脂漏性皮膚炎

頭のフケが気になる、鼻のわきが赤くなってカサカサする…。そんな症状が、良くなったり悪くなったりを繰り返していませんか?それは、大人では100人に5人以上が経験するとされる、ごくありふれた皮膚の病気「脂漏性皮膚炎」かもしれません。

このしつこい皮膚トラブル、実は単なる肌の問題ではない可能性があります。近年の研究では、生活習慣病との関連も指摘されており、体の内側からの「SOSサイン」とも考えられています。実際、この皮膚炎の人はそうでない人と比べて、メタボリックシンドロームである可能性が約2.5倍も高いという報告もあるのです。

この記事では、脂漏性皮膚炎の根本的な原因から、ご自身で確認できる症状、そして最新の治療法までを詳しく解説します。長引く症状の裏に隠された本当の原因を知り、適切なケアを始める第一歩にしてみませんか。

脂漏性皮膚炎の概要

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、皮膚の病気のなかでも、とても身近な湿疹の一つです。

良くなったり悪くなったりを繰り返すため、長く付き合っていく必要があります。

ある研究報告によると、世界中の100人のうち約4人がこの皮膚炎を経験するとされています。

特に大人では100人あたり5人以上と、決してめずらしい病気ではありません。

この皮膚炎は、皮脂という肌のあぶらの分泌が多い場所にできやすい特徴があります。

【脂漏性皮膚炎ができやすい場所】

  • 頭皮 フケのようなカサカサしたものが増え、かゆみや赤みが出ます。
  • 顔 鼻のわき、眉毛、おでこの生え際などが赤くなり、皮膚がむけます。
  • 耳 耳の後ろや耳の中がカサカサしたり、皮膚が切れたりします。
  • 体 胸の中心や背中の肩甲骨の間、わきの下など、こすれやすい部分です。

主な症状は、皮膚が赤くなることや、黄色っぽいフケのようなものがつくことです。

かゆみを感じる人もいれば、まったく感じない人もいます。

この病気は、赤ちゃんの時期と思春期を過ぎた大人によく見られます。

脂漏性皮膚炎の種類

脂漏性皮膚炎は、発症する年齢によって、大きく2つのタイプに分けられます。

それが「乳児型(にゅうじがた)」と「成人型(せいじんがた)」です。

赤ちゃんにできるタイプと、大人になってからできるタイプでは、症状や治りやすさが大きく異なります。

種類

主な発症年齢

特徴的な症状と経過

乳児型

生後3ヶ月くらいまで

【症状】

・頭に黄色くベタベタしたかさぶたができます。

これは「乳痂(にゅうか)」と呼ばれます。

・おでこや眉毛、おむつの当たる部分にも

湿疹が出ることがあります。

【経過】

・かゆみは少ないことがほとんどです。

・多くは1歳になるまでに自然に良くなります。

成人型

思春期以降

(特に30〜60代)

【症状】

・頭皮にフケやかゆみが出ます。

(乾いたフケ、ベタつくフケなど様々です)

・髪の生え際や鼻の周り、耳の後ろなどが

赤くなり、カサカサします。

【経過】

・ストレスや生活習慣の乱れで悪化しやすいです。

・良くなったり悪くなったりを繰り返します。

赤ちゃんの時期にできる乳児型は、一時的なものがほとんどです。

一方、大人になってからの成人型は、長く付き合っていく必要のある病気という違いがあります。

脂漏性皮膚炎の原因

脂漏性皮膚炎がなぜ起こるのか、その原因は一つではありません。 いくつかの要因が、まるでパズルのピースのように組み合わさって発症します。

主な原因として、次の3つが深く関わっていると考えられています。

  • マラセチア菌の増殖
  • 皮脂の過剰な分泌
  • 体質や生活習慣の乱れ

マラセチア菌はカビの一種で、誰の肌にもいる常在菌です。 普段はおとなしいのですが、大好物である「皮脂」が増えると、それをエサにして急激に増殖します。 増えすぎた菌が出す物質が皮膚を刺激し、赤みやかゆみといった炎症を引き起こすのです。

最近の研究では、この皮膚炎が体の内側からの「SOSサイン」である可能性も指摘されています。 特に、生活習慣病の一歩手前の状態である「メタボリックシンドローム」との関連が注目されています。 これは、内臓脂肪の蓄積に加えて、高血圧や高血糖、脂質異常が重なった状態のことです。

ある複数の研究を分析した報告によると、脂漏性皮膚炎の人はそうでない人と比べて、メタボリックシンドロームである可能性が約2.5倍も高いことが示されました。 皮膚のトラブルだと考えていたら、実は体全体の健康状態が関わっていた、というケースは少なくありません。

そのため、以下のような生活習慣は、皮脂の分泌を増やし、症状を悪化させる可能性があります。

  • 睡眠不足や不規則な生活 ホルモンバランスが乱れ、皮脂の分泌に影響します。
  • 精神的なストレス ストレスを感じると、皮脂の分泌を促すホルモンが出やすくなります。
  • 食事の偏り 脂っこいものや糖分の多い食事は、皮脂の材料になりやすいです。
  • ビタミンB群の不足 皮膚の健康を保ち、皮脂の分泌をコントロールする働きがあります。

このように、脂漏性皮膚炎は単なる肌の問題ではなく、生活習慣や体質が深く関わる病気なのです。

脂漏性皮膚炎の症状

脂漏性皮膚炎の主な症状は、皮膚の赤みとフケのような皮むけです。 かゆみには個人差があり、全く感じない方から強いかゆみに悩む方まで様々です。

症状は、皮脂という肌のあぶらの分泌が多い場所に現れやすい傾向があります。 ご自身の状態と比べてみましょう。

【主な症状のチェックリスト】

  • □ 頭皮からフケが出る カサカサした乾いたフケだけでなく、黄色っぽくベタつくフケも特徴です。
  • □ 皮膚が赤くなっている 炎症によって、皮膚が赤みを帯びます。
  • □ 皮膚にかゆみを感じる かゆみの強さは人によって異なります。
  • □ 皮膚がカサカサし、うろこ状にむける 特に髪の生え際や眉毛、鼻のわきなどで目立ちます。
  • □ 症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す 体調や生活習慣によって症状が変化しやすいです。

【症状が現れやすい場所】

部位

具体的な場所

頭部・顔

頭皮、髪の生え際、眉毛、まぶた、鼻のわき、耳の後ろ

体

胸の中央、わきの下、脚の付け根など、こすれやすい部分

これらの症状は、単なる肌の問題ではない可能性も指摘されています。 ある研究では、脂漏性皮膚炎の人はそうでない人と比べ、高血圧や高脂血症といった生活習慣病のリスクが高いことが示されました。

皮膚の症状は、実は体からのSOSサインかもしれません。 気になる症状があれば自己判断せず、専門のクリニックへ相談することが大切です。

脂漏性皮膚炎の検査・診断

脂漏性皮膚炎の診断では、特別な機械を使うことは少ないです。 お医者さんが目で見て、じっくりお話を聞くことが診断の基本になります。

まずは、患者さんの症状や生活について詳しくお伺いする「問診」です。 診断のヒントを探すために、次のような質問をします。

  • 症状について
  • いつから、どの部分に症状がありますか?
  • かゆみやフケなど、どんな症状で悩んでいますか?
  • 生活習慣について
  • 最近、ストレスや寝不足はなかったですか?
  • 普段お使いのシャンプーや化粧品も教えてください。

これらの質問で、症状の原因や悪化させる要因を探っていきます。 次に、皮膚の状態を直接目で見て確認する「視診」を行います。 脂漏性皮膚炎に特徴的な、黄色っぽいフケや皮膚の赤みがないかなどを確認します。

ただ、乾癬(かんせん)やアトピー性皮膚炎など、似た症状の病気もあります。 もし見分けるのが難しい場合は、皮膚を少しだけ取って顕微鏡で調べる「皮膚生検」を行うこともあります。

また、症状の重さを客観的に判断するために、世界共通の基準が使われることもあります。 例えば、「IGA(医師による総合評価)」という指標です。 これは、医師が皮膚の状態を点数で評価する方法です。

新しいお薬の効果を確かめる研究でも、このIGAが使われています。 ある研究では、治療によって症状がほぼなくなった状態になった人の割合を比べることで、お薬の効果を証明しました。 このように、医師は診察時に症状を注意深く評価し、正確な診断を行っているのです。

脂漏性皮膚炎の治療

脂漏性皮膚炎の治療目標は、症状を抑えて良い状態を長く保つことです。 治療は「原因への対策」と「炎症を抑える」の2つが基本となります。 皮膚の状態や場所に合わせて、お薬を使い分けていきます。

治療の中心となるのは、主に以下の2種類の塗り薬です。

薬の種類

働き

抗真菌薬

原因の一つであるマラセチア菌というカビの増殖を抑えます。

ステロイド外用薬

皮膚の赤みやかゆみといった、つらい炎症を鎮めます。

頭皮の症状には、抗真菌成分が入ったシャンプーを使うこともあります。

塗り薬でなかなか良くならない場合や、症状が重い場合には飲み薬を使います。 特に中等度から重度の症状には、皮脂の分泌を抑える働きのある飲み薬(イソトレチノイン)が選択肢の一つです。

また、新しい塗り薬として、ロフルミラストという成分の泡タイプのお薬も登場しました。 ある研究では、このお薬を8週間使ったところ、約8割の方で症状がほとんど気にならないレベルまで改善したと報告されています。 このように治療の選択肢は増えているため、自己判断せず、医師に相談することが大切です。