ジアノッティ病

ある日突然、お子さんの顔や手足、おしりなどに赤いブツブツが…。かゆがる様子はなくても、何かの病気ではないかと心配になりますよね。その症状、もしかすると1歳から6歳の乳幼児に多い「ジアノッティ病」かもしれません。

ジアノッティ病は、ウイルス感染をきっかけに免疫が反応して起こる皮膚の病気です。実は、かつて主な原因とされたB型肝炎ウイルスによるものはワクチンの普及で激減し、現在ではEBウイルスなど、より身近なウイルスが原因の「ジアノッティ症候群」がほとんどを占めています。

この記事では、ジアノッティ病の正体や症状、原因となるウイルスの違い、ご家庭での対処法までを詳しく解説します。多くは自然に治る病気ですが、正しい知識を得ることで、お子さんの症状に対する不安を安心に変えていきましょう。

ジアノッティ病の概要

ジアノッティ病は、主に小さなお子さんの皮膚にあらわれる病気です。 正式には「ジアノッティ・クロスティ症候群」とも呼ばれています。 ウイルスへの感染をきっかけに、体の免疫が反応することで起こります。

この病気の主な特徴を、以下にわかりやすくまとめました。

特徴

内容

かかりやすい年齢

1歳から6歳くらいの乳幼児期のお子さんに多く見られます。特に1~3歳での発症が目立ちます。

主な症状

顔や手足、おしりなどに、赤みがかった小さなブツブツ(丘疹:きゅうしん)が左右対称にあらわれます。かゆみは、ないか、あっても軽いことがほとんどです。

原因となるウイルス

B型肝炎ウイルスやEBウイルス、コクサッキーウイルスなど、さまざまなウイルスが原因になり得ます。

病気の経過

ほとんどの場合、特別な治療をしなくても大丈夫です。発疹は数週間から数ヶ月ほどで自然に消えていきます。

もともと「ジアノッティ病」はB型肝炎ウイルスが原因の場合を指しました。 しかし、B型肝炎ワクチンの普及により、このケースはまれになっています。 そのため現在では、他のウイルスが原因の同様の症状をまとめて、 「ジアノッティ症候群」と呼ぶことが一般的です。

多くは自然に良くなる病気ですが、お子さんの体に発疹が出ると、 親御さんとしてはご心配になることでしょう。 気になる症状が見られた場合は、自己判断せずに小児科や皮膚科を受診し、 医師の診察を受けることが大切です。

ジアノッティ病の種類

ジアノッティ病は、原因となるウイルスの違いによって、 実は2つの種類に分けられています。 もともとの「ジアノッティ病」と「ジアノッティ症候群」です。 お子さんの症状を正しく理解するために、その違いを知っておきましょう。

昔、ジアノッティ病といえばB型肝炎ウイルスが原因のものを指しました。 しかし、現在ではB型肝炎ワクチンの定期接種が進んだおかげで、 このタイプのジアノッティ病にお目にかかることは非常にまれです。 これは日本の予防接種がうまく機能している証拠とも言えます。

今、お子さんがジアノッティ病と診断される場合、 そのほとんどは「ジアノッティ症候群」にあたります。 これは、B型肝炎ウイルス以外のウイルスで引き起こされるものです。 原因として特に多いのが、EBウイルスという非常に身近なウイルスです。

  • EBウイルスとは? ほとんどの人が子どもの頃に知らないうちにかかるウイルスです。 多くの場合、症状が出ないか、軽い風邪のような症状で済みます。 しかし、一部のお子さんでは免疫の反応として発疹が出ることがあります。

この2つの違いを、以下の表にまとめました。

種類

主な原因ウイルス

現在の状況

ジアノッティ病

B型肝炎ウイルス

B型肝炎ワクチンの普及により、

発症は非常にまれになっています。

ジアノッティ症候群

EBウイルス、

コクサッキーウイルスなど

現在診断されるケースのほとんどが

このタイプにあたります。

原因となるウイルスは異なりますが、お子さんにあらわれる症状や、 その後の治療方針に大きな違いはありません。 どちらも自然に良くなることがほとんどですので、ご安心ください。

ジアノッティ病の原因

ジアノッティ病は、ウイルス感染が引き金となって起こる病気です。 ウイルスが体に入ると、体を守るための「免疫」という仕組みが働きます。 この免疫がウイルスと戦う過程で、少し強く反応しすぎることがあります。 その結果、皮膚に特徴的な赤いポツポツ(丘疹)があらわれるのです。

私たちの体には、ウイルスなどの外敵を攻撃する免疫機能が備わっています。 しかし、小さなお子さんの免疫はまだ発達の途中段階にあります。 そのため、ウイルスと戦うときの力の加減がうまく調整できないことがあります。 その免疫反応が、皮膚にまで炎症として及んでしまうのが原因です。

原因となる代表的なウイルスには、以下のようなものがあります。

  • EBウイルス(エプスタイン・バー・ウイルス) 現在、原因として最も多いと考えられている、とても身近なウイルスです。
  • コクサッキーウイルス 夏風邪の代表である、手足口病などを引き起こすウイルスです。
  • B型肝炎ウイルス B型肝炎ワクチンの定期接種が普及したため、これが原因のケースはまれです。

ジアノッティ病は、特に免疫システムが未熟な乳幼児期に多く見られます。 これは、お子さんが様々なウイルスに生まれて初めて感染する時期だからです。 免疫が初めて出会うウイルスに対し、どう戦えばよいか手探りの状態なのです。

年齢

かかりやすさ

1歳~3歳

最もかかりやすい

4歳~6歳

かかりやすい

7歳以上

まれになる

ウイルス感染のほか、もともとの体質なども発症に関係する可能性があります。 しかし、まだ詳しいことは解明されていません。

ジアノッティ病の症状

ジアノッティ病の症状は、主に皮膚にあらわれるブツブツ(皮疹)です。 それに加えて、軽い風邪のような全身の変化が見られることもあります。 お子さんの体に突然発疹が出ると心配になりますが、慌てずに症状を観察しましょう。

特徴的な皮膚のブツブツ(皮疹:ひしん)

一番の特徴は、皮膚にあらわれる小さな盛り上がった発疹です。 ジアノッティ病の発疹には、以下のような見た目の特徴があります。

  • 色と形 赤みがかったり、少し茶色っぽかったりします。 てっぺんが平らな、小さなドーム状の盛り上がりです。 専門的には「丘疹(きゅうしん)」と呼ばれます。
  • 大きさ 直径1mmから5mmほどの、ゴマ粒くらいの大きさです。
  • あらわれる場所 顔、腕や足、おしりなどによく見られます。 体の中心よりも、手足の先に多く出やすい傾向があります。 体の右と左で、同じような場所に発疹が出る「左右対称」が大きな特徴です。
  • かゆみ かゆみは、ないか、あってもとても軽いことがほとんどです。 お子さんがかきむしってしまうことは、あまりありません。
  • その他の特徴 指で押しても赤みが消えにくいという特徴があります。 触ると少し硬い感じがします。

時間とともに変わる症状

発疹は、一度出たら終わりではなく、時間とともに様子が変わります。 治るまでには数週間から、長い場合は数ヶ月かかることもあります。 慌てずに、長い目で経過を見守ることが大切です。

時期

皮膚の様子

期間の目安

出始め

顔や手足に、ポツポツと現れ始めます。

数日~1週間

広がる時期

発疹の数が増え、範囲も広がっていきます。

1~2週間

ピーク

発疹の数が最も多くなり、はっきりと目立ちます。

数週間~数ヶ月

回復期

少しずつ色が薄くなり、きれいに消えていきます。

1~2週間

皮膚以外の全身の変化

皮膚の症状とあわせて、軽い全身の症状が見られることがあります。 これは、体の中でウイルスと免疫が戦っているサインと考えられます。

  • 少し熱が出る(37度台の微熱が多い)
  • 首やわきの下などのリンパ節が少し腫れる

これらの症状は、発疹が出る少し前から見られることもあります。 多くは数日から1週間ほどで自然に落ち着いていきますので、ご安心ください。

ジアノッティ病の検査・診断

ジアノッティ病の診断は、医師がお子さんの症状を直接見ることが基本です。 お子さんの体にブツブツが出ると心配ですが、診断の流れを知っておきましょう。

お話を聞き、目で見て確かめる

まず、いつから症状が出たかなど、詳しくお話を聞きます(問診)。 その上で、ブツブツの状態を丁寧に観察します(視診)。 私たち医師は、以下のようなポイントに注目して診断しています。

▼ブツブツ(皮疹)の観察ポイント

チェック項目

特徴

色と形

赤茶色っぽく、てっぺんが平らな小さな盛り上がりです。

大きさ

1mmから5mmくらいの、ゴマ粒ほどのものがほとんどです。

場所

顔や手足、おしりなどに左右対称にあらわれます。

さわった感じ

少し硬い感触があり、指で押しても赤みが消えにくいです。

追加で行うことがある検査

多くは目で見た診察で診断がつきますが、より詳しく調べることもあります。 原因ウイルスを特定したり、他の病気でないかを確認するためです。

  • 血液検査 体の中で炎症が起きていないか、肝臓の機能は正常かを調べます。 肝臓はウイルスと戦う大切な場所なので、その状態を確認します。
  • ウイルス検査 どのウイルスが原因になっているかを特定するために行います。 B型肝炎ウイルスやEBウイルスなどがいないかを調べます。

ジアノッティ病は、はしかやアトピー性皮膚炎などの症状と似ています。 そのため、これらの病気としっかり見分けることがとても大切なのです。

ジアノッティ病の治療

ジアノッティ病は、多くの場合、特別な治療をしなくても治る病気です。 ウイルスと戦った体の免疫反応が落ち着けば、自然に発疹は消えていきます。 そのため、治療の目的は病気を直接やっつけることではありません。 かゆみなどのつらい症状を和らげ、楽に過ごせるようにすることが中心です。 このような治療を「対症療法(たいしょうりょうほう)」と呼びます。

具体的には、お子さんの症状に合わせてお薬を使い、経過をみていきます。 主に使うお薬の種類と、その目的を以下にわかりやすくまとめました。

お薬の種類

主な目的と特徴

かゆみを抑える飲み薬

(抗ヒスタミン薬)

体の中でかゆみを引き起こす物質の働きを抑えます。

眠気が出やすいタイプと出にくいタイプがあるため、

お子さんの生活リズムに合わせて医師が選びます。

赤みを抑える塗り薬

(ステロイド外用薬)

皮膚のブツブツ(丘疹)で起きている炎症を鎮めます。

顔などの皮膚が薄い場所と、手足などの丈夫な場所では、

お薬の強さを使い分けることがとても大切です。

その他のお薬

・保湿剤:皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を助けます。

・抗生物質:かき壊した傷からばい菌が入る「二次感染」を

防ぐ必要がある場合に処方されることがあります。

治療期間は、発疹が消えるまでの3〜8週間ほどが目安です。 しかし、お子さんによっては数ヶ月かかることもあり、個人差が大きいです。 症状が長引いても焦らず、定期的に医師の診察を受けることが大切です。 気になることがあれば、自己判断でお薬をやめず、必ず相談してください。