脂漏性角化症

鏡を見るたびに気になる、その茶色いシミや少し盛り上がったいぼ。「老人性いぼ」とも呼ばれるため、ご年配の方特有のものだと思っていませんか?実はこれ、早い方では20代から現れることもある「脂漏性角化症」かもしれません。皮膚科の診察では最もよく見られる良性のできもので、多くの人が経験するありふれた症状の一つです。

基本的にはがん化する心配もなく、人にうつることもありません。しかし、中には悪性の皮膚がんと見た目が似ているケースもあり、自己判断は禁物です。この記事では、脂漏性角化症の正しい知識から、気になる場合の治療法までを専門的な視点から詳しく解説します。ご自身の症状と見比べながら、その正体と対処法を理解し、不安を解消しましょう。

脂漏性角化症の概要

脂漏性角化症は「しろうせいかくかしょう」と読みます。 「老人性いぼ」や「年寄りいぼ」とも呼ばれるものです。

皮膚科の診察では、最もよく見られる良性のできものです。 名前から高齢の方の病気と思われがちですが、 早い方では20代から見られることもあります。

このできものは、がん(悪性腫瘍)に変化することはなく、 他の人にうつる心配もありませんのでご安心ください。 主な特徴は以下のとおりです。

  • できる場所 顔や頭、胸、背中など上半身にできやすいです。 しかし、手のひらや足の裏以外の皮膚であれば、 どこにでもできる可能性があります。
  • 見た目の特徴 少し盛り上がった、茶色から黒っぽいシミのような見た目です。 表面はザラザラとしており、 まるでワックスを塗ったものが貼り付いているように見えることもあります。
  • 大きさ 大きさは数ミリの小さなものから、 時には数センチを超えるサイズになることまで様々です。

脂漏性角化症は体に悪さをするものではないため、 必ずしも治療が必要なわけではありません。

しかし、見た目が気になる、衣類でこすれて痛む、 かゆみがあるなどの理由から、 治療を希望される方が多くいらっしゃいます。 年齢とともに数が増えたり、少しずつ大きくなる傾向があります。

脂漏性角化症の種類

脂漏性角化症と一言でいっても、実はいくつかの種類があります。 お医者さんは、主に見た目の特徴で種類を判断しています。 ここでは、代表的な4つの種類について解説します。

種類

見た目の特徴

できやすい場所

一般的なタイプ

表面はザラザラで少し盛り上がっています。色は薄茶色から黒色まで様々です。

顔、頭、胸、背中など上半身にできやすいです。

扁平型

シミのように平らで、あまり盛り上がりません。普通のシミと見分けるのが難しいこともあります。

顔、手の甲など

黒色丘疹性皮膚症

1〜2mmほどの小さくて黒い粒々がたくさんできます。肌の色が濃い方に比較的多く見られます。

顔、首、まぶたの周りなど

スタッコ角化症

白っぽく乾燥し、カサカサしたものが付着したような見た目です。

足の甲、足首、すねなど

このように、脂漏性角化症は見た目が非常に多彩です。 どの種類も、がん(悪性)になる心配のない良性のできものです。

しかし、種類によっては他の皮膚の病気と見分けがつきにくい場合があります。 自己判断はせず、気になるできものがあれば、 一度クリニックで専門の医師に相談することをおすすめします。

脂漏性角化症の原因

脂漏性角化症ができるハッキリとした原因は、まだ完全にはわかっていません。 しかし、主に3つの要因が重なってできると考えられています。

  • 年齢を重ねること(加齢)
  • 紫外線によるダメージ
  • 遺伝的な要因

これらの原因について、一つずつ詳しく見ていきましょう。

「老人性いぼ」という別名の通り、皮膚の老化が主な原因の一つです。 年齢を重ねると、皮膚の細胞が新しく生まれ変わる周期が乱れやすくなります。 その結果、皮膚の細胞が部分的に厚くなり、いぼとして現れるのです。

また、長年にわたって浴び続けた紫外線も、大きな原因となります。 顔や首、手の甲など、日光が当たりやすい場所にできやすいのがその証拠です。 紫外線によるダメージの蓄積は「外因性皮膚老化」とも呼ばれます。

ご家族にできやすい方がいる場合、ご自身もできやすい傾向があります。 近年の研究では、皮膚の細胞増殖に関わる遺伝子に変異が見られることがわかってきました。 「FGFR3」という遺伝子が、いぼの発生に関わると報告されています。

脂漏性角化症の症状

脂漏性角化症の症状は、見た目に様々な特徴があります。 基本的には痛みやかゆみといった自覚症状はありません。 しかし、状況によっては気になる症状が出ることもあります。

具体的な見た目の特徴を、3つのポイントに分けて解説します。 ご自身の症状と見比べてみてください。

  • 形と大きさ
  • 最初は平らなシミのように見えますが、
  • 時間とともに少しずつ盛り上がってくるのが特徴です。
  • 形は円形や楕円形が多く、大きさは数ミリのものから、
  • 時には直径2.5cmを超えるサイズになることもあります。
  • 色
  • 肌色に近い薄い茶色から、こげ茶色、黒色まで様々です。
  • ひとつのいぼの中でも、色の濃さが均一でないことも珍しくありません。
  • 表面の様子
  • 表面はザラザラとしていて、少し油っぽい質感に見えます。
  • 皮膚の上に何かが「貼り付いている」ように見えることも、
  • このできものの大きな特徴の一つと言えるでしょう。

顔や頭、胸、背中など上半身にできることが最も一般的です。 これは、日光(紫外線)を浴びやすいことが関係しています。 原則として、手のひらや足の裏以外の皮膚であれば、どこにでもできる可能性があります。

普段は症状がなくても、注意が必要です。 洋服がこすれるなどの刺激が加わると、かゆみが出ることがあります。 また、かゆみから掻いてしまうと、赤くなったり出血したりすることもあります。

脂漏性角化症の検査・診断

脂漏性角化症の診断は、ほとんどの場合、皮膚科の医師が目で見て確認する「視診」で判断がつきます。

しかし、見た目が他の皮膚の病気、特に皮膚がんと似ていることがあるため、正確な診断が非常に重要です。 そこで、より詳しく調べるために、次のような検査を行います。

  • ダーモスコピー検査 ダーモスコープという、特殊な拡大鏡を使う検査です。 皮膚を傷つけることなく、できものの色や形、 表面の模様などを詳しく観察できます。
    特に、色の濃い脂漏性角化症と、 「悪性黒色腫(メラノーマ)」という皮膚がんとの区別には、 このダーモスコピー検査がとても役立ちます。
  • 皮膚生検(組織検査) 視診やダーモスコピー検査を使っても診断がはっきりしない場合や、 少しでも悪性の病気が疑われる場合に行う確定診断のための検査です。
    できものの一部を切り取って、顕微鏡で細胞を直接観察します。 まれに、良性の脂漏性角化症のように見えても、 別の病気が隠れていることがあるため、この検査はとても重要です。

脂漏性角化症は良性のできものですが、自己判断は禁物です。 気になるできものがあれば、必ずクリニックで専門の医師に相談しましょう。

脂漏性角化症の治療

脂漏性角化症は良性のできもののため、医学的には治療の必要はありません。 しかし、見た目が気になる、服にこすれて痛むなどの理由で、 治療を希望される患者様は多くいらっしゃいます。

治療は主に美容的な目的で行われ、様々な選択肢があります。 いぼの状態や患者様のご希望に応じて、治療法を個別に決めていきます。

治療法

特徴

液体窒素療法

マイナス196℃の液体でいぼを凍らせて壊す、手軽な治療法です。複数回の治療が必要な場合があります。

炭酸ガスレーザー治療

特殊な光でいぼの組織を蒸発させます。細かい調整がしやすく、出血が少ないのが利点です。

電気凝固法

電気メスの熱を利用していぼを焼き切ります。盛り上がったいぼを短時間で取り除けます。

外科的切除

メスでいぼを切り取る方法です。他の治療が難しい、大きないぼの場合に選択されます。

最近では、手術以外の新しい治療法も進歩しています。 特に、高濃度の過酸化水素を含む塗り薬が注目されています。 近年の研究では、この塗り薬がいぼを改善する効果を示しており、 手術に代わる安全な治療法として期待されています。

顔など、傷跡が気になる場所の治療に適している可能性があります。 体を傷つけない治療を希望される方にとって、有力な選択肢となるでしょう。 どの治療が最適か、それぞれの長所・短所を理解した上で、 医師と一緒にあなたに合った方法を見つけていきましょう。