紅皮症

全身の皮膚の90%以上が真っ赤になり、フケのようにポロポロと剥がれ落ちる…。もしご自身やご家族にこのような症状が現れたら、それは単なる肌荒れやアトピーの悪化ではないかもしれません。

この「紅皮症」と呼ばれる状態は、アトピー性皮膚炎などの悪化だけでなく、普段使っているお薬の副作用や、時には内臓のがんといった重い病気が隠れているサインの場合もあります。ある研究では、特定の治療薬を使った患者さんの約9.4%に、紅皮症のような皮膚炎が見られたという報告もあります。

この記事では、紅皮症の詳しい症状から原因、そして適切な治療法までを詳しく解説します。自己判断で放置せず、正しい知識を得ることがご自身の体を守る第一歩です。

紅皮症の概要

紅皮症は、全身の皮膚の90%以上が赤くなる状態を指します。 これは単なる肌荒れとは違い、重い皮膚の病気の一つです。 ひどい日焼けのように、体の広範囲が真っ赤になります。

紅皮症の主な特徴は以下のとおりです。

  • 広範囲の赤み 体の大部分の皮膚が真っ赤になります。
  • 落屑(らくせつ) 赤くなった皮膚が、フケのように細かく、 または紙のように大きくむけ落ちてきます。
  • かゆみや痛み 我慢できないほどの強いかゆみや、 ヒリヒリとした痛みを伴うこともあります。

この状態は、もともとある皮膚の病気が悪化して起こります。 また、何らかの薬が原因で引き起こされることもあります。 実際に、特定の病気の治療で使うお薬の副作用として、 紅皮症に似た症状が出ることが報告されています。

ある研究では、特定の治療薬を使った患者さんの約1割に、 紅皮症のような皮膚炎が見られたとされています。

紅皮症は見た目だけの問題ではありません。 皮膚の大切な「バリア機能」が大きく損なわれてしまいます。 これにより体内の水分や栄養が失われたり、 体温の調節が難しくなったりと、全身に影響が及びます。

そのため、皮膚に広範囲の赤みが出た場合は、 できるだけ早く専門の医療機関を受診することが重要です。 原因を調べて、適切な対応を始める必要があります。

紅皮症の種類

紅皮症は、その原因によっていくつかの種類に分けられます。 原因がはっきりわからないものと、原因があるものの2種類です。 ほとんどの場合は、何らかの原因があって起こるタイプです。

原因を突き止めることは、正しい治療のためにとても重要です。 なぜなら、原因によって治療の方法が全く変わるからです。 紅皮症の主な種類は、以下のとおりです。

  • もともとの皮膚の病気が原因のもの アトピー性皮膚炎や乾癬(かんせん)といった病気が、 急に悪化して全身に広がってしまうことで起こります。
  • お薬が原因のもの(薬剤性紅皮症) さまざまなお薬の副作用として起こることがあります。 ある研究では、特定のお薬を使った患者さんのうち、 約9.4%に紅皮症のような皮膚炎が出たと報告されています。 治療のために使っているお薬が、原因となる場合もあるのです。
  • 体の内側の病気が原因のもの 皮膚の悪性リンパ腫(あくせいりんぱしゅ)や、 内臓のがんといった重い病気が隠れていることもあります。 この場合、皮膚の症状は体からのSOSサインかもしれません。

このように、紅皮症とひとことで言っても、その背景は様々です。 自己判断で様子を見るのではなく、専門医による正確な診断が、 適切な治療への第一歩となります。

紅皮症の原因

紅皮症がなぜ起こるのか、その原因は一つではありません。 原因を正確に突き止めることが、適切な治療への第一歩です。 主に、次の3つの原因が考えられています。

  • もともとの皮膚の病気の悪化 アトピー性皮膚炎や乾癬(かんせん)といった病気が、 急激に悪化して全身に広がってしまうケースです。 これが紅皮症の最も多い原因とされています。 皮膚のバリア機能が壊れ、炎症が全身に及ぶのです。
  • お薬の副作用(薬剤性紅皮症) 痛み止めや抗生物質など、身近なお薬が原因の場合があります。 また、特定の病気の治療で使うお薬が、 副作用として紅皮症を引き起こすこともあります。 ある研究では、皮膚の病気の治療薬を使った患者さんのうち、 約9.4%に紅皮症のような皮膚炎がみられたとされます。 病気を治すためのお薬が、原因となることもあるのです。
  • 体の内側に隠れた病気 皮膚の悪性リンパ腫(あくせいりんぱしゅ)や、 内臓のがんといった重い病気が原因となることがあります。 この場合、皮膚の赤みは体からのSOSサインかもしれません。 皮膚の症状だからと自己判断せず、全身の検査が必要です。

これらのほか、詳しい検査をしても原因がわからないこともあります。 これを「特発性(とっぱつせい)」と呼びますが、 安易に判断せず、原因を注意深く探ることが重要です。

紅皮症の症状

紅皮症になると、体の広い範囲に様々な皮膚症状が現れます。 全身の皮膚の90%以上が赤くなるというのが、一つの目安です。 これは単なる肌の赤みとは異なり、体全体への影響も大きいです。

紅皮症でみられる主な症状を、以下にまとめました。 ご自身の状態と見比べて、確認してみてください。

<紅皮症の主な症状チェックリスト>

  • 皮膚が赤くなる(発赤) 体の大部分の皮膚が、強い炎症を起こして赤くなります。
  • 皮膚がむける(落屑) 赤くなった部分から、フケのような細かい皮がむけたり、 時には紙のように大きな皮がポロポロと落ちたりします。
  • 強いかゆみ じっとしていられないほどの、激しいかゆみを伴います。 日常生活や睡眠に影響が出ることも少なくありません。
  • むくみ(浮腫) 皮膚の炎症が原因で、顔や手足がはれぼったくなります。
  • 悪寒や発熱 皮膚の大切なバリア機能が壊れ、体温調節が難しくなります。 そのため、寒気を感じたり、熱が出たりしやすくなります。
  • 爪や髪の変化 爪が厚くなる、変形するなどの変化が見られることがあります。 頭皮の状態が悪化し、髪の毛が抜ける場合もあります。

これらの症状は、アトピー性皮膚炎などの悪化で起こるほか、 お薬の副作用として現れることもあります。 ある研究では、特定の治療薬を使った患者さんのうち、 約9.4%に紅皮症のような皮膚炎が出たと報告されています。

気になる症状があれば、自己判断せず専門医に相談しましょう。

紅皮症の検査・診断

紅皮症の診断では、原因を正確に突き止めることが最も重要です。 見た目の症状だけでは、根本的な原因はわからないためです。 そのため、いくつかの検査を組み合わせて慎重に判断します。

まず、いつから症状が始まったかなどを詳しくお伺いします(問診)。 治療中の病気や、現在使っているお薬の確認も欠かせません。 お薬が原因の可能性もあるため、お薬手帳をご持参ください。

次に、皮膚の状態を直接目で見て詳しく確認します(視診)。 赤みや皮膚がむけている範囲・程度を丁寧に観察します。 原因を特定するために、さらに詳しい検査も行います。

  • 血液検査 体の中の炎症の度合いやアレルギー反応の有無、 肝臓や腎臓など内臓の機能に異常がないかを調べます。
  • 皮膚生検(ひふせいけん) 診断を確定するために非常に重要な検査です。 局所麻酔をして皮膚のごく一部を小さく採取し、 顕微鏡で詳しく観察して、皮膚の内部を調べます。
    この検査で、皮膚の深い部分で起きている変化がわかります。 ある研究では、特定の治療薬を使った患者さんのうち、 約9.4%に紅皮症のような皮膚炎が出たと報告されています。 皮膚生検は、こうした原因を突き止めるための手がかりになります。

これらの検査結果を総合的に評価し、原因を診断します。 原因を素早く認識し、一人ひとりの状態を評価することが、 適切な治療への第一歩となると考えられています。

紅皮症の治療

紅皮症の治療で最も大切なのは、原因への対処です。 それと同時に、今あるつらい症状を和らげる治療も進めます。 原因や症状の重さによって、治療法は大きく異なります。

治療の柱は、主に次の3つです。

  • 原因となっている病気の治療
  • つらい皮膚症状を和らげる治療
  • 全身状態の管理

1. 原因となっている病気の治療

紅皮症は、何らかの根本的な原因があって起こることがほとんどです。 そのため、原因を突き止め、その治療を行うことが基本になります。

  • アトピー性皮膚炎や乾癬(かんせん)が原因の場合 それぞれの病気の治療ガイドラインに沿って、 まずは元の病気をしっかりコントロールすることを目指します。
  • お薬が原因の場合 原因と考えられるお薬の使用をすぐに中止します。 ただし、自己判断でお薬をやめるのは危険です。 必ず医師の指示に従ってください。
  • 体の内側の病気が原因の場合 皮膚の悪性リンパ腫の一つである「菌状息肉症」などが、 原因として隠れていることもあります。 この場合は、皮膚科だけでなく専門の科と連携して治療します。
    例えば、菌状息肉症の治療で使うお薬の中には、 副作用で皮膚に発疹が出やすいものがあります。 ある研究レビューによれば、そのお薬を使った患者さんの約9.4%に、 紅皮症のような皮膚炎が見られたと報告されています。
    こうした副作用は、治療を受けた方の4人に1人ほどに起こり得ますが、 その多くは適切な処置で管理できるものです。 だからこそ、医師が副作用のサインを早く見つけ、 一人ひとりの状態に合わせて丁寧に対応することが非常に重要です。

2. つらい皮膚症状を和らげる治療

原因の治療と並行して、今まさに患者さんを苦しめている かゆみや痛み、赤みといった症状を和らげる治療も行います。

  • 塗り薬 皮膚の強い炎症を抑える「ステロイド外用薬」や、 壊れてしまった皮膚のバリア機能を補う「保湿剤」を、 全身にこまめに塗ります。
  • 飲み薬 我慢できないほどの強いかゆみに対しては、 「抗ヒスタミン薬」や「抗アレルギー薬」を内服します。 炎症が非常に激しい場合は、ステロイドの飲み薬を使うこともあります。

3. 全身状態の管理

紅皮症は、皮膚だけの問題ではありません。 皮膚のバリア機能が広範囲にわたって壊れることで、 体全体が危険な状態に陥ることがあります。 そのため、症状が重い場合は入院して、以下のような全身管理を行います。

  • 水分・栄養の補給 皮膚から水分や栄養(タンパク質など)が失われ、 脱水や栄養失調になるため、点滴で補給します。
  • 体温の管理 体温調節がうまくできなくなるため、 部屋の温度を適切に保ち、体を冷やさないようにします。
  • 感染症の対策 皮膚のバリアが壊れた場所から細菌が入りやすくなるため、 清潔を保ち、感染症の兆候があれば抗菌薬を使います。

紅皮症の治療は、原因や症状に応じて多角的に進める必要があります。 気になる症状があれば、決して自己判断せず、専門医に相談してください。