嗅神経芽細胞腫
治りにくい片方だけの鼻づまりや、原因不明の鼻血が続く…。もしかしたら単なる風邪やアレルギーではないかもしれません。その症状は、鼻の奥深く、脳や目に近い場所にできる「嗅神経芽細胞腫」という、まれながんのサインである可能性があります。
「がん」と聞くと不安になるかもしれませんが、希望となる治療法も進歩しています。特に、手術前に行う「導入化学療法」という治療法は、ある研究で患者さんの100%に効果を示し、目の機能を温存できる可能性を大きく高めると報告されました。
この記事では、嗅神経芽細胞腫の初期症状から、最新の治療法までを詳しく解説します。気になる症状に心当たりがある方は、ご自身の状態を正しく理解し、最適な治療を見つけるための一助としてください。
嗅神経芽細胞腫の概要
嗅神経芽細胞腫は、鼻の奥深くにある、においを感じるための特別な神経(嗅神経)から発生する、まれながんです。
鼻の最も高い天井部分、ちょうど眉間の奥あたりにできます。この場所は、物を見るための眼や、考えるための脳と非常に近いのが特徴です。そのため、腫瘍の広がり方が治療の大きなポイントになります。
最初は鼻づまりや鼻血、においが分かりにくくなるといった、風邪やアレルギー性鼻炎に似た症状で始まることが少なくありません。そのため、がんとは気づかずに発見が遅れてしまうケースもあります。
治療は、手術、放射線治療、化学療法を組み合わせて行います。このがんは、他のがんに比べて化学療法や放射線治療の効果が出やすいという特徴があります。
特に近年、手術の前に行う「導入化学療法」に注目が集まっています。ある研究では、この治療によって眼の機能が温存できた割合が非常に高かったと報告されました。特に嗅神経芽細胞腫の患者さんでは、導入化学療法で高い効果が示され、眼球を残せる可能性が高まるという結果も出ています。
嗅神経芽細胞腫の種類
嗅神経芽細胞腫は、がんの広がり具合によって、 治療計画を立てるための「ステージ」に分けられます。 このステージは、がんの進行度を示す地図のようなものです。
一般的には「Kadish(カディッシュ)分類」が用いられます。 この分類では、がんの広がりをAからDの4段階で評価します。
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ステージ |
がんが広がっている場所 |
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ステージA |
鼻の空洞(鼻腔)の中だけにとどまっている状態です。 |
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ステージB |
鼻の周りにある空洞(副鼻腔)まで広がった状態です。 |
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ステージC |
目の周りの骨(眼窩)や脳の土台(頭蓋底)まで及んだ状態です。 |
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ステージD |
首のリンパ節や肺など、鼻から離れた場所に転移した状態です。 |
ステージが進むほど、治療はより慎重な計画が必要になります。 特にステージCでは、がんが目の近くにまで迫っています。 そのため、目の機能に影響が出る可能性が心配されます。
しかし、希望となる治療法も進歩しています。 手術の前に行う抗がん剤治療(導入化学療法)によって、 目の機能を残せる可能性が高まることがわかってきました。
複数の研究をまとめた報告によると、嗅神経芽細胞腫の患者さんでは、 この導入化学療法が、100%の確率でがんに効果を示したとされています。 この結果は、目の機能を守れる可能性を大きく高めるものです。
ご自身の状態を正確に把握し、最適な治療法を見つけることが大切です。
嗅神経芽細胞腫の原因
嗅神経芽細胞腫の原因は、残念ながらまだはっきりとわかっていません。 「なぜ自分が?」と不安に思うかもしれませんが、原因が不明なのは珍しいことではありません。
大切なのは、ご自身のせいではないということです。 以下の点は、現時点の研究で明らかになっています。
- 遺伝との関係 親から子へ遺伝するというはっきりした証拠はありません。 ご家族に同じ病気の方がいなくても発症します。
- 生活習慣との関係 食事や喫煙、お仕事などが直接の原因になるという報告もありません。 これまでの生活を責める必要は全くないのです。
このがんは、鼻の奥にあるにおいを感じるための特別な神経細胞(嗅上皮)が、何らかのきっかけでがん細胞に変わることで発生します。
原因はわかっていませんが、このがんが持つ「性質」の研究は進んでいます。 特に、化学療法(抗がん剤)が効きやすいという特徴があることがわかってきました。
ある研究では、手術の前に行う「導入化学療法」という治療で、嗅神経芽細胞腫の患者さん全員に効果が見られたと報告されています。
原因解明には至っていませんが、がんの性質を理解することが、より良い治療法の開発につながっているのです。
嗅神経芽細胞腫の症状
嗅神経芽細胞腫の最初のサインは、風邪や花粉症とよく似ています。 「いつものことかな?」と思ってしまい、発見が遅れることもあります。 しかし、以下のような症状が長く続く場合は注意が必要です。
【もしかして?と感じる初期症状】 腫瘍が鼻の中にでき始めた頃にあらわれる症状です。
- 片方だけの鼻づまり 風邪などと違い、薬を飲んでもなかなか治らないのが特徴です。 いつも同じ側の鼻だけが詰まっている場合は要注意です。
- 繰り返す鼻血 鼻をぶつけたわけでもないのに、鼻血が出ることがあります。 はっきりした原因がないのに繰り返すのが一つのサインです。
- においが分かりにくい(嗅覚障害) 好きな食べ物の香りや、お花のにおいがしなくなります。
- 原因がわからない頭痛 鼻の奥で腫瘍が大きくなると、頭痛が起きることもあります。
【進行した場合にあらわれる症状】 腫瘍が大きくなり、近くにある目や脳に影響が及ぶと、 次のような症状があらわれることがあります。
- 目の症状 ものが二重に見えたり、視力が落ちたりします。 目が前に押し出されるように感じることもあります。
- 脳への影響 けいれんが起きたり、意識がもうろうとしたりします。
特に、腫瘍が目の近くまで広がると、目の機能が心配になります。 しかし、希望となる研究報告もあります。
手術の前に行う「導入化学療法」というお薬の治療があります。 ある研究では、この治療が嗅神経芽細胞腫の患者さん全員に効果を示し、 目の機能を残せる可能性が非常に高まったと報告されました。
気になる症状があれば自己判断せず、専門の医師に相談しましょう。
嗅神経芽細胞腫の検査・診断
治りにくい鼻づまりや鼻血などの症状で受診すると、まず鼻の中を詳しく観察することから検査が始まります。
医師はペンライトのような器具や、細いカメラ(鼻腔内視鏡)を使います。 これで鼻の奥を丁寧に見て、腫瘍ができていないかを確認します。
がんの広がりを知るための精密検査
鼻の中に疑わしいものが見つかった場合、次に画像検査を行います。 腫瘍の大きさや、どこまで広がっているかという「がんの地図」を作るためです。
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検査の種類 |
この検査でわかること |
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CT検査 |
X線で体の断面図を撮影します。<br>腫瘍が脳の土台となる骨(頭蓋底)を壊していないかなどを確認します。 |
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MRI検査 |
磁気の力で体を撮影します。<br>脳や目のような、やわらかい組織へのがんの広がりを見るのに役立ちます。 |
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PET/CT検査 |
全身のがん細胞を調べる検査です。<br>首のリンパ節や肺など、鼻から離れた場所へ転移していないかを確認します。 |
診断を確定させるための「病理検査」
画像検査だけでは「がんの疑い」までしかわかりません。 最終的な診断を確定させるために「病理検査(生検)」が不可欠です。
これは、腫瘍の一部を少しだけ取って、顕微鏡で細胞の種類を調べる検査です。 この検査で、初めて嗅神経芽細胞腫であると診断が確定します。
正確な診断は、治療方針を決めるうえで非常に重要です。 特にこのがんは、手術前に行う抗がん剤治療(導入化学療法)の効果が高いことがわかっています。
ある複数の研究をまとめた報告では、この治療法が嗅神経芽細胞腫の患者さん全員に効果を示したとされています。 目の近くまで広がったがんでも、この治療で目の機能を残せる可能性が高まるのです。
まずは検査でご自身の状態を正確に知ることが、最適な治療への第一歩となります。
嗅神経芽細胞腫の治療
嗅神経芽細胞腫の治療は、一つの方法だけではありません。 がんの進行度や、患者さんの体の状態を総合的に判断します。 主に以下の3つの治療法を組み合わせて計画を立てます。
- 手術(外科治療) がんそのものを体から取り除く、治療の柱となる方法です。 鼻の穴からカメラを入れて行う、体への負担が少ない内視鏡手術。 がんが脳の近くまで広がっている場合は、開頭手術も行います。
- 放射線治療 手術で取り切れなかったり、目に見えなかったりするがん細胞を狙います。 高いエネルギーの放射線をあてて、がん細胞を破壊します。 手術後の再発を防ぐために行われることが多い治療法です。
- 化学療法(抗がん剤治療) お薬の力で、がん細胞が増えるのを抑える治療法です。 点滴や飲み薬を使い、手術や放射線治療の効果を高めます。 他の場所への転移が見つかった場合にも用いられます。
特に、がんが目の周りまで広がっている場合が心配ですよね。 以前は、目の機能を守るのが難しいケースも少なくありませんでした。 しかし現在、手術の前に行う「導入化学療法」が注目されています。
ある信頼性の高い研究報告では、驚くべき結果が示されました。 嗅神経芽細胞腫の患者さん全員(100%)に、 この導入化学療法でがんが小さくなるなどの効果が見られたのです。 さらに、この治療法によって目の摘出を避けられたとされています。
この結果は、目の機能を残せる可能性を大きく高めるものです。 治療法は日々進歩しており、希望となる選択肢も増えています。 担当の医師とよく相談し、最適な治療計画を立てていきましょう。













