地図状舌

鏡で舌を見たとき、表面にまるで世界地図のようなまだら模様ができていて驚いた経験はありませんか?そのまだら模様は、日によって形や場所を変えるため、「何か悪い病気ではないか」と不安に感じてしまうかもしれません。

この不思議な模様は「地図状舌(ちずじょうぜつ)」と呼ばれ、ある研究では成人の約30人に1人が経験すると報告されている、決して珍しくない状態です。多くの場合、痛みなどの自覚症状はなく、体に害のない「良性」のものなので、過度に心配する必要はありません。

しかし、なぜこのような模様ができるのでしょうか。この記事では、ストレスや体質も関係するといわれる地図状舌の原因から症状、ご自身でできるケアの方法までを詳しく解説します。正しい知識で、その見た目からくる不安を解消していきましょう。

地図状舌の概要

舌の表面に、まるで世界地図のようなまだら模様ができることがあります。 この状態を「地図状舌(ちずじょうぜつ)」と呼びます。

地図状舌には、以下のような見た目の特徴があります。

  • 模様の見た目 舌の表面や側面に、赤いまだら模様(紅斑)が現れます。 その周りは、少し盛り上がった白っぽい線で縁取られます。
  • 模様の変化 模様の形や場所は毎日変わり、消えたり現れたりします。 このため「良性移動性舌炎」という別名もついています。

これは決して珍しいものではなく、誰にでも起こりうる状態です。 ある研究では、成人の約30人に1人が経験すると報告されています。 特に、お子さんや若い女性にみられることが多い傾向があります。

地図状舌は、基本的に心配のいらない「良性」のものです。 良性とは、がんのような悪性の病気に変化しないという意味です。 ほとんどの場合、痛みなどの自覚症状を伴うことはありません。

ただし、まれに他の病気と見分ける必要が出てくることもあります。 舌の状態が気になる場合は、一度医療機関へご相談ください。

地図状舌の種類

地図状舌は、模様ができる場所によって呼び名が変わることがあります。 また、他の舌の状態と一緒に現れることも珍しくありません。

専門的には「良性移動性舌炎」とも呼ばれます。 「良性」はがんなど悪い病気ではないという意味です。 「移動性」は模様が日によって変わる様子を表しています。

模様ができる場所による違い

地図状舌の模様は、できる場所によって以下のように呼ばれます。

できる場所

呼び方

特徴

舌の表面や側面

地図状舌

(良性移動性舌炎)

最も一般的にみられるタイプです。

舌のザラザラした部分に模様ができます。

舌以外の口の中

(頬、歯ぐきなど)

地図状口内炎

(遊走性紅斑)

口の天井や頬の内側、歯ぐきなど

舌と同じ模様ができる状態です。

「遊走性紅斑(ゆうそうせいこうはん)」の「遊走」は、 さまよい動くという意味で、やはり模様が変化する特徴を示します。 基本的には同じものが、どこにできるかで呼び方が変わるのです。

一緒によくみられる舌の状態

地図状舌は、舌の表面にたくさんの深い溝ができる 「溝状舌(こうじょうぜつ)」という状態と同時にみられることがよくあります。

ある研究によると、地図状舌と溝状舌は、 どちらも比較的よくみられる舌の状態で、多くの場合、治療は必要ありません。 どちらも体に害をおよぼすものではないので、安心してください。

しかし、溝に汚れがたまりやすくなることもあります。 見た目が気になる、あるいはしみるなどの症状があればご相談ください。

地図状舌の原因

地図状舌がなぜ起こるのか、そのはっきりとした原因はまだわかっていません。 しかし、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

地図状舌の発生に関係する可能性のある要因は、大きく分けて3つあります。

  • 体調や生活習慣の乱れ 風邪や疲れ、強いストレス、睡眠不足などが引き金になることがあります。 また、舌の粘膜を健康に保つビタミンB群などが不足することも一因です。
  • もともとの体質 親から受け継いだ体質(遺伝的な要因)が関係することもあります。 アトピー性皮膚炎などのアレルギー体質の方にもみられやすい傾向です。
  • 他の病気やお口の中の状態 ・乾癬(かんせん)との関連 皮膚の病気である乾癬との関係は、古くから指摘されています。 舌の細胞のつくりが乾癬と似ているため、口の中にできる乾癬の一種という考え方もあります。
    ・お口の中の細菌バランス 近年の研究では、お口の中にもともといる細菌のバランスが関係している可能性が示されています。 特定の細菌が、地図状舌のきっかけになるのではないかという研究が進められています。

このように、地図状舌はたった一つの原因で起こるわけではありません。 体質をベースとして、ストレスや栄養不足といった要因が重なって、 舌の模様として現れるとイメージすると分かりやすいかもしれません。

地図状舌の症状

地図状舌の症状で最もわかりやすいのは、その独特な見た目の変化です。 健康な方の舌は全体がきれいなピンク色で、正常な舌乳頭で覆われています。 しかし地図状舌では、舌の表面にまだら模様が現れます。

具体的には、以下のような症状がみられます。

  • 地図のような模様 舌の表面や側面に、赤くてツルツルした部分が現れます。 この赤い部分の周りは、白っぽく少し盛り上がった線で縁取られます。
  • 日によって模様が変化する 模様の形や場所は、数時間から数日の単位で変わるのが特徴です。 そのため「良性移動性舌炎」という別名がついています。
  • 表面のザラザラ感がなくなる 舌の表面には、糸状乳頭(しじょうにゅうとう)という細かい突起があります。 この突起が炎症で一時的になくなることで、赤いツルツルした部分ができます。

ほとんどの場合、見た目の変化だけで痛みなどの自覚症状はありません。 しかし、人によっては食べ物などがきっかけで症状を感じることがあります。

  • 辛いもの、酸っぱいもの、塩辛いものなどの刺激物がしみる
  • 歯や食べ物が当たったときに、ヒリヒリとした痛みを感じる
  • 軽い味覚の異常を感じる

まれに、舌以外の頬の内側や唇の裏側などにも同じような模様ができます。 この場合は「地図状口内炎」と呼ばれます。

地図状舌の検査・診断

地図状舌の診断は、特別な機械を使わないことがほとんどです。 多くの場合、お医者さんが舌の状態を直接見ることで診断します。 これを「視診(ししん)」といい、診断の基本となります。

診察では、舌の模様が日によって変わるかなどを質問します。 この特徴的な見た目と症状の変化を確認できれば、診断がつきます。

しかし、まれに他の病気と見分けるために検査をすることがあります。 地図状舌は心配のないものですが、似た症状の病気でないか、 きちんと確認することが、とても大切になるからです。

詳しい検査が必要になる場合

  • ヒリヒリとした痛みが、長い間続いている
  • 見た目が、典型的な地図状舌の模様と少し違う
  • 舌に硬い「しこり」のようなものができている

具体的な検査方法 このような場合は、より詳しく調べるために以下の検査を行います。

検査の種類

内容

組織検査

(生検)

舌の気になる部分を、ごくわずかに取って顕微鏡で調べます。

「白板症(はくばんしょう)」など、まれな病気でないことを

確かめるために行われる、とても重要な検査です。

細菌検査

舌の表面を綿棒でこすり、カビ(カンジダ菌)などが

異常に増えていないかを調べます。

痛みの原因が、細菌の感染によるものでないか確認します。

気になる症状がある場合は、自分で判断せず相談してください。 まずは医師や歯科医師に舌の状態を見せることが大切です。

地図状舌の治療

地図状舌は、見た目に驚くかもしれませんが、多くは治療の必要がありません。 アメリカの研究でも、地図状舌は特別な治療を必要としない、 ごく一般的な舌の状態であると報告されています。 まずは心配しすぎず、安心して様子を見ることが大切です。

ただし、食べ物や飲み物がしみたり、ヒリヒリとした痛みを感じたり、 症状が気になってしまうこともあります。 そのような場合は、症状を和らげるための治療を行います。

症状がある場合の治療法 症状の強さに合わせて、以下のようなお薬を使うことがあります。

  • うがい薬 炎症をおさえる作用のあるうがい薬で、お口の中全体を優しくケアします。
  • 塗り薬 痛む部分に直接塗る、副腎皮質ステロイドの塗り薬で炎症をしずめます。
  • 局所麻酔薬 どうしても痛みがつらい場合に、一時的に舌の感覚をにぶらせる成分の 入ったお薬を使うこともあります。

ご自身でできるケアと注意点 症状を悪化させないためには、日常生活での工夫も大切です。 以下の点に気をつけてみましょう。

  • 刺激の強い食べ物を避ける 香辛料を多く使った辛いもの、レモンなどの酸っぱいもの、 塩辛いものは、症状を悪化させる可能性があるので控えましょう。
  • お口の中を清潔に保つ 毎日の歯磨きは大切ですが、舌を歯ブラシや舌クリーナーで 強くこすることは、かえって粘膜を傷つけてしまうため避けてください。 優しくケアすることがポイントです。
  • 十分な休息をとる ストレスや疲れが症状の引き金になることもあります。 ゆっくりと体を休める時間を作り、生活リズムを整えましょう。

地図状舌は、がんのような悪性の病気に変化することはありません。 しかし、症状が長引いたり痛みが強かったりする場合には、 自己判断せずに医師や歯科医師に相談してください。