脊髄血管腫
原因のわからない背中の痛みや、手足のしびれに悩まされていませんか。その症状、もしかすると脳と体をつなぐ大切な神経の束「脊髄」にできた、血管のかたまりが原因かもしれません。この病気は「脊髄血管腫」と呼ばれ、良性であっても神経を圧迫し、深刻な麻痺などを引き起こすことがあります。
脊髄血管腫にはいくつかの種類があり、中には世界での報告が84例ほどしかない、極めて珍しいタイプも存在します。そのため、まだ確立された治療法がなく、原因さえも完全には解明されていないのが現状です。
この記事では、謎の多い脊髄血管腫について、その種類や症状、そして手術やカテーテル治療といった最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身の症状と照らし合わせ、病気への理解を深めていきましょう。
脊髄血管腫の概要
私たちの背骨の中には、脳と体をつなぐ大切な神経の束、「脊髄」が通っています。 この脊髄に、血管が集まってできたかたまり(血管腫)ができてしまう病気が脊髄血管腫です。
血管腫そのものは、多くの場合、命に関わる悪性のものではありません。 しかし、神経のすぐ近くにできることで、さまざまな問題を引き起こします。 かたまりが脊髄を圧迫したり、血管が破れて出血したりすることがあります。 これにより、手足のしびれや痛み、麻痺といった症状が現れるのです。
脊髄血管腫にはいくつかの種類があり、中には非常にまれなものも含まれます。 例えば「上皮様血管内皮腫」という腫瘍は極めて珍しいタイプです。 世界中の報告を集めた研究でも84例ほどしか確認されていません。 このように珍しい病気は、まだ確立された治療の指針がないこともあります。 そのため、一人ひとりの状態に合わせて慎重に治療法が検討されます。
脊髄血管腫のポイント
- できる場所 脳と体をつなぐ神経の束である「脊髄」に発生します。
- かたまりの正体 血管が異常に増えたり広がったりしてできた良性の腫瘍です。
- 症状がでる仕組み 脊髄の圧迫、出血、周辺の血流不足が原因となります。
- 病気の特徴 非常にまれなタイプもあり、治療法が確立されていないものもあります。
脊髄血管腫の種類
「脊髄血管腫」とひとことで言っても、実はいくつかの種類があります。 血管のかたまりが、どこに、どのようにできるかによって分けられています。 代表的なものには、主に以下の3つのタイプが存在します。
- 動静脈奇形(どうじょうみゃくきけい) 本来は細い血管(毛細血管)を介してつながる動脈と静脈が、 直接つながってしまったタイプです。
- 海綿状奇形(かいめんじょうきけい) スポンジのように、細かい血管が集まってできたかたまりのタイプです。
- 血管芽腫(けっかんがしゅ) 血管をつくる細胞からできる、血管が豊富な腫瘍のタイプです。
この中で、特に「動静脈奇形」はできる場所によってさらに細かく分類されます。 どこで動脈と静脈がつながっているか、という違いが治療法を考える上で重要です。
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種類 |
特徴 |
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脊髄硬膜動静脈瘻(せきずいこうまくどうじょうみゃくろう) |
脊髄を包む硬い膜(硬膜)の上で動脈と静脈がつながるタイプです。 |
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脊髄辺縁部動静脈瘻(せきずいへんえんぶどうじょうみゃくろう) |
脊髄の表面で動脈と静脈がつながるタイプです。 |
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脊髄髄内動静脈奇形(せきずいずいないどうじょうみゃくきけい) |
脊髄の内部で血管が異常なかたまりをつくっているタイプです。 |
このほかにも、非常にまれなタイプの血管腫瘍が脊髄にできることがあります。 例えば「上皮様血管内皮腫」という腫瘍は、極めて珍しいものです。 世界中の報告をまとめた研究でも84例ほどしか確認されていません。 このように珍しい病気は、まだ確立された治療の指針がないこともあります。 そのため、一人ひとりの状態に合わせて慎重に治療法が検討されます。
脊髄血管腫の原因
脊髄血管腫ができるはっきりとした原因は、残念ながらまだ全ては解明されていません。 そのため、ご自身やご家族が診断を受け、不安に思われる方も多いかもしれません。
しかし、研究が進むにつれて、血管腫の種類ごとに原因が少しずつわかってきました。 現在考えられている主な原因は、以下の通りです。
- 生まれつきの要因(先天性) お母さんのお腹の中で体がつくられる過程で、 血管に異常が起きてしまうことが原因と考えられています。 「動静脈奇形」という種類の多くがこれにあたります。
- 遺伝的な要因 体の設計図である「遺伝子」の変化が関係するタイプです。 「海綿状血管腫」の一部は、ご家族で発生することがあり、 特定の遺伝子の変化が原因であることが知られています。
- 生まれた後の要因(後天性) 数は多くありませんが、過去のケガ(外傷)や手術が、 発生のきっかけになる可能性も考えられています。
また、中には「上皮様血管内皮腫(EHE)」のように、発生が非常にまれな腫瘍もあります。 これは世界中の報告を集めた研究でも84例ほどしか確認されていない珍しいタイプです。 このように極めてまれな腫瘍は、原因の特定が難しく、確立された治療の指針もありません。 そのため、詳しい原因や治療法を確立するための研究が今も世界中で続けられています。
脊髄血管腫の症状
脊髄血管腫の症状は、血管のかたまりができた場所や大きさで全く異なります。 症状が何もなく、他の検査で偶然見つかる方も少なくありません。
しかし、かたまりが神経を圧迫したり、血管が破れて出血したりすると、 体からのSOSサインとして、次のような症状が現れることがあります。 気になる症状がないか、チェックしてみましょう。
【体からのSOSサイン・チェックリスト】
- 痛み 背中や首のあたりに、原因がわからない痛みを感じます。
- 動きのトラブル 手や足に力が入りにくくなったり、歩きにくさを感じたりします。 急に手足が動かしにくくなる「麻痺」が起こることもあります。
- 感覚のトラブル 手足がじんじん、ピリピリとしびれることがあります。 触られた感覚が鈍くなったり、熱さや冷たさを感じにくくなったりします。
- おしっこ・うんちのトラブル おしっこやうんちが出にくくなる、または漏らしてしまうことがあります。
これらの症状は、ゆっくりと進行することもあれば、出血によって突然現れることもあります。 例えば「上皮様血管内皮腫」という非常にまれな腫瘍の研究報告では、 足の力がだんだん弱くなる、感覚がおかしくなる、尿を漏らしてしまうといった症状がみられました。
もし、急に強い症状が出た場合は、すぐに医療機関に相談することが大切です。 気になるサインを見逃さず、早めに専門の医師に診てもらいましょう。
脊髄血管腫の検査・診断
背中の痛みや手足のしびれなど、脊髄血管腫を疑う症状がある場合、まずは精密な検査で体の中を詳しく調べ、原因を突き止めることが重要です。 正しい治療を行うために、いくつかの検査を組み合わせて慎重に診断を進めていきます。
1. 画像で見る検査 まず、血管のかたまりがどこにあり、どのような状態かを確認します。
- MRI検査 磁石と電波の力で、体の断面を詳しく撮影する検査です。 神経や血管といった柔らかい組織を鮮明に映すのが得意です。 血管腫の正確な位置や大きさ、神経への影響を評価できます。
- CT検査 X線を使って体を輪切りにした画像を撮影する検査です。 特に、血管腫から出血しているかどうかを調べるのに役立ちます。
2. 血管を詳しく調べる検査 画像検査で血管腫が見つかった場合、治療の方針を決めるためにより詳しい検査を行います。
- 脊髄血管撮影(カテーテル検査) 足の付け根の血管から「カテーテル」という細い管を入れます。 血管腫の近くまで管を進め、造影剤を流しながらX線撮影します。 血管のつながりや血液の流れをリアルタイムで詳しく調べられます。
これらの検査だけでは診断が難しいこともあります。 例えば「上皮様血管内皮腫」という腫瘍は世界でも報告が非常に少なく、診断が難しいまれなタイプです。 このような場合、手術で取り出した組織を顕微鏡で調べる「病理検査」で最終的な診断を確定することもあります。
脊髄血管腫の治療
脊髄血管腫の治療は、一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド治療です。 血管のかたまりの種類や場所、症状の強さなどを総合的に考えて決めます。 特に「上皮様血管内皮腫」のような非常にまれな腫瘍の場合、 まだ世界的に確立された治療の指針がないのが現状です。 そのため、専門の医師が慎重に治療法を検討します。
主な治療の選択肢には、次の2つの方法があります。
- 手術(直達手術) 背中を切開し、問題のある血管のかたまりを直接取り除く方法です。
- カテーテル治療(血管内治療) 足の付け根などから細い管を入れ、血管の中から治療する方法です。
特に、血管のかたまりが神経を圧迫して手足のしびれや麻痺が出ている場合、 神経への圧迫を取り除く手術が第一の選択肢として有効だと考えられています。
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治療法 |
どのような治療か |
メリット・注意点 |
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手術 |
背中を切り開き、背骨の一部を丁寧にあつかって、問題のある血管を直接処置します。 |
メリット ・異常な血管を直接見ながら、 より確実に処置できる可能性があります。 注意点 ・体への負担が比較的大きくなります。 |
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カテーテル治療 |
足の付け根の血管からカテーテルという細い管を入れ、血管の中から異常な部分を特殊な物質で塞ぎます。 |
メリット ・体にメスを入れず治療できるため、 体への負担が少ない傾向にあります。 注意点 ・血管の場所や状態によっては、 治療がむずかしい場合があります。 |
かつては放射線治療が行われることもありましたが、副作用のリスクがあるため、 現在ではあまり行われません。化学療法についても、まだ研究段階です。 どの治療法を選ぶかは、検査結果をもとに医師が患者さんやご家族とよく話し合って決定します。 いずれも高い技術が求められるため、経験豊富な医師に相談することが大切です。





