多趾症
タブ 1
お子さんの手や足の指が、生まれつき少し多いかもしれない。そう気づいたとき、ご両親は大きな不安を感じるかもしれません。しかし、「多趾症(たししょう)」は1,000人から2,000人に1人の割合で見られ、決して珍しいものではないのです。
とはいえ、なぜ指が多く生まれてくるのか、将来的に何か影響はないのか、気になる点は尽きないでしょう。実は、その状態は小さなイボのようなものから、骨までしっかり形成されたものまで様々で、まれに他の病気が隠れているサインである可能性も指摘されています。
この記事では、多趾症の原因から詳しい種類、そしてお子さんの将来の機能を第一に考えた治療法までを専門的に解説します。漠然とした不安を解消し、適切な次の一歩を踏み出すために、まずは正しい知識を身につけましょう。
多趾症の概要
多趾症(たししょう)とは、手や足の指が生まれつき6本以上ある状態を指します。 およそ1,000人から2,000人の赤ちゃんに1人の割合で見られ、決して珍しいものではありません。
増えている指の状態は、お子さんによって様々です。 皮膚から小さなイボのように突き出ているだけのものから、骨や関節、爪までしっかりと形づくられた指まで、その見た目は多岐にわたります。
日本人では、手の親指や足の小指に多く見られる傾向があります。 多くの場合、多趾症は指の数が多いこと以外の症状はありません。
しかし、まれに他の症状をともなう「症候群」の一部として現れることがあります。 例えば「グレイグ頭蓋多指症候群」という病気では、指の数のほかに、頭が大きい、目が離れているなどの特徴がみられる場合があります。 この症候群では頻度は低いものの、発達の遅れなどを伴うことも報告されています。 そのため、指の状態を詳しく診察するとともに、全身の状態をしっかりと確認し、他の病気が隠れていないか調べることがとても大切になります。
多趾症の種類
多趾症は、手や足のどの指の近くに指が多く現れるかによって、いくつかの種類に分けられます。 手の指と足の指で、それぞれ呼び方が異なります。
手の多趾症
手の指に多く見られるタイプは、主に以下の3つに分類されます。
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種類 |
特徴 |
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橈側(とうそく)多指症 |
親指側に指が多くなるタイプです。 手の多趾症の中では最もよく見られます。 まれに「グレイグ頭蓋多指症候群」という病気の症状の一つとして、このタイプの多趾症が見られることがあります。 |
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尺側(しゃくそく)多指症 |
小指側に指が多くなるタイプです。 |
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中心性多指症 |
人差し指、中指、薬指のいずれかが多くなるタイプです。 他の指とくっついてしまう「合指症」を伴うこともあります。 |
特に親指側に指が増える橈側多指症は、注意深い観察が必要です。 なぜなら、GLI3という遺伝子の変化が関連する「グレイグ頭蓋多指症候群」の一症状として現れることがあるからです。 この症候群では、指の数のほかに頭が大きい、目が離れているなどの特徴が見られる場合があります。
足の多趾症
足の指に多く見られるタイプも、手の指と同じように分類されます。
- 脛骨(けいこつ)多趾症
- 足の親指(母趾)側に指が多くなるタイプです。
- 腓骨(ひこつ)多趾症
- 足の小指(小趾)側に指が多くなるタイプです。
- 日本人の足の多趾症では、このタイプが多いといわれています。
- 中心性多指症
- 足の中央の指に多くなるタイプです。
このように指が多くなる場所によって細かく分類するのは、見た目だけでなく骨や関節の状態も異なるためです。 どのタイプの多趾症かによって、将来の指の機能を考えた治療方針も変わってきます。
多趾症の原因
多趾症がなぜ起こるのか、その原因はまだ全て解明されていません。 しかし、主な要因として「遺伝子」の働きが関係していると考えられています。 遺伝子は、私たちの体を作るための、いわば「設計図」のようなものです。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中で成長する過程で、この設計図に従って手足が形作られます。 その段階で、指の数や形を決める遺伝子に何らかの変化が起きると、指が予定より多く作られてしまうことがあるのです。
多趾症に関わるとされる遺伝子は、いくつか報告されています。 特に知られているのは、以下の遺伝子です。
- GLI3(ジーエルアイスリー)遺伝子
- この遺伝子の変化は「グレイグ頭蓋多指症候群」と関連します。
- 多趾症のほかに、頭が大きくなる、目が離れているといった特徴がみられることがあります。
- FLNB(エフエルエヌビー)遺伝子
- この遺伝子の変化は、骨の病気(FLNB関連疾患)と関連します。
- 重症なタイプでは、多趾症が症状の一つとして現れることが報告されています。
このように遺伝子が原因の場合、親から子へと受け継がれることがあります。 しかし、ご両親に症状がなくても、お子さんに初めて遺伝子の変化が起きて発症することも珍しくありません。
また、妊娠中の環境が影響する可能性も考えられてはいます。 しかし、ほとんどの場合、原因を一つに特定することは難しいのが現状です。 そのため、ご家族がご自身を責める必要は全くありません。
多趾症の症状
多趾症の主な症状は、手や足の指が生まれつき6本以上あることです。 しかし、ただ指が多いだけでなく、その状態はお子さん一人ひとり異なります。
増えた指の見た目や形には、さまざまなタイプがあります。
- 指の状態
- 骨や関節、爪までしっかりと形づくられている場合があります。 他の指と同じように動かすことができるケースもあります。
- 皮膚だけでつながった、小さなイボのような形をしていることもあります。
- 骨や筋肉が十分に育っておらず、動かせない場合もあります。
指がうまく機能しない場合は、物をしっかり握る力や歩き方に影響が出ることがあります。 そのため、見た目だけでなく、指の機能もしっかりと評価することが大切です。
ほとんどの場合、多趾症は指の数が多いという症状だけがみられます。 しかし、ごくまれに特定の遺伝子の変化が原因で、他の症状をともなうことがあります。
- まれにみられる、多趾症以外の症状の例
- 指の症状
- 指が隣の指とくっついている状態(合指症)を伴うことがあります。
- 顔つきの特徴
- 頭がやや大きめであったり、目と目の間が少し広かったりします。
- 発達について
- 発達のペースがゆっくりになることが報告されていますが、 これはまれな症状(約10%未満)です。
このように、指の状態だけでなく全身を丁寧に診察することが重要です。 気になることがあれば、まずは専門の医療機関へご相談ください。
多趾症の検査・診断
多趾症の診断は、生まれる前から始まることがあります。 お腹の赤ちゃんの指が多いと知ると、驚かれるかもしれません。 しかし、検査で詳しく調べることで、適切な治療計画を立てられます。
生まれる前の検査(出生前診断)
妊娠中の超音波(エコー)検査で、赤ちゃんの指が多いとわかることがあります。 指の形は、だいたい妊娠9〜10週ごろから確認できるようになります。 この検査では、指だけでなく心臓や腎臓など、他の部分に病気が隠れていないかも一緒に確認します。
生まれた後の検査
赤ちゃんが生まれた後は、より詳しく調べるために以下の検査を行います。
- 1. 見た目の確認(視診)
- 医師が目で見て、指の数、形、大きさ、動きなどを丁寧に確認します。
- 2. レントゲンでの確認(画像検査)
- レントゲン検査で、指の骨がどのようになっているか調べます。
- 骨のつながり方は、手術の方法を決めるための大切な情報になります。
- 3. 原因を探る検査(遺伝学的検査)
- まれに、多趾症が他の病気の一つの症状として現れることがあります。
- そのため、血液検査で遺伝子を調べ、原因をはっきりさせることがあります。
- 特定の遺伝子の変化が原因で、骨の病気が隠れていることも報告されています。
- この検査は、関連する病気の診断を確定させるためにも重要です。
これらの検査結果を総合的にみて、お子さんにとって最適な治療法を考えていきます。
多趾症の治療
多趾症の治療は、手術が基本となります。 目的は、指の見た目を整えることだけではありません。 将来、手で物をつかんだり、上手に歩いたりできるように、指の機能をしっかり改善させることが最も大切です。
手術を受けるタイミング
手術は、お子さんの体の負担や安全を第一に考えます。 全身麻酔が問題なく行えるようになる、満1歳ごろが一般的です。 足の指の場合も、歩き始める時期への影響を考えて、同じく1歳ごろに行われることが多いです。
手術の方法は指の状態で決まる
手術の方法は、増えている指の状態によって大きく異なります。 ただ指の数を減らすだけでなく、残した指が将来変形したり、動きにくくなったりしないよう、慎重に計画を立てます。
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指の状態 |
主な手術方法 |
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皮膚だけでつながっている (浮遊型) |
指の付け根を特別な糸で縛って血流を止め、自然に取れるのを待つ方法があります。 簡単な切除手術で治療できることもあります。 |
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骨や関節でつながっている |
単に指を切るだけでなく、残す指の機能を最大限に高めるための丁寧な手術を行います。 ・骨の形を整え、まっすぐな指を目指す ・関節や靭帯(じんたい)を作り直す ・筋肉や腱(けん)を適切な位置へ動かす |
特に骨や関節でつながっているタイプでは、高度な技術が求められます。 将来の指の機能を考え、経験豊富な医師が手術を行うことが大切です。
手術後のケアとチーム医療
手術後も、お子さんの成長に合わせたサポートが必要です。
- リハビリテーション
- 指の動きを良くするために、リハビリが必要になることがあります。
- 作業療法や理学療法を通して、専門家が運動能力の回復をお手伝いします。
- 総合的な治療
- 多趾症が他の病気の一つの症状として現れている場合があります。
- その際は、整形外科だけでなく小児科や遺伝科など、様々な分野の専門家がチームを組んで治療を進めます。
- 必要に応じて、発達の支援や教育的なサポートも行います。










