静脈瘤

足の血管がボコボコと浮き出て見える、夕方になると足が重くだるい、といった症状にお悩みではありませんか。それは「静脈瘤」かもしれません。実はこの病気、決して珍しいものではなく、日本では40歳以上の約10人に1人、推定1000万人以上の方が抱えている身近な疾患です。

単なる見た目の問題や、加齢による仕方ないことだと諦めてしまいがちですが、その正体は足の血液が逆流してしまう血管のトラブルです。放置すると、こむら返りや皮膚の炎症など、つらい症状につながる可能性もあります。

この記事では、静脈瘤の詳しい原因からご自身でできる症状のチェック、最新の治療法までを専門的な知見を交えて解説します。ご自身の状態を知り、適切な対処法を見つけるためにお役立てください。

静脈瘤の概要

静脈瘤(じょうみゃくりゅう)とは、皮膚のすぐ下にある静脈という血管が、こぶのように膨らんで浮き出て見える病気のことです。

日本では40歳以上の約10人に1人がこの病気を持つといわれます。患者さんの数は1000万人以上と推定され、決して珍しいものではありません。

静脈瘤には、見た目でわかる次のような特徴があります。

  • 血管が浮き出る 青紫色や緑色の血管が、皮膚の上から透けて見えます。
  • 血管が膨らむ 血管がボコボコと、こぶのように膨らみます。
  • 足にできやすい 特に、ふくらはぎや太ももの内側によく見られます。

足の静脈には、血液が心臓へ戻るのを助ける「弁」があります。この弁が壊れてうまく閉じなくなると、血液が逆流してしまいます。その結果、血管の中に血液がたまって膨らんでしまうのです。

この病気は足だけでなく、食道など体の他の部分にできることもあります。特に食道にできる静脈瘤は、肝硬変といった肝臓の病気と深い関わりがあることが知られています。

ある研究では、肝硬変の患者さんの中でも、筋肉の質が良い方は、食道静脈瘤による出血を経験する割合が少ない傾向にある、と報告されました。

このように、静脈瘤はできる場所によって原因や注意すべき点が異なります。この記事では、多くの方が悩んでいる足の静脈瘤(下肢静脈瘤)について、詳しく解説していきます。

静脈瘤の種類

静脈瘤は、血管の見た目や太さによって、主に4つの種類に分けられます。どの種類かによって、症状の出かたや治療の方法が変わってきます。

種類

見た目の特徴

主な症状

伏在(ふくざい)型

足の太い血管が、ボコボコとこぶのように大きく浮き出る

足のだるさ、むくみ、こむら返り、皮膚のかゆみや色の変化

側枝(そくし)型

伏在静脈から枝分かれした血管が浮き出る

伏在型に似ているが、症状は軽いことが多い

網目状(あみめじょう)

直径2〜3mmほどの青い血管が、網目のように透けて見える

痛みなどの症状はほとんどない

くもの巣状

直径1mm以下の赤紫色の細い血管が、くもの巣のように広がる

痛みなどの症状はほとんどない

治療が必要になることが多い「伏在型」「側枝型」

伏在型と側枝型は、足の比較的太い血管の弁が壊れてしまうタイプです。特に伏在型は、足のだるさやむくみといった不快な症状が出やすいのが特徴です。放っておくと皮膚に炎症が起きることもあるため、治療が必要になることが多いです。

見た目が気になることが多い「網目状」「くもの巣状」

網目状とくもの巣状は、皮膚の表面にある非常に細い血管が広がったものです。痛みなどの症状が出ることはまれで、美容的な観点からご相談いただくことが多いです。

これらの細かい静脈瘤の治療では、薬剤を注射する方法やレーザー治療が選択肢になります。ある研究では、特に「くもの巣状」のような細い血管には、注射よりもレーザー治療の方が効果的である可能性が示されています。

また、注射で使う薬剤は、効果が高いほど副作用のリスクも高まる傾向があることもわかっています。ご自身の症状がどの種類にあてはまるか気になる場合は、一度専門のクリニックにご相談ください。

静脈瘤の原因

静脈瘤ができる主な理由は、足の血管にある「弁」の故障です。 弁は血液が心臓へ戻るのを助け、逆流を防ぐ扉の役割をします。 この弁が壊れると、血液が足にたまって血管を膨らませてしまうのです。

弁がうまく働かなくなる原因は一つではなく、複数の要因があります。

  • 遺伝的な体質 血管の壁がもともと弱いといった体質は、ご家族から受け継がれることがあります。ある報告では、ご両親ともに静脈瘤の場合、お子さんも約90%の確率で発症するとされています。
  • 生活習慣や職業 調理師や美容師など、長時間立ち続ける仕事は注意が必要です。重力で足に血液がたまりやすくなり、弁に大きな負担がかかります。
  • 加齢による変化 年齢を重ねると血管の弾力性が失われ、弁が壊れやすくなります。また、血液を心臓へ送るポンプ役のふくらはぎの筋力低下も原因です。
  • 妊娠と出産 女性ホルモンの影響で血管が柔らかくなり、弁が機能しにくくなります。大きくなった子宮が足の血管を圧迫することも、血流を妨げる一因です。

これらは足の血管自体の問題ですが、他の病気が原因のこともあります。 例えば肝硬変という病気では、食道に静脈瘤ができることがあります。 ある研究では、肝臓の状態が悪い方がこの治療を受けると、治療後に出血する危険性が高まると報告されました。 このように静脈瘤は、できる場所によって原因や注意点が異なります。

静脈瘤の症状

静脈瘤の症状は、血管が浮き出る見た目の変化だけではありません。 足のだるさや痛みなど、体からのサインとして様々な形で現れます。 最初は症状がなくても、病気が進むにつれて変化が見られます。

ご自身の足の状態をチェックしてみましょう。

【静脈瘤のサインかも?セルフチェック】

  • 足の血管が見える クモの巣のように細かく、またはミミズのように太く浮き出ています。
  • 足が重く、だるい 特に夕方から夜にかけて、足全体に疲労感を感じます。
  • 足がむくむ 靴下の跡がくっきり残ったり、夕方に靴がきつくなったりします。
  • 夜中に足がつる 「こむら返り」とも呼ばれ、睡眠中に痛みで目が覚めることがあります。
  • 皮膚のかゆみや熱っぽさ 特にすねや足首のあたりに、不快な症状を感じることがあります。

これらの症状をそのままにしておくと、足の血液の流れが悪いままです。 その結果、皮膚に栄養が届きにくくなり、トラブルが起きやすくなります。

【病気が進んだ場合の皮膚の症状】

  • 色素沈着 足首の周りの皮膚が、茶色や黒っぽく変色してきます。
  • 皮膚炎 湿疹ができて、強いかゆみを伴うことがあります。
  • 潰瘍(かいよう) 皮膚が硬くなり、最終的には皮膚に穴が開いた状態になることもあります。

静脈瘤は足だけでなく、食道など体の他の部分にできることもあります。 ある研究では、体の状態によっては食道にできた静脈瘤からの出血が少ない傾向もある、と報告されています。 しかし、足の静脈瘤はこれとは全く別の問題です。 気になる症状があれば、早めに専門の医療機関へご相談ください。

静脈瘤の検査・診断

「足の血管が浮き出ている」など、静脈瘤が疑われる症状がある場合、まず詳しい検査で足の状態を正確に知ることが治療の第一歩となります。 検査は体に負担の少ないものが中心なので、安心して受けてください。

主な検査は、お話を聞く「問診」、目で見る「視診」、そして「超音波(エコー)検査」の3つです。

まず問診と視診で、症状の経緯やご家族に同じ病気の方がいないかなどを確認します。 そして、立ち上がった状態で足の血管の浮き出方や皮膚の状態を観察します。 立った姿勢は重力で足に血液がたまり、静脈瘤の状態が最もよくわかるからです。

診断で最も重要になるのが、超音波(エコー)検査です。 肌にゼリーを塗り、機械をあてるだけで血管の内部を映像で見られます。 痛みは全くなく、リラックスして受けられる検査です。

この検査では、主に次の3つのことを詳しく調べます。

  • 血液の流れ 弁が壊れて、血液が逆流していないかを確認します。
  • 血管の状態 血管の太さや形がどうなっているかを調べます。
  • 血の塊(血栓)の有無 血管の中に危険な血の塊ができていないかを確認します。

これらの検査結果から、静脈瘤のタイプや重症度を診断します。 正確な診断は、ご自身に合った治療法を選ぶために非常に重要です。

例えば、治療にはレーザー治療や従来の手術など複数の選択肢があります。 ある研究では、レーザー治療は手術に比べて術後の合併症が少ない傾向にあると報告されました。 しかし、どちらが明確に優れているとは言えず、それぞれの治療法に利点と注意点があります。

そのため、まずは検査でご自身の状態を正確に把握することが大切です。 その上で、医師とよく相談し、最適な治療計画を一緒に立てていきましょう。

静脈瘤の治療

静脈瘤の治療は、足のつらさや見た目を改善することが目的です。 また、皮膚の炎症や潰瘍といった、より深刻な状態を防ぎます。 治療法は一つではなく、状態や希望に合わせて主に3つから選びます。

  • 保存的治療 症状を和らげ、悪化を防ぐ「守りの治療」です。
  • 硬化療法 細い血管の見た目をきれいにする治療です。
  • 手術 原因となっている血管を根本から治す治療です。

保存的治療

症状が軽い場合に行う、体に負担のない方法です。 医療用の弾性ストッキングという特別な靴下で足を圧迫します。 足に血液がたまるのを防ぎ、心臓へ戻る流れを助けます。 病気自体を治すものではなく、症状を軽くするための治療です。

硬化療法

「くもの巣状」や「網目状」といった細い静脈瘤が対象です。 原因の血管に薬を注射し、内側から固めてしまいます。 固まった血管は自然に体に吸収され、目立たなくなります。

手術

症状が強い場合や、太い血管が原因の場合に行う治療法です。 現在では、患者さんの体への負担が少ない治療が中心です。

治療法

特徴

血管内治療

(レーザー・高周波)

・カテーテルという細い管を血管の中に入れます。

・レーザーなどの熱で悪い血管を内側からふさぎます。

・傷がとても小さく、日帰りで治療できることが多いです。

ストリッピング手術

・昔から行われている確実な方法です。

・原因となっている悪い血管そのものを抜き取ります。

・血管内治療に比べて、傷が少し大きくなることがあります。

ある研究では、新しい「血管内治療」と従来の「ストリッピング手術」を比べたところ、治療の効果に大きな違いはないと報告されています。 一方で、血管内治療の方が治療後の痛みや内出血といった合併症が少ない傾向にあることも示されました。 どちらの治療が明確に優れているとは言えず、ご自身の状態に合わせて医師と相談し、最適な方法を見つけることが大切です。