太田母斑

お顔にある青みがかったあざ。「生まれつきだから仕方ない」「思春期に突然現れて消えない」と、長年コンプレックスに感じていませんか?そのあざは、もしかしたら「太田母斑」という皮膚の症状かもしれません。

太田母斑は、日本人を含むアジア人に多く、1,000人に1〜2人の割合で発症するとされる、決して珍しくないあざです。自然に消えることはほとんどありませんが、もう一人で悩む必要はありません。

現在ではレーザーによる治療が可能で、特に治療を始める年齢が若いほど効果が高まるという研究結果もあります。この記事では、太田母斑の原因から、ご自身の症状がどのタイプに当てはまるのか、そして最新の治療法まで、あなたの悩みを解決するための情報を詳しく解説します。

太田母斑の概要

太田母斑(おおたぼはん)とは、顔にできるあざの一種です。 色は青色や、少し茶色がかった青紫色に見えるのが特徴です。 1939年に、日本の皮膚科医である太田正雄先生によって、 世界で初めて詳しく報告されたため、この名前が付きました。

このあざは、私たちアジア人の肌質と深い関係があります。 研究によると、アジア人の肌は欧米人と比べて、 しわなどの老化は目立ちにくいという良い特徴があります。 しかしその一方で、シミやあざといった色素の変化が、 比較的早い年齢から起こりやすい性質も持っています。

太田母斑には、以下のような特徴が見られます。

  • できやすい人 日本人を含むアジア人に多く、特に女性に発症しやすいです。 日本での発生頻度は、1,000人に1〜2人ほどとされています。
  • できる場所 おでこや目の周り、頬、鼻、こめかみなどに現れます。 顔の片側だけにできる場合がほとんどですが、 まれに両側に見られることもあります。
  • できる時期 生まれてすぐ、または生後半年以内に気づかれる「早発型」と、 思春期をむかえる頃にあらわれる「遅発型」があります。

このあざは、肌の少し深い部分(真皮)に、 肌の色を作る細胞(メラノサイト)が集まることで生じます。 自然に消えることはほとんどありませんが、 放置しても健康に悪い影響をおよぼすことはありません。

太田母斑の種類

太田母斑は、あざが現れる時期によって、 大きく2つの種類に分けられます。 ご自身のあざがいつからあるのかを知ることは、 その種類を理解する上で大切な手がかりになります。

研究によると、日本人を含むアジア人の肌は、 肌の色をつくるメラニンという色素の働きが活発です。 そのため、しわができにくいという良い面がある一方で、 太田母斑のような色素に関わる症状が出やすいのです。

1. 早発型(そうはつがた) 生まれた直後から、生後半年くらいまでにあらわれるタイプです。 生まれつき、または赤ちゃんの頃にあざがあるため、 ご家族が気づかれることがほとんどです。

2. 遅発型(ちはつがた) 思春期や大人になってから症状が出たり、濃くなったりします。 子どもの頃は目立たなかったあざが、 年齢とともに気になるようになるケースもこのタイプです。

また、大人になってから顔の両側に左右対称にあらわれるあざは、 「後天性両側性太田母斑様色素斑」と呼ばれることもあります。 これは太田母斑とよく似ていますが、 少し特徴が異なるあざとして区別されます。

種類

現れる時期の目安

主な特徴

早発型

生まれた直後〜生後6ヶ月以内

生まれつき、または乳児期に気づかれることがほとんどです。

遅発型

思春期以降

大人になってから症状が出たり、色が濃くなったりします。

太田母斑の原因

太田母斑ができる原因は、肌の色を作る細胞の「迷子」です。 この細胞は「メラノサイト」と呼ばれています。 本来、メラノサイトは肌の浅い部分にいるべき細胞です。

しかし、何かのきっかけで肌の深い部分(真皮)に現れます。 そこで肌の色のもと(メラニン)を作り続けることで、 皮膚が青みがかったあざのように見えるのです。

根本的な原因はまだはっきりと解明されていません。 しかし、現在では以下の3つの要因が関係すると考えられます。

  • 遺伝子の変化 私たちの体の設計図である遺伝子の情報が、 生まれつき少しだけ違っていることが関係するとされます。 具体的には、GNAQやGNA11といった遺伝子です。
  • ホルモンの影響 体の調子を整えるホルモンのバランスも関係します。 特に思春期や妊娠の時期は、ホルモンが大きく変化します。 このタイミングであざが現れたり、濃くなったりします。
  • 人種による肌質 研究によると、私たちアジア人の肌には特徴があります。 欧米の人に比べてシワは目立ちにくい一方で、 肌の色に関する変化が、若い頃から起こりやすいのです。 そのため、太田母斑のようなあざが現れやすいと考えられます。

一般的なシミとは違い、紫外線をたくさん浴びることが、 直接の原因になる可能性は低いとされています。 肌の表面ではなく、深い部分で起きている問題だからです。

太田母斑の症状

太田母斑の主な症状は、顔に現れるあざです。 痛みやかゆみを感じることは、ほとんどありません。 しかし、その見た目にはいくつかの特徴があります。

あざの色は、青みがかったり、灰色や茶色に見えたりします。 肌の奥深く(真皮)に色素があるため、 光の加減によって、このように独特な色に見えるのです。

そばかすのような小さな点が集まって見えることもあります。 一方で、広い範囲にベタッと広がって見える場合もあり、 あざの濃さや形には、個人差が大きいのが特徴です。

研究によると、私たちアジア人の肌には特徴があります。 欧米の人と比べてシワは目立ちにくい一方で、 シミやあざのような色の変化が起きやすいとされます。

症状が現れやすい場所 あざは、顔の左右どちらか片側に出ることがほとんどです。 具体的には、以下の場所に現れやすい傾向があります。

  • おでこ
  • 目の周り
  • ほっぺ(頬)
  • 鼻
  • こめかみ

また、皮膚だけでなく、目の白目の部分に、 青いシミのような点として症状が現れることもあります。

症状のポイント

具体的な内容

場所

顔の片側(おでこ、目の周り、頬など)が中心です。<br>目の白目にも現れることがあります。

見た目

青色、灰色、茶色がかったあざです。<br>小さな斑点の集まりに見えることもあります。

変化

自然には消えません。<br>年齢とともに色が濃くなることがあります。

太田母斑の検査・診断

太田母斑の診断は、お医者さんがじっくり観察することから始まります。 多くの場合、痛みを伴う検査は必要ないので安心してください。

まず、患者さんのお話を聞き、あざの状態を目で見て確認します。 これを「問診(もんしん)」と「視診(ししん)」と呼びます。

1. 問診と視診 問診では、診断の手がかりになる大切なことをお聞きします。

  • あざはいつ頃からありますか? 生まれた時からか、大きくなってからかを確認します。 これは、あざの種類を見分けるために重要な情報です。
  • 色や形に変化はありますか? あざの状態を知ることで、今後の見通しを立てやすくなります。
  • ご家族に同じようなあざの方はいますか? 遺伝との関係性も考えられるため、お伺いすることがあります。

視診では、あざの色合い、大きさ、広がっている範囲を詳しく観察します。 ほとんどの太田母斑は、この問診と視診によって診断できます。

2. 確定診断のための検査 まれに、他の病気との区別が難しい場合があります。 その際には「皮膚生検(ひふせいけん)」という検査を行います。

これは、あざのある部分の皮膚をほんの少しだけ切り取り、 顕微鏡で詳しく調べる検査です。 肌の深い部分に色を作る細胞がいるかを確認し、診断を確定させます。

3. 診断後の治療計画 診断がつくと、いつ治療を始めるかというお話も大切になります。 最近の研究では、治療を始める年齢が若いほど、 また、あざができてからの期間が短いほど、 レーザー治療の効果が高まる傾向が示されています。

そのため、診断がついた段階で、治療の計画について、 お医者さんとしっかり相談することが重要です。

太田母斑の治療

太田母斑の治療は、レーザー治療が中心となります。 あざの原因は肌の深い部分(真皮)にあるためです。 塗り薬や飲み薬では、その場所に届きません。

レーザー治療は、あざの原因である黒い色素(メラニン)だけを、 ねらって壊すことができる特別な光を使った治療法です。 周りの健康な肌へのダメージを抑えながら治療できます。

レーザー治療の進め方

治療は一度で終わることは少なく、複数回に分けて行います。 肌の状態を見ながら、あせらずに進めることが大切です。

治療のポイント

目安

治療の回数

あざの濃さにもよりますが、<br>多くの場合で3回以上の治療が必要になります。

治療の間隔

肌が回復する時間をとるため、<br>3ヶ月から半年ほど間隔をあけます。

治療を始めると、レーザーをあてた場所は軽いやけどのようになります。 その後かさぶたになり、それが取れると徐々に色が薄くなっていきます。

治療効果を高めるポイント

最近の研究では、治療効果に関する大切なことがわかってきました。 特に「ピコ秒アレキサンドライトレーザー」という種類のレーザーは、 お子さんのあざ治療に安全で効果的だと報告されています。

ある研究では、このレーザーで治療したお子さんのあざが、 平均で76%も薄くなるという「優れた改善」が見られました。 そして、より効果が出やすい条件も示されています。

  • ポイント
  • 治療を始める年齢が若いこと
  • あざができてから治療を始めるまでの時間が短いこと

このことから、太田母斑は早めに治療を始めることが、 より良い結果につながる可能性が高いと考えられます。

治療の注意点と副作用

レーザー治療には、痛みや副作用の可能性もあります。 治療を始める前に、しっかり理解しておきましょう。

  • 痛みについて
  • レーザーをあてる時、輪ゴムではじかれるような痛みがあります。
  • 痛みが心配な方には、麻酔のクリームやシールも使えます。
  • 副作用について
  • 炎症後色素沈着
  • 治療後に一時的に、その部分の色が濃くなることがあります。
  • 先ほどの研究では、16.3%の割合で発生したとされます。
  • 色素脱失
  • まれに、レーザーをあてた部分の色が白く抜けることがあります。

太田母斑のレーザー治療は、健康保険が使えることが多いです。 ただし、使うレーザーの種類や回数で条件が変わることもあります。 費用についても、事前にクリニックでよく確認しましょう。