小頭症
妊娠中の超音波検査や赤ちゃんの健診で「頭が小さい」と指摘され、不安な気持ちを抱えていませんか。赤ちゃんの頭が標準より著しく小さい状態は「小頭症」と呼ばれ、発生頻度は数千人に1人と非常にまれなものです。脳の発達との関連が気になる方も多いかもしれません。
しかし、「小頭症」とひとことで言っても、その背景は一人ひとり異なります。頭が小さいこと以外に症状がなく元気に成長するお子さんもいれば、発達にサポートが必要な場合もあります。大切なのは、まず正しい知識を得て、お子さんの状態を正確に理解することです。
この記事では、小頭症の原因や種類、検査方法、そしてお子さんが持てる力を最大限に引き出すためのサポートについて詳しく解説します。不安を解消し、これからのお子さんとの向き合い方を考えるための一助としてください。
小頭症の概要
小頭症とは、赤ちゃんの頭の大きさが、同じ年齢や性別の子どもたちと比べて著しく小さい状態のことです。頭の大きさは脳の大きさと深く関係しています。そのため、小頭症は脳の発達がゆっくりである可能性を示唆している場合があります。
発生頻度は非常にまれで、数千人に1人の割合といわれています。
症状のあらわれ方には個人差が大きいのが特徴です。
- 症状がほとんどない場合 頭が小さいこと以外に特に症状はなく、元気に成長するお子さんもいます。
- 症状があらわれる場合 てんかん、発達の遅れ、学習面での課題、聴覚や視覚の問題など、さまざまな症状が見られることがあります。
小頭症は、ほかの病気に伴って見られることもあります。例えば、頭の後ろにこぶができる「巨大後頭部脳瘤(きょだいこうとうぶのうりゅう)」というまれな病気では、小頭症を合併することが多いと報告されています。
妊娠中にお母さんが受ける超音波検査で見つかることもあれば、生まれてからの頭の大きさの測定でわかることもあります。
小頭症の種類
「小頭症」とひとことで言っても、その背景は一人ひとり違います。 いつ頭が小さくなったか、他の症状があるかなどでいくつかの種類に分けられます。 タイプを正しく知ることは、お子さんに合ったサポートを考える上でとても大切です。
頭が小さくなるタイミングによる分類
小頭症は、症状があらわれる時期によって大きく2つのタイプに分けられます。
- 先天性小頭症(せんてんせい しょうとうしょう) 生まれた時から頭の大きさが標準より小さいタイプです。 お母さんのお腹の中にいる間に、脳の成長がゆっくり進んだことが原因と考えられます。
- 後天性小頭症(こうてんせい しょうとうしょう) 生まれた時の頭の大きさは標準的だったのに、その後の成長がゆっくりになるタイプです。 生まれた後に脳の成長をさまたげる何らかの原因があって起こります。
他の病気と関係があるかによる分類
他の生まれつきの病気や症状と一緒に見られるかによっても分けられます。
- 症候群性小頭症(しょうこうぐんせい しょうとうしょう) ダウン症候群など、全身にさまざまな特徴があらわれる病気(症候群)があります。 その症状の一つとして、小頭症が見られるタイプです。
- 非症候群性小頭症(ひしょうこうぐんせい しょうとうしょう) 他に目立った体の特徴がなく、頭が小さいことが主な症状となるタイプです。
心配のいらない小頭症
中には、ご家族の体質として頭が小さいだけで、病気ではない場合もあります。 これを「良性家族性小頭症(りょうせいかぞくせいしょうとうしょう)」と呼びます。 この場合は知的な発達などに問題がないことがほとんどです。 このように、小頭症と診断されてもその背景はさまざまです。 そのため、詳しい検査で原因やタイプを特定していくことが非常に重要になります。
小頭症の原因
小頭症の原因はさまざまで、残念ながらはっきりと特定できないことも少なくありません。多くの場合、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる間に、脳が育つ過程で何らかの影響が起こることが原因と考えられています。
考えられる主な原因には、以下のようなものがあります。
- 遺伝子の設計図によるもの 生まれつきの遺伝子や染色体の変化が、脳の発達に影響を与えることがあります。ダウン症候群など、他の病気の一つの特徴として小頭症が見られる場合もあります。
- お母さんのお腹の中にいる間の環境
- 感染症 お母さんが妊娠中に特定のウイルスなどに感染すると、お腹の赤ちゃんに影響を及ぼすことがあります。サイトメガロウイルス、風疹、トキソプラズマなどが知られています。
- 特定の物質 アルコールやたばこ、水銀などの化学物質は、赤ちゃんの脳の発達を妨げる可能性があります。
- 栄養不足 赤ちゃんの脳が成長するためには、十分な栄養が必要です。特に葉酸や鉄分などが不足すると、脳の発達に影響が出ることがあります。
- その他の要因 脳の血管のトラブルなど、上記以外のことが原因となる場合もあります。
妊娠中の薬の使用について心配される方もいらっしゃいます。しかし、すべての薬が赤ちゃんに影響するわけではありません。例えば、てんかんなどの治療で使われるプレガバリンという薬は、小頭症のリスクを高めることとは関連がない、という大規模な研究報告があります。持病の治療などで薬が必要な場合は、自己判断で中断せず、必ず医師に相談することが大切です。
小頭症の症状
小頭症の症状は、脳の発育の状態によって一人ひとり異なります。 頭の大きさが小さいこと以外、特に目立った症状はなく、元気に成長するお子さんもいます。
一方で、脳の発達に影響がある場合は、様々な症状があらわれることがあります。 生まれたときにははっきりしなくても、成長の過程で少しずつ見られるようになることも多いです。
【小頭症でみられることがある症状の例】
- 発達の遅れ 首のすわりやおすわり、言葉の発達などが、ゆっくり進むことがあります。
- 体の動きの問題 筋肉がこわばって手足が動かしにくかったり、体のバランスをとることが難しかったりします。
- けいれん発作 てんかんと呼ばれる、突然意識を失ったり手足が震えたりする発作が起こることがあります。
- 知的な発達 ものの理解や学習に、ゆっくりとしたペースでのサポートが必要になることがあります。
- 目や耳の問題 視力や聴力に問題が見られることがあります。
- 哺乳の問題 ミルクをうまく飲めなかったり、むせやすかったりすることがあります。
知的障害や自閉症スペクトラム障害は、小頭症のお子さんに見られることがありますが、原因は様々です。 例えば、てんかんなどの治療で使われるプレガバリンという薬について、北欧4カ国で行われた大規模な研究があります。 この研究では、妊娠中にこの薬を使用しても、小頭症や知的障害などのリスクが直接高まるわけではないことが示唆されました。
症状の程度や組み合わせは多岐にわたるため、お子さんの発達で気になることがあれば、専門の医師に相談し、定期的に成長を見守っていくことが大切です。
小頭症の検査・診断
小頭症の診断は、赤ちゃんがお腹にいる時から生まれてからの両方で行われます。 いつ、どのようにしてわかるのか、順を追ってご説明します。
まず、妊娠中の定期健診で行われる超音波検査(エコー検査)がきっかけになることがあります。 この検査で、お腹の赤ちゃんの頭の大きさが、週数に対して小さい場合に小頭症が疑われます。 ただ、この時点ではあくまで「疑い」であり、すぐに診断が確定するわけではありません。
赤ちゃんが生まれた後、まず行われるのが頭の周りの長さを測る「頭囲測定」です。 メジャーで頭の一番大きい部分を測り、同じ月齢や性別の赤ちゃんの標準的な大きさと比べます。 一度だけでなく、成長に合わせて定期的に測り、頭の成長のペースを確認することが大切です。
小頭症と診断されたり、その疑いがあったりする場合には、原因を詳しく調べる検査に進みます。 原因を知ることは、お子さんのこれからの発達をサポートする上でとても重要になります。
- 画像検査 脳の中を詳しく見るための「写真」を撮る検査です。
- 頭部MRI検査 磁石の力を使い、脳の形や構造に異常がないかを詳しく調べます。
- 頭部CT検査 X線を使って、脳の中に出血がないか、頭の骨の形はどうかなどを確認します。
- 血液検査 妊娠中にお母さんがかかった感染症などが、赤ちゃんに影響していないかを調べます。
- 遺伝学的検査 遺伝子の設計図に、脳の発達に関わる変化がないかを調べることがあります。 専門の医師と相談しながら、必要に応じて行われます。
これらの検査結果を総合的にみて、診断が行われます。
小頭症の治療
現在の医学では、残念ながら小頭症を根本的に治す、つまり頭を大きくしたり脳の発育を元に戻したりする特別な治療法はありません。
しかし、何もできないわけではありません。治療の目的は、お子さまが抱える症状を和らげ、持っている力を最大限に引き出して発達をサポートすることです。一人ひとりの状態に合わせた「対症療法」が治療の中心となります。
【症状に合わせた治療の例】
- けいれん発作に対して てんかんの発作が見られる場合、脳の過剰な興奮を抑えるためにお薬(抗けいれん薬)を使います。発作をコントロールし、穏やかな生活を目指します。
- 発達の遅れに対して 理学療法や作業療法などのリハビリをできるだけ早くから始めます。これを「早期介入」といい、お子さまの身体や知的な能力を高める助けになります。
また、小頭症には他の病気が合併することもあります。例えば、「巨大後頭部脳瘤(きょだいこうとうぶのうりゅう)」という頭にこぶができるまれな病気です。この場合、外科的な手術が選択肢となることがあります。
ある研究では、適切な計画のもとで手術を行うことで、9割以上のお子さんが助かるという良好な結果が報告されています。小頭症のケアは、医師だけでなく、多くの専門家がチームでご家族を支えます。













