脊髄空洞症
脊髄空洞症
片方の手のしびれや、熱いお風呂に入っても温度を感じにくい。そんな原因不明の不調、実は背骨の中を通る大切な神経「脊髄」にできた“水たまり”が原因かもしれません。
これは「脊髄空洞症」と呼ばれる病気のサインで、日本の調査では人口100万人あたり約84人と報告される、比較的まれな疾患です。しかし、気づかないうちに神経を圧迫し、徐々に症状が進行していきます。
放置すると突然呼吸が苦しくなるなど、命に関わる危険性も指摘されています。この記事では、脊髄空洞症の正体や症状、そして治療法について詳しく解説します。大切な体を守るため、ご自身の状態と照らし合わせてみてください。
脊髄空桐症の概要
背骨の中には、脳から続くとても大切な神経の束「脊髄」が通っています。 脊髄空洞症は、この脊髄の中に水たまりのような「空洞」ができる病気です。
この空洞の中身は、脳や脊髄を守るクッションの役割を持つ脳脊髄液です。 空洞が少しずつ大きくなると、脊髄を内側から圧迫し神経を傷つけます。 その結果、手足の感覚が鈍くなったり、動きにくくなったりします。
この病気は古くから知られていますが、かかる人は比較的少ないです。 日本の調査では、人口100万人あたり約84人という報告があります。
脊髄空洞症のポイントをまとめました。
- どこにできる? 背骨の中にある、とても大切な神経の束「脊髄」
- 何ができる? 脳や脊髄を守る液体(脳脊髄液)がたまった水たまり(空洞)
- どうなる? 空洞が神経を圧迫し、感覚の異常や動きにくさなどが起こる
症状は片方の手のしびれや、温度を感じにくいといった感覚の異常から始まります。 病気が進行すると、呼吸に関わる神経が圧迫されることもあります。 ある研究では、手術後も呼吸機能の回復が難しく、人工呼吸器を使い続ける必要があるケースも報告されています。
脊髄空洞症の種類
脊髄空洞症は、なぜ空洞ができるのかという原因によって、大きく2つのタイプに分けられます。 原因がはっきりとわかっていないタイプと、他の病気やケガがきっかけで起こるタイプです。
特発性(とくはつせい)脊髄空洞症
こちらは一次性とも呼ばれ、空洞ができてしまう原因が、現在の医学では特定できないものを指します。 特別な原因が見当たらないのに、脊髄の中に空洞ができてしまうタイプです。
二次性(にじせい)脊髄空洞症
こちらは、空洞ができる原因がはっきりしているタイプです。 原因によって治療法も変わるため、どのタイプかを見極めることがとても重要になります。
- キアリ奇形に伴うもの 生まれつきの脳や頭蓋骨の形の影響で、脳脊髄液という液体の流れが悪くなり空洞ができます。 このタイプでは、まれに急に息ができなくなる「急性呼吸不全」を起こすことがあります。 複数の研究を分析した報告では、手術後も呼吸を助ける人工呼吸器がなかなか外せないケースもあるとされています。
- 癒着性(ゆちゃくせい)くも膜炎に伴うもの 脊髄を包む「くも膜」という膜が炎症でくっつき、脳脊髄液の流れをせき止めてしまうことで空洞ができます。
- 脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)に伴うもの 脊髄にできた腫瘍から出る液体や、腫瘍が神経を圧迫することで空洞ができてしまいます。
- 外傷や出血によるもの 事故による脊髄のケガや、脊髄での出血がきっかけとなり、時間が経ってから空洞ができることがあります。
脊髄空洞症の原因
脊髄に空洞ができる主な理由は、脳や脊髄を守っている「脳脊髄液」の流れが悪くなることです。 川の流れがせき止められると水があふれるように、脳脊髄液の流れが滞ると脊髄の中に液体がたまってしまいます。
脳脊髄液の流れが悪くなる原因は、いくつかあります。
- キアリ奇形 生まれつき脳の一部(小脳)が通常より下にあり、脳脊髄液の通り道をふさいでしまう状態です。 脊髄空洞症の最も多い原因の一つとされています。 まれに呼吸が突然苦しくなる「急性呼吸不全」を起こすことがあります。 ある研究では、手術後も呼吸を助ける人工呼吸器が、なかなか外せないほど重症になるケースも報告されています。
- 脊髄腫瘍(せきずいしゅよう) 脊髄にできた「できもの」が脳脊髄液の流れを変えたり、腫瘍から出る液体がたまったりして空洞ができます。
- 外傷(がいしょう) 交通事故などで背骨に大きなケガをした後、数ヶ月から数年経ってから空洞ができることがあります。
- 癒着性(ゆちゃくせい)くも膜炎 脊髄を包む「くも膜」という薄い膜が、ばい菌の感染や出血が原因でくっついてしまう病気です。 膜がくっつくことで、脳脊髄液の流れがせき止められてしまいます。
このように原因は様々ですが、脳脊髄液の流れの異常が深く関わっています。 ご自身の状態を正確に知り、適切な治療を受けるためには、MRI検査などで原因を詳しく調べることが非常に重要です。
脊髄空洞症の症状
脊髄空洞症の症状は、神経のどこに空洞ができたかによって変わります。 そのため、一人ひとり症状の現れ方が違うのがこの病気の特徴です。 多くの場合、症状はゆっくりと現れるため、気づきにくいことがあります。
はじめに現れやすい症状は、感覚の異常や動きにくさです。
- 感覚の異常 片方の手や腕にしびれや、ジンジンとした痛みを感じることがあります。 また、熱さや冷たさを感じにくくなるのも特徴的な症状です。 例えば、お風呂のお湯が熱いのか分かりにくく、やけどをしてしまうこともあります。 触られた感覚はあるのに、痛みだけを感じにくい「解離性感覚障害」も起こります。
- 動きの異常 手の力が弱くなり、ペットボトルの蓋が開けにくくなったりします。 物をよく落とすようになったり、手の筋肉がやせて細くなったりもします。 足に症状が出ると、歩きにくさや、足がもつれる感じがします。
- その他の症状 首や背中、腰などに原因のはっきりしない痛みが出ることがあります。 体の片側だけ汗をかきにくくなるなど、汗のかきかたに異常が出ることもあります。
これらの症状は、体の左右どちらか一方に強く現れることが多いです。
病気が進んで空洞が大きくなると、症状は全身に広がる可能性があります。 手足の筋肉が硬くつっぱったり、排尿や排便の調節が難しくなったりします。
さらに空洞が脳に近い部分まで広がると、命に関わることもあります。 呼吸を調節する神経が圧迫されると、突然息が苦しくなることがあります。 これは「急性呼吸不全」という非常に危険な状態で、緊急の対応が必要です。 複数の研究を分析した報告では、手術後も呼吸を助ける人工呼吸器が、なかなか外せないほど重症になるケースもあるとされています。 気になる症状があれば、自己判断せずに専門の医療機関へご相談ください。
脊髄空洞症の検査・診断
手足のしびれなど、症状だけでは診断が難しいのがこの病気の特徴です。 そのため、体の内部を詳しく見る「画像検査」がとても重要になります。 診断の主役となるのは、MRI(磁気共鳴画像)検査です。
MRI検査は、強力な磁石と電波を使い、体の断面を写真のように写します。 この検査で、脊髄の中に水たまり(空洞)があるかを確認できます。 空洞の大きさや形、場所も正確にわかるため、診断に欠かせません。
原因を特定するため、目的に合わせていくつかのMRI検査を使い分けます。
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検査の種類 |
目的と特徴 |
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単純MRI検査 |
まず行われる基本の検査です。 脊髄の断面を撮影し、空洞があるかどうかやその大きさを確認します。 |
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造影MRI検査 |
腫瘍など、他の病気が隠れていないかを調べるために行います。 血管を見やすくするお薬を注射し、病気をはっきりと映し出します。 |
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特殊なMRI検査 (CINE-MRIなど) |
脳や脊髄の周りを流れる脳脊髄液の流れを動画のように撮影します。 流れがどこでせき止められているのかを突き止めるのに役立ちます。 |
原因を正確に突き止めることは、治療方針を決める上で非常に大切です。 特にキアリ奇形が原因の場合、呼吸に関わる神経に影響が及ぶことがあります。 複数の研究を分析した報告では、手術後も呼吸を助ける人工呼吸器がなかなか外せない患者さんがいることもわかっています。 適切な治療のためにも、まずはMRI検査でご自身の状態を詳しく調べましょう。
脊髄空洞症の治療
脊髄空洞症の治療目標は、病気の進行を食い止め、症状を和らげることです。 治療は大きく2つの方法に分けられ、状態に合わせて最適なものを選びます。 症状が軽い場合は、まず症状をコントロールする治療から始めることが多いです。
症状を抑える治療(保存的治療)
空洞の大きさに変化がない、または症状が軽い時に行われる治療法です。 空洞そのものをなくすのではなく、症状と上手く付き合っていくことを目指します。
- お薬での治療(薬物療法) 痛みやしびれといった、つらい症状を和らげるためにお薬を使います。
- リハビリ(理学療法) 筋力が弱くなったり、関節が硬くなったりするのを防ぐための運動です。
原因にアプローチする手術(外科的治療)
症状が進んでいる場合や、空洞が大きくなっている場合に検討されます。 手術で空洞が大きくなる原因を取り除き、症状の改善を目指す治療法です。
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手術の種類 |
目的と内容 |
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大後頭孔拡大術 |
キアリ奇形が原因の時に行われます。 頭の骨と背骨のつなぎ目を広げ、脳脊髄液の流れをスムーズにします。 水の流れを良くして、水たまりが大きくならないようにする手術です。 |
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シャント術 (空洞-くも膜下腔短絡術) |
空洞にたまった液体を、細いチューブを使って別の場所へ逃がします。 これにより、脊髄にかかる圧力を減らし、神経へのダメージを防ぎます。 |
手術には注意点もあります。特にキアリ奇形が原因の場合、まれに呼吸に影響が出ることがあります。 複数の研究を分析した信頼性の高い報告によると、手術後も呼吸が不安定になるケースが確認されています。 手術を受けた後も、呼吸を助ける人工呼吸器が長期間必要になる場合があることも分かっています。 そのため、手術をするかどうかは、効果とリスクを天秤にかけ、医師が慎重に判断します。 ご自身の状態に合った治療法を、主治医とよく相談して決めることが大切です。





