黒色真菌症

ガーデニングや土いじりの後、手足にできた謎のしこりやイボ。「そのうち治るだろう」と軽く考えていませんか?その正体は、私たちの身近な土に潜む「黒色真菌」というカビが引き起こす、見過ごせない感染症かもしれません。

この病気は単なる皮膚トラブルにとどまらず、体の抵抗力が落ちている方やお子さんでは、感染が全身に広がる危険性もはらんでいます。ある研究では、全身に感染した場合の死亡率は大人で最大79%、お子さんでも37.3%にのぼると報告されており、決して侮れません。

この記事では、身近に潜む黒色真菌症の正しい知識と症状、そして命を守るための治療法について詳しく解説します。ご自身や大切な家族の健康を守るために、ぜひご一読ください。

黒色真菌症の概要

黒色真菌症は、土や腐った植物など、身近な環境にいる 「黒色真菌」というカビが原因で起こる感染症です。 このカビは、髪や肌の色素と同じ「メラニン」を持つため、 見た目が黒っぽいのが特徴です。

この病気のポイントを以下にまとめました。

  • 原因となるもの 土や植物などにひそむ黒っぽいカビ(黒色真菌)
  • 主な感染ルート 主にケガをした皮膚の傷口から体内に侵入する
  • 主な症状 手のひらや足の裏などに、しこりや盛り上がりができる

基本的には、農業やガーデニングなどで土に触れる機会が多い方の、 手足の傷から感染することが多い病気です。

特に、病気の治療などで体の抵抗力(免疫力)が落ちている方は、 注意が必要です。 例えば、血液の病気がある方や、 ステロイドというお薬を使っている方などが該当します。

お子さんがかかることもありますが、ある研究報告によると、 感染したお子さんの平均年齢は8歳でした。 感染が全身に広がった場合の経過は、 大人よりもお子さんの方が良好な傾向にあるとされます。 ある研究では、全身に感染が広がった場合の死亡率は、 大人が最大79%に対し、子どもは37.3%だったと報告されています。 しかし、命に関わる可能性があることに変わりはありません。

黒色真菌症の種類

黒色真菌症は、カビの感染が体のどこまで広がったかで、 治療方針が大きく変わるため、主に2つのタイプに分けられます。 感染が体の一部にとどまるか、全身に広がっているかが重要です。

感染が体の一部分にとどまるタイプ

  • 限局性(げんきょくせい)感染 ケガの傷口などから入ったカビが、 皮膚やそのすぐ下など、体の一部分にとどまっている状態です。 健康な方でも発症することがあります。

ある研究報告によると、18歳未満のお子さんがかかる黒色真菌症では、 約6割がこの限局性のタイプであったとされています。

感染が全身に広がってしまうタイプ

  • 播種性(はしゅせい)感染 カビが血液などを通じて、脳や肺といった体の深い部分や、 全身に広がってしまった状態を指します。 特に、体の抵抗力(免疫力)が低下している場合に起こりやすく、 命に関わる危険性が高まります。

以下に、2つのタイプの特徴をまとめました。

種類

主な特徴

特に注意が必要な方

限局性感染

・感染が体の一部分にとどまる

・皮膚のしこりなどができる

・健康な方でも起こりうる

播種性感染

・感染が全身に広がる

・脳や肺などに重い症状が出る

・免疫力が低下している方

(血液のがん、ステロイド治療中など)

播種性感染は、大人と子どもで経過が異なることがあります。 ある研究では、播種性感染で命を落とす方の割合は、 お子さんで約37%であったのに対し、 大人では最大79%にのぼるとも報告されています。

お子さんの方が経過は良い傾向にありますが、 依然として危険な状態であることには変わりありません。 ご自身の状態がどちらのタイプに近いかを知ることが大切です。

黒色真菌症の原因

黒色真菌症は、「黒色真菌」というカビが原因の病気です。 このカビは、土の中や腐った植物など、身近な環境にいます。

カビは、主に皮膚にできた傷口から体の中へ侵入します。 庭仕事でできた切り傷や、とげが刺さった跡などが、 カビの入り口になることがよくあります。

健康な方でもかかる可能性はありますが、 特に体の抵抗力(免疫力)が落ちている方は注意が必要です。 体のバリア機能が弱っていると、普段は問題にならないカビでも、 感染症を引き起こしやすくなるためです。

ある研究では、黒色真菌症にかかったお子さんを調べたところ、 以下のような状態の方が多かったと報告されています。

  • 血液の病気がある方 血液のがんなどの影響で、感染したお子さんのうち、 約3人に1人(32.5%)がこの状態でした。
  • ステロイドなどのお薬を使っている方 他の病気の治療で免疫の働きを抑えるお薬を使っている場合です。 感染したお子さんのうち、約4人に1人(24.6%)が該当しました。
  • ケガや手術をした方 体の傷がカビの侵入経路となったお子さんは、 全体の約23%にのぼりました。
  • 臓器移植を受けた方 移植した臓器が機能するように免疫を抑えるため、 感染のリスクが高まります。

このように、もともとの病気やその治療が、 黒色真菌症の発症に深く関わっていることがあります。 ご自身の体の状態を把握しておくことが大切です。

黒色真菌症の症状

黒色真菌症の症状は、カビが体のどこに感染したかや、 その方の健康状態によって大きく異なります。 多くの場合、症状は皮膚から始まります。

土いじりなどでできた小さな傷からカビが入り、 数ヶ月から数年という長い時間をかけて、 ゆっくりと皮膚に変化が現れるのが特徴です。

主な皮膚の症状

以下のような皮膚の変化に気づいたら注意が必要です。 痛みやかゆみなどの自覚症状は、ないこともあります。

  • 皮膚の盛り上がり イボやカリフラワーのように、皮膚が盛り上がります。
  • しこりやできもの 皮膚の下に、硬いしこりができることがあります。
  • カサカサした変化 表面がカサカサしたり、かさぶたのようになったりします。 カビが持つ色素の影響で、褐色や黒っぽい色に見えます。
  • できやすい場所 傷ができやすい手や足によく見られますが、 お尻や肩、顔など体のどこにでも起こる可能性があります。

ある研究報告によると、18歳未満のお子さんがかかる黒色真菌症では、 約6割が皮膚やその周りだけにとどまるタイプだったとされています。

注意が必要な全身の症状

ほとんどは皮膚だけの症状で済みますが、 まれに感染が体の深い部分や全身に広がることがあります。 これを「播種性(はしゅせい)感染」と呼びます。

特に、他の病気の治療などで体の抵抗力(免疫力)が落ちている方は、 カビが全身に広がりやすいため、特に注意が必要です。 例えば、脳に感染すれば頭痛や意識の障害が、 肺に感染すれば咳や息苦しさといった重い症状が出ます。

播種性感染は命に関わる危険な状態です。 ある研究では、播種性感染で命を落とす方の割合は、 お子さんでも37.3%にのぼると報告されています。 気になる皮膚の変化が長く続く場合は、自己判断せず、 早めに専門の医療機関を受診することが非常に大切です。

黒色真菌症の検査・診断

黒色真菌症のできものは、見た目だけでは診断が難しいです。 そのため、皮膚の一部を採って原因を調べる検査が欠かせません。 正確な診断こそが、適切な治療への第一歩となります。

診断を確定するためには、主に以下の検査を組み合わせます。

  • KOH(苛性カリ)直接鏡検 皮膚の表面やしこりを少し削り取り、顕微鏡で観察します。 特殊な液体で皮膚を溶かし、カビを見つけやすくします。 その場でカビの存在を確認できる、体に負担の少ない検査です。
  • 培養検査 皮膚などから採った菌を、時間をかけて育てる検査です。 原因菌の種類(Exophiala属など)を特定するために行います。 菌が育つのに1〜4週間ほどかかりますが、治療法を決める上で、 とても重要な情報を得ることができます。
  • 病理組織検査 皮膚をメスで小さく切り取り、組織の状態を詳しく調べます。 黒色真菌が持つ「メラニン」という色素による、 特徴的な茶色い菌のかたまりがないかを確認します。

ある研究によると、黒色真菌症にかかるお子さんの多くは、 皮膚やそのすぐ下の組織に症状が出ると報告されています。 気になる皮膚の変化があれば、これらの検査で原因を特定し、 適切な治療を始めることが非常に大切です。

黒色真菌症の治療

黒色真菌症の治療は、カビのすみかを取り除くことが基本です。 皮膚のできものの大きさや感染の広がり、体の状態などから、 一人ひとりに合った治療法を医師が慎重に選びます。

治療法には、主に手術、物理的な治療、お薬の3つがあります。

治療法の種類

内容

手術(外科的治療)

皮膚にできたしこりなど、カビのすみかをメスで切り取ります。

比較的小さく、数が少ない場合に選ばれることが多い方法です。

物理的な治療

・温熱療法:患部を温めてカビの活動を弱らせます。

・液体窒素療法:マイナスの冷たい液体で患部を凍らせ、カビを破壊します。

お薬での治療

「抗真菌薬」という飲み薬や塗り薬で、体の内外からカビを攻撃します。

ある研究では、お子さんの治療の87%でこの方法が用いられました。

実際には、これらの治療法を組み合わせることが多いです。 例えば、手術で目に見えるカビを取り除いたあとに、 お薬を使って、体に残った見えないカビを退治します。

特に、お薬での治療は長期間にわたることがほとんどです。 見た目がきれいになっても、カビが残っている可能性があるため、 医師の指示通りに治療を続けることが非常に大切になります。

完全に治ったかどうかは、見た目だけでは判断できません。 定期的な検査で、3ヶ月以上カビが見つからないことを確認し、 治療の終わりを決めていきます。 どの治療が最適か、医師とよく相談して進めていきましょう。