掻痒症

夜になると無性にかゆくて眠れない、お風呂上がりや体が温まったときにチクチクとかゆくなる…。見た目には赤みも湿疹もないのに、なぜか我慢できないほどのかゆみに悩まされていませんか?実は、皮膚科を訪れる方のうち1割弱が、このような「見た目に異常のないかゆみ」で受診しています。

そのしつこいかゆみ、単なる乾燥肌のせいだと軽く考えていると危険かもしれません。もしかしたら、腎臓や肝臓の病気といった、体に潜む重大な疾患が発しているSOSサインという可能性もあるのです。

この記事では、つらいかゆみの正体である「掻痒症」について、考えられる原因から、ご自身でできる対処法、最新の治療法までを詳しく解説します。我慢せずに、正しい知識でそのかゆみと向き合う第一歩にしてください。

掻痒症の概要

掻痒症(そうようしょう)とは、皮膚の病気の一つです。 赤みやぶつぶつといった、見た目の変化がないのが特徴です。 それなのに、体がかゆくてたまらなくなる状態を指します。 皮膚科を訪れる方のうち1割弱がこの症状で悩んでいます。 決して珍しいものではなく、誰にでも起こる可能性があります。

このかゆみは体のどこにでも起こり、一日中続くこともあります。 また、日によって良くなったり悪くなったりと波があるのも特徴です。 特に、以下のような状況で悩む方が多くいらっしゃいます。

  • 夜になるとかゆみが強くなり、眠りを妨げてしまう
  • お風呂上がりなど、体が温まったときにかゆくなる
  • かゆみのせいで仕事や勉強に集中力が続かない

単なるかゆみと軽く考えられがちですが、生活の質を大きく下げてしまうつらい症状です。 特に、腎臓の病気で透析治療を受けている方にみられるかゆみは、日常生活に深刻な影響をおよぼすことがあります。

最近では、このような特定のかゆみに対する新しい治療薬の研究も進んでいます。 例えば、ジフェリケファリンという薬は、透析患者さんのかゆみを和らげる効果が多くの研究で示されました。 一方で、軽い副作用が起こる可能性も報告されています。 しかし、命に関わるような重い副作用の危険性は、薬を使っていない人と変わらないことも分かってきています。 つらいかゆみが続く場合は、我慢せずに専門医へ相談することが大切です。

掻痒症の種類

掻痒症は、かゆみがあらわれる範囲によって2種類に分けられます。 どこがかゆいかを知ることは、原因を探るための大切なヒントになります。

1. 汎発性(はっぱつせい)皮膚掻痒症 全身、または体の広い範囲にかゆみが出るタイプです。 高齢の方に多い皮膚の乾燥が原因のこともあります。 しかし、体の内部に隠れた病気が原因の可能性もあるため注意が必要です。

【かゆみの原因になりうる病気の例】 * 腎臓の病気 老廃物が体にたまることでかゆみが起こります。 * 肝臓や胆のうの病気 * 糖尿病や甲状腺の病気 * 血液の病気

特に腎臓の病気で透析を受けている方のかゆみは深刻です。 このようなかゆみに対し、新しい治療薬の研究が進められています。 有効性を示すデータがある一方、さらなる大規模な研究が待たれる段階です。

2. 限局性(げんきょくせい)皮膚掻痒症 腕や背中など、体の決まった部分だけがかゆくなるタイプです。 例えば、背骨から皮膚につながる神経が何らかの原因で圧迫されると、その神経が担当する範囲だけがかゆくなることがあります。

種類

かゆみの範囲

特徴

汎発性皮膚掻痒症

全身

皮膚の乾燥のほか、腎臓や肝臓など体の中の病気が隠れていることがある

限局性皮膚掻痒症

体の一部分

特定の場所だけがかゆくなる。神経の圧迫などが関係している場合もある

掻痒症の原因

かゆみの原因は、お肌のトラブルだけとは限りません。 体の内側の問題や生活習慣など、様々な要因が隠れています。 原因を正しく知ることが、適切な治療への第一歩となります。 原因は、主に以下の3つに大きく分けられます。

  1. 皮膚のバリア機能の低下(乾燥) かゆみの原因として最も多いのが、皮膚のうるおい不足です。 肌の一番外側には、外部の刺激から体を守る「角層」があります。 この角層の水分や皮脂が減ると、バリア機能が弱まります。 その結果、わずかな刺激でもかゆみを感じやすくなるのです。 特に年齢を重ねると皮膚は乾燥しやすくなり、注意が必要です。
  2. 体に隠れている病気 しつこいかゆみは、内臓の病気がサインとなって現れることもあります。 例えば、腎臓や肝臓の病気、糖尿病、甲状腺の病気などです。 腎臓の機能が低下して透析治療を受けている方のかゆみは、生活の質を大きく下げる深刻な問題となることが知られています。 最近では、このような特定のかゆみの仕組みが解明されつつあり、新しい治療薬の研究も進んでいます。 複数の研究を分析した結果、新しい薬がかゆみを和らげる効果が示されました。 一方で、軽い副作用が起こる可能性も報告されています。 しかし、命に関わるような重い副作用の危険性は、薬を使っていない人と変わらないことも分かってきています。
  3. 生活の中のさまざまな要因 普段の生活の中にも、かゆみを引き起こしたり悪化させたりする原因がひそんでいます。

分類

具体的な原因

なぜかゆくなるの?

薬剤

飲んでいるお薬(解熱鎮痛剤、抗菌剤など)

体に合わない成分が、かゆみを引き起こすことがあります。

生活習慣

・熱いお風呂に入る

・ゴシゴシ体を洗う

・ウールなどチクチクする素材の服

皮膚のバリア機能を壊したり、直接刺激を与えたりします。

環境

・汗をかいたままにする

・部屋の空気が乾燥している

汗の成分が刺激になったり、肌の水分が奪われたりします。

このように、かゆみの原因は多岐にわたります。 原因によって治療法も変わるため、気になるかゆみが続く場合は、自己判断せずに一度クリニックにご相談ください。

掻痒症の症状

掻痒症の主な症状は、赤みや湿疹がないのに強いかゆみを感じることです。 「ただのかゆみ」と軽く考えられがちですが、生活に支障が出るほどつらいものです。 患者さんによってかゆみの感じ方は違い、様々な言葉で表現されます。

  • チクチク、ピリピリと針で刺されるような刺激感
  • ムズムズして、じっとしていられないような不快感
  • まるで虫が皮膚の上を這っているような感覚
  • 皮膚の奥深くから、じわじわと湧き上がってくる感じ

このようなつらいかゆみが続くと、無意識に皮膚を掻いてしまいます。 しかし、掻くこと自体が刺激となり、さらにかゆみを悪化させる悪循環に陥りがちです。 その結果、もともと何もなかった皮膚に、二次的な変化が起こります。

  • 掻破痕(そうはこん) ひっかいた跡が線状の傷になります。
  • 炎症後色素沈着 掻いた跡が茶色いシミのようになります。
  • 苔癬化(たいせんか) 皮膚がゴワゴワと厚く硬くなります。

特に腎臓の病気を持つ方のかゆみは、生活の質を著しく下げることがあります。 そのため、医師はかゆみの強さを客観的に評価する指標を用いることがあります。 例えば、かゆみの程度を点数で示す質問票(WI-NRSや5-D itch scaleなど)を使い、患者さんのつらさを正確に把握して治療に役立てます。 かゆみが6週間以上続く場合は「慢性掻痒症」とされ、専門的な対応が必要です。

掻痒症の検査・診断

つらいかゆみの原因を突き止めるため、まずは丁寧にお話を聞き、お肌の状態を観察することから始めます。まるで探偵が手がかりを集めるように、一つひとつの情報を大切にしながら、かゆみの正体を探っていきます。

お話を聞く「問診」では、かゆみそのものだけでなく、毎日の生活についても詳しくお伺いします。これは、原因を探るための大切なヒントが、ご自身の生活の中に隠れていることも多いからです。

【問診で確認することの例】

  • いつから、どこが、どのようにかゆいか かゆみの特徴(時間帯や状況)から原因を推測します。
  • 治療中の病気や飲んでいるお薬、サプリメント 体の病気やお薬が原因のこともあります。
  • 食事や睡眠などの生活習慣 気づかないうちに、かゆみを悪化させる原因がないか探ります。

次にお肌の観察を行いますが、掻痒症は見た目に変化がないことも多い病気です。体の内側に問題が隠れていないか調べるために、詳しい検査が必要になることがあります。

検査の種類

何を調べるの?

血液検査

血液を少しだけ採って、肝臓や腎臓などが元気に働いているか、アレルギーがないかなどを調べます。体の中からのSOSサインを見つけます。

画像検査

レントゲンやCTなどの機械を使って体の中の写真を撮り、かゆみの原因になる病気がないかを確認することがあります。

その他の検査

疑われる病気に応じて、便の検査など、追加で必要な検査を行うこともあります。

これらの検査結果をパズルのように組み合わせ、総合的に診断します。例えば、腎臓の病気が原因のかゆみと診断された場合は、特別な対応を行います。

最近では、かゆみの強さを客観的な点数で評価することがあります。「WI-NRS」のような指標を使い、患者さんのつらさを正確に把握するのです。この評価は、新しい治療薬を使うかどうかを決める大切な判断材料になります。検査で原因を正しく知ることが、あなたに合った治療への一番の近道なのです。

掻痒症の治療

掻痒症の治療は、まずかゆみの原因を探ることがスタートです。 原因に応じた対策をとることが、つらいかゆみをなくす近道です。 治療の柱は、主に以下の3つに分けられます。

  1. 原因となっていることへの対処
  2. お肌のうるおいを守るスキンケア
  3. かゆみを抑えるお薬での治療

もし内臓の病気など、体の中に原因が隠れている場合は、その病気の治療を最優先で行います。

スキンケアとお薬による治療

原因となる病気が見つからない場合や、お肌の乾燥が主な原因のときは、スキンケアとお薬の治療を組み合わせて進めます。

治療法

内容

具体的なお薬の例

スキンケア

お肌の乾燥を防ぎ、刺激から守るバリア機能を高めるために保湿剤を使います。

・ヘパリン類似物質

・尿素が入ったクリーム など

お薬での治療

かゆみの症状を直接抑えるために、塗り薬や飲み薬を使います。

塗り薬

・かゆみ止め成分が入った薬

・掻き壊して赤くなった部分にはステロイドの薬

飲み薬

・抗ヒスタミン薬

・漢方薬 など

特殊な病気にともなうかゆみの治療

腎臓の病気が悪化し、透析治療を受けている方のかゆみは、生活に大きな影響をおよぼすほど深刻な場合があります。 このような特別なかゆみに対しては、新しい治療薬が使われることがあります。

例えば「ジフェリケファリン」という薬は、透析患者さんのかゆみを和らげる効果が複数の研究で示されました。 研究では、かゆみの強さを点数で評価する方法が使われ、この薬を使うと点数が下がることがわかっています。

ただし、軽い副作用が起こる可能性も報告されています。 一方で、命に関わるような重い副作用の危険性は、薬を使っていない人と変わらないことも分かってきました。 この薬は期待されていますが、さらに詳しい研究が待たれる段階でもあります。

かゆみの原因や強さは一人ひとり違います。 自己判断で市販薬を使い続けず、まずは専門のクリニックで相談し、あなたに合った治療法を見つけましょう。