皮膚に現れる赤い盛り上がりや、ポロポロと剥がれ落ちるフケのような症状。もしかしたら、それは「乾癬(かんせん)」かもしれません。「感染」という名前の響きから誤解されがちですが、この病気は他人にうつることは決してありません。
しかし、乾癬は決して珍しい病気ではなく、日本にはおよそ300人に1人にあたる約43万人の患者さんがいると報告されています。原因はまだ完全には解明されていませんが、近年の研究で、体を守るはずの免疫システムに異常が起きていることが分かってきました。
この記事では、誤解されがちな乾癬の正しい知識から、その原因、そして症状をコントロールするための治療法までを詳しく解説します。見た目の問題や強いかゆみで悩む前に、ご自身の状態と向き合うヒントを見つけてください。
乾癬の概要
乾癬(かんせん)は皮膚が赤く盛り上がり、その表面に銀白色のフケのようなものが付着し、ポロポロとはがれ落ちる病気です。
症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す、慢性の経過をたどる特徴があります。名前から誤解されやすいのですが、感染症ではないため、他の人にうつることは絶対にありません。
乾癬は決して珍しい病気ではなく、日本にはおよそ300人に1人にあたる約43万人の患者さんがいると報告されています。
- 発症する人 赤ちゃんからご高齢の方まで、幅広い年齢で発症します。 男女比では、男性が女性より少し多い傾向にあります。
- 発症しやすい年齢 男性では30代と60代に、女性では20代と50代に発症のピークが見られます。
原因はまだ完全には解明されていません。しかし、遺伝的な体質に、ストレスや生活習慣の乱れ、肥満などが加わって発症すると考えられています。
近年の研究では、免疫システムの異常が深く関わっていることがわかってきました。特にアレルギー反応に関わる「マスト細胞」という細胞の働きが注目されています。
このマスト細胞には「MRGPRX2」と呼ばれる、かゆみや炎症を引き起こすスイッチのようなものがあります。乾癬の患者さんの皮膚では、このスイッチが過剰に働いていることが示されており、新たな治療法開発への応用が期待されています。
この病気は見た目の問題や強いかゆみを伴うため、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響をおよぼすことがあります。
乾癬の種類
「乾癬」とひとことで言っても、実は5つの種類に分けられます。 症状の現れ方によって、治療法も変わってくることがあります。 ご自身の状態を正しく知ることが、治療の第一歩になります。
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種類
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主な特徴
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尋常性乾癬
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・乾癬のなかで最も多く、全体の約90%を占めます。<br>・頭やひじ、ひざなど刺激を受けやすい部分に、赤い盛り上がりと銀白色のかさぶたができます。
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乾癬性関節炎
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・皮膚の症状に加え、関節にも炎症が起こります。<br>・手足の指や背骨などに痛みや腫れ、こわばりが出ます。<br>・乾癬の患者さんの3~10%にみられます。
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滴状乾癬
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・小さな水滴のような形の発疹が、からだ全体にたくさん現れます。<br>・風邪などの感染症をきっかけに発症することがあります。
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膿疱性乾癬
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・高熱などとともに、うみを持った発疹(膿疱)が急に現れます。<br>・非常にまれなタイプで、国の難病に指定されています。
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乾癬性紅皮症
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・全身の皮膚の90%以上が赤くなります。<br>・体の熱や水分が失われやすく、入院治療が必要です。
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この中で、特に注意が必要なのが乾癬性関節炎です。 皮膚の症状だけでなく、関節の痛みや腫れも起こります。 進行すると関節が変形し、日常生活に影響が出ることもあります。
場合によっては、股関節やひざの機能を補う手術も考えられます。 研究によると、手術後の満足度は高いと報告されています。 しかし、術後の感染症などのリスクは他の方より高い可能性もあります。 そのため、皮膚科だけでなくリウマチ科や整形外科の医師と連携し、 慎重に治療を進めることが、とても重要になります。
また、治療の研究も進んでいます。 例えば、シャクヤクという植物由来の成分が、 乾癬性関節炎の皮膚症状や炎症を和らげる可能性が報告されました。 皮膚症状の重さを示す指標(PASI)の改善が期待されています。
乾癬の原因
乾癬がなぜ起こるのか、その詳しい仕組みはまだ研究中です。 しかし、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
主に、もともと持っている体質に、免疫システムの異常や生活習慣の乱れなどが加わることが原因です。
1. 免疫システムの異常
乾癬の根本には、体を守る「免疫」の働きの異常があります。
何らかのきっかけで免疫が自分の皮膚の細胞を「敵」と勘違いし、攻撃してしまうのです。
近年の研究では、皮膚にあって炎症やかゆみを引き起こす「マスト細胞」の働きが注目されています。
この細胞には「MRGPRX2」という、かゆみや炎症のスイッチのようなものがあります。 乾癬の患者さんの皮膚では、このスイッチが通常より過剰に「オン」になりやすいことがわかってきました。
このスイッチが入ることで、皮膚の細胞が通常の10倍以上の速さで新しく作られます。 その結果、皮膚が厚く盛り上がり、ポロポロとはがれ落ちる乾癬特有の症状が現れるのです。
2. 乾癬になりやすい体質
乾癬になりやすい体質は、ある程度遺伝すると考えられています。 ただし、ご家族に乾癬の方がいても、必ず発症するわけではありません。 あくまで「なりやすい性質」であり、後述するきっかけが重なることが重要です。
3. 発症や悪化のきっかけ
免疫の異常や体質に、以下のようなきっかけが加わることで乾癬は発症・悪化します。 ご自身の生活に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
- 皮膚への刺激 けが、虫刺され、日焼け、衣類のこすれなど。
- 感染症 風邪やのどの炎症などが、免疫のバランスを崩すことがあります。 治療薬の影響で、普段はかかりにくい感染症が起きるという報告もあります。
- 生活習慣の乱れ 喫煙、過度な飲酒、睡眠不足、不規則な食事など。
- ストレス 心や体への過度な負担は、免疫の働きに直接影響します。
- 肥満や生活習慣病 肥満や糖尿病、脂質異常症があると、体の中では常に軽い炎症が起きている状態になります。 この体内の炎症が、乾癬を悪化させる原因になります。
- 一部のお薬 他の病気の治療で使っているお薬が、乾癬に影響することもあります。
乾癬の症状
乾癬の症状には、見た目でわかりやすい3つの特徴があります。 ご自身の皮膚の状態と見比べて、当てはまるものがないか確認してみましょう。
- 赤い発疹(紅斑) 周りの健康な皮膚との境目がはっきりした、赤いシミのような発疹が現れます。
- 盛り上がり(浸潤・肥厚) 発疹の部分が少し盛り上がって厚くなります。 これは皮膚の細胞が、普通の10倍以上の速さで新しく作られてしまうためです。
- フケのようなもの(鱗屑) 赤い発疹の表面が、銀白色のかさぶたで覆われます。 このかさぶたが、フケのようにポロポロとはがれ落ちます。
これらの症状は、ひじやひざ、すね、頭、おしりなど、服がこすれたり、ぶつけたりしやすい場所に出やすい傾向があります。
また、乾癬の患者さんの約半数に「かゆみ」が伴います。 我慢できないほど強いかゆみが出ることも少なくありません。
最近の研究では、このかゆみの原因も少しずつわかってきました。 皮膚にある「マスト細胞」には、かゆみや炎症を引き起こすスイッチ(MRGPRX2)があります。
乾癬の患者さんの皮膚では、このスイッチが過剰に「オン」になりやすく、強いかゆみを引き起こしていると考えられています。
皮膚の症状以外にも、爪が白く濁ったり、デコボコに変形したり、関節に痛みや腫れが出たりすることもあります。
治療を進める中で、普段とは違う皮膚の変化や、通常はかかりにくい感染症が起こる可能性も報告されています。 気になる症状があれば、どんな些細なことでも自己判断せず、必ず医師に相談するようにしてください。
乾癬の検査・診断
乾癬の診断は、医師が皮膚の状態を直接見ることから始まります。 多くの場合、特徴的な見た目から診断することが可能です。
しかし、他の皮膚の病気と見分けるために、 詳しいお話を聞いたり、いくつかの検査を行ったりします。
診察の中心は「視診」と「問診」です
乾癬の診断は、主に以下の2つの方法で行われます。
- 皮膚が赤く盛り上がっているか、フケのようなものが付いているかを確認します。
- 乾癬に特徴的な症状が出やすい、ひじやひざ、頭などを丁寧に観察します。
- いつから症状があるか、かゆみの強さはどのくらいかをお聞きします。
- 関節の痛みや爪の変形がないかも、大切な確認項目です。
- ご家族に乾癬の方がいるか、最近ストレスがなかったかなどもお伺いします。
より正確な診断のための詳しい検査
見た目だけでは判断が難しい場合や、他の病気の可能性を考える場合は、 次のような検査を追加で行うことがあります。
- 症状のある皮膚を、ごく小さく切り取って顕微鏡で詳しく調べる検査です。
- 乾癬に特徴的な細胞の様子を確認し、診断を確定させるのに役立ちます。
- 体の中の炎症の強さ(CRPという数値など)を調べます。
- 乾癬は皮膚だけでなく、体の中で炎症が起きている病気だからです。
- 関節の痛みを伴う「乾癬性関節炎」では、特に重要な検査となります。
- 関節に痛みや腫れがある場合は、レントゲン検査などを行います。
- 乾癬性関節炎が疑われる際は、リウマチ科や整形外科の医師と連携して、
- 診断や治療を進めることがとても大切です。
これらの診察や検査の結果をもとに、治療方針を決めていきます。 「PASIスコア」という指標で皮疹の重症度を客観的に評価し、 一人ひとりの状態に合った最適な治療法を一緒に考えていきましょう。
乾癬の治療
乾癬を完全に治すことは、残念ながら今の医療では難しいです。 しかし、ご安心ください。治療法は大きく進歩しています。 症状がほとんどない状態を保ち、快適な毎日を送ることは十分に可能です。
治療の目標は、皮膚の症状を上手にコントロールすることです。 症状の重さや範囲、生活スタイルに合わせて治療法を選びます。 基本のぬり薬から始め、段階的に治療を考えていきましょう。
主な治療法の種類
乾癬の治療には、大きく分けて4つの段階があります。 ご自身の状態に合わせて、医師と一緒に最適な方法を見つけます。
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治療の種類
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内容
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外用療法(ぬり薬)
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・炎症を抑えるステロイドや、皮膚の細胞が増えすぎるのを抑えるビタミンD3の薬が中心です。<br>・すべての乾癬治療の基本となります。
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光線療法(ひかり治療)
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・紫外線を皮膚にあてて、過剰な免疫の働きを落ち着かせます。<br>・ぬり薬だけでは効果が不十分な場合や、症状の範囲が広い場合に行います。
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内服療法(のみ薬)
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・体の中から免疫の働きを調整する薬を飲みます。<br>・症状が重い場合や、全身に広がっている場合に選択されます。
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生物学的製剤(注射・点滴)
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・乾癬の原因物質に直接作用する、比較的新しいタイプの薬です。<br>・他の治療で効果が出にくい、重症の患者さんに使われます。
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生物学的製剤は、非常に高い効果が期待できる治療法です。 その一方で、免疫全体の働きを抑えるため、注意も必要になります。
例えば、「インターロイキン17A」という炎症の原因物質を抑える薬では、 普段はかかりにくいような、まれな感染症のリスクが高まる可能性が報告されています。 そのため、治療を始める前には感染症のリスクをしっかり評価することがとても大切です。
また、治療法の研究は日々進められています。 関節の痛みを伴う乾癬性関節炎に対して、シャクヤクという植物由来の成分が、 皮膚の症状や炎症を和らげる可能性があるという研究報告もあります。 ご自身の症状に合った治療法を、一緒に相談しながら決めていきましょう。