「あれ、こんなところにいつの間に…?」体にできた、ぷにぷにとやわらかい「しこり」。その正体は、決して珍しくない「脂肪腫」かもしれません。統計では1000人に1人以上に見つかるともいわれ、特に40代から50代の方にとっては非常に身近な存在です。
ほとんどは心配のいらない良性の腫瘍ですが、「放っておいても大丈夫?」「大きくなったらどうしよう…」という不安は尽きないもの。ごくまれに、見た目がそっくりな悪性の腫瘍が隠れている可能性もゼロではありません。この記事では、あなたのその「しこり」の正体に迫り、原因から最新の診断方法まで詳しく解説します。
脂肪腫の概要
脂肪腫は、皮膚の下にできる、やわらかい「できもの」の一種です。 脂肪の細胞が集まってできた良性の腫瘍で、決して珍しいものではありません。 統計では、1000人に1人以上に見つかるとも言われています。
脂肪腫には、以下のような特徴があります。
- 触り心地 ゴムまりのようにやわらかく、指で押すと少し動くような弾力があります。
- 痛み 基本的には痛みを感じることはありません。
- 場所 背中、肩、首、腕など、脂肪の多い場所にできやすい傾向があります。
- 成長 数年かけて、ゆっくりと大きくなるのが一般的です。
40代から50代の方に見つかることが多いですが、どの年代でもできる可能性があります。 ほとんどは皮膚のすぐ下にできますが、ごくまれなケースもあります。 それは、筋肉の中や背骨の中にある神経の束(脊髄)にできる特殊なタイプです。
ある研究報告によると、この特殊な脂肪腫は比較的若い世代、特に30代前後の男性に見られることがあります。 神経を圧迫するため、手足のしびれやまひといった症状を引き起こすこともあります。
脂肪腫は基本的に心配のいらない良性の腫瘍ですが、自然になくなることはありません。 気になるふくらみやしこりに気づいた場合は、一度クリニックにご相談ください。
脂肪腫の種類
「脂肪腫」とひとくくりにされがちですが、実はいくつか種類があります。 含まれる成分やできる場所によって、タイプが分かれるのです。 ご自身のしこりがどのタイプに近いか、参考にしてみてください。
|
種類
|
主な特徴
|
|
単純脂肪腫
|
最も一般的なタイプです。やわらかい脂肪細胞のかたまりで、痛みを感じることはほとんどありません。
|
|
線維脂肪腫
|
脂肪組織の中に、コラーゲンなどの線維組織が混じっているタイプです。単純脂肪腫より少し硬く感じることがあります。
|
|
血管脂肪腫
|
脂肪組織の中に血管が多く含まれています。そのため、押したときに痛みを感じることがあるのが特徴です。
|
|
筋肉内脂肪腫
|
筋肉の内部や、筋肉と筋肉の間にできます。体の深い場所にできるため、皮膚の上からでは分かりにくいこともあります。
|
これらの多くは心配のいらない良性の腫瘍です。 しかし、中には悪性の「脂肪肉腫」と見た目がそっくりなものもあります。 ある研究では、良性か悪性かを見分ける特徴がいくつか報告されています。
- サイズが大きい 直径が10cmを超えている
- 場所が深い 皮膚のすぐ下ではなく、筋肉の近くなど体の深い場所にある
- 内部の構造 CTやMRI検査で、中に厚い壁のような仕切りが見える
- 造影剤の効果 検査で使うお薬(造影剤)で、血の流れが豊富に見える
また、腎臓などの内臓に「血管筋脂肪腫」という特殊なタイプができることもあります。 この腫瘍は、悪性の腎細胞癌との区別が難しい場合がありました。 しかし最近では、CT画像をコンピューターで詳しく分析する技術(CTレディオミクス)が登場しています。 この技術により、手術をしなくても高い精度で診断できる可能性が研究されています。
このように脂肪腫には様々な種類があり、専門的な判断が欠かせません。 気になるしこりがある場合は、自己判断せずに医療機関に相談しましょう。
脂肪腫の原因
「どうして私に脂肪腫ができたんだろう?」と、不思議に思う方も多いでしょう。 脂肪腫ができるはっきりとした原因は、残念ながらまだ完全にはわかっていません。 しかし、近年の研究からいくつかの要因が関係している可能性が指摘されています。
現在、脂肪腫ができる原因として、主に以下の4つが考えられています。
- 遺伝子の変化 これが最も有力な説の一つです。 脂肪腫の細胞を調べると、約8割で染色体という遺伝子の設計図に 異常が見つかります。 この異常が、脂肪細胞を過剰に増やしてしまうスイッチになると 考えられているのです。
- 体質(遺伝的な要因) ご家族に脂肪腫ができた方がいる場合、ご自身もできやすい傾向があります。 これは、脂肪腫ができやすい遺伝的な体質が関係している可能性があります。 特に、体にいくつも脂肪腫ができる「多発性脂肪腫」は遺伝との関連が強いです。
- 外からの刺激 体をぶつけたり、下着で締め付けられたりする場所にできやすい傾向があります。 こうした物理的な刺激が、細胞の増殖のきっかけになるという説です。
- 他の病気との関連 肥満の方や、糖尿病、脂質異常症などをお持ちの方にできやすいとも言われます。 体の脂肪の代謝バランスが、脂肪腫の発生に影響している可能性があります。
例えば、あごの下にできた脂肪腫は、他の手術と同時に取り除くことがあります。 複数の研究をまとめた報告では、こうした処置は見た目の改善に役立ち、安全に行えるとされています。 しかし、ごくまれに下唇の感覚が鈍くなったり、皮膚がでこぼこになったりする合併症が起こる可能性も指摘されています。
このように、脂肪腫の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられます。
脂肪腫の症状
脂肪腫は、皮膚の下にできるやわらかい「しこり」が主な症状です。 多くの場合、痛みやかゆみといった自覚症状はありません。 そのため、ご自身で触るか、誰かに指摘されるまで気づかないことも多いのです。
ご自身のしこりが脂肪腫かどうか、以下のリストで確認してみましょう。
【脂肪腫の主な症状チェックリスト】
- 感触 ゴムまりのようにやわらかく、弾力があります。
- 動き 指で押すと、皮膚の下で少しコロコロと動く感じがします。
- 痛み 基本的には、押しても痛みを感じることはありません。
- 成長 数カ月から数年という長い時間をかけて、ゆっくり大きくなります。
- 皮膚の変化 しこりの上の皮膚の色は、周りと変わらないのが普通です。
これらの症状のみであれば、日常生活に影響が出ることはほとんどありません。
ただし、脂肪腫ができた場所によっては注意が必要な症状が出ることがあります。 例えば、神経の近くにできて大きくなると、神経を圧迫してしまいます。 その結果、ピリピリとした痛みやしびれを感じることがあります。
また、非常にまれですが、特殊な場所に脂肪腫ができることもあります。 ある研究報告によると、首の骨の中にある神経の束(頸髄)に脂肪腫ができます。 この場合、手足が動かしにくくなる「まひ」が主な症状として現れます。 この特殊な脂肪腫は、比較的若い世代、特に30代前後の男性に見られることがあります。
ほとんどは心配のいらない良性の腫瘍です。 しかし、少しでも気になる症状があれば、自己判断せずにご相談ください。
脂肪腫の検査・診断
体に気になるしこりを見つけると、とても不安になりますよね。 「これは悪いものではないか?」と心配になるのは当然のことです。 脂肪腫が疑われる場合、医師はいくつかの検査を組み合わせます。 良性の腫瘍であることを確認し、他の病気でないかを慎重に調べます。
診断は、主に以下の3つのステップで丁寧に進められます。
- 問診と視診・触診 はじめに、しこりの状態を直接確認することから始めます。 いつからあるか、大きさの変化、痛みの有無などを詳しく伺います。 次に、しこりの硬さ、大きさ、指で押したときの動きなどを確かめます。 この段階で、脂肪腫らしい特徴がある程度わかります。
- 画像検査 しこりが大きい場合や、体の深い場所にある場合は画像検査を行います。
- 超音波(エコー)検査 体に負担の少ない検査で、しこりの内部の様子や深さを確認します。 脂肪腫の多くは、この検査で特徴的な白っぽいかたまりとして見えます。
- MRI検査・CT検査 特に悪性の「脂肪肉腫」と見分けるために大切な検査です。 ある研究では、専門医の総合的な判断と画像の詳しい分析により、 良性と悪性を見分けられる可能性が示されています。 例えば、しこりの場所が深い、サイズが10cm以上ある、 内部に厚い壁のような仕切りが見える、といった特徴は注意深く見るポイントです。
- 確定診断のための検査 画像検査でも判断が難しい場合、細胞を直接調べて診断を確定します。
- 細針吸引細胞診(FNAC) しこりに細い針を刺し、細胞を少しだけ採って顕微鏡で調べます。 ある研究報告では、この検査の診断精度は90%以上と非常に高く、 不要な手術を避けるためにも役立つとされています。
- 生検 局所麻酔をして組織の一部を切り取り、詳しく調べます。 これが、良性か悪性かをはっきりさせるための最終的な診断方法です。
これらの検査を組み合わせ、しこりの正体を正確に突き止めます。 そして、一人ひとりに合った今後の対応を決めていきます。 気になるしこりがあれば、まずは一度ご相談ください。
脂肪腫の治療
脂肪腫の治療法は、しこりの状態や患者さんの希望によって決まります。 基本的には「経過観察」と「外科的切除」の2つの選択肢があります。 それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
経過観察
脂肪腫は良性の腫瘍なので、すぐに治療が必要なわけではありません。 小さくて痛みもなく、生活に支障がない場合は様子を見ることが可能です。 ただし、脂肪腫が自然に消えることはないため注意が必要です。 大きさに変化がないか、定期的にご自身で確認することが大切です。
外科的切除(摘出手術)
以下のような場合には、手術で取り除くことを検討します。 これが脂肪腫の根本的な治療法です。
- 見た目が気になってきた
- 大きくなり、服にすれるなど生活の邪魔になっている
- 神経を圧迫して、痛みやしびれの症状がある
- 悪性の腫瘍(脂肪肉腫など)の可能性が少しでもある
手術は、脂肪腫を包んでいる薄い膜ごと完全に取り除くことが重要です。 これにより、同じ場所に脂肪腫が再発するのを防ぎます。
また、手術の前に診断をより確実にする検査を行うことがあります。 細い針で細胞を採って調べる「細針吸引細胞診(FNAC)」です。 ある研究報告では、この検査の診断精度は90%以上と非常に高いです。 不要な手術を避けるための、大切な判断材料になります。
手術は局所麻酔による日帰り手術がほとんどです。 ただし、腫瘍が大きい場合や筋肉の奥深くにある場合は入院が必要です。 手術には合併症のリスクが伴いますが、その頻度は高くありません。 例えば、神経の近くを手術した場合、まれに皮膚の感覚が鈍くなったり、皮膚がでこぼこになったりする可能性があります。 安全を第一に考え、一人ひとりに合った手術計画を立てます。