基底細胞がん

鏡を見るたび気になる、その「ほくろ」や「シミ」。もしかしたら、それは最もよく見られる皮膚がん、「基底細胞がん」のサインかもしれません。初期の見た目がほくろと似ているため、気づかずに見過ごしてしまうケースも少なくありません。

主な原因は長年浴び続けた紫外線で、男性は女性に比べて約1.5倍も発症しやすいとの報告もあります。転移はまれですが、放置すると周囲の皮膚や骨までもゆっくりと破壊していく性質を持っています。

この記事では、基底細胞がんの症状や見分け方、原因から治療法までを詳しく解説します。気になるできものがある方は、ご自身の状態と見比べながら、正しい知識を身につけて早期発見に繋げましょう。

基底細胞がんの概要

基底細胞がんは皮膚にできるがんの一種で、最もよく見られる皮膚がんです。

私たちの皮膚は、外側から「表皮(ひょうひ)」、「真皮(しんぴ)」、「皮下組織」の3層構造になっています。 基底細胞がんは、表皮の一番深い層や、毛をつくる組織の「毛包(もうほう)」から発生します。 そのため、毛の生える場所なら、体のどこにでもできる可能性があります。

このがんは、他の場所にうつる「転移」はめったにありません。 しかし治療せずに放置すると、周囲の皮膚や筋肉、骨までゆっくりと壊していきます。

【基底細胞がんの主な特徴】

  • 発生しやすい場所 日光を浴びやすい顔(特に鼻や目もと)に多いです。 頭皮や首、手足にも発生することがあります。
  • 見た目 初期は「ほくろ」のような黒い点で、少し盛り上がっています。 ゆっくりと大きくなり、中心部がじゅくじゅくすることもあります。

ある研究では、男性は女性に比べて約1.5倍、基底細胞がんになりやすいと報告されています。 長年、紫外線を多く浴びた方や、喫煙歴のある方も注意が必要です。 気になるできものや、治りにくい傷があれば、早めに専門医へ相談しましょう。

基底細胞がんの種類

基底細胞がんは、見た目や性質でいくつかの種類(病型)に分かれます。 どの種類かによって治療法や再発のしやすさが変わってきます。 そのため、ご自身の状態を正しく知ることが、治療の第一歩となります。

主に、次の3つのタイプに分けられます。

種類(病型)

見た目の特徴

性質

結節・潰瘍型

・黒っぽく、ほくろのように盛り上がります<br>・ゆっくり大きくなり、中心がへこんで傷(潰瘍)になることがあります

・基底細胞がんの中で最も多く見られるタイプです。

表在型

・うすい赤色や茶色のシミのような見た目です<br>・表面は平らで、少しカサカサしていることもあります

・主に体の幹(お腹や背中)や手足にできやすいタイプです。

斑状強皮症型

・光沢のある肌色から、うすい赤色です<br>・皮膚が硬く盛り上がり、傷あとのように見えることがあります

・皮膚の深いところへ広がりやすい性質があります。<br>・正常な皮膚との境目が分かりにくく、再発しやすいです。

これらの種類は、再発のリスクに応じて分類されます。 特に斑状強皮症型は、がんの広がりが分かりにくいため「高リスク」です。 高リスクなタイプは、より慎重な治療計画が必要になります。

がんの種類を正確に見分けることは、適切な治療を選ぶうえで非常に重要です。 通常は皮膚の一部を採る検査を行いますが、体を傷つけにくい方法も研究されています。 例えば超音波(エコー)検査で、がんの形や深さを調べます。 これにより、高リスクなタイプかどうかを判断する研究が進んでいます。 また、陰嚢(いんのう)のような、日光に当たらない場所にできる非常にまれなケースも報告されています。

基底細胞がんの原因

基底細胞がんの最も大きな原因は、長年浴び続けた紫外線です。 太陽の光に含まれる紫外線は、皮膚細胞の設計図(DNA)を傷つけます。 若い頃は傷を直す力が強いですが、ダメージが蓄積すると直しきれなくなります。 その結果、細胞が異常に増え始め、がんになると考えられています。

紫外線以外にも、いくつかの要因が知られています。

  • 過去の放射線治療 別の病気の治療で放射線を浴びた部位から発生することがあります。
  • やけどやケガのあと(瘢痕) 長期間治らない傷や、古い傷跡からがん化することがあります。
  • ヒ素などの化学物質 過去にヒ素にさらされた経験なども原因となりえます。

また、誰にでも同じように発症するわけではありません。 発症のしやすさには個人差があり、要因が重なるとリスクは高まります。 ある研究では、以下のような方が注意すべきと報告されています。

リスクを高める要因

具体的な内容

紫外線の影響

・生涯で合計2500時間以上の日光を浴びた方は、<br> リスクが約3.6倍になるとの報告があります。

年齢・性別

・年齢を重ねるほどリスクは高まります。<br>・男性は女性より約1.5倍発症しやすい傾向です。

肌のタイプ

・肌の色が薄い方は紫外線の影響を受けやすく、<br> より注意が必要です。

生活習慣

・喫煙習慣のある方は、ない方と比べて<br> リスクが約1.2倍になるといわれています。

過去の病気や治療

・臓器移植などで免疫の働きを抑える治療を受けた方は、<br> 皮膚がんの発症率が高まることが知られています。

特に、病気の治療などで免疫力が低下している状態は注意が必要です。 例えば心臓移植を受けた患者さんでは皮膚がんの発症率が16%にのぼり、そのうち約半数が基底細胞がんであったという報告もあります。 これらの原因は一つではなく、複数が重なって発症につながると考えられています。

基底細胞がんの症状

基底細胞がんの症状は、ほくろやシミと似ていて見過ごされがちです。 しかし、注意深く観察すると、見分けるためのサインが見つかります。 気になるできものがあれば、以下の特徴と比べてみてください。

はじめは、皮膚にわずかに盛り上がった小さな点が現れることが多いです。 色は黒色や黒褐色で、表面がつやつやと光沢を帯びるのが特徴です。 この小さな点が複数集まり、ゆっくりと円形や楕円形に広がります。

時間が経つと、中心部がくぼんで傷のようになります(潰瘍)。 この傷は、じゅくじゅくして簡単に出血したり、かさぶたができたりします。 「治りにくい傷」や「出血を繰り返すほくろ」は注意が必要です。

基底細胞がんは、見た目の特徴によって主に3つの種類に分けられます。

種類(病型)

主な見た目の特徴

結節・潰瘍型

・最も一般的なタイプです。<br>・黒っぽく、ほくろのように盛り上がります。<br>・進行すると中央がくぼんで潰瘍になりやすいです。

表在型

・赤みをおびたシミのように、平べったく広がります。<br>・主に体や手足にできることが多いです。

斑状強皮症型

・肌色や淡い赤色で、傷あとのように見えます。<br>・少し硬く盛り上がり、正常な皮膚との境目が分かりにくいです。

顔や首など、日光を浴びやすい場所にできることが多いがんです。 しかし、体のどこにでも発生する可能性があります。 実際に、日光にほとんど当たらない陰嚢(いんのう)にできる非常にまれなケースも報告されています。 ある研究レビューによれば、こうした珍しいケースの患者さんの中央年齢は65.9歳でした。 気になる症状があれば、自己判断せず早めに皮膚科へ相談しましょう。

基底細胞がんの検査・診断

皮膚に気になるできものが見つかった場合、それが何かを正確に突き止めます。 自己判断はせず、専門医による適切な検査を受けることが大切です。 検査は、患者さんの負担が少ないものから段階的に行います。

1. ダーモスコピー検査 はじめに、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡で皮膚を詳しく観察します。 ライトを当てながら、ほくろやできものを拡大して見る検査です。 皮膚を傷つけることなく、痛みもありません。 この検査で、がんの可能性があるか、良性のできものかを判断します。

2. 皮膚生検(病理検査) ダーモスコピー検査でがんが疑われる場合、診断を確定させる検査です。 「パンチ生検」とも呼ばれ、がんの診断で最も確実な方法とされます。 部分的に麻酔をして、病変の組織をわずかに切り取ります。 その組織を顕微鏡で調べ、がん細胞の有無を最終的に確定します。

3. 超音波(エコー)検査 皮膚生検は体を少し傷つけますが、そうでない検査方法も進歩しています。 超音波(エコー)検査は、がんの性質を詳しく調べるのに役立ちます。 がんの深さや形、血の流れなどを観察し、再発しやすい高リスクなタイプか推測します。 体を傷つけずに多くの情報を得るため、超音波の活用が研究されています。

基底細胞がんは、他の場所にうつる「転移」は非常にまれです。 そのため、CTのような全身を調べる検査は通常行いません。

基底細胞がんの治療

基底細胞がんの治療では、がんを完全に取り除くことが最も大切です。 同時に、見た目や体の機能をできるだけ損なわないように配慮します。 治療法は、がんの大きさや場所、種類、患者さんの体の状態を考えます。 お医者さんとよく相談しながら、最適な方法を決めていきましょう。

手術による治療

がんを取り除くために、手術が最も一般的に行われる治療法です。

  • 外科的切除術 がんの部分だけでなく、周りの正常な皮膚も少し広めに切り取ります。 目に見えないがん細胞が、周りに隠れている可能性があるためです。 顔など見た目が大切な場所では、傷あとが目立たないよう工夫します。
  • モース顕微鏡手術 手術中に、切り取った部分をその場で顕微鏡で調べる方法です。 がん細胞がなくなるまで、少しずつ丁寧に切除を進めていきます。 健康な皮膚を最大限に残せるため、再発のリスクを抑えられます。 特に顔や指、そして非常にまれですが陰嚢(いんのう)のような、 皮膚をできるだけ残したい場所で有効性が報告されています。

手術以外の治療法

手術が難しい場合や、体の状態によっては他の治療法を選びます。

治療法

内容

放射線治療

・特殊な光線(放射線)を当てて、がん細胞を壊す方法です。<br>・手術が難しい場所にあるがんや、ご高齢の方などに行われます。

薬物療法

・塗り薬や飲み薬、点滴を使う治療法です。<br>・進行して手術ができない場合や、転移した場合に検討します。<br>・最近では、ある種の糖尿病治療薬が、<br> 基底細胞がんのリスクをわずかに下げる可能性も研究されています。

どの治療法を選ぶかは、その後の経過に大きく影響します。 わからないことや不安な点は、遠慮なくお医者さんに質問してください。