生まれつき耳の形が小さい「小耳症」。約6,000人から10,000人に1人という割合で起こるとされ、もし我が子が診断されたら、将来の聞こえや周りの目など、尽きない不安に襲われるのは当然のことかもしれません。
マスクやメガネがかけにくいといった日常の不便さだけでなく、親御さん自身の心の負担も大きな問題です。しかし、原因がはっきりと解明されていないからこそ、ご自身を責める必要は全くありません。
この記事では、小耳症の種類や原因、そしてご自身の軟骨を使った手術などの治療法について詳しく解説します。AIを活用した診断など、医療は日々進歩しています。まずは正しい知識を得て、不安を希望に変える一歩を踏み出しましょう。
小耳症の概要
小耳症(しょうじしょう)は、生まれつき耳の形が小さい状態を指します。 単に小さいだけでなく、耳の穴がふさがっていることも少なくありません。 そのため、音が伝わりにくく、聞こえに影響が出ることがあります。
小耳症がどのくらいの割合でみられるか、以下にまとめました。
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項目
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特徴
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発生割合
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約6,000人〜10,000人に1人
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男女比
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男の子に多い傾向(男の子:女の子 = 約2:1)
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左右差
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右耳に多い傾向(右耳:左耳:両耳 = 約5:2:2)
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最近では、AI(人工知能)を活用した研究が進んでいます。 一人ひとりの耳の形や状態を、AIが詳しくタイプ分けするのです。 そして、その人に合った手術計画を立てる手助けをしてくれます。 こうした技術は、診断の精度を上げ、治療の質を高めると期待されます。
小耳症の種類
小耳症は、耳の形がどのくらい残っているかで、種類が分けられます。 この分類は、今後の治療計画を立てるうえで、とても大切な情報です。 耳の形の残り具合によって、大きく次の2つに分けられます。
- 耳の形がほとんど、あるいは全く見られない状態を指します。
- 耳の形の一部は残っていますが、全体的に小さい状態です。
さらに小耳症は、残っている耳の形によって、細かく分類されます。 代表的なものには、以下のような種類があります。
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種類
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特徴
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耳垂型(じすいがた)
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耳たぶと、その上に小さな軟骨のかたまりだけが残っているタイプです。
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耳甲介型(じこうかいがた)
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耳の穴の周りのくぼみや、耳の前の小さな突起は残っています。耳の上半分が小さいタイプです。
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また、耳の形だけでなく、耳の穴の状態も重要です。 小耳症の多くは、耳の穴が生まれつきふさがっている状態を伴います。
小耳症は、耳だけの問題として現れることもあります。 しかし、他の生まれつきの特徴と一緒に見られることも少なくありません。 例えば、あごの骨の形が左右で違うことや、皮様嚢胞(ひようのうほう)という袋状のできものが挙げられます。 ある研究では、小耳症と皮様嚢胞が同時に見られる例も報告されています。
小耳症の原因
小耳症がなぜ起こるのか、そのはっきりとした原因はまだわかっていません。 多くの場合、特別な理由がなく「偶然」に起こると考えられています。 そのため、お父さんやお母さんがご自身のせいだと心配する必要はありません。
現在、原因として考えられていることには、主に以下の2つがあります。
- 体の設計図である「遺伝子」の影響
- お母さんのお腹の中にいたときの「環境」の影響
最近の研究では、小耳症に関係する遺伝子の候補が40個以上見つかっています。 しかし、これらの研究は耳以外にも症状を持つ人を対象としたものが中心です。 耳だけに症状が現れる小耳症については、まだ十分なデータが集まっていません。
また、お母さんのお腹の中で耳が作られる時期の環境も考えられます。 例えば、妊娠初期に使ったお薬やウイルス感染などの可能性が挙げられます。 しかし、これらが小耳症の直接の原因であるとはっきりと証明されてはいません。
このように、小耳症はたった一つの原因で起こるわけではないのです。 遺伝子の影響と、お腹の中にいたときの環境が複雑に絡み合っていると考えられています。 原因を特定することよりも、ご自身の状態に合った治療法を見つけることが大切です。
小耳症の症状
小耳症の症状は、耳の見た目だけでなく、聞こえ方や生活にも関わってきます。 お子さん本人やご家族が、どのようなことに向き合うことになるのかを知っておきましょう。
主な症状には、以下のようなものがあります。
- 耳の外側にある「耳介(じかい)」という部分が、生まれつき小さい状態です。
- 形によっては、マスクのひもやメガネをかけることが難しい場合があります。
- 多くの場合、耳の穴がふさがっている「外耳道閉鎖症(がいじどうへいさしょう)」を伴います。
- 音が鼓膜まで進む道がふさがっているため、音が伝わりにくくなります。
- このような聞こえにくさを「伝音難聴(でんおんなんちょう)」と呼びます。
- まれに、あごの骨の形が左右で違うなど、顔の他の部分にも特徴が見られることがあります。
小耳症という診断は、お子さんだけでなく、ご家族、特に親御さんの心にも大きな影響を与えます。 ある研究では、小耳症のお子さんを持つ親御さんの多くが、お子さんの将来を心配するあまり、強い不安やストレスを感じていることがわかっています。 お子さんが生まれたときに十分な情報がなかったり、手術を受けるべきか悩んだりすることも、心の負担につながると報告されています。 不安な気持ちを一人で抱え込まず、まずは専門の医療機関へ相談することが大切です。
小耳症の検査・診断
小耳症の診断は、多くの場合、生まれてすぐの見た目で行われます。 しかし、今後の治療を安全に進めるためには、詳しい検査が欠かせません。 耳の聞こえの状態や、外から見えない内部の構造を正確に知るためです。
主に、以下のような検査を行って、詳しく調べていきます。
- 聴力検査 耳の穴がふさがっていることが多いため、聞こえの確認はとても大切です。 赤ちゃんでも、眠っている間に受けられる検査を行います。 これは、小さな音を聞かせて脳の反応を調べる、安全な検査です。
- 画像検査(CT検査など) CT検査で、耳の奥やあごの骨の状態を立体的に写し出します。 音を伝える骨の形や、顔を動かす神経の通り道を確認します。 この情報は、将来の手術を安全に行うための大切な地図になります。
- 他の部分の確認 耳だけでなく、顔の骨格など、他の部分にも特徴がないかを確認します。 小耳症は、他の症状と一緒に見られることもあるためです。 全身の状態を把握することで、より適切な治療計画を立てられます。
これらの検査結果を合わせて、最終的な診断が決まります。 不安なことやわからないことがあれば、どんな小さなことでもご質問ください。
小耳症の治療
小耳症の治療では、耳の形を整える手術が中心になります。 耳の外側にある「耳介(じかい)」という部分を作る手術です。 マスクやメガネがかけやすくなるなど、生活しやすさにつながります。
現在、日本で広く行われているのは、ご自身のあばらの軟骨です。 肋軟骨(ろくなんこつ)を使って、新しい耳を作る方法です。 体の成長を待ち、手術は2回に分けて行うのが一般的です。
手術は、耳の土台となる肋軟骨が十分に大きくなる10歳ごろが目安です。 胸の大きさが60cm以上になることも、大切な条件となります。
手術の一般的な流れ
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手術の段階
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内容
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1回目の手術
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胸から肋軟骨を取り出し、耳の形に加工して土台(フレーム)を作ります。この土台を、耳があるべき場所の皮膚の下に埋め込みます。
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2回目の手術
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1回目の手術から約半年後に行います。埋め込んだ耳の土台を皮膚ごと持ち上げて立体的にし、自然な形に整えます。
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自分の軟骨以外に、人工の材料などを用いる方法もあります。 ある研究では、自分の組織を使う方法と他の材料を使う方法を比較しました。 どちらの方法でも、治療を受けた方の満足度は9割以上と高い結果でした。 また、合併症が起こる割合は1割未満と、大きな差はないと報告されています。
他の材料を使う方法では、より若い年齢で手術を受けられる場合があります。 また、聞こえを良くする手術を同時に行いやすいという特徴もあります。 どの治療法が最適かは、一人ひとりの状態によって異なります。 担当の医師とよく相談して、一番良い方法を決めていきましょう。