テニス肘

「テニス肘」と聞くと、テニスをする人の病気だと思っていませんか?しかし、実は料理でフライパンを振ったり、パソコンのキーボードを長時間操作したり、タオルを強く絞ったりと、私たちの何気ない日常生活の動作が原因でひじに痛みを感じる「上腕骨外側上顆炎」、通称テニス肘を発症することが少なくありません。ひじの外側の痛みは、放置すると生活の質を大きく低下させることもあります。

この記事では、あなたのひじの痛みがなぜ起きているのか、その種類や原因、そして最新の研究で長期的な改善が報告されている体外衝撃波療法や、100人中95人以上という高い成功率が期待できる手術法まで、テニス肘の治療法について詳しく解説します。あなたの痛みを理解し、適切なケアを見つけるための第一歩を、この記事で見つけませんか?

テニス肘の概要

テニス肘は、ひじの外側に痛みを感じる病気です。 「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」という、少し難しい正式名称もあります。 この名前から「テニスをする人の病気」と思われがちですが、実はテニスをしない人でも発症することがよくあります。 日々の暮らしの中で、手首や指をよく使うことで、ひじに負担がかかり発症するのです。

たとえば、料理でフライパンを振ったり、タオルを強く絞ったりする動作が原因となることがあります。 パソコンのキーボードを長時間操作したり、重いものを持ったりすることも、ひじへの負担になります。 これらの繰り返し行われる動作が、ひじの外側にある腱に小さな傷や炎症を引き起こし、痛みとなって現れます。 この痛みは、ひじを曲げ伸ばす時や、物をつかんで持ち上げる時に強く感じることが多いでしょう。

「もしかしたら、私もテニス肘かもしれない」と、ひじの違和感に気づくきっかけになるかもしれません。 もし痛みを感じ始めたら、適切な時期に治療を始めることで症状の改善が期待できます。 テニス肘にはさまざまな治療法がありますが、それぞれに特徴があります。

最近の研究では、慢性的なテニス肘に対する治療について比較検討が行われました。 「体外衝撃波療法」と「局所副腎皮質ステロイド注射」という治療法について調べられています。 この研究によると、体外衝撃波療法は一時的に効果が現れるのが少し遅れる場合があります。 しかし、長い期間で見ると、痛みや腕の機能回復において、より良い結果を示すことが報告されています。 また、どちらの治療法も安全性が高く、大きな副作用は少ないことがわかっています。 皆さんの状態に合わせた最適な治療法を、医師と一緒に見つけていくことが大切です。

テニス肘の種類

テニス肘は、大きく分けて2つのタイプがあります。 皆さんのひじの痛みが、どちらのタイプに当てはまるか考えてみましょう。

  • 外側上顆炎(がいそくじょうかえん)
  • これは、一般的に「テニス肘」と呼ばれることが多いタイプです。
  • ひじの「外側」に痛みを感じます。
  • テニスでバックハンドを打つときに痛むことが多いため、この名前がつきました。
  • 日常生活では、手の甲を上にして何か物を持ったり、雑巾を強く絞ったりする動作で痛みが出やすいです。
  • 「ひじの外側を押すと痛い」という場合は、このタイプかもしれません。
  • 内側上顆炎(ないそくじょうかえん)
  • こちらは「ゴルフ肘」と呼ばれることもあるタイプです。
  • ひじの「内側」に痛みを感じます。
  • ゴルフのスイングで痛むことがありますが、野球の投球動作などでも起こりやすいです。
  • 手のひらを上にして物を持ったり、ひじを曲げたりする動作で痛みを感じやすいでしょう。
  • 「ひじの内側がジンジンする」といった症状があるかもしれません。

どちらのテニス肘も、まずは手術をしない「保存療法」から治療を始めます。 具体的には、ひじを休ませたり、飲み薬や湿布を使ったり、リハビリテーションを行う方法です。 しかし、このような治療を続けても痛みが引かない場合や、日常生活に支障が出るほど痛みがひどい場合には、手術を考えることもあります。

手術には、大きく2つの方法があります。 ひとつは「開放手術(かいほうしゅじゅつ)」と呼ばれる方法です。 これは、痛い部分を直接見て治療するために、少し大きめに切開をします。 もうひとつは「関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)」です。 これは、小さな穴からカメラ(内視鏡)を入れて、モニターを見ながら治療する方法です。 どちらの手術方法も、痛みを良くする成功率はとても高いことがわかっています。 最近の研究報告によると、開放手術では100人中95人以上、関節鏡視下手術では100人中92人以上の方が症状が良くなることが期待できます。 また、手術による合併症(ほかの病気や問題が起こること)も、どちらの手術でも少ないとされています。 開放手術では100人中2人程度、関節鏡視下手術では100人中1人程度です。

特に、早く仕事に戻りたい、早く普段の活動を再開したいと希望される方には、関節鏡視下手術の方が早く職場に復帰できる可能性があると言われています。 平均して、開放手術では約7週間かかるところ、関節鏡視下手術では約5週間で職場に戻れるとの報告もあります。 私たちは、患者さん一人ひとりのひじの状態や、どんな生活を送りたいかを聞きながら、最も合った治療法を一緒に考えていきます。 皆さんのひじの痛みがどの種類に当てはまるのか、診察で一緒に見極めましょう。

テニス肘の原因

テニス肘は、ひじの外側に痛みが出ることが特徴です。 この痛みの主な原因は、手首や指を「繰り返し使いすぎること」にあります。 日常生活でよく行う、物をつかむ、持ち上げる、ひねるといった動作や、パソコンのキーボードを長時間使うことなどが挙げられます。 テニスやバドミントン、ゴルフといったスポーツでも、同じ動作を繰り返すことでひじに大きな負担がかかります。

特に、ひじの外側にある「前腕伸筋腱(ぜんわんしんきんけん)」という部分に影響が及ぶことがほとんどです。 この腱は、腕を動かす時にいつも頑張ってくれています。 繰り返し同じ動作をすることで、この腱にとても小さな傷がついたり、炎症が起きたりして、痛みにつながるのです。 まるで、頑張りすぎた腱が悲鳴を上げている状態です。

そして、この状態を放っておくと、時間とともに腱そのものが傷んでしまう「変性(へんせい)」という状態になることがあります。 変性とは、腱の組織が元気をなくして、もろくなってしまうようなイメージです。 テニス肘は、この前腕伸筋腱に影響を及ぼす、とてもよくある病気です。 一度変性が進んでしまうと、腱の回復や再生にはより時間がかかります。

だからこそ、早めに異変に気づき、対策を始めることがとても大切なのです。 年齢を重ねることも、テニス肘になりやすくなる一つの理由です。 加齢によって腱が少しずつもろくなり、傷つきやすくなることも原因の一つと考えられています。 普段の生活で、ご自身の腕の使い方や動作の頻度を見直すことは、テニス肘を予防したり、症状が悪化するのを防ぐために非常に重要です。 もし、ひじに痛みを感じたら、早めに医療機関で相談し、腱のダメージが大きくなる前に適切なケアを始めるようにしましょう。

テニス肘の症状

皆さんのひじの痛みは、どのようなときに感じますか? テニス肘の多くは、ひじの外側に痛みを感じることが特徴です。 特に、手のひらを下に向けて物を持つときや、ひじの外側の骨のでっぱりを押したときに、ズキッとした痛みが現れることがあります。

健康なひじなら何でもないような日常の動作が、テニス肘ではつらい症状として現れることがあります。 例えば、以下のような動作で痛みを感じることが多いです。

  • タオルを絞る
  • 手首をひねる動作は、ひじの外側にある腱に大きな負担をかけます。
  • ドアノブを回す
  • 物をつかんでひねる動きも、痛みを引き起こしやすい動作です。
  • フライパンを持つ
  • 重い物を持つときや、手首を返すときにひじが痛むことがあります。
  • パソコンのキーボードを打つ
  • 長時間、手首や指を繰り返し使うことで、ひじに負担がかかることがあります。
  • ゴルフのスイングやテニスラケットを振る
  • 特定のスポーツ動作も、繰り返しひじに負荷をかけます。

この痛みは、テニスやゴルフをする方に限らず、料理や家事、デスクワークなどで手首をよく使う方にも多く見られます。 初期には、安静にしていれば痛みが和らぐこともありますが、無理を続けていると、常に痛みを感じるようになり、ひどいときには前腕(ひじから手首までの部分)にだるさや重さを感じることもあります。 痛みの程度は人それぞれですが、症状を放っておくと、生活の質が大きく下がってしまうこともあります。

テニス肘の治療は、すぐに痛みが劇的に改善するとは限りません。 ある研究によると、治療を始めてから短い期間、例えば約6週間まででは、どのような治療法もプラセボ(偽薬や一般的な治療)と比べて、痛みが早く改善するという強い証拠は、現在のところ多くありません。 また、一時的に痛みが和らいだと感じられても、時間が経つと再び痛みが強まることもあるため、痛みの変化に注意深く向き合うことが大切です。 別の研究では、ステロイド注射が一時的に痛みを和らげる効果があるものの、時間が経つと効果が薄れ、再発しやすいことが示唆されています。 一方で、自家血とステロイドを組み合わせた治療は、より早く、そして持続的な改善をもたらし、再発率も低い可能性が報告されています。 私たちは、皆さんのひじの状態や痛みの感じ方に合わせて、最適な治療法を一緒に考えていきます。 痛みを我慢せず、早めに私たちにご相談ください。

テニス肘の検査・診断

「このひじの痛みは、何が原因なのだろう?」 「いつになったら良くなるのかな?」 そんな皆さんの不安な気持ちに寄り添い、私たち医師は、まず皆さんのひじの状態を詳しく調べていきます。

1. じっくりお話をうかがいます(問診)

最初に、皆さんの生活についてお聞きします。 どんな時にひじが痛むのか、いつから痛いのか、日常生活でどんな動きが一番困るのか、などを詳しくお話しください。 痛みの原因を一緒に探す大切な時間です。

2. ひじの動きを細かくチェックします(理学検査)

次に、実際にひじの関節や腱に触れて、どこが痛いのか、腫れていないかを確認します。 そして、いくつかの動きを試していただきます。 手首を甲のほうへ反らす動きや、指を伸ばす動きで痛みが増すかなどを見て、テニス肘かどうかを見極める重要な検査です。 これらの検査で、痛みと日常生活の動きのつながりを客観的に評価します。

3. 痛みを「見える化」するスコア

皆さんの痛みがどれくらいなのか、日常生活にどれくらい影響しているのかを、点数をつけて測ることもあります。 「患者報告型テニス肘評価(PRTEE)疼痛スコア」というものを使用します。 このスコアは、皆さんの痛みの変化を具体的に知るためのものです。 治療の効果を測る研究でも使われている、信頼できる評価方法の一つです。 しかし、最近の研究によると、テニス肘の治療を始めてから約6週間までの短い期間では、どんな治療法も、すぐに痛みが劇的に改善するという強い証拠は多くないことが報告されています。 そのため、焦らず、根気強く治療に取り組むことが大切です。

4. 体の奥も調べます(画像検査)

骨に異常がないかを確認するために、レントゲン検査を行うことがあります。 また、腱や周りの組織の状態を詳しく見るために、超音波(エコー)検査やMRI検査を行うこともあります。 これらの検査は、テニス肘と似た症状が出る他の病気がないかを確認し、皆さんに合った正しい診断に繋げるためにとても役立ちます。

正しい診断があってこそ、皆さんの痛みに合わせた適切な治療計画を立てることができます。 私たちは、皆さんと一緒にひじの痛みの原因を見つけ、回復への第一歩を歩んでいきます。

テニス肘の治療

私たち医師は、皆さんのテニス肘の治療を、いくつかの段階に分けて考えていきます。 一人ひとりのひじの状態や、どんな生活を送りたいかをじっくり伺い、最適な方法を一緒に見つけていきます。 まずは手術をしない「保存的治療」から始めることが一般的です。

1. ひじを休ませ、炎症を抑える治療

ひじの痛みを和らげ、炎症を落ち着かせるために、次のような方法があります。

  • 安静にする
  • 痛いと感じる動作を一時的にやめて、ひじを休ませることから始めます。
  • 頑張りすぎたひじの腱を、そっといたわるイメージです。
  • 湿布や塗り薬、飲み薬
  • 炎症を抑える成分が入った薬を使い、痛みを和らげます。
  • 医師の指示に従い、正しく使用することが大切です。
  • リハビリテーション
  • ひじ周りの筋肉を強くしたり、柔軟性を高めたりする運動を行います。
  • 正しい方法で行うことで、痛みを減らし、テニス肘の再発を防ぐ効果も期待できます。

2. より積極的な治療

保存的治療だけでは痛みがなかなか改善しない場合に、検討される治療法です。

  • 体外衝撃波療法
  • 体の外から、特別な音波を痛い部分に送る治療法です。
  • この音波は、痛みを減らし、傷んだ組織の回復を助けると言われています。
  • ある研究では、体外衝撃波療法が、超音波療法と深部摩擦マッサージを組み合わせた治療よりも、テニス肘の症状を改善するのに効果的であると報告されています。
  • 別の研究によると、体外衝撃波療法は一時的に効果が現れるのが少し遅れる場合があります。
  • しかし、長い期間で見ると、痛みや腕の機能回復において、より良い結果を示す可能性があることが分かっています。
  • 局所副腎皮質ステロイド注射と比較して、安全性は同程度に低いことも報告されています。
  • 注射による治療
  • ステロイド注射
  • 炎症を抑えるための薬をひじの痛む部分に注射します。
  • 一時的に痛みを和らげる効果が期待できますが、長期的な効果には限界がある場合もあります。
  • ボツリヌス毒素注射
  • 痛みを和らげる効果が期待できる注射です。
  • この注射は、約2週間から12週間の間で痛みを軽減する可能性が報告されています。
  • 握力には大きな影響を与えないと考えられていますが、さらなる研究が必要であるという意見もあります。

3. 手術という選択肢

さまざまな治療を続けても痛みが引かない場合や、日常生活に支障が出るほど痛みがひどい場合には、手術を考えることもあります。

  • 手術の方法
  • 開放手術(かいほうしゅじゅつ)
  • 痛い部分を直接見て治療するために、少し大きめに皮膚を切開する方法です。
  • 手術の成功率は100人中95人以上と高いことが分かっています。
  • 合併症が起こる割合も100人中2人程度と少ないです。
  • 関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)
  • 小さな穴からカメラ(内視鏡)を入れて、モニターを見ながら治療する方法です。
  • 手術の成功率は100人中92人以上と、開放手術と同じく高いです。
  • 合併症が起こる割合も100人中1人程度と少ないです。
  • 最近の研究報告によると、どちらの手術方法も、痛みを良くする成功率は非常に高く、合併症も少ないとされています。
  • 特に、早く仕事に戻りたいと希望される方には、関節鏡視下手術の方が早く職場に復帰できる可能性があります。
  • 開放手術では平均で約7週間かかるところ、関節鏡視下手術では平均で約5週間で職場に戻れるとの報告もあります。

どの治療法がご自身に合うかは、医師とよく相談し、納得して治療を進めることがとても大切です。 焦らず、根気強く治療に取り組むことで、きっと良くなる道が見つかるでしょう。