眼皮膚白皮症
生まれつき髪や肌の色がとても白く、光をひどくまぶしく感じる…。これらの症状は「眼皮膚白皮症(アルビノ)」かもしれません。この病気は、約1万5,000人に1人の割合で発生するとされ、国の指定難病にも定められています。
原因は遺伝子の変化によるものですが、ご両親に症状がなくても発症することがあり、「なぜ自分(や家族)だけ?」「どう付き合っていけばいいの?」と不安に思う方も少なくありません。この記事では、眼皮膚白皮症の原因から種類、日常生活での具体的なケア方法までを詳しく解説します。ご自身の体を守るための正しい知識を身につけましょう。
眼皮膚白皮症の概要
眼皮膚白皮症(がんひふはくひしょう)は、生まれつき体の中で色をつくる「メラニン」という色素が、遺伝子の働きによってうまく作られない病気で、「アルビノ」とも呼ばれます。
この病気には、主に髪や皮膚、目に特徴的な症状が現れます。
- 髪の毛や皮膚 メラニン色素が少ないため、髪は白や明るい金色に、皮膚はとても白くなります。メラニンには、紫外線から体を守るバリアの役割があるため、日光に弱く日焼け対策が欠かせません。
- 目 目の「虹彩(こうさい)」という部分の色素も少ないのが特徴です。虹彩は目に入る光の量を調節しているため、光をまぶしく感じたり(羞明)、視力が弱かったり、目が細かく揺れる(眼球振盪)といった症状が見られます。
これらの症状はありますが、知的な発達や体の成長などは健康な人と変わりありません。発生頻度は、およそ1万5,000人から2万人に1人程度です。
日本では、眼皮膚白皮症は国の指定難病の一つです。そのため、厚生労働省の研究事業として、病気の詳しい仕組みを解明したり、患者さんの生活の質を向上させたりするための研究が国レベルで進められています。新しい治療法の開発を目指し、患者さんの情報を集約する登録制度も作られています。
眼皮膚白皮症の種類
眼皮膚白皮症は、原因となる遺伝子の違いによって、いくつかの種類に分けられます。どの遺伝子に変化が起きているかによって、メラニンの作られ方や症状が異なります。
眼皮膚白皮症は、見た目の特徴が似ているため、専門家でも種類の見分けが難しいことがあります。主に以下のタイプに分類され、人種によっても発生しやすいタイプが違います。
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タイプ |
原因遺伝子 |
主な特徴 |
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OCA1 |
TYR |
メラニンをほとんど、あるいは全く作ることができません。髪は白く、皮膚も白色で、目の色も薄いため視力への影響が比較的大きいとされています。 |
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OCA2 |
OCA2 |
わずかにメラニンを作ることができます。世界で最も多いタイプで、特にアフリカ系の方に多く見られます。生まれたときの髪は金色や薄茶色です。 |
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OCA3 |
TYRP1 |
髪が赤みがかった茶色になるのが特徴です。アフリカ系の人に多く見られ、目の症状は比較的軽い傾向にあります。 |
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OCA4 |
SLC45A2 |
日本人に最も多いタイプです。メラニンを少し作ることができ、髪の色は銀白色から薄い黄色、肌は乳白色です。 |
このほかにも、OCA5からOCA8までの非常にまれなタイプが存在します。また、ヘルマンスキー・プードラック症候群のように、白皮症と似た症状を示す他の病気もあります。
どのタイプにあてはまるかを正確に知るためには、遺伝子検査など専門的な検査が必要です。気になる症状があれば、まずは専門の医療機関へ相談することが大切です。
眼皮膚白皮症の原因
眼皮膚白皮症は、遺伝子の変化によって起こる病気です。 私たちの体には、髪や皮膚の色を作る設計図(遺伝子)があります。 この設計図に変化があると、色を作る工場がうまく働きません。
体の中で色を作る「メラニン」という物質は、アミノ酸の一種であるチロシンから作られます。 この過程で、「チロシナーゼ」という酵素がとても重要です。 酵素とは、体の中で化学反応を進めるための職人のようなものです。 眼皮膚白皮症では、このチロシナーゼの働きが弱まっています。 これをチロシン活性の低下と呼び、メラニン不足の直接的な原因となります。
常染色体劣性遺伝という仕組み
この病気は、主に「常染色体劣性遺伝」という形式で伝わります。 これは、ご両親がそれぞれ原因となる遺伝子を1つずつ持っている場合に、お子さんに症状が現れる可能性があるということです。 ご両親に症状がなくても、遺伝子を持っているだけのことがあります。 この場合、お子さんが眼皮膚白皮症になる確率は4分の1(25%)です。
原因は一つではない
眼皮膚白皮症の原因となる遺伝子は、複数見つかっています。 その中でも、チロシナーゼの設計図であるTYR遺伝子の変化が原因で起こるOCA1というタイプが、最も一般的です。 また、近年の研究では、目の症状に神経の働きも関係していることがわかってきました。 メラニンが作られる仕組みは、脳からの信号を伝える神経伝達物質(ドーパミンなど)の働きとも深く関わっています。 そのため、色素が少ないだけでなく、神経のバランスが崩れることも、目の揺れ(眼球振盪)などの症状の一因と考えられています。
眼皮膚白皮症の症状
眼皮膚白皮症の症状は、主に「皮膚」「髪の毛」「目」に現れます。 これは、体を紫外線から守る色素「メラニン」が少ないためです。 症状の現れ方には個人差がありますが、主な特徴を見ていきましょう。
皮膚と髪の毛の症状
- 皮膚の色 肌の色が非常に白く、日光を浴びても黒くなりにくいです。 紫外線への抵抗力が弱く、赤く炎症を起こしやすい特徴があります。
- 髪の毛の色 白や金色、またはとても明るい茶色など、人によって様々です。 年齢とともに、少しずつ色が変化することもあります。
目の症状 目の症状は、視力に関わるため生活の質に大きく影響します。
- 見た目の特徴 黒目の部分(虹彩)の色素が少なく、青や灰色に見えます。 光の加減で血管が透けて、赤っぽく見えることもあります。
- 見え方に関する問題 – 羞明(しゅうめい) 虹彩で光の量をうまく調節できず、光を非常に眩しく感じます。 – 眼振(がんしん) 意思とは関係なく、眼球が小刻みに揺れてしまうことがあります。 – 視力低下 目の奥の網膜、特に物を見る中心「中心窩」が十分に発達しない(中心窩低形成)ためです。 このため、弱視やピントが合いにくい乱視などが起こります。
- 斜視(しゃし) 両目の視線が同じ方向に向きにくくなることもあります。
近年の研究では、ドーパミンなどの神経の情報を伝える物質も、目の症状に関わることが示唆されています。 これらの症状はありますが、知的な発達などが影響を受けることはありません。
眼皮膚白皮症の検査・診断
眼皮膚白皮症の診断は、一つの検査だけで決まるわけではありません。 見た目の特徴、目の詳しい検査、そして原因を特定する遺伝子検査。 これらを組み合わせて、総合的に判断することがとても重要です。
見た目と問診による確認
まず、医師が髪の毛や皮膚、目の色を直接観察します。 体の中の色を作る色素「メラニン」がどのくらい少ないかを確認するためです。 これは診断の第一歩となる、基本的な診察になります。
眼科での専門的な検査
この病気は目に特徴的な症状が出ることが多いため、眼科での検査は欠かせません。 見え方や目の状態を詳しく調べ、生活への影響を評価します。
- 視力検査や屈折検査 どのくらい見えているか、ピントが合いにくい乱視などがないかを確認します。
- 眼球運動の検査 意思とは関係なく目が揺れる「眼振」や、両目の向きがずれる「斜視」がないかを調べます。
- 目の色の観察 黒目の部分(虹彩)の色が薄くないか、光をまぶしがる「羞明」がないかを確認します。
- 眼底検査 目の奥にある、物を見る中心「中心窩」が十分に発達しているか(中心窩低形成)を調べます。
診断を確定する遺伝子検査
診断を確定し、どのタイプかをはっきりさせるために行われます。 血液などから遺伝子を詳しく分析し、原因となっている遺伝子を特定します。 この遺伝子検査によって、正確な診断を下すことが可能になります。
眼皮膚白皮症の治療
眼皮膚白皮症を根本から治す治療法は、残念ながらまだありません。 そのため、治療の目的は症状を和らげ、生活の質を保つことです。 また、将来起こりうる合併症を防ぐことも、とても重要になります。
治療は主に「目」と「皮膚」に対するケアが中心です。 ご自身の体を守るために、正しい知識を身につけましょう。
目の症状に対するケア
視力や光の感じ方に関する問題をサポートすることが目的です。 定期的な眼科受診で、目の状態を確認し続けることが大切です。
- 視力のサポート 弱視や乱視などに対して、メガネやコンタクトレンズで矯正します。 見え方をできるだけ良くして、日常生活の不便を減らします。
- まぶしさへの対策 光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)を和らげるためです。 色のついた遮光眼鏡やサングラス、つばの広い帽子が有効です。
- 定期的な検査 少なくとも年に1回は、眼科で視力や眼底の検査を受けましょう。 視力の変化や、他の目の病気が起きていないかを確認します。
皮膚を守るためのケア
メラニンが少ないため、紫外線から肌を守る力が非常に弱いです。 徹底した紫外線対策は、皮膚がんの予防に直結する重要なケアです。 将来の健康を守るため、毎日の習慣にすることが欠かせません。
- 紫外線対策のポイント
- 外出時は必ず長袖・長ズボンを着用する
- SPF値の高い日焼け止めをこまめに塗り直す
- つばの広い帽子や日傘を常に使用する
研究と将来の展望
現在、国レベルで眼皮膚白皮症の研究が進められています。 厚生労働省の研究事業では、新しい治療法を開発するためです。 患者さんの情報を集める「患者登録制度」もその一つです。 こうした取り組みによって、今後の医療の進歩が期待されています。





