咬合性外傷

冷たいものがしみる、噛むと痛む、朝起きると顎がだるい。こんな症状に心当たりはありませんか?虫歯や歯周病が見当たらないのに続くその不調は、自分でも気づいていない「癖」が原因かもしれません。

実はこれらのサインは、無意識の歯ぎしりや食いしばりが引き起こす「咬合性外傷」という歯のケガである可能性があります。1日のうち歯が触れ合う時間は本来20分程度ですが、過剰な力がかかり続けることで、健康な歯やそれを支える組織にまで深刻なダメージを与えているのです。

放置すれば、大切な歯を失うことにも繋がりかねないこの問題。本記事では、咬合性外傷の詳しい原因から、近年の研究で注目される最新の検査・治療法までを解説します。ご自身の歯を守るための知識として、ぜひ最後までご覧ください。

咬合性外傷の概要

咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)は、歯のケガの一種です。 歯ぎしりや食いしばりなど、強すぎる噛む力が原因となります。 歯そのものだけでなく、歯を支える歯ぐきや骨まで傷つけます。

食事などで歯と歯が触れ合う時間は、1日で合計20分ほどです。 しかし無意識の癖で、特定の歯に過剰な力がかかり続けます。 すると歯や周りの組織が、その大きな負担に耐えきれません。

歯ぎしりや食いしばりは、ブラキシズムとも呼ばれる状態です。 この強すぎる力は、頬にある「咬筋」という筋肉に影響します。 近年の研究では、治療による筋肉の変化を超音波で評価できます。 超音波検査は、筋肉の状態を客観的に見るのに役立つ方法です。

咬合性外傷では、以下のような症状がみられることがあります。

  • 歯の揺れ 指で押すと歯がグラグラ動いたり、抜けそうに感じます。
  • 噛んだときの痛み 食事の際に、特定の歯で噛むとズキンとした痛みが出ます。
  • 知覚過敏 冷たい飲み物やアイスで、歯がキーンとしみやすくなります。
  • 歯の破損 硬いものを食べていないのに、歯が欠けたり折れたりします。

健康な歯であっても、過剰な力で咬合性外傷は起こりえます。 放置すれば、歯を失う原因にもなるため注意が必要です。 気になる症状があれば、早めに歯科医院へ相談してください。

咬合性外傷の種類

咬合性外傷は、歯を支える土台(歯ぐきや骨)の状態によって、 大きく2つの種類に分けられます。 どちらのタイプかによって、原因や治療法が少しずつ異なります。

1. 一次性咬合性外傷

歯を支える土台は健康なのに、強すぎる力がかかり生じるケガです。 健康な歯でも、許容量を超える力でダメージが蓄積してしまいます。

主な原因は、歯ぎしりや食いしばりなどの無意識の癖です。 これらの癖は「咬筋」という頬の筋肉に、大きな負担をかけます。 近年の研究では、この筋肉の状態を超音波検査で評価できます。 超音波検査は、筋肉のダメージを客観的に見るのに役立つ方法です。

2. 二次性咬合性外傷

歯周病などで、歯を支える土台がすでに弱っている状態です。 土台が弱いため、普段の食事で噛む力でさえ負担になります。 健康な歯なら問題ない力でも、歯や土台にダメージを与えます。

種類

一次性咬合性外傷

二次性咬合性外傷

歯ぐきの状態

健康で問題ない

歯周病などで弱っている

かかる力

歯ぎしりなどの異常に強い力

食事などの日常的な力

このように、ご自身の歯ぐきの状態によりタイプは異なります。 正確な診断と原因に合わせた治療が、歯を守るために重要です。

咬合性外傷の原因

咬合性外傷は、歯や歯を支える組織に強すぎる力がかかり起こります。 原因は一つだけでなく、いくつかの要因が重なることも少なくありません。

最大の原因は、歯ぎしりや食いしばりなどの「ブラキシズム」です。 寝ている間や集中している時に、無意識に歯を強く噛んでいます。 近年の研究でも、咬合性外傷の背景にはこの癖が強く関わります。

ブラキシズムは、頬にある「咬筋」という筋肉を過剰に使います。 筋肉が疲れて硬くなり、歯や顎に大きな負担をかけ続けるのです。 最近では超音波検査で、この筋肉のダメージを客観的に見れます。

その他にも、以下のような原因が考えられます。

  • 噛み合わせの問題 歯並びの乱れなどで、特定の歯だけが強く当たってしまいます。
  • 合わない詰め物や被せ物 治療した歯の高さが不適切だと、全体のバランスが崩れます。
  • 歯周病の進行 歯を支える骨が弱まり、食事の力でも負担になってしまいます。

咬合性外傷の症状

咬合性外傷のサインは、歯だけに現れるとは限りません。 歯を支える組織や、顎の筋肉などにも症状が出ることがあります。 ご自身の状態と照らし合わせ、病気の早期発見につなげましょう。

歯や歯ぐきに現れる症状

特定の歯に強すぎる力がかかり続けると、次のような症状が出ます。

  • 歯の揺れ 食事中や指で押したときに、以前より歯がグラグラ動く感じがします。
  • 噛んだ時の痛み 食事などで噛み合わせた時、特定の歯にズキンとした痛みを感じます。
  • 知覚過敏 冷たい飲み物や歯磨きのうがいで、歯がキーンとしみやすくなります。
  • 歯が欠ける・折れる 硬いものを食べていないのに、歯にひびが入ったり欠けたりします。
  • 歯ぐきの違和感 歯ぐきが下がって歯が長く見えたり、腫れぼったく感じたりします。

顎の筋肉などに現れる症状

歯ぎしりや食いしばりが原因の場合、顎の筋肉にも影響が出ます。 ものを噛むための頬の筋肉「咬筋」が、過度に緊張するためです。 近年の研究では、この咬筋の変化を超音波で評価できるとされます。

  • 朝、起きた時に顎の筋肉がだるい、または痛い
  • 口が開きにくい、または開けるとカクカク音がする
  • 原因不明の頭痛や肩こりが続く

【咬合性外傷セルフチェック】 ご自身に当てはまるものがないか、確認してみましょう。 □ 噛むと痛い、または違和感がある □ 歯がグラグラと揺れる感じがする □ 冷たいものや風が歯にしみる □ 朝、起きた時に顎がだるい、または痛い □ 歯がすり減ったり、欠けたりしている気がする

一つでも当てはまるなら、咬合性外傷の可能性があります。 放置すると歯を失うこともあるため、早めに歯科医院へご相談ください。

咬合性外傷の検査・診断

咬合性外傷の診断では、まず患者さんのお悩みをお伺いします。 その上で、お口の中の状態を詳しく調べる検査を進めていきます。 目に見えない部分のダメージを正確に把握することが重要です。

基本的な検査

お口の中を多角的に調べ、原因を突き止めるための検査です。

  • 噛み合わせの検査 色のついた薄い紙を噛み、歯が強く当たる場所を確認します。 全体の噛み合わせのバランスが崩れていないかを調べます。
  • 歯の揺れの検査 ピンセットのような器具で歯を優しく動かして揺れ方を見ます。 健康な歯と比べてどのくらい揺れるのか、その程度を調べます。
  • レントゲン検査 歯の根や、歯を支えるあごの骨の状態を画像で確認します。 特定の歯の周りの骨が溶けていないかなどを詳しく見ます。
  • 歯周ポケット検査 歯と歯ぐきの間の溝の深さを測り、歯周病の有無を調べます。 歯周病が歯の揺れの原因になっていないかを確認します。

筋肉の状態を調べる検査

歯ぎしりや食いしばりは、頬の筋肉「咬筋」に大きな負担をかけます。 この筋肉の状態を客観的に評価するため、超音波検査を行うことがあります。 近年の研究では、この検査が治療効果の評価にも役立つとされます。 超音波で筋肉の厚さや硬さを見ることで、負担の度合いを評価します。

これらの検査結果を総合的に見て、咬合性外傷かどうかを診断します。 正確な診断に基づき、一人ひとりに合った治療計画を立てていきます。

咬合性外傷の治療

咬合性外傷の治療目的は、歯にかかる強すぎる力を減らすことです。 歯とその周りの組織を、さらなるダメージから守るために行います。 原因や症状は人それぞれなので、治療法も一つではありません。 いくつかの方法を組み合わせて、最適な治療計画を立てていきます。

主な治療法には、以下のようなものがあります。

  • 噛み合わせの調整 強く当たりすぎている歯を、ごくわずかに削って高さを調整します。 これにより、全体の歯に力がバランス良く分散されるようになります。
  • マウスピース(ナイトガード)の装着 歯ぎしりが原因の場合、夜間に専用のマウスピースを装着します。 歯と歯が直接こすれ合うのを防ぎ、歯や顎への負担を軽くします。
  • 歯周病の治療 歯を支える土台が弱っている場合は、まず歯周病の治療を優先します。 歯ぐきの状態を改善し、土台を安定させることが非常に重要です。
  • 詰め物や被せ物の調整 高さが合わない詰め物などは、噛み合わせのズレの原因になります。 これらを適切な形に調整したり、作り直したりして改善します。

最近の研究では、新しい治療の選択肢も報告されています。 歯ぎしりが原因の場合、筋肉の緊張を和らげる注射も有効です。 この治療法は、痛みの引き金となる筋肉のポイントに薬を注射します。 これにより、筋肉痛を和らげる効果が期待できるのです。

ある研究では、この注射治療がマウスピース(咬合スプリント)と 同等の効果が期待できると示されました。 どちらの治療でも、噛む筋肉(咬筋)の状態が改善したのです。 治療効果の判定には、超音波検査が客観的な評価に役立ちます。

どの治療が最適かは、精密な検査で原因を突き止めてから決まります。 自己判断で放置せず、まずは歯科医師へ相談することが大切です。