外耳道閉鎖症

生まれつき耳の穴がなかったり、日々の生活の中で徐々にふさがってしまったりする「外耳道閉鎖症」をご存知ですか?日本では約1万人に1人が発症するといわれ、決して珍しい病気ではありません。実は、良かれと思って続けている耳掃除のしすぎが、聞こえを損なう原因になる可能性もあるのです。

この病気は音の通り道をふさぐことで難聴を引き起こし、特にお子さんの場合は言葉の発達に影響をおよぼすことがあります。また、放置するとめまいや顔面麻痺といった、より深刻な症状につながる危険性も指摘されています。

しかし、近年では治療法も大きく進歩しており、ある研究では従来の手術より聴力改善が大きいとされる治療法も報告されています。この記事では、外耳道閉鎖症の詳しい原因から最新の治療選択肢までを分かりやすく解説します。ご自身や大切なご家族の「聞こえ」を守るための知識として、ぜひ最後までご覧ください。

外耳道閉鎖症の概要

外耳道閉鎖症(がいじどうへいさしょう)とは、音の通り道である耳の穴(外耳道)が、生まれつき、あるいはケガや病気で閉じてしまう状態です。

耳の穴がふさがると、音が鼓膜までうまく届かなくなります。 この状態を「伝音難聴(でんおんなんちょう)」と呼びます。 特に、お子さんが両耳にこの症状を持つ場合、言葉の発達に影響をおよぼす可能性があるため、早期の対応が重要です。

日本では約1万人に1人の割合で見られ、決して珍しい病気ではありません。 この病気には、大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 先天性外耳道閉鎖症
  • 生まれつき外耳道がつくられていない状態です。
  • 後天性外耳道閉razione
  • ひどい外耳道の炎症やケガなどが原因で、後からふさがってしまう状態です。

治療は、聞こえを補うための骨導補聴器の使用や、手術によって音の通り道を新しく作る「外耳道形成術」などが行われます。 最近では、体内に機器を埋め込むインプラント型の骨伝導デバイスも有力な選択肢です。

ある複数の研究をまとめた分析によると、このデバイス治療は、従来の手術に比べて聴力の改善がより大きいと報告されています。 さらに、治療後の合併症や再手術のリスクが低い傾向にあることも示されており、治療法を選ぶ際の重要な情報の一つとなっています。 どの治療法が最適かは、患者さん一人ひとりの状態によって異なるため、専門の医師とよく相談することが大切です。

外耳道閉鎖症の種類

外耳道閉鎖症は、耳の穴がいつふさがったかによって、大きく2つの種類に分けられます。 原因や特徴が異なるため、どちらの種類かを知ることは大切です。

先天性(せんてんせい)外耳道閉鎖症

生まれつき耳の穴(外耳道)がふさがっている状態です。 赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる間に、耳が作られる過程で何らかの問題が起きて発生します。

日本では、およそ1万人に1人の割合で見られます。 多くは片方の耳だけに起こりますが、約1割の方は両方の耳に症状が見られます。 また、耳の見える部分(耳介)の形が小さい、あるいは変形している「小耳症(しょうじしょう)」を伴うことも少なくありません。

後天性(こうてんせい)外耳道閉鎖症

生まれたときは正常だった耳の穴が、その後の原因でふさがってしまう状態です。 主な原因には、ひどい外耳道の炎症やケガなどがあります。

特に注意したいのが、耳そうじのしすぎといった慢性的な刺激です。 良かれと思って行っている耳のケアが、かえって外耳道を傷つけ、閉鎖につながる可能性もあるため注意が必要です。

これら2つの種類の特徴を、以下の表にまとめます。

種類

いつ起こるか

主な原因

特徴

先天性

生まれつき

赤ちゃんがお腹の中にいるときの耳の発育の異常

・多くは片耳のみ<br>・耳の見える部分の変形(小耳症)を伴うことがある

後天性

生まれた後

・外耳道のひどい炎症<br>・ケガ<br>・耳への慢性的な刺激

・もともとは正常な耳の穴だった<br>・日々の生活習慣が原因になることもある

このように、いつ発症したかによって原因や状態は大きく異なります。 どちらの種類かによって、聞こえ方への影響や、その後の検査・治療方針も変わってきます。

外耳道閉鎖症の原因

外耳道閉鎖症が起こる原因は、大きく2つに分けられます。 生まれつきの「先天性」か、生まれた後の「後天性」かです。 それぞれ、なぜ耳の穴がふさがってしまうのかを見ていきましょう。

先天性の原因

生まれつき耳の穴が閉鎖している状態を指します。 赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる「胎児期」が関係します。 この時期に耳が作られる過程で、何らかの異常が起こるのが原因です。

まれに、遺伝的な特徴や、他の体の病気の一症状として現れます。 そのため、耳以外の部分にも注意深く目を向ける必要があります。

後天性の原因

生まれたときは正常だった耳の穴が、生活の中の出来事がきっかけで、後からふさがってしまう状態です。 主な原因は以下の通りです。

  • ケガ(外傷) 交通事故などで頭や耳に強い衝撃が加わることが原因です。
  • 耳の病気(炎症) 細菌による「外耳炎」などを何度も繰り返し、炎症が長引いた場合です。 炎症で皮膚が厚く硬くなり、徐々に耳の穴をふさいでしまいます。
  • くり返す刺激 耳そうじのしすぎや、サーフィンでの冷たい水の刺激などです。 特に耳そうじは、良かれと思ったケアが逆効果になるため注意が必要です。 綿棒で頻繁にこすると、デリケートな皮膚を傷つけ慢性的な炎症を招きます。 この積み重ねが、結果的に外耳道を狭くしてしまうことがあるのです。

外耳道閉鎖症の症状

外耳道閉鎖症の症状は、いつ、どの程度耳の穴がふさがっているかで変わります。 また片方の耳か、両方の耳かによっても、生活への影響は大きく異なります。 最も代表的な症状は、「聞こえにくさ」である難聴です。

これは、音の通り道がふさがっているために起こるものです。 音がうまく鼓膜に伝わらない「伝音難聴(でんおんなんちょう)」が中心です。 聞こえ方の違いによって、次のような影響が出ることがあります。

  • 両方の耳に症状がある場合 周りの音が聞こえにくいため、言葉を覚えるのが難しくなるなど、 言葉の発達に影響をおよぼす可能性があります。
  • 片方の耳だけに症状がある場合 もう片方の耳で音を聞くことはできます。 しかし、音のする方向が分かりにくかったり、 教室のような、にぎやかな場所での会話が聞き取りにくくなります。

難聴のほかにも、耳の見た目や、他の症状を伴うことがあります。 特に、耳の奥にできる「真珠腫(しんじゅしゅ)」には注意が必要です。 真珠腫は、周りの大切な骨を壊しながら大きくなることがあるためです。

この真珠腫が進行すると、次のような症状を引き起こす可能性があります。

  • 耳だれ 耳からにおいのある液体が出てくる状態です。
  • めまい 自分がぐるぐる回っているような感覚に襲われます。
  • 顔の動きにくさ 顔の筋肉を動かす神経が傷つき、顔がゆがむこともあります。 これを「顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)」と呼びます。

また、生まれつきの場合は、耳の見える部分(耳介)の形が小さいこともあります。 これは「小耳症(しょうじしょう)」と呼ばれる状態です。 まれに、顔の骨の形など、耳以外の部分にも特徴が見られることもあります。 気になる症状があれば、どんな小さなことでも専門医に相談することが大切です。

外耳道閉鎖症の検査・診断

外耳道閉鎖症の疑いがある場合、いくつかの検査を組み合わせます。 耳の状態と聞こえの程度を、正確に把握することが目的です。 お子さんの不安を和らげながら、丁寧に進めていきます。

まず、耳の穴がどのくらいふさがっているかを直接見て確認します。 このとき「耳鏡(じきょう)」という、耳の中を明るく照らす道具を使います。

次に、聞こえの状態を調べる「聴力検査」を行います。 これは、難聴の程度や種類を評価するための非常に重要な検査です。 お子さんの年齢や協力度に応じて、検査方法を使い分けます。

【お子さんの年齢に合わせた主な聴力検査】

  • 5歳くらいまでのお子さま 眠っている間に、脳が音にどう反応するかを調べる検査です。 痛みはなく、お子さんが自然に眠っている間に行います。 – 聴性脳幹反応(ABR)検査 – 聴性定常反応(ASSR)検査
  • 5歳くらいからのお子さま・大人の方 – 純音聴力検査 「ピー」という音が聞こえたらボタンを押す、一般的な検査です。

さらに、耳の奥深くの状態を詳しく調べるためにCT検査を行います。 CT検査は、外から見えない部分の骨の形や神経の通り道を確認します。 この結果は、治療法を選ぶための大切な情報になります。

手術で音の通り道を新しく作れるか、などを判断する材料になるのです。 もし他の病気が背景にある場合は、遺伝子検査を検討することもあります。 これらの結果を総合的に評価し、最適な治療計画を立てていきます。

外耳道閉鎖症の治療

外耳道閉鎖症の治療法は、一つだけではありません。 症状の程度や、いつから始まったかなどを総合的に判断します。 一人ひとりに合った方法を選ぶことが、とても大切です。

特に、生まれつき両方の耳に症状があるお子さんの場合です。 言葉の発達への影響を考え、早めに聞こえを助ける必要があります。 治療は、主に次の2つの方法に分けられます。

1. 聞こえをサポートする機器

手術をせずに、聞こえを良くするための道具を使う方法です。

  • 補聴器 骨や軟骨を優しくふるわせて、音を直接脳に届けます。 「骨導(こつどう)補聴器」と呼ばれ、耳の穴を通さず音を感じます。
  • 埋め込み型の聴覚機器 手術で頭の骨に、小さな装置を取り付ける方法です。 この装置が音の振動を直接、頭の骨に伝えてくれます。 よりはっきりと音を感じやすくなることが期待できます。

2. 手術による治療

手術によって、耳の形や聞こえを改善する方法です。

  • 耳介(じかい)形成術 耳の見える部分(耳介)の形を整えるための手術です。
  • 外耳道形成術 ふさがってしまった耳の穴を、新しく作り直す手術です。 音の通り道を確保し、聞こえの改善を目指します。

どちらの治療法が良いの?

「埋め込み型の機器」と「外耳道形成術」のどちらが良いか。 この点を比較した、海外の複数の研究報告があります。 その分析によると、機器を使った方が聞こえの改善が大きい傾向でした。

また、治療後に起こるかもしれない問題(合併症)の割合も、 機器を使った方が手術よりも低いという結果が示されています。 再度手術が必要になる可能性も、低い傾向にあったとのことです。

ただし、これはあくまで多くの人を集めたデータ上の傾向です。 あなたにとって最適な治療法は、体の状態によって異なります。 専門の医師とよく相談し、納得して一番良い方法を選びましょう。