中枢性めまい症

「めまい」と聞くと、立ちくらみや疲れが原因だと軽く考えていませんか?しかし、そのめまいが脳からの大切なSOSサインかもしれないとしたら、どうでしょう。私たちは毎日、脳が複雑なバランス調整を行っているおかげで、まっすぐ立ったり歩いたりできています。もし、この脳にトラブルが起きると、ただのめまいでは済まない「中枢性めまい症」となる可能性があります。

特に高齢の方々にとってめまいは身近な症状ですが、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍など、放置すると危険な病気が隠れていることも少なくありません。例えば、めまいの約27.7%が脳への血流不足に関連しているという研究報告もあります。

本記事では、この中枢性めまい症について詳しく解説し、早期発見・治療の重要性をお伝えします。

中枢性めまい症の概要

私たちは、毎日、立ったり歩いたりして体のバランスを保っています。これは、耳の奥にある三半規管(さんはんきかん)からの情報や、目から入る情報、手足から伝わる体の位置情報などが脳に集められ、脳がこれらをまとめて体をコントロールしているからです。もし、このバランスを保つ仕組みのどこかに問題が起きると、めまいを感じることがあります。

めまいは大きく分けて「末梢性めまい」と「中枢性めまい」の2種類があります。

末梢性めまいは、耳の奥に問題がある場合が多いです。

一方、中枢性めまい症は、めまいの原因が「脳」にあるものを指します。

脳は、体の動きや感覚、そしてバランスをコントロールする重要な役割を担っています。

中枢性めまい症では、この脳の中でバランスを調整する部分に異常が起きている状態なのです。

特に、ご高齢の方々でめまいは頻繁にみられる症状の一つです。

めまいは、ご自身の生活の質を大きく下げてしまう可能性があります。

加齢に伴い、バランスを保つ複数の機能が低下することも一因です。

例えば、ただの立ちくらみだろうと軽く考えてしまう方もいるかもしれません。

しかし、脳に原因がある中枢性めまい症の場合には、見過ごしてはいけない大切なサインであることも少なくありません。

めまいの感じ方は人それぞれですが、脳からのSOSの可能性もあります。

中枢性めまい症の原因となる脳の病気はいくつかあります。

・脳梗塞(のうこうそく)

・脳の血管が詰まり、脳の一部に血液が届かなくなる病気です。

・脳出血(のうしゅっけつ)

・脳の血管が破れて、脳の中で出血が起こる病気です。

・脳腫瘍(のうしゅよう)

・脳の中に異常な細胞の塊ができる病気です。

これらの病気によって、脳のバランス感覚を司る部分に問題が生じると、めまいが起こります。

症状は、ぐるぐると回るような「回転性めまい」だけではありません。

体がぐらぐらする、まっすぐに歩けない、ものが二重に見える(複視)、手足がしびれるといった、めまい以外の症状を伴うこともあります。

これらの症状は、脳のどこに異常があるかによって異なりますので、めまいを感じたら早めに医療機関を受診し、原因をきちんと調べることが大切です。

中枢性めまい症の種類

中枢性めまい症は、体のバランスをコントロールする脳にトラブルがある時に起こるめまいです。脳のどの部分に問題が起きているかによって、めまいの種類が分かれます。脳の病気と聞くと、とても心配になるかもしれません。しかし、自分のめまいがどの種類なのかを知ることが、早く元気になるための大切な第一歩です。

中枢性めまい症の主な種類は、大きく分けて3つあります。

・脳の血管にトラブルが起きるめまい

・脳梗塞や脳出血といった病気が原因です。

・脳の血管が詰まったり、破れたりして起こります。

・急にめまいが始まることが多く、手足がしびれたり、動かしにくくなったりします。

・また、うまく話せなくなったり、物が二重に見えたりすることもあります。

・これらの症状が急に出た場合は、すぐに病院へ行きましょう。

・脳に「できもの」ができるめまい(脳腫瘍)

・脳の中に、悪い細胞の塊(かたまり)ができる病気です。

・この「できもの」が脳を圧迫すると、めまいやふらつきが起こります。

・症状は、時間をかけて少しずつ悪くなることが多いです。

・頭が痛くなったり、気持ち悪くなったりすることもあります。

・体のどこかに違和感がある場合は、放置せず医師に相談してください。

・脳の神経の病気によるめまい

・多発性硬化症など、脳の神経に炎症が起きる病気もあります。

・神経が傷つくことで、めまいが起こることがあります。

・この病気では、目の見え方がおかしくなったりすることもあります。

・小学生の皆さんには少し難しい病名かもしれませんが、脳のトラブルの種類の一つとして覚えておきましょう。

めまいには、今回お話しした中枢性めまい症以外にも、たくさんの種類があります。どの種類のめまいにも共通して言える大切なことがあります。例えば、「良性発作性頭位めまい症」という、誰にでも起こりうるめまいについての研究があります。この研究では、ふだんあまり体を動かさない方は、めまいが良くなるまでに時間がかかりやすい、という結果が出ています。

これは中枢性めまい症に直接当てはまる研究ではありません。しかし、普段から体を動かす習慣を持つことは、体全体の健康を守ることにつながります。めまいの種類をきちんと理解し、医師と相談して、ご自身の状態に合った治療を見つけることが何よりも大切です。そして、日頃から健康的な生活を心がけましょう。

中枢性めまい症の原因

中枢性めまい症は、体のバランスを整える大切な司令塔である「脳」にトラブルが起きることで発生します。私たちの脳は、体の動きを細かく調整し、まっすぐ立ったり歩いたりするのを助けています。この大切な脳の機能が何らかの原因でうまく働かなくなると、めまいとして症状が現れてしまうのです。

一つ目の原因として、脳へ血液を送る血管に問題が起こることが挙げられます。特に、脳の後ろの方にある「椎骨脳底動脈(ついこつのうていどうみゃく)」という血管が重要です。この血管は、脳のバランス感覚を司る大切な部分に、栄養と酸素を運ぶ役割を担っています。しかし、血管が硬くなったり細くなったりする「動脈硬化(どうみゃくこうか)」が進むと、血液の流れが悪くなることがあります。これを「椎骨脳底動脈機能不全(ついこつのうていどうみゃくきのうふぜん)」と呼びます。血液が十分に脳に届かなくなると、脳はその機能を十分に果たせなくなり、めまいを引き起こすのです。ある研究では、このような血管の問題で起こるめまいは、実に27.7%と最も多く報告されています。めまいの原因を探る上で、この血管の状態は非常に大切な情報となります。

二つ目の原因は、脳を守る「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という液体の問題です。私たちの脳は、透明な脳脊髄液の中に浮かんでいて、外部からの衝撃から守られています。この脳脊髄液が、何らかの原因で頭蓋骨の隙間などから漏れ出してしまうことがあります。そうすると、脳を包む液体の圧力が低くなる「頭蓋内低血圧(ずがいないていけつあつ)」という状態になります。この頭蓋内低血圧がめまいを引き起こすことがあります。頭蓋内低血圧では、めまいの他に、立ち上がった時に頭が痛くなったり、心臓の音に合わせて耳鳴りがしたり、聞こえが悪くなったりするといった症状を伴うこともあります。これは、脳脊髄液の減少が全身に影響を及ぼしているサインかもしれません。

その他にも、脳の中にできる「脳腫瘍(のうしゅよう)」や、脳の血管が詰まる「脳梗塞(のうこうそく)」、脳の血管が破れる「脳出血(のうしゅっけつ)」、脳の神経に炎症が起こる「多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)」など、様々な脳の病気が中枢性めまい症の原因となることがあります。これらの病気は、脳のバランスをコントロールする部分に直接的なダメージを与え、めまいとして現れるため、早期の発見と治療が非常に重要です。

めまいは、ただの疲れや立ちくらみだと思って見過ごされがちですが、中枢性めまい症の場合、このように脳に深刻な問題が隠れている可能性があります。ご自身の体からの大切なサインを見逃さず、少しでも気になる症状があれば、医療機関を受診して原因を突き止めることが、皆さんの健康を守る第一歩となります。

中枢性めまい症の症状

中枢性めまい症は、単に「めまいがする」だけではありません。脳の重要な部分にトラブルが起きているため、めまいと一緒に、体からのSOSサインとも言えるさまざまな症状が現れることが特徴です。もし、普段と違う「いつもと違うな」と感じる症状があれば、それは脳が助けを求めているサインかもしれません。

めまいの感じ方は人それぞれですが、大きく分けて2つのタイプがあります。

・ぐるぐる回るめまい

・周りの景色がグルグルと回っているように感じます。

・遊園地のコーヒーカップに乗っているような感覚です。

・ふわふわするめまい

・足元がフワフワと浮いているように感じます。

・体がグラグラと揺れているように感じることもあります。

中枢性めまい症の場合、このようなめまいが長く続くことがあります。また、まっすぐ立っていることや歩くことが難しくなる場合がありますので、注意が必要です。

私たちは、患者さんのめまいの程度を知るために、「めまい症状尺度」という特別な評価ツールを使うことがあります。この尺度では、体のバランスの異常だけでなく、めまいによって感じる「不安な気持ち」についても詳しくお聞きします。めまいは体だけでなく、心にも大きな負担をかけることがあるからです。スウェーデンで行われた研究でも、めまい症状を評価する際に「めまい・平衡」という体の症状だけでなく、「自律神経・不安」という心の症状も関係していることが示されています。

めまいと一緒に、特に気をつけてほしい「脳からのSOSサイン」があります。

・体を動かすことの違和感

・手足がジンジンとしびれたり、力が入らなくなったりします。

・例えば、箸が持ちにくい、階段が上りにくいなど、

普段の動きに支障が出ることがあります。

・話し言葉の違和感

・ろれつが回りにくく、言葉がうまく話せなくなります。

・スムーズに自分の考えを伝えられないことがあります。

・目の見え方の違和感

・物が二重に見えたり、焦点が合わなくなったりします。

・例えば、文字を読むのが難しくなるかもしれません。

・飲み込みの違和感

・食べ物や飲み物がうまく飲み込めず、むせやすくなります。

・食事がしづらくなることがあります。

・意識の状態の違和感

・意識がぼんやりしたり、遠のいていくように感じたりします。

・いつもの自分ではないような感覚になることがあります。

これらの症状は、脳のどこに異常が起きているかによって、現れる場所や強さが異なります。もし、このような「めまい以外の症状」が一つでも現れた場合は、すぐに医療機関を受診することが非常に大切です。早期に診断し、適切な治療を始めることで、脳へのダメージを最小限に抑え、元の生活に戻る可能性を高めることができます。ご自身の体を守るために、少しの異変も見逃さないようにしましょう。

中枢性めまい症の検査・診断

中枢性めまい症は、脳からの大切なSOSサインかもしれません。私たちは、このSOSを早く見つけて、適切な治療につなげるために、いくつかの検査を行います。まるで探偵さんが事件を解決するように、めまいの原因を一つずつ調べていくのです。

まず、一番大切なのは「問診(もんしん)」です。医師は患者さんから、めまいが「いつ」「どんな時に」「どれくらいの時間」起こるのかを詳しくお聞きします。また、「ぐるぐる回るめまい」なのか、「ふわふわするめまい」なのかも教えていただきます。さらに、頭が痛い、手足がしびれるなど、めまい以外の症状があるかどうかも確認します。めまいは体だけでなく、不安な気持ちなど心にも影響を与えることがあります。ある研究では、めまいを評価する際に「体の症状」と「不安な気持ち」の両方が大切だと示されています。だから、私たちは患者さんの全体的な状態を知るために、丁寧にお話を聞かせていただきます。

次に、「神経学的診察(しんけいがくてきしんさつ)」という体の動きを診る検査をします。医師は患者さんの目の動き、体のバランス、手足の力や感覚に異常がないかをチェックします。これにより、脳や神経のどこに問題があるのか、手がかりを見つけ出すことができます。例えば、まっすぐ歩けるか、指で鼻を触れるか、といった簡単な動きで脳の働きを確かめることができます。

さらに、脳の中を詳しく見る「画像検査(がぞうけんさ)」も欠かせません。MRI(エムアールアイ)やCT(シーティー)という機械を使って、脳の写真を撮ります。これらの検査は、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血(のうしゅっけつ)、脳腫瘍(のうしゅよう)など、脳に隠れた病気がないかを確認するためにとても重要です。特に、脳に血液を送る血管の状態も詳しく見ることができ、めまいの原因が脳の血管のトラブルにある可能性がないかを調べます。ある調査では、めまいの最も一般的な原因の一つとして、アテローム性動脈硬化症(動脈硬化によって血管が狭くなる病気)による脳への血流不足が約27.7%を占めていると報告されています。このため、血管の状態を確認することは非常に大切なのです。

これらの検査を組み合わせることで、私たちは患者さんのめまいの本当の原因を突き止め、最適な治療へと進むことができます。早めに原因を知り、治療を始めることが、皆さんの体を守るためにとても大切です。

中枢性めまい症の治療

私たち医師は、めまいの奥に隠された脳からの大切なSOSサインをいち早く見つけ出すことを最も重要だと考えています。中枢性めまい症の治療は、単にめまいを止めるだけではありません。めまいの原因となっている脳の病気をきちんと治し、将来にわたって皆さんが安心して毎日を過ごせるように導くことが目標です。お子さんからご高齢の方まで、すべての方にとって大切な情報です。

治療は、めまいの根本原因を突き止めることから始まります。原因によって治療法が大きく変わるため、医師と一緒に最適な方法を見つけることが大切です。

・脳の血管の問題が原因の場合

・脳の血管が硬くなる動脈硬化症(どうみゃくこうかしょう)がめまいを引き起こすことがあります。

・ある研究では、動脈硬化症が原因で起こるめまいの中で、めまい自体が最も多い症状であることが報告されています。

・このような場合は、血管の健康を取り戻すことが大切です。

・食事の見直しや適度な運動など、生活習慣の改善を心がけます。

・必要に応じて、医師の判断で血管を広げたり、血液をサラサラにしたりするお薬も使います。

・脳脊髄液の漏れが原因の場合

・脳を包む大切な液体、脳脊髄液(のうせきずいえき)が漏れてしまう特発性頭蓋内低血圧(とくはつせいずがいないていけつあつ)という病気でもめまいが起こります。

・この病気では、めまいの他に、立ち上がると頭が痛くなったり、心臓の音に合わせて耳鳴りがしたり、音が聞こえにくくなったりすることもあります。

・脳脊髄液の圧力が変わることで、耳の奥にも影響が出ることが分かっています。

・治療では、漏れている場所を特定し、その部分を修復することを目指します。

めまいが特にひどい時には、症状を少しでも和らげるためのお薬を使うこともあります。また、めまいによって乱れてしまった体のバランス感覚を取り戻すために、専門的なリハビリテーションを行うことも有効です。治療には時間がかかることもありますが、焦らず、医師と協力して取り組んでいくことが皆さんの健康を守る上で最も大切です。