くも状血管腫
ふと鏡を見ると、顔や首、胸元にクモの巣のような赤いアザができていませんか?それは「くも状血管腫」かもしれません。痛みもかゆみもなく、多くは健康に害のない良性のものですが、その名前に惑わされてはいけません。
実は、「血管腫」という言葉には注意が必要です。名前が似ていても、脳などにできて深刻な症状を引き起こす全く別の病気が存在するからです。例えば、ある研究では、脳にできた血管腫の患者の約96%が最初の症状として視力低下を経験したという報告もあります。
この記事では、皮膚にできる良性のくも状血管腫の正体から、見分けるべき危険な病気との違いまでを詳しく解説します。正しい知識を身につけ、ご自身の症状に対する不安を解消しましょう。
くも状血管腫の概要
くも状血管腫とは、皮膚の表面近くにできる赤くて小さなアザのようなものです。 中心に1mmほどの赤い点があり、そこからクモの脚のように細い血管が伸びる見た目が特徴です。
この血管腫の主な特徴は以下のとおりです。
- 見た目
- 中心の赤い点から、細い血管が放射状に広がっています。
- できやすい場所
- 主に顔や首、胸、腕など心臓より上の部分に見られます。
- 症状
- 痛みやかゆみはほとんどなく、健康上の問題を引き起こすことはまれです。
妊娠中の方や経口避妊薬(ピル)を飲んでいる方、肝臓の機能が低下している方に見られやすいです。 これは女性ホルモンのバランスの変化が関係していると考えられています。 一方で、小さなお子さんや特に持病のない健康な大人にできることもあります。
ただし、名前が似ていて注意が必要な病気もあります。 脳の中に「海綿状血管腫」という血管の異常ができることがあり、これは全く異なる病気です。 研究報告によると、この病気は急な視力低下や頭痛などを引き起こすことがあります。 場合によっては手術が必要になるため、皮膚にできる良性のくも状血管腫との違いを知っておくことが大切です。
この記事では、皮膚にできる良性のくも状血管腫について詳しく解説します。
くも状血管腫の種類
「くも状血管腫」という言葉は、実は2つの異なる状態を指すことがあります。 1つは皮膚にできる良性のもの、もう1つは体の内部、特に脳にできるものです。 これらは名前が似ていますが全く異なるため、その違いを知っておくことが大切です。
1. 皮膚にできる「くも状血管腫」
一般的に「くも状血管腫」というと、こちらの皮膚にできるタイプを指します。 顔や首、胸など心臓より上の部分によく見られる、小さな赤いアザです。 健康への影響はほとんどなく、見た目以外の症状が出ることはまれです。
2. 脳などにできる「海綿状血管腫」
こちらは非常にまれですが、注意が必要な血管の異常(血管腫)です。 脳や脊髄といった体の奥深く、神経の近くにできることがあります。 外から見ることはできず、できる場所によってさまざまな症状を引き起こします。
例えば、目と脳をつなぐ神経の通り道にできた場合、深刻な影響が出ることがあります。 ある研究報告によると、この病気の患者さんのうち約96%が最初の症状として視力低下を経験し、約37%に頭痛が見られたとされています。
この2つの違いを、以下の表にまとめました。
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種類 |
主な場所 |
特徴・症状 |
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くも状血管腫 |
皮膚(顔、首、胸など) |
・外から見える赤いアザ ・通常は健康上の問題はない |
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海綿状血管腫 |
脳、脊髄など |
・外からは見えない ・場所により急な視力低下や頭痛を起こすことがある |
このように、皮膚にできた場合は心配いらないことがほとんどです。 しかし、名前が似ていて注意が必要な病気があることも覚えておきましょう。
くも状血管腫の原因
くも状血管腫ができるはっきりとした原因は、まだ完全にはわかっていません。 しかし、特定の状態の方に多く見られるため、いくつかの要因が関係していると考えられています。
特に、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」の増加が有力な原因とされています。 エストロゲンには血管を広げたり、新しく作ったりする働きがあります。 そのため、体内のエストロゲンが増えると、くも状血管腫ができやすくなるのです。
具体的には、以下のような場合にできやすいことが知られています。
- 妊娠しているとき
- 胎児を育てるために、体内の女性ホルモンが自然に増加します。
- 経口避妊薬(ピル)を飲んでいるとき
- ピルには女性ホルモンが含まれているため、その影響で現れることがあります。
- 肝臓の機能が低下しているとき
- 肝臓は体内のホルモンバランスを調整する大切な役割を担っています。
- 肝機能が落ちると、エストロゲンが分解されにくくなり、結果的に血中の濃度が高まります。
一方で、小さなお子さんや特に持病のない健康な大人にできることもあります。 この場合は、はっきりとした原因がわかっていないことがほとんどです。
皮膚にできるくも状血管腫は、健康上の問題はほとんどありません。 しかし、名前が似ている「海綿状血管腫」は、脳や体の内部にできる全く別の病気です。 研究報告によると、脳幹にできた海綿状血管腫は、年間約34%という高い確率で再出血を起こすことがわかっています。 また、目の神経の近くにできた場合、約96%の患者さんが最初の症状として視力低下を経験したというデータもあります。 皮膚にできる良性のものとの違いを知っておくことが大切です。
くも状血管腫の症状
くも状血管腫の症状は、ほとんどが見た目の変化です。 痛みやかゆみなどの自覚症状は、基本的にはありません。 どのような見た目なのか、具体的に見ていきましょう。
皮膚にあらわれる見た目の特徴
くも状血管腫には、以下のような見た目の特徴があります。
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特徴 |
くわしい説明 |
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中心の赤い点 |
真ん中に1mmほどの、少し盛り上がった赤い点があります。 |
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放射状の血管 |
赤い点を中心に、クモの脚のように細い血管が広がります。 |
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できやすい場所 |
顔や首、胸など、心臓より上の部分にできやすいです。 |
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拍動(はくどう) |
中心部を指で軽く押すと、脈を打つように感じることがあります。 |
自覚症状や、同時にみられる症状
見た目以外の症状はほとんどありません。 しかし、まれにピリピリとした痛みを感じることもあります。
また、肝臓の病気が原因でくも状血管腫ができている場合、 手のひらが赤くなる「手掌紅斑(しゅしょうこうはん)」 という症状が同時に見られることがあります。
【注意】名前が似ている「海綿状血管腫」との違い
皮膚にできるくも状血管腫は、健康上の問題はほぼありません。 しかし、名前が似ている「海綿状血管腫」は注意が必要です。 この血管腫は脳や脊髄など、体の深い場所にできます。
できる場所によって、下記のような重い症状が出ることがあります。
- 目の神経の近くにできた場合
- ある研究報告によると、患者さんの約96%が 最初の症状として視力低下を経験したとされています。
- 脳幹(のうかん)にできた場合
- 脳幹は生命維持に重要な部分です。
- ここにできると、手足のまひや感覚の異常が 起こることがあります。
- 年間で約34%という高い確率で再出血するとの報告もあります。
これらの症状は、皮膚にできる良性のくも状血管腫とは全く異なります。 皮膚の見た目以外に気になる症状があれば、自己判断せず、 専門の医療機関に相談することが大切です。
くも状血管腫の検査・診断
くも状血管腫の診断は、ほとんどの場合、見た目を確認するだけで判断できます。 クモの脚のように血管が広がる特徴的な見た目をしているためです。
より詳しく観察するために、「ダーモスコピー」という拡大鏡のような器具で、 皮膚の状態を詳しく見ることもあります。
ただし、大人の方でくも状血管腫がたくさんできた場合は注意が必要です。 背景に肝臓の病気などが隠れていないか、追加で検査を行うことがあります。
【くも状血管腫の検査】
- 視診・ダーモスコピー検査
- 医師が目で見て、できものの特徴を確認します。
- 血液検査
- 肝臓の機能などを調べるために行われることがあります。
ほとんどのくも状血管腫は、皮膚にできる良性のできものです。 しかし、体の内部にできる別の種類の血管腫と見分けることが大切です。
特に、脳にできる「海綿状血管腫」は名前が似ていますが全く違う病気です。 もし、皮膚のできもの以外に下記のような症状があれば注意してください。
【注意したい症状のチェックリスト】
- 急な視力の低下や、ものが二重に見える
- ある研究報告では、目の神経近くにできた海綿状血管腫の患者さんのうち、 約96%が最初の症状として視力障害を経験したとされています。
- これまでにないような頭痛が続く
- 同じ研究で、約37%の患者さんに頭痛が見られたとの報告もあります。
- 手足の動かしにくさや、しびれがある
- 脳の深い部分にできた場合、体の動きに異常が出ることがあります。
これらの症状は、皮膚のくも状血管腫が原因で起こることはありません。 気になる症状があれば、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。
くも状血管腫の治療
くも状血管腫は、多くの場合、健康上の問題はありません。 特にお子さんや妊娠中にできたものは、自然に消えることがほとんどです。 そのため、必ずしも急いで治療が必要というわけではありません。
しかし、顔など目立つ場所にできて見た目が気になる場合や、 なかなか消えない場合には、治療を考えることもできます。 治療法には、以下のような比較的からだへの負担が少ないものがあります。
- レーザー治療 血管の赤い色だけに反応する、特殊な光をあてる方法です。 原因となっている血管だけをねらって壊すことができます。 「Vビーム」という種類のレーザーがよく使われ、保険が適用される場合もあります。
- 電気凝固法(でんきぎょうこほう) くも状血管腫の中心にある血管に、とても細い針を刺します。 そこに弱い電気を流して、血管を焼いて固める治療法です。
【注意】名前が似ている「海綿状血管腫」の治療
皮膚にできるくも状血管腫とは違い、脳や体の深い場所にできる 「海綿状血管腫」は、より専門的な治療が必要になることがあります。
例えば、目の神経の近くにできた場合、手術が検討されます。 ある研究報告では、早期に手術を行うことで、 患者さんの94%以上で視力の改善や維持がみられたとされています。 これは神経への影響を抑え、視力を守るための大切な治療です。
また、脳幹という生命維持に重要な場所にできた場合は、 さらに慎重な判断が求められます。 この場所の血管腫は、1年間に再出血する確率が 約34%と高いことが研究でわかっています。
手術によって症状が良くなる可能性はありますが、リスクも伴います。 そのため、専門の医師が一人ひとりの状態をよく見て、 治療の必要性を慎重に判断することがとても重要です。





