クラミジア感染症

日本で最も報告数が多い性感染症、クラミジア。この病気の最も恐ろしい点は、感染しても症状が出にくい「沈黙の感染症」であることです。実際に女性の約8割、男性の約5割は自覚症状がないため、気づかないうちに病気が進行しているケースが後を絶ちません。

症状がないからと安心している間に、将来の不妊症につながったり、大切なパートナーへうつしてしまったりする危険性があります。たった1回の性的な行為で感染する確率は30%〜50%と非常に高く、特に若い世代を中心に感染が広がっているため、決して他人事ではありません。

この記事では、そんなクラミジアの正しい知識、具体的な症状から治療法までを詳しく解説します。あなたと大切なパートナーの未来を守るため、まずはご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。

クラミジア感染症の概要

クラミジア感染症は、日本で最も報告数が多い性感染症(STI)です。 世界でも年間120万人以上が感染するといわれ、特に若い世代に広がっています。

この感染症は「クラミジア・トラコマティス」という細菌が原因です。 性的な接触によって、のどや性器などの粘膜に感染します。 特に感染しやすい年代には、以下のような傾向が見られます。

  • 男性
  • 20代〜30代に多い傾向があります。
  • 女性
  • 20代前半での感染が特に目立ちます。

この病気の最も厄介な特徴は、感染しても症状が出にくいことです。 女性の約8割、男性の約5割は自覚症状がないといわれています。 そのため、ご自身が気づかないうちにパートナーへうつしてしまうのです。

また、1回の性的な行為で感染する確率は30%〜50%と非常に高いです。 これは、たった一度の行為でも感染する可能性があることを意味します。

現在、感染を予防するためのワクチン開発が世界中で進められています。 しかし、臨床応用が承認されたワクチンはまだなく、実用化に至っていません。 そのため、誰もが感染しうる病気だと理解し、正しい知識を持つことが重要です。 ご自身と大切なパートナーを守るための第一歩となります。

クラミジア感染症の種類

クラミジア感染症は、原因菌が体のどこに感染するかで呼び方が変わります。 感染した場所によって、症状の出かたや注意すべき点も異なります。

主に、以下のような種類に分けられます。

感染する場所

主な呼び方

性器(尿道・子宮の入口など)

性器クラミジア感染症

のど(咽頭)

咽頭クラミジア感染症

おしり(直腸)

直腸クラミジア感染症

目(結膜)

クラミジア結膜炎

特に注意したいのは、複数の性感染症に同時にかかるケースです。 これを「重複感染」と呼び、決して珍しいことではありません。

実際にポーランドで行われた調査では、痘瘡(mpox)にかかった方の中に、クラミジアや梅毒、淋菌などが同時に見つかったという報告があります。 一つの感染症が見つかったら、他にも隠れていないか確認することが大切です。

現在、クラミジアを予防できるワクチンはまだ研究段階にあります。 そのため、私たちがすぐに使えるワクチンはまだありません。 ご自身と大切なパートナーを守るため、正しい知識と予防意識を持つことが重要です。

クラミジア感染症の原因

クラミジア感染症は、「クラミジア・トラコマティス」という細菌が原因です。 この細菌は、感染した人の体液(精液やおりものなど)にひそんでいます。 そして、主に性的な接触によって、粘膜から体の中へと侵入します。

粘膜とは、口の中や性器の内側のような、しっとりと潤っている部分のことです。 このデリケートな部分に細菌が付着することで、感染が成立します。

  • 主な感染経路
  • 性器同士の接触
  • 口(のど)の粘膜への接触(オーラルセックス)
  • おしり(直腸)の粘膜への接触(アナルセックス)

実は、感染が気づかぬうちに広がる背景には、医療者側の課題も関係しています。 米国の研究では、若い患者さんに性的な内容を尋ねることに抵抗を感じる医療者が、研修医で約6割、経験を積んだ医師でも4割いることが示されました。

また、検査の知識不足や、患者さんのプライバシーを守れるかという懸念も報告されています。 こうした状況が、ためらいなく検査を受けられる機会を減らす一因と考えられます。

その他、お母さんから赤ちゃんへ出産時にうつる「母子感染」という経路もあります。 しかし、お風呂やトイレ、タオルの共有といった日常生活でうつることはありません。

クラミジア感染症の症状

クラミジア感染症は、感染しても症状が出ないことが多いため、「沈黙の感染症」と呼ばれています。 実際に、女性の約8割、男性の約5割は自覚症状がないといわれています。

症状がないからといって、安心することはできません。 気づかないうちに体の中で静かに病気が進行し、将来の不妊症につながることもあります。 また、ご自身が気づかないまま、大切なパートナーへうつしてしまう危険性もあります。

感染した場所ごとの主な症状

症状は、クラミジアが感染した体の場所によって異なります。 感染してから症状が出るまでには、1週間から3週間ほどかかるのが一般的です。 以下のような症状に心あたりがあれば、早めに医療機関へ相談しましょう。

感染した場所

主な症状

男性の性器

・おしっこをするときの痛みや、ムズムズする感じ

・尿道の出口から、透明または白っぽい膿が出る

・精巣(睾丸)が腫れて痛む

女性の性器

・おりものの量がいつもより増える、色やにおいが変わる

・生理のとき以外の出血(不正出血)

・下腹部がしくしくと痛む

・性交のときに痛みを感じる

のど(咽頭)

・のどの痛みや腫れ、イガイガする感じ

・せきやたんが出る

※風邪の症状とよく似ており、ほとんど症状が出ないことも多いです。

おしり(直腸)

・おしりの穴(肛門)の痛みやかゆみ

・便に血や粘液が混ざる

・便が出にくい、または出してもスッキリしない感じ(残便感)

注意したいのは、クラミジア感染症だけでなく、他の性感染症にも同時にかかっているケースです。 海外の調査では、別の感染症(痘瘡)の検査をした際に、梅毒や淋菌などと一緒にクラミジア感染が見つかったという報告もあります。 一つの感染症を疑うときは、他にも隠れた病気がないか確認することが重要です。

症状が出にくいため、ご自身で気づくのは難しいかもしれません。 放置すると深刻な事態を招く可能性もあるため、気になることがあれば専門の医療機関を受診しましょう。

クラミジア感染症の検査・診断

クラミジア感染症は症状が出にくいからこそ、検査がとても大切です。 「もしかして?」と思ったら、検査で確かめることが重要になります。 定期的な検査が、気づかない感染の広がりを防ぐという研究結果もあります。 ご自身と大切なパートナーの健康を守るためにも、検査を検討しましょう。

検査は、感染が疑われる場所に合わせて行います。 どの検査が必要かは、医師がお話をうかがった上で判断します。

主な検査方法

現在、クラミジアに感染しているかを調べる方法は、とても進歩しています。 主に「遺伝子検査(PCR法など)」という方法が用いられます。 これは、クラミジア菌が持つ特有の遺伝子(体の設計図)のかけらを探し出す検査です。 精度が非常に高く、ごく少ない菌でも見つけ出せるのが特徴です。

感染が疑われる場所

採取するもの

性器

男性:尿

女性:腟の分泌物を綿棒でやさしくぬぐう

のど

うがいをした液

おしり(直腸)

肛門の中を綿棒でやさしくぬぐう

検査を受けるうえでのポイント

実は、医療者側にも検査の実施に課題があることがわかっています。 米国の研究では、医師が性的な内容を質問することにためらいを感じたり、性器以外の検査の知識が十分でなかったりする現状が報告されました。 しかし、クラミジアはのどやおしりにも感染する病気です。 気になることがあれば、安心して医師に相談してください。

  • 検査のタイミング
  • 感染の可能性がある行為から、少なくとも24時間以上経ってからの検査が望ましいです。
  • パートナーの検査
  • もしご自身が陽性だった場合、パートナーも感染している可能性が非常に高いです。
  • 症状がなくても、必ず一緒に検査と治療をすることが重要です。

的確な診断が、適切な治療への第一歩となります。

クラミジア感染症の治療

クラミジア感染症は、自然に治ることはありません。 しかし、お薬を正しく飲めば、きちんと治療できる病気です。 症状がなくても、放置すると不妊症などの原因になることもあります。 感染がわかったら、必ず治療を受けることがとても大切です。

治療の主役は「抗生物質」

治療の基本は、クラミジア菌を退治する「抗生物質」を飲むことです。 医師から処方されたお薬を、指示どおりに最後まで飲み切りましょう。 治療には、主に次のような系統の抗生物質が使われます。

  • マクロライド系 クラミジア治療で広く使われるお薬です。 実はこのお薬は、肺炎やのどの炎症など、様々な細菌感染症にも使われます。 1回の服用で治療が終わるタイプもあり、患者さんの負担が少ないのが特徴です。
  • テトラサイクリン系
  • ニューキノロン系

どのお薬を使うかは、症状や体の状態などを考えて医師が判断します。

治療を成功させるための3つの約束

治療をきちんと終わらせるためには、大切なポイントが3つあります。 ご自身とパートナーの健康を守るため、必ず守るようにしましょう。

  1. パートナーも一緒に治療する ご自身が治っても、パートナーが感染したままだと再びうつしあってしまいます。 これを「ピンポン感染」と呼びます。症状がなくても一緒に治療が重要です。
  2. 治療中は性的な接触を控える お薬で菌が完全にいなくなったと確認できるまでは、性的な接触は避けましょう。 治療中にうつしあうことを防ぐために、とても大切なことです。
  3. 治癒確認の検査を受ける お薬を飲み終えてから3〜4週間後に、菌が完全にいなくなったか再検査します。 この検査で陰性が確認できて、はじめて治療完了となります。