元気いっぱいに遊びまわるお子さんが転んでひじを強く打ち、ひどく痛がっている。そんな時、「ただの打ち身だろう」と様子を見てしまうことはありませんか?その判断が、実は将来にわたって影響を及ぼす後遺症の入り口かもしれません。
特に活発な小学生によく見られる「上腕骨外顆骨折」は、適切な治療を受けずに放置してしまうと、腕が「く」の字に曲がってしまう「内反肘(ないはんちゅう)」という変形が残る可能性がある、非常に注意が必要な骨折です。
この記事では、お子さんのひじの骨折に潜む危険性から、ご家庭で気づける症状のサイン、そして後遺症を防ぐための最新の治療法までを詳しく解説します。大切なお子さんの腕の機能を守るため、正しい知識を身につけておきましょう。
上腕骨外顆骨折の概要
上腕骨外顆骨折(じょうわんこつがいかこっせつ)とは、ひじの外側の骨が折れてしまうケガのことです。特に、活発に遊びまわる小学生くらいのお子さんによく見られる骨折として知られています。
ほとんどの場合、転んだり遊具から落ちたりした際に、ひじを伸ばした状態で手をつくことで起こります。お子さんの骨はまだ成長の途中段階にあり、大人の骨に比べて力が加わると折れやすい部分があるため注意が必要です。
この骨折で最も気をつけなければいけないのは、適切な治療を受けずに骨がずれたままになってしまうことです。放置すると、後遺症が残ってしまう可能性があります。
代表的な後遺症:内反肘(ないはんちゅう)
- 腕をまっすぐ伸ばしたときに、ひじが「く」の字のように内側に曲がってしまう状態です。
- ただ見た目が変わるだけでなく、将来的にひじの関節がグラグラと不安定になる原因にもなります。
- ある研究では、この変形がひじの機能的な問題を引き起こす可能性が示唆されています。
ひじを強く痛めた際は「ただの打ち身だろう」と自己判断せず、すぐに医療機関を受診してください。早期に正しい診断と治療を受けることが、後遺症を防ぎ、腕の機能を守るために非常に大切です。
上腕骨外顆骨折の種類
上腕骨外顆骨折は、骨折した部分の「ずれ」の大きさによって、いくつかの種類に分けられます。この骨のずれの程度によって、治療の方針が大きく変わるため、正確な診断がとても重要です。
骨折の種類は、主にレントゲン写真を見て判断します。
- 骨にひびが入っている、もしくは折れていても骨のかけらが元の位置からほとんど動いていない状態です。この場合は、ギプスで固定する手術以外の方法で治ることが多いです。
- 折れた骨のかけらが、少しだけ元の位置から動いてしまっている状態です。ずれの程度によっては、骨を正しい位置に戻すために手術が必要になることもあります。
- 骨のかけらが大きく離れたり、回転したりしている状態です。この場合は、骨を正しい位置に戻して金属のピンなどで固定する手術が必要になります。中には、骨折の線がアルファベットのTの字のように入る複雑な骨折もあります。
特にお子さんの場合、年齢によっても治療後の経過に違いが見られることがあります。ある研究では、8歳をこえるお子さんの場合、治療後に肘の関節が固まりやすくなる傾向が報告されています。
そのため、骨折の種類を正確に診断し、その状態に合わせた適切な治療を受けることがとても大切です。
上腕骨外顆骨折の原因
上腕骨外顆骨折は、ほとんどの場合、転んだり遊具から落ちたりしたときに、ひじを伸ばしたまま手をつくことが原因で起こります。手をついた瞬間の強い衝撃が、手首から腕を伝わってひじの関節に集中することで、骨が耐えきれずに折れてしまうのです。
この骨折は、特に活発な小学生くらいのお子さんによく見られます。その背景には、お子さんならではの体の特徴が関係しています。
お子さんに上腕骨外顆骨折が起こりやすい理由
- 骨がまだ成長途中だから お子さんのひじの骨は、まだ完全に大人の骨になっていません。骨の表面を覆う「骨皮質(こつひしつ)」という硬い部分が薄いため、大人よりも弱い力で折れやすいのです。
- 動きが活発だから お子さんは元気いっぱいに遊びまわりますが、体のバランスをとる能力はまだ発達の途中です。そのため、大人よりも転んでしまう機会が多くなります。
- とっさの動きのため 転びそうになったとき、体を守ろうとして無意識にひじを伸ばして手をつくことがよくあります。この動きが、ひじに大きな負担をかけてしまいます。
ひじに近い部分の骨折は、すべての骨折のなかで約1%と報告されています。まれな骨折ですが、もし骨が折れたまま適切な治療を受けないと、骨がうまくつかない「偽関節(ぎかんせつ)」や「遷延癒合(せんえんゆごう)」といった状態になることもあるため注意が必要です。
上腕骨外顆骨折の症状
転んだりぶつけたりしてひじを痛めたとき、骨折しているかどうかを見分けるためのサインがあります。お子さんの様子をよく観察し、以下の症状がないか確認してください。
- ひじの外側の強い痛み 骨が折れているため、少し動かすだけでも激しい痛みが走ります。
- ひじの周りの腫れや青あざ 骨が折れると内出血が起こり、ひじがパンパンに腫れたり、だんだんと紫色になったりします。
- ひじを自分で動かせない あまりの痛みに、自分でひじを曲げたり伸ばしたりすることができなくなります。
- 腕に力が入らない けがをした方の腕で、物を持ったり体を支えたりすることが難しくなります。
骨折だけでなく、近くにある大切な神経や血管を傷つけてしまうこともあります。神経が傷つくと、手や指がジンジンとしびれたり、指を動かしにくくなったりします。血管がひどく傷つくと、腕の血の流れが悪くなる重い状態につながる危険もあります。
適切な治療を受けずに骨がずれたまま固まると、ひじが曲がったままになる変形が残ることがあります。また、ひじの動きが悪くなる「拘縮(こうしゅく)」という後遺症も考えられます。
ある研究では、けがをしてから治療を開始するまでの時間が長くなるほど、手術後にひじが固まってしまうリスクが高くなると報告されています。「ただの打ち身だろう」と様子を見ず、早めに医療機関を受診することが、腕の機能を守るために非常に大切です。
上腕骨外顆骨折の検査・診断
ひじを痛めて病院に行くと、まずはお医者さんが詳しくお話を聞きます。 いつ、どこで、どのようにケガをしたのかを確認し、痛みの原因を探ります。
次に行うのが、ひじの状態を直接見て、優しく触って確かめる診察です。 骨折を正しく診断するために、お医者さんは以下の点を注意深く確認します。
【お医者さんが確認する主なポイント】
- どのくらい腫れているか、皮膚の色が紫色に変わっていないかを見ます。
- 骨がずれて、腕の見た目の形がおかしくなっていないかを確認します。
- 自分でひじを動かせるか、どのくらい動かすと痛むかを調べます。
- 指がしびれたり、指先の色が悪くなったりしていないかを確認します。
そして、骨の状態を詳しく調べるためにレントゲン(エックス線)検査をします。 この検査で、骨折の場所や骨のずれの大きさを正確に知ることができます。
骨のずれの大きさは、手術が必要かどうかを決めるための非常に大切な情報です。 近年の研究では、手術中に使うレントゲンの回数を減らす工夫も進んでいます。 これにより、体への負担を抑えながら、安全に治療できるようになってきています。
小さなお子さんの場合、レントゲンだけでは分かりにくいこともあります。 その際は、超音波(エコー)検査で詳しく調べることもあります。 これらの診察と検査の結果を全て合わせて、最終的な診断が決まります。
上腕骨外顆骨折の治療
上腕骨外顆骨折の治療は、骨がどのくらいずれているかによって決まります。 治療法は、大きく分けて「手術をしない方法」と「手術をする方法」の2つです。
ギプスなどで固定する治療(保存療法)
骨のずれがほとんどない、またはほんの少しだけの場合に行われる治療法です。 ギプスやシーネという固定具で腕をしっかり固定し、骨が動かないようにします。 骨が正しい位置で自然にくっつくのを待つための、とても大切な治療です。 固定する期間は、骨の状態にもよりますが数週間から1か月ほどが目安です。
手術による治療(手術療法)
骨のずれが大きい場合は、将来、腕の形や動きに問題が残らないように手術が必要です。 手術には、主に次のような方法があります。
- 皮膚の上からピンで固定する方法 皮膚に小さな穴をあけて、そこから細い金属のピンを刺し、ずれた骨を正しい位置に固定します。
- 皮膚を切って骨を直接見て固定する方法 皮膚を切り、ずれてしまった骨を直接見ながら元の正しい位置に戻し、金属のピンなどでしっかり固定します。この方法は成功率が90%と良好な成績が報告されており、確実性の高い治療法です。
お子さんの手術では、体への負担をできるだけ軽くするための工夫が進んでいます。 例えば、手術の時間を短くしたり、レントゲンを見る回数を減らしたりする取り組みです。
ごくまれに骨がうまくつかないこともありますが、その場合でも骨を移植するなど、さまざまな治療の選択肢があります。
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骨のずれの大きさ
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主な治療法
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ずれがほとんどない場合
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ギプスやシーネで固定する治療(保存療法)
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ずれが大きい場合
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金属のピンなどを使って骨を固定する手術(手術療法)
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どの治療法を選ぶかは、骨折の状態や年齢などを総合的に考えて判断します。 まずは専門のお医者さんによく相談することが大切です。