変形性足関節症

歩き始めに足首が痛む、長時間歩くと悪化するなどの症状に悩んでいませんか。その痛みを放置すると、膝や腰など他の部位にまで負担が広がる可能性があります。

この記事では、変形性足関節症の主な原因や進行度別の症状、治療法まで網羅的に解説します。日本人では過去のケガが原因となる「二次性」が大半を占め、初診時の足首の傾きが将来の変形進行に関わることも研究で報告されています。

ご自身の状態がどのタイプに当てはまるかを理解し、保存療法から手術までどのような選択肢があるかを知ることで、今後の治療に向けた具体的な一歩が見えてくるはずです。

変形性足関節症の概要

変形性足関節症とは、足首の関節でクッションの役割を担う軟骨がすり減り、痛みや変形が生じていく病気です。

足首の関節は、すねの骨(脛骨:けいこつ)と、その下にある足の骨(距骨:きょこつ)で構成されています。健康な状態では、これらの骨の表面は弾力のある軟骨で覆われており、衝撃を吸収しながらスムーズな動きを支えています。

しかし、加齢や過去のケガなどをきっかけにこの軟骨がすり減ると、骨同士が直接こすれ合うようになります。その結果、関節の中では次のような変化が起こります。

・関節内の炎症:骨がぶつかる刺激で炎症が起き、痛みや腫れを引き起こす。

・骨棘(こつきょく)の形成:関節を安定させようと、骨のフチにトゲのような突起ができる。

病気が進行すると、すねの骨(脛骨)そのものが変形することもあります。特に、足首が内側に傾いている方では体重が不均等にかかり続けるため、変形が進行しやすい傾向があります。最近の研究では、初診時の足首の傾きが大きいほど、すねの骨の変形も進行しやすいことが報告されています。※

変形性足関節症は、股関節や膝関節の病気に比べると発症頻度は低いものの、放置は禁物です。足首の痛みをかばうことで歩き方が不自然になり、膝や腰にまで負担が及んで新たな痛みの原因となることもあります。

変形性足関節症の種類

変形性足関節症は、発症の原因によって「二次性」と「一次性」の2つに分類されます。ご自身の足首の痛みがどちらのタイプに近いかを知ることは、適切な治療への第一歩です。

二次性変形性足関節症

「二次性」は、過去のケガや病気など、はっきりとした原因があって発症するタイプです。

特に、足首の骨折や重度の捻挫といったケガがきっかけになるケースが最も多くを占めます。関節リウマチや、細菌感染による化膿性関節炎(かのうせいかんせつえん)などが原因となることもあります。

変形が進むと、以前は足首の動きを犠牲にする「関節固定術」という手術が主流でした。しかし、現在では関節の機能をできるだけ残す「人工距骨(きょこつ)置換術」という選択肢があります。

さらに、この人工距骨と人工足関節の部品を組み合わせる「コンバインドTAA」という術式も登場しており、以前は追加の手術が必要だった複雑な変形にも対応しやすくなっています。※

一次性変形性足関節症

一方、「一次性」は、はっきりとしたケガや病気の心当たりがないにもかかわらず、主に加齢が要因となって少しずつ軟骨がすり減っていくタイプを指します。

慢性的な足首の不安定さを抱えている方に多く見られ、特に女性や、正座をする習慣があった方に多い傾向があると考えられています。多くの場合、片足だけでなく両足の関節に症状が現れるのも特徴です。

それぞれの違いについて、下表に整理します。

種類 | 二次性変形性足関節症 | 一次性変形性足関節症

主な原因 | ・足首の骨折、脱臼、重度の捻挫 ・関節リウマチなどの炎症性疾患 ・化膿性関節炎などの感染症 | ・明確な原因は不明 ・加齢や体質、慢性的な不安定性が関与

特徴 | ・原因がはっきりしている ・片足に起こることが多い ・ケガをきっかけに比較的若い年代でも発症しうる | ・はっきりした原因がないまま徐々に進行 ・両足に起こることが多い ・女性に多く、正座などの生活習慣も関連

変形性足関節症の原因

変形性足関節症の引き金は、過去のケガに起因する「二次性」と、はっきりとした原因がわからない「一次性」の2つに大別されます。日本人では、その大半が二次性によるものと考えられています。

二次性の原因:過去のケガや病気が引き金に

足関節の構造に直接的なダメージが加わることが原因となるタイプです。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

・足首の骨折・脱臼

骨折がわずかにズレたまま治ると、関節の噛み合わせに歪みが生じます。その結果、体重が軟骨の一部分に集中してかかり、すり減りが急激に進行することがあります。

・重度の捻挫(靭帯損傷)

足首を支える靭帯が傷つくと、関節がグラグラの状態(不安定性)になります。歩くたびに関節内で骨が不自然に動くため、軟骨同士がこすれ合い、徐々に傷ついていきます。

・距骨壊死(きょこつえし)

足首の土台をなす「距骨」という骨への血流が悪くなり、骨組織が死んでしまう病気です。骨が潰れることで関節の形が崩れ、二次的に軟骨の摩耗を引き起こします。※

・関節リウマチや感染症

関節リウマチによる慢性的な炎症や、細菌感染による化膿性関節炎(かのうせいかんせつえん)は、軟骨そのものを破壊し、変形の原因となります。

これらの原因によって足関節が内側に傾く「内反変形」が起こると、体重が関節の内側に偏ってかかり続けます。この不均等な負荷が、すねの骨(脛骨)をさらに変形させ、悪循環に陥るのです。

実際に、初診の時点で足首の土台となる骨(距骨)の傾きが大きいほど、その後のすねの骨(脛骨)の変形も進行しやすいことが研究で報告されています。※

一次性の原因:明らかなきっかけがないまま進行

特に大きなケガの経験がないにもかかわらず、主に加齢に伴って発症するタイプです。長年の負担の蓄積や体質が関係していると考えられており、両足に症状が現れることも少なくありません。慢性的な足関節の不安定性を抱えている方や、正座をする習慣があった女性に多い傾向があります。

変形性足関節症の症状

変形性足関節症の症状は、初期の「動かし始めの痛み」から、病状が進行するにつれて「じっとしていても痛む」状態へと段階的に変化します。

ご自身の足首の状態がどの段階にあるか、確認してみましょう。

【初期の症状】 軟骨がすり減り始めるサイン

初期の段階では、主に体を動かしたときに関連して症状が現れます。

・歩き始めや立ち上がりで痛む

しばらく動かさなかったことで固くなった関節が、急に動き出すことで刺激され、痛みやこわばりを感じます。

・歩いていると痛みが和らぐ

歩くことで関節の潤滑油である「関節液」が循環し、一時的に動きが滑らかになるためです。

・長時間歩くと再び痛む

しかし、軟骨のクッション機能は低下しているため、長時間の歩行や階段昇降などで衝撃を吸収しきれず、再び痛みが出てきます。

【進行期の症状】 骨の変形が進むと現れるサイン

軟骨のすり減りがさらに進むと、よりはっきりとした症状が現れるようになります。

・じっとしていても痛む(安静時痛)

関節内の炎症が慢性化し、何もしていない夜間や安静時にもズキズキと痛むことがあります。

・足首が腫れて熱を持つ

炎症が強くなっているサインです。

・足首の動きが悪くなる

骨の変形(骨棘:こつきょく)や関節の固まりによって、足首がスムーズに動かなくなります。正座や和式トイレでのしゃがみ込みが困難になるのはこのためです。

・歩くと「ゴリゴリ」と音がする(礫音:れきおん)

骨同士が直接こすれたり、はがれた軟骨の破片が関節内を動いたりする音です。

・足首の見た目が変わる

関節が内側や外側に傾き、変形が目で見てわかるようになります。

また、痛みをかばって歩き続けることで、足首を動かす筋肉は徐々に衰えていきます。特に、つま先を上げる動き(背屈)や、地面を蹴り出す動き(底屈)の筋力が、健康な足と比べて著しく低下することが研究で報告されています※。

この筋力低下が足首の不安定性をさらに助長し、軟骨への負担を増やして痛みを悪化させるという「負のスパイラル」に陥ることも少なくありません。

変形性足関節症の検査・診断

変形性足関節症の診断は、患者さんからのお話と身体診察で痛みの原因を探り、最終的にはX線(レントゲン)検査の画像をもとに確定します。

まずは問診で、いつから、どんな時に痛むのか、過去のケガの経験などを詳しくお聞きします。これは、原因がケガによる「二次性」なのか、はっきりしない「一次性」なのかを見極めるための重要な手がかりです。

次に、医師が足首を直接触れ、腫れや熱っぽさ、外見上の変形、関節のグラつき(不安定性)などを丁寧に診察します。

診断の要となるのが、体重をかけた状態(立位)でのX線検査です。

あえて負荷をかけた状態で撮影することで、歩行時など日常生活で足首にかかる本当の負担をあぶり出し、軟骨のすり減り具合を正確に評価できます。

X線検査で確認する主な変化

X線検査では、主に以下の3つの変化を確認します。

・関節裂隙(かんせつれつげき)の狭小化

軟骨がすり減ることで、骨と骨の間のすき間が狭くなります。

・骨棘(こつきょく)の形成

関節を無理に安定させようとして、骨のフチにトゲのような突起ができます。

・骨硬化像(こつこうかぞう)

特に負担が集中する部分の骨が、圧力に耐えようとして硬くなり、レントゲンで白く濃く映る状態です。

特に、足首が内側に傾く「内反変形」を伴う場合、初診時のレントゲン写真で足首の土台となる骨(距骨)の傾きが大きいほど、将来的にすねの骨(脛骨)の変形も進行しやすいことが研究でわかっています※。

このため、最初の検査で変形の傾向を正確に把握することは、今後の進行予測や治療計画を立てるうえで非常に重要です。骨の変形をより立体的に詳しく調べる必要がある場合には、CT検査を追加することもあります。

これらのX線所見から、病気の進行度(病期)を総合的に判断し、治療方針を決定します。病期は、軟骨のすり減り具合によって主に4つの段階に分類されます。

病期 | 関節の状態の目安

Ⅰ期 | 骨のトゲ(骨棘)が見られるものの、軟骨のすり減りはまだごく軽度な段階

Ⅱ期 | 関節のすき間が部分的に狭くなり、軟骨の摩耗が進み始めた段階

Ⅲ期 | 関節のすき間がさらに狭まり、骨同士が部分的にこすれ合っている段階

Ⅳ期 | 関節全体のすき間がほぼなくなり、広範囲で骨同士がぶつかっている最も進行した段階

変形性足関節症の治療

変形性足関節症の治療は、病気の進行度や患者さんのライフスタイルを丁寧に見極め、まず手術以外の「保存療法」から始めるのが基本です。痛みのコントロールが難しい場合や、変形が進行している際には「手術療法」が検討されます。

まずは痛みを和らげる「保存療法」から

初期から中期の変形性足関節症では、痛みを和らげ、病気の進行を緩やかにすることを目標に、以下のような治療を組み合わせて行います。

・装具・インソール(足底挿板)療法

足首のグラつき(不安定性)は、軟骨への負担を増大させる大きな原因です。足首を安定させる装具や、足裏のアーチを支えて体重のかかり方を補正するインソールを用いることで、歩行時の負担を直接的に減らし、痛みを和らげます。

・薬物療法

痛みが強い場合には、炎症を抑えるための飲み薬や貼り薬を使用します。また、関節の潤滑油の役割を担うヒアルロン酸を関節内に直接注射することもあります。

・リハビリテーション

痛みをかばって歩くことで衰えがちな足首周りの筋肉を鍛え、関節を支える力を高めます。また、固くなった関節の動きを滑らかにするためのストレッチも重要です。筋力をつけることで足首の安定性が増し、痛みの悪化を防ぐ「負のスパイラル」を断ち切る効果が期待できます。

進行した変形に対する「手術療法」

保存療法を続けても日常生活に支障をきたすほどの痛みが続く場合や、関節の変形が著しい場合には、手術が選択肢となります。手術法は、軟骨の状態や変形の程度によってさまざまです。

代表的な手術法を下表に整理します。

手術法 | 特徴

骨切り術(こつきりじゅつ) | ・すねの骨(脛骨)などを切って向きを変え、体重がかかる位置を正常な軟骨が残っている部分へ移動させる ・自分の関節を残せるのが最大の利点

関節固定術 | ・傷んだ軟骨をすべて取り除き、すねの骨と足の骨を金属で固定する ・痛みを取り除く効果は高いが、足首の上下の動きは失われる

人工足関節置換術(TAA) | ・傷んだ関節の表面を削り、金属やポリエチレンでできた人工の関節に置き換える ・関節の動きを温存できるのが利点

近年、これらの手術法に加えて、治療の選択肢はさらに広がっています。

特に、日本で開発された「人工距骨(じんこうきょこつ)」を用いた手術は、従来であれば関節固定術しか選べなかったような進行した症例に対しても、関節の機能を残せる可能性を示しています。

さらに、この人工距骨と人工足関節の部品を組み合わせる「コンバインドTAA」という新しい術式も登場しました。この方法により、以前は追加の手術が必要だった複雑な変形にも一度の手術で対応しやすくなっています※。

手術を検討する際は、関節の状態だけでなく、患者さんご自身の全身状態も重要な判断材料になります。

例えば、身体が虚弱な状態にある「フレイル」の方は、そうでない方と比べて人工足関節置換術後の入院期間が長くなる傾向(平均2.4日 vs 1.6日)があり、退院後にリハビリ施設などへ転院する割合も高くなることが報告されています※。

また、どの手術法を選んだとしても、術後は足首を動かす筋力、特に地面を蹴り出す力(底屈)が低下しがちです※。失われた機能を取り戻し、快適な歩行を再獲得するためには、根気強いリハビリテーションが不可欠です。

ご自身の症状や生活に最も合った治療法を見つけるために、担当の医師と十分に話し合いましょう。