相談しながら、 一人ひとりに合った治療を慎重に決めていきます。