感電
冬、ドアノブに触れた瞬間の「バチッ」。実はこれも、体に電気が流れる「感電」の一種だとご存知でしたか。感電は、単なる痛みで済む場合もあれば、命に関わる深刻な事態を引き起こすこともあります。
なぜ感電で命を落とすことがあるのでしょう。その主な原因は、電流が心臓に流れ、正常な拍動を止めてしまう「心室細動」にあります。家庭用のコンセントでも条件が揃えば、わずか50mAの電流が致命傷になり得るのです。
さらに感電の本当の恐ろしさは、皮膚のやけどは小さくても、体の内部では深刻な損傷が起きている可能性がある点です。この記事では、そんな感電のメカニズムから、いざという時の正しい対処法までを詳しく解説します。
感電の概要
冬にドアノブで「バチッ」とくる静電気も、実は感電の一種です。 感電とは、体に電気が流れることで起こるケガや障害のことです。 医学的には電撃傷(でんげきしょう)と呼ばれています。
電気には、電圧が高い場所から低い場所へと流れる性質があります。 電気が通る電線や、壊れた家電製品などに触れたとき、 私たちの体が電気の通り道となり、感電が起こるのです。 特に体が濡れていると電気が流れやすくなるため、より危険です。
なぜ感電で命を落とすことがあるのか、昔は謎に包まれていました。 かつては、脳や神経への影響や、呼吸ができなくなることが、 感電死の主な原因だと考えられていた時代もあったのです。
しかし、長年の研究により、大きな電流が心臓に流れることで、 心臓がけいれんし、血液を送れなくなる「心室細動」が、 主な原因だと考えられるようになりました。 家庭用のコンセントでも、状況によっては事故につながります。 感電は身近な危険であり、正しい知識を持つことが大切です。
感電の種類
ひとくちに感電といっても、原因によって大きく2つに分けられます。 また、体が傷つく仕組みによってもいくつかの種類があります。
感電の原因による分類は、以下の2つです。
- 電撃傷(でんげきしょう) 家庭のコンセントや切れた電線など、 人が作った電気が原因で起こる感電です。
- 雷撃傷(らいげきしょう) 自然現象である落雷、つまりカミナリによって起こる感電です。 非常に大きなエネルギーを持つため、極めて危険です。
また、体が傷つく仕組みには、主に3つのパターンがあります。 これは、電気が体の中を通る時に熱に変わることが原因です。
- 電流が体を通り抜けることによる傷害 電気が体の表面から入り、内部を通り抜けていくことで、 体の奥深くでやけど(熱傷)が起こります。
- アークフラッシュ(電気の火花)による傷害 電気が空気中で火花を散らす現象で、 その高い熱を浴びることでやけどをします。
- 衣服が燃えることによる傷害 電気が原因で着ている服に火がつき、 その炎によってやけどをしてしまう状態です。
ここで最も注意すべきなのは、皮膚のやけどの大きさと、 体の中のダメージの大きさが、必ずしも一致しないことです。 見た目は軽いやけどでも、内部では深刻な傷を負っている可能性があります。 ちなみに「感電死」という言葉は、感電が原因で亡くなった場合にのみ使われます。
感電の原因
感電は、体が電気の通り道になることで起こります。 電気は、水が高い所から低い所へ流れるように、 電圧の高い場所から低い場所へ流れる性質を持っています。
例えば、電気が流れている電線などに触れてしまうと、 私たちの体が電気の通り道となり、地面に電気が流れます。 この時、体に電流が流れて衝撃や傷がいが生じるのです。
では、なぜ感電で体が傷つくのでしょうか。 主な原因は、電気が体の中を通る時に「熱」に変わることです。 この熱によって、皮膚だけでなく、体の奥深くの筋肉や内臓まで、 やけど(熱傷)をしてしまうことがあります。
ここで最も注意すべき点は、皮膚のやけどの大きさと、 体の中のダメージの大きさが、必ずしも一致しないことです。 見た目は小さな傷でも、内部では深刻な傷を負っている可能性があります。
私たちの身の回りには、感電の危険が多く潜んでいます。
<感電が起こりやすい主なケース>
- 家庭での事故 コンセントに金属を入れる、コードが傷ついた家電を使う、 ぬれた手でコンセントをさわる、などがあります。
- 屋外での事故 切れて垂れ下がった電線に触れる、カミナリ(落雷)にあう、 などが考えられます。
たとえ電気の知識がある人でも、事故を起こすことがあります。 家庭用の100V電源でも、条件によっては命に関わるため、油断は禁物です。
感電の症状
体に電気が流れると、その強さや場所、時間で様々な症状が出ます。 冬の静電気のようにピリッとした痛みで済むこともあれば、 命に関わる深刻な事態に陥ることもあります。
流れる電気の量によって、体に次のような影響が出るとされています。
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電流の量 |
体への影響の目安 |
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1mA |
ピリッとした痛みを感じる程度です |
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5mA |
我慢できないほどの痛みを感じます |
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20mA |
筋肉がけいれんし、自分で動けなくなります |
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50mA |
短い時間でも命に危険がおよぶことがあります |
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100mA |
命にかかわる致命的な状態になることがあります |
具体的な症状としては、以下のようなものがあげられます。
- やけど(熱傷) 電気が体を通る時に熱が発生し、皮膚や体の内部にやけどができます。 注意したいのは、皮膚のやけどが軽く見えても油断できない点です。 体の奥深くにある筋肉や内臓が、大きなダメージを受けていることがあります。 見た目の傷の大きさと、体の中の損傷の重さは必ずしも一致しません。
- 筋肉や神経の症状 強い痛みのほか、筋肉の細胞が壊れてしまうこともあります。 また、意識を失ったり、手足がしびれたりすることもあります。
- 心臓への影響 心臓に電気が流れると、「心室細動」という危険な不整脈や、 心停止を引き起こす可能性があり、命に直接関わります。
- 体内に埋め込んだ機器への影響 心臓のペースメーカーなどを入れている場合、特に注意が必要です。 最近の機器は感電対策がされていますが、落雷など強い電気では、 機器が正しく動かなくなることがあります。 実際に雷に打たれた後、1か月後にペースメーカーの重大な損傷が、 見つかったという報告もあります。
感電の症状はすぐにあらわれるとは限りません。 もし感電したら、症状が軽くても念のため医療機関を受診しましょう。
感電の検査・診断
感電した時、皮膚のやけどが小さくても油断は禁物です。 電気は体の「中」を通り抜けるため、見た目ではわからない、 深刻なダメージを負っている可能性があるからです。 症状が軽くても、必ず医療機関で検査を受けましょう。
診察ではまず、感電した時の状況を詳しくお伺いします。 どのような電気に触れたか、体のどこを電気が通ったかなど、 その情報が、隠れたダメージを見つけるための重要なヒントになります。 その上で、必要に応じて次のような検査を行います。
- 心電図検査 心臓の動きをチェックする大切な検査です。 電気のショックで心臓のリズムが乱れることがあります。 特に「心室細動」という命に関わる不整脈が起きていないか、 心臓が発する電気信号の波形を記録して確認します。
- 血液検査・尿検査 筋肉や腎臓の状態を確認します。 感電で筋肉の細胞が壊れると、その成分が血液に漏れ出します。 これが腎臓に負担をかけ、働きを悪くさせることがあります。 血液や尿を調べることで、これらの臓器のダメージを調べます。
- 画像検査(CT検査など) 体の内部の「やけど」を確認します。 電気によるやけどは、体の奥深くでより深刻なことがあります。 CT検査などで体の断面を撮影し、外から見えない筋肉や、 内臓の損傷がないかを詳しくチェックします。
心臓ペースメーカーなどの医療機器を体内に埋め込んでいる場合は、 感電で故障するおそれがあるため、より専門的な確認が必要です。 これらの検査で体の状態を正確に把握し、治療方針を決めていきます。
感電の治療
もし感電してしまったら、治療はどうするのでしょうか。 大切なのは、見た目の傷が小さくても油断しないことです。 電気は体の「中」を通るため、見えない部分が傷ついているかもしれません。 自己判断はせず、必ず医療機関で診てもらいましょう。
病院では、感電によって起こる様々な問題に対応します。
- やけど(熱傷)の処置 電気が体を通る時に熱に変わり、やけどができます。 特に、電気が体に入った所と抜けた所を丁寧に治療します。
- 心臓の検査と治療 心臓は電気信号で動くため、感電でリズムが乱れることがあります。 命に関わる不整脈が起きていないか、心電図で常に見守ります。
- 筋肉や腎臓を守る治療 強い電気で筋肉の細胞が壊れると、その中身が血液に漏れ出します。 これが腎臓に大きな負担をかけるため、たくさんの点滴を行います。 点滴で血液中の不要なものを、おしっことして体の外に出すのです。
- 埋め込み型医療機器の確認 心臓ペースメーカーなどを入れている方は、特に注意が必要です。 最近の機器は感電対策がされていますが、雷のような強い電気では、 故障する可能性が報告されています。 感電直後に問題がなくても、1か月後に重大な故障が見つかった例もあり、 機器が正常に動くか、念入りな確認がとても大切になります。





