帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹の赤い発疹や水ぶくれが消えた後も、なぜか続く「焼けるような」「電気が走るような」痛み。服が肌に触れるだけで激痛が走る…そんなつらい症状に悩まされていませんか?

その痛みは「帯状疱疹後神経痛」という、決して珍しくない合併症の可能性があります。統計によれば、帯状疱疹にかかった60歳以上の方の約20%(5人に1人)、80歳以上では30%以上がこの後遺症に苦しむといいます。

この記事では、なぜ皮膚の症状が治っても神経の痛みだけが残ってしまうのか、そのメカニズムから具体的な治療法までを詳しく解説します。ご自身の症状を正しく理解し、つらい痛みと向き合うためのヒントを見つけてください。

帯状疱疹後神経痛の概要

帯状疱疹後神経痛とは、帯状疱疹の症状が治った後も続く痛みのことです。 皮膚の赤いブツブツや水ぶくれは消えたのに、痛みが残ってしまいます。 帯状疱疹の合併症の中では、最も起こりやすいものとして知られています。

帯状疱疹にかかった方のうち、約5〜20%がこの痛みに悩まされるとされます。 特にご高齢の方は発症しやすく、注意が必要です。

  • 60歳以上の方
  • 約20%(5人に1人)
  • 80歳以上の方
  • 30%以上

このつらい痛みを防ぐには、帯状疱疹の早期治療が何よりも大切です。 信頼性の高い多くの研究を分析した報告があります。 この報告によって、痛みが残りやすい人の特徴がわかってきました。

以下のような場合、帯状疱疹後神経痛になりやすいと考えられています。

  • 皮膚の症状がひどい
  • 赤い発疹や水ぶくれの範囲が広かったり、症状が強かったりする場合です。
  • 治療の開始が3日以上遅れた
  • ウイルスが神経を傷つける前に、早く治療を始めることが重要です。
  • もともと他の病気がある
  • 例えば、糖尿病などの持病をお持ちの方は注意が必要です。

帯状疱疹を疑う症状に気づいたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。 すぐに治療を始めることが、後の痛みを防ぐための最も大切な鍵となります。

帯状疱疹後神経痛の種類

帯状疱疹が治った後も続く痛みは、実にさまざまです。 「痛み」と一言で言っても、その感じ方には個人差があります。 ご自身の痛みがどのタイプかを知ることは、とても重要です。 医師に症状を正確に伝え、適切な治療を見つける第一歩になります。 痛みは主に、以下の3つの種類に分けられます。

1. 自発痛(じはつつう)

何もしなくても、常にじんじんと続く痛みのことです。 ウイルスによって傷つけられた神経が、異常に興奮しています。 そのため、何も刺激がないのに、痛みの信号が絶えず脳へ送られます。 以下のような痛みとして感じられることが多いです。

– 焼けるような痛み 皮膚の表面がヒリヒリ、チリチリと燃えるように感じます。 – 脈打つような痛み 心臓の鼓動に合わせてズキン、ズキンと痛みます。 – 締め付けられるような痛み 体の内側から、ぎゅーっと締め付けられるように感じます。

2. アロディニア

通常は痛みと感じない、ごく弱い刺激で痛みを感じる状態です。 これは痛みを伝える神経の回路に異常が生じているために起こります。 本来なら心地よいはずの刺激が、つらい痛みに変わってしまいます。 例えば、以下のような状況で強い痛みを感じることがあります。

– 衣服が肌にこすれるだけで痛む – 冷たい風や水が触れるだけで痛む – 髪の毛やシーツがそっと触れただけでも痛む

3. 痛覚過敏(つうかくかびん)

本来、痛みを感じる刺激に対して、通常よりはるかに強く痛む状態です。 痛みを抑えるための、体の中の仕組みがうまく働かないことが原因です。 アロディニアとの違いは、刺激が「もともと痛いもの」である点です。 例えば、軽く押しただけでも、非常に強い痛みとして感じられます。

これらの痛みは、一つだけではなく、複数が混ざって現れることもあります。 ご自身の症状を観察し、医師に詳しく伝えることが大切です。

痛みの種類

読み方

特徴

具体例

自発痛

じはつつう

何もしていなくても常に感じる痛み

焼けるような、ズキズキする痛み

アロディニア

あろでぃにあ

痛くないはずの軽い刺激で痛む

衣服のこすれ、風が当たる

痛覚過敏

つうかくかびん

痛い刺激を、異常に強く感じる

軽く押しただけで激痛が走る

帯状疱疹後神経痛の原因

帯状疱疹後神経痛は、水ぼうそうと同じウイルスが原因で起こります。 このウイルスが神経を傷つけてしまうことで、つらい痛みが残るのです。 皮膚の赤いブツブツや水ぶくれが治っても、神経の内部には傷が残ります。

神経は、体中に情報を伝える電気コードのようなものです。 ウイルスによってこのコードが傷つけられ、異常な電気が発生します。 その結果、何もないのに「痛い」という信号が脳に送られ続けます。 これが、帯状疱疹が治った後も痛みが続く仕組みです。

信頼性の高い多くの研究をまとめた報告(メタアナリシス)があります。 この報告により、痛みが残りやすい人の特徴がより明確になりました。 特に、以下の3つの点は発症に深く関わっていると考えられています。

  • 帯状疱疹の症状が重い
  • 皮膚の発疹がひどいのは、ウイルスが活発に増殖している証拠です。 ウイルスが多いほど、神経が受けるダメージも大きくなります。
  • 治療の開始が3日以上遅れた
  • ウイルスが増える前に薬で抑えることが重要です。 治療が遅れると、ウイルスが神経を攻撃する時間が増えてしまいます。
  • 糖尿病などの持病がある
  • もともと持っている病気によっては、神経が傷つきやすかったり、 回復する力が弱まっていたりすることがあります。

これらの特徴に当てはまる場合、より注意深く経過を見守る必要があります。 帯状疱疹かなと思ったら、すぐに医療機関を受診することが大切です。 できるだけ早く治療を始めることが、後の痛みを防ぐ最も有効な手段です。

帯状疱疹後神経痛の症状

帯状疱疹の赤い発疹や水ぶくれが治った後も、痛みが続くことがあります。 これが帯状疱疹後神経痛で、日常生活に影響するつらい症状です。 痛みの感じ方は人によって様々で、複数の症状が混ざることもあります。

具体的には、以下のような種類の痛みや感覚の異常が現れます。 ご自身の症状がどれに当てはまるか、確認してみましょう。

【絶え間なく続く、じっとりとした痛み】 何もしなくても、常に痛みが続くのが特徴です。 ウイルスで傷ついた神経が、異常な信号を送り続けるために起こります。

– 焼けるような痛み 皮膚の表面が、じりじり、ひりひりと焼けるように感じます。 – 脈打つような痛み ズキン、ズキンと心臓の鼓動に合わせて痛むこともあります。 – 締め付けられるような痛み 体の奥から、ぎゅーっと強く締め付けられるように感じます。

【突然おそってくる、鋭い痛み】 痛みが急に現れては消える、発作的な痛みを繰り返すことがあります。

– 電気が走るような痛み ピリッ、チクッと電気が走るような鋭い痛みが特徴です。 – 針で刺されるような痛み 何度もチクチクと針で刺されているように感じます。

【皮膚の感覚がおかしくなる】 痛みだけでなく、皮膚の感覚に異常が生じるのも、この病気の特徴です。

– 触れるだけで痛い(アロディニア) 服がこすれたり、風が当たったりするだけで激しい痛みを感じます。 本来は痛みではない軽い刺激が、つらい痛みに変わってしまいます。 – 感覚がにぶくなる 逆に、痛む場所の感覚がにぶくなり、触っても感じにくくなることもあります。

これらの症状は、帯状疱疹ができた体の片側だけに現れることがほとんどです。 もし、このような症状に心当たりがあれば、我慢せずにご相談ください。

帯状疱疹後神経痛の検査・診断

帯状疱疹後神経痛の診断では、特別な検査をすることは多くありません。 血液検査やレントゲン写真では、この痛みの原因はわからないのです。 診断で最も大切なのは、患者さんからのお話(問診)と診察です。 あなたの感じる「痛み」が、何より重要な診断の手がかりとなります。

医師が診断の際に確認する、大切なポイントは主に以下の3つです。

  • 1. 過去の帯状疱疹の経験 いつ頃、体のどの部分に帯状疱疹ができたかをお聞きします。
  • 2. 痛みの始まりと経過 皮膚の赤いブツブツや水ぶくれが治った後も、痛みが続いているかを確認します。
  • 3. 痛む場所の一致 今痛む場所が、以前に帯状疱疹が出た場所と同じかどうかは非常に重要です。

問診では、痛みの種類についても詳しくお伺いします。 「焼けるよう」「ズキズキする」など、ご自身の言葉で伝えてください。 衣服がこすれるだけで痛む(アロディニア)などの症状も大切な情報です。

診察では、実際に痛む場所にそっと触れて、感覚に異常がないかを確認します。 これにより、痛みの範囲や神経がどれくらい傷ついているかを評価します。 診断とあわせて、痛みが残りやすい要因がなかったかも確認することがあります。 多くの研究報告から、以下のような場合は注意が必要だとわかっています。

  • 帯状疱疹のときの皮膚症状や痛みが、もともと強かった
  • 発疹に気づいてから、治療を始めるまでに3日以上かかった
  • 糖尿病などの、もともと持っている病気がある

これらの情報を総合的に判断し、帯状疱疹後神経痛の診断を行います。 正確な診断と治療のため、ご自身の症状をありのままお伝えください。

帯状疱疹後神経痛の治療

帯状疱疹後神経痛の治療は、痛みを完全になくすことが目標ではありません。 日常生活に支障が出ない程度まで痛みを和らげることが大切です。 うまく痛みと付き合っていくことを目指し、根気強く治療を続けましょう。

治療は、患者さん一人ひとりの痛みの種類や強さに合わせて行います。 主に、以下の3つの治療法を組み合わせて、痛みを抑えていきます。

治療法の種類

どのようなことをするの?

薬物療法

治療の中心となる方法です。

傷ついた神経の異常な興奮を抑える薬や、痛みの信号を脳に伝わりにくくする薬を使います。

神経ブロック療法

痛みの原因となっている神経の近くに、麻酔の薬などを注射します。

痛みが脳に伝わるのを防ぎ、痛みの悪循環を断ち切ることを目指します。

理学療法

痛む場所を温めたり、特殊な電気を流したりします。

血のめぐりを良くすることで、痛みを和らげる効果が期待できます。

しかし、現在の治療法だけでは、痛みを十分に和らげることが難しい場合もあります。 そのため、世界中の研究者が新しい治療薬の開発に力を注いでいます。 2016年から2023年にかけても、多くの新しい薬の臨床試験が行われました。

これまでの薬とは全く違う仕組みで、痛みを抑える薬も研究されています。 その中には、良い結果が報告されているものもあります。 こうした研究の積み重ねが、将来のより効果的な治療につながると期待されています。