無汗症
「暑いのに汗をかかない」「体温が上がりやすい」と感じていませんか?体温調節に重要な汗の機能が損なわれる無汗症は、熱中症のリスクを高める可能性もあります。
無汗症には「先天性」と、病気や医療処置などが原因で起こる「後天性」があります。特に、まれな無痛無汗症(CIPA)では、患者の半数近くに角膜反射の消失といった特徴的な眼症状が見られます。本記事では、無汗症の多様な種類、原因、症状、検査・診断方法を解説します。
ご自身の状態への理解を深めることで、適切な受診や対処へとつながる一歩を踏み出すきっかけとなるでしょう。
無汗症の概要
無汗症とは、発汗機能が低下したり、完全に失われたりする状態を指します。人間の体は、汗をかくことで体温を調節しており、特に暑い環境や運動時には、汗が蒸発する際の気化熱で体を冷やす重要な役割を担っています。この体温調節機能が損なわれると、体内に熱がこもりやすくなり、熱中症のリスクが高まるため注意が必要です。
無汗症には、生まれつき汗腺の働きが低い「先天性」と、病気や薬剤などが原因で後から発症する「後天性」があります。原因はさまざまですが、いずれの場合も体温調節のメカニズムに影響を与え、日常生活に支障をきたすことがあります。
まれな先天性の無汗症として、「無痛無汗症(CIPA:Congenital Insensitivity to Pain with Anhidrosis)」があります。これは、神経栄養性チロシンキナーゼ受容体1遺伝子(NTRK1遺伝子)の機能喪失変異が原因で起こる、まれな遺伝子疾患です※。CIPAの患者さんには、痛みを感じにくいことに加え、汗をかくことができないという特徴があります※。
特にCIPAでは、眼の症状が比較的多く見られることが報告されています※。具体的には、以下の眼症状が確認されています。
・角膜反射の消失: 眼に触れてもまばたきしない状態です。患者さんの半数近くに認められています※。
・角膜潰瘍: 角膜の表面に傷がつき、えぐれた状態です※。
・角膜混濁: 角膜が白く濁る状態です※。
これらの眼症状は、角膜の感覚が鈍いこと、涙の分泌が少ないこと、あるいは不注意による自己損傷などが複合的に関与して起こると考えられています※。CIPAの患者さんにとって、こうした眼症状を早期に発見することは重要です。早期発見により、適切な治療介入が可能となり、さらなる合併症の予防や患者さんの生活の質の改善につながると考えられます※。治療としては、角膜を保護するための局所潤滑剤(点眼薬など)の使用や、感染が疑われる場合の抗生物質、重症例では外側眼瞼縫合(まぶたを部分的に縫い合わせる手術)などが管理方法として用いられることがあります※。
もし、汗をかきにくい、体温が上がりやすいといった症状に気づいたら、体のサインを見過ごさず、早めに医療機関を受診しましょう。適切な診断と治療を受けることが、快適な日常生活を送るための第一歩となります。
無汗症の種類
無汗症は、発症の原因や時期によって大きく2つの種類に分けられます。生まれつき汗をかけない「先天性無汗症」と、成長してから何らかの原因で汗をかけなくなる「後天性無汗症」です。
先天性無汗症:無痛無汗症(CIPA)に注目
先天性無汗症の中には、生まれつき痛みを感じにくく、発汗機能も低下している「無痛無汗症(CIPA:Congenital Insensitivity to Pain with Anhidrosis)」という、非常にまれな遺伝性疾患があります。これは、神経栄養性チロシンキナーゼ受容体1遺伝子(NTRK1遺伝子)の機能が失われることによって起こります※。
CIPAの患者さんには、痛みを感じにくいことだけでなく、特徴的な眼症状が比較的多く見られることが報告されています※。これらの眼症状は、角膜の感覚が鈍いことや、涙の分泌が少ないこと、あるいは不注意による自己損傷などが複合的に関与して起こると考えられています※。
CIPAでよく見られる眼症状は以下のとおりです※。
症状名 | 具体的な状態 | 割合(患者の約〇人に1人)
角膜反射の消失 | 眼に触れてもまばたきをしない状態を指します。痛みを感じにくい(角膜知覚の欠如)ために起こると考えられ、患者さんの半数近くに見られます。 | 2人に1人
角膜潰瘍 | 角膜(黒目の表面)の表面に傷がつき、えぐれた状態です。痛みを感じにくいため、無意識のうちに目を傷つけてしまうことや、涙液分泌の減少が影響している可能性があります。 | 3人に1人
角膜混濁 | 角膜が白く濁る状態です。角膜潰瘍が進行したり、慢性的な炎症が続いたりすることで起こり得ます。 | 4人に1人
これらの眼症状を早期に発見することは、CIPAの臨床診断に役立つだけでなく、適切な治療介入を通じて患者さんの状態を改善し、さらなる合併症を予防することにつながると考えられます※。治療としては、角膜を保護するための点眼薬(局所潤滑剤)や、感染が疑われる場合の抗生物質、重症な場合には、まぶたを部分的に縫い合わせる手術(外側眼瞼縫合)が管理方法として用いられることがあります※。
後天性無汗症
一方、後天性無汗症は、生まれつきではなく、成長してから何らかの原因で発汗機能が低下する状態です。別の病気や服用している薬の影響、あるいは原因が特定できない特発性のものなど、多岐にわたります。後天性無汗症については、後続の見出しで詳細を説明します。
ご自身の無汗症がどの種類に当てはまるのかを正しく理解することは、適切な診断と効果的な治療方針を決める上で非常に重要です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、専門医に相談しましょう。
無汗症の原因
無汗症は、汗をかく機能が損なわれることで体温調節がうまくできなくなる状態を指します。その原因は大きく分けて、生まれつきの体質によるものと、成長後に別の病気や治療の影響で発症するものの2つがあります。ご自身で原因を特定するのは難しいため、気になる場合は専門家への相談が大切です。
無汗症の主な原因は、以下のとおりです。
・生まれつきのもの(先天性):遺伝的な要因により、生まれつき汗腺の数が少なかったり、機能が不十分であったりするケースです。
・後天的に発症するもの:病気や薬剤、あるいは特定の医療行為などが原因で、大人になってから汗をかきにくくなるケースです。
汗腺自体に問題がなくても、その機能が低下するケースもあります。後天性の無汗症を引き起こす原因は多岐にわたり、主に以下のようなものが挙げられます。
・自律神経の異常: 汗の分泌は、自律神経の中でも特に交感神経によってコントロールされています。この交感神経に何らかの異常が生じると、汗腺への指令がうまく伝わらず、発汗量が減少することが考えられます。神経系の病気や損傷が原因となる場合があります。
・全身性の病気: 糖尿病、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、アミロイドーシスといった全身の病気が、汗腺や神経に影響を及ぼし、発汗機能の低下を招くことがあります。
・薬剤の副作用: 特定の薬には、副作用として発汗を抑える作用を持つものがあります。例えば、抗コリン作用を持つ薬剤(一部の抗ヒスタミン薬や抗うつ薬など)は、汗腺の活動を抑制する可能性があります。
・皮膚の病気: 広範囲にわたる皮膚の炎症、熱傷などの損傷、または魚鱗癬のように皮膚が厚くなる病気などによって、汗腺が物理的に詰まったり、その機能が損なわれたりすることがあります。
・特定の医療処置: 神経に影響を及ぼす特定の医療処置が、無汗症を引き起こすケースもあります。特に、以下のような処置後に顔面無汗症などの症状が見られることがあります。
・ホルネル症候群の合併: ホルネル症候群とは、自律神経の一つである交感神経の障害によって、まぶたが下がる(眼瞼下垂)、瞳孔が小さくなる(縮瞳)、そして顔面の一部に汗をかかなくなる(顔面無汗症)といった症状が現れる状態です。このホルネル症候群が、特定の医療処置の合併症として発生し、無汗症の原因となることがあります。
・例えば、扁桃(へんとう)摘出術の後に、まれにホルネル症候群が報告されています。これは、扁桃の周囲には顔面の発汗を支配する交感神経が走行しているため、手術による神経への影響が原因と考えられています※。具体的には、冷鋼法や双極性電気メスを用いた止血術が関連するとされており、結紮や縫合といった従来の方法と組み合わせることでリスクを軽減できる可能性が指摘されています※。近年、手術技術の進歩やホルネル症候群に対する認識が高まるにつれて、このような報告が増加傾向にあるといえるでしょう※。
・また、肩や腕の手術の際に行われる鎖骨間ブロックという局所麻酔の処置でも、ホルネル症候群が誘発され、顔面無汗症を伴うことがあります。鎖骨間ブロックとは、首の付け根にある腕神経叢(C5-T1という神経の束)に局所麻酔薬を注入し、上肢の感覚や運動を一時的に麻痺させる麻酔方法です※。通常、ブピバカインやロピバカインといった長時間作用型の局所麻酔薬を15~25ml使用し、肩や上腕近位部の手術に有効です※。この際、麻酔薬が周囲の頸神経叢へ広がることで、一時的に交感神経がブロックされ、ホルネル症候群の症状が現れる可能性があります。超音波ガイド下で行うことで、針の誤挿入や神経損傷などのリスクを減らせると考えられています※。
・さらに、首の神経の痛みを和らげるために行われるCTガイド下C7神経根ブロックという処置の後にも、一時的なホルネル症候群と顔面無汗症が見られた症例が報告されています※。
このように、無汗症の原因は多岐にわたり、患者さんごとに異なります。原因を正確に突き止めることが、適切な治療へつながる第一歩です。汗をかきにくい、体温調節が難しいなど、気になる症状がある場合は、ご自身で判断せず、早めに医療機関を受診し、専門医に相談してください。
無汗症の症状
無汗症の最も直接的な症状は、「汗をかかない」、あるいは「汗をかく量が著しく少ない」ことです。私たちの体は、汗をかくことで体温を一定に保つ重要な役割を担っています。汗が蒸発する際に熱を奪う「気化熱」によって体を冷やし、体温が上がりすぎるのを防いでいるため、この機能が失われると体にさまざまな不調が生じます。
全身性無汗症:熱中症の危険性
全身にわたって汗をかかない「全身性無汗症」の場合、体温を適切に調節する機能が大きく損なわれることになります。特に暑い環境下や運動時には、体内に熱がこもりやすく、体温が異常に上昇する「うつ熱」と呼ばれる状態になりがちです。
うつ熱は、軽度であればめまい、吐き気、頭痛、倦怠感といった症状で済みますが、重症化すると熱中症を引き起こし、意識障害や臓器へのダメージにつながる危険性があります。そのため、少しでも体温が上がりやすいと感じたら、安易に自己判断せず、専門医に相談することが重要です。
部分性無汗症:特定の部位で汗をかかない
全身ではなく、体の特定の部分だけ汗をかかない状態を「部分性無汗症」といいます。例えば、顔面の一部に汗をかかなくなる「顔面無汗症」は、特定の医療処置の合併症として現れることがあります。これは、汗の分泌をコントロールする「自律神経」の機能に一時的な異常が生じるためと考えられています。
特に、以下のようなケースで顔面無汗症が報告されています。
・ホルネル症候群に伴う顔面無汗症:
ホルネル症候群とは、自律神経の一つである交感神経の障害によって起こる症状の総称です。具体的には、まぶたが下がる(眼瞼下垂)、瞳孔が小さくなる(縮瞳)、そして顔面の一部に汗をかかなくなる(顔面無汗症)という3つの特徴的な症状が現れます。特定の医療処置が、この交感神経に影響を及ぼすことでホルネル症候群、ひいては顔面無汗症を誘発することがあります。
・扁桃摘出術の後遺症:
扁桃摘出術、特に冷鋼法や双極性電気メスを用いた止血術の際に、まれにホルネル症候群が報告されています※。これは、扁桃の周囲に顔面の発汗を司る交感神経が走行しているため、手術による神経への影響が原因と考えられています。近年、手術技術の進歩やホルネル症候群に対する認識が高まるにつれて、このような報告が増加傾向にあります※。リスクを軽減するためには、結紮(血管などを糸で縛る処置)や縫合といった従来の方法を組み合わせることも検討されます。
・鎖骨間ブロック:
肩や腕の手術で用いられる「鎖骨間ブロック」という局所麻酔の処置でも、一時的なホルネル症候群が誘発され、顔面無汗症を伴うことがあります※。鎖骨間ブロックは、首の付け根にある腕神経叢(腕や手の感覚・運動を支配する神経の束)に麻酔薬を注入し、上肢の感覚を一時的に麻痺させる方法です。この麻酔薬が周囲の頸神経叢へ広がることで、交感神経がブロックされ、ホルネル症候群の症状が現れる可能性があります。超音波ガイド下でブロックを行うことで、針の誤挿入や神経損傷などのリスクを減らせるでしょう※。
・C7神経根ブロック:
首の神経の痛みを和らげるために行われる「CTガイド下C7神経根ブロック」という処置の後にも、一時的なホルネル症候群と顔面無汗症が見られた症例が報告されています※。
見落とされがちな症状
無汗症の症状は、患者さん自身が自覚しにくい場合があります。汗をかくのが苦手な体質だと思い込んでいたり、冷房の効いた環境にいることが多いため、症状に気づきにくいこともあるでしょう。しかし、以下のような違和感がある場合は、無汗症の可能性も考える必要があります。
・皮膚が乾燥しやすい
・かゆみがある
・体にほてりを感じやすい
・激しい運動や暑い場所でも、他の人が汗をかく中で自分だけ汗をかかない
無汗症の範囲や程度を客観的に評価する際、ボツリヌス毒素A(BoNT-A)などの特定の治療における効果の指標として、無汗症が生じた領域をヨードデンプン試験で測定することがあります。これは、治療の拡散特性や副作用の評価に役立つ情報となり得ます※。
汗をかかないという症状は、日常生活に大きな影響を及ぼし、特に体温調節が困難になることで熱中症のリスクが高まります。ご家族など周囲の方が、患者さんの発汗の状況に気づくことも少なくありません。上記のような異常を感じたら、安易に放置せず、早めに医療機関を受診してください。
無汗症の検査・診断
無汗症の診断は、汗が出にくいという症状の詳しい聞き取りや、身体の状態を丁寧に確認することから始まります。もし汗をかかないことでお悩みであれば、まずは医療機関を受診し、医師による診察を受けることが大切です。正確な診断によって、原因に応じた適切な治療へとつながります。
1. 丁寧な問診
いつから、体のどの部分で汗が出にくいのか、あるいは全く出ないのかを詳しく伺います。発熱や皮膚の変化、めまい、立ちくらみといった他の自律神経の症状があるかどうかも確認します。現在服用している薬がある場合は、その内容も診断の重要な手がかりとなります。
2. 身体診察と視診
医師は皮膚の状態や、体温調節に影響を与えかねない身体的なサインがないかを確認します。自律神経の異常は、血圧や脈拍の変動、瞳孔の動きなどにも表れることがあるため、全身の状態を総合的に評価することが重要です。
3. 発汗機能検査
汗が実際にどの程度出ているのか、体のどの部分から出ているのかを客観的に評価するため、以下の検査を行います。
・ヨードデンプン反応テスト:
皮膚にヨード液とデンプンを塗布し、汗をかいた部分が青紫色に変化する現象を利用します。この検査で、汗の有無や、汗をかいている範囲を視覚的に確認できます。
・定量的軸索反射性発汗試験(QSART):
発汗を促すアセチルコリンという薬剤をごく少量皮膚に適用し、神経からの刺激に対して汗腺がどのように反応するかを測定します。この検査で、汗腺の機能や、汗腺へと情報を伝える神経に異常がないかを評価することが可能です。
4. 原因特定の検査
無汗症が何らかの病気や医療処置の症状として現れている場合、その原因を突き止めるための検査を行います。
・血液検査や尿検査:
全身性の病気や、代謝異常の有無などを調べることがあります。
・神経学的検査や画像検査:
必要に応じて、脳や神経に異常がないかを確認します。例えば、首の神経の痛みを和らげるために行う「CTガイド下C7神経根ブロック」という処置の後に、一過性のホルネル症候群と顔面無汗症が見られた症例が報告されています※。
ホルネル症候群とは、自律神経(体の働きを無意識に調整する神経)の一つである交感神経に障害が起こることで、主に以下の3つの特徴的な症状が現れる状態です。
・眼瞼下垂: まぶたが垂れ下がります。
・縮瞳: 瞳孔(ひとみ)が小さくなります。
・顔面無汗症: 顔面の一部に汗をかかなくなります。
CTガイド下C7神経根ブロックとは、脊髄から腕に向かう神経の付け根(神経根)に、CT画像を見ながら局所麻酔薬を注射する治療法です。この麻酔薬が周囲の交感神経に影響を及ぼし、一時的に汗の分泌をコントロールする神経の働きがブロックされることで、顔面無汗症を伴うホルネル症候群が生じると考えられています※。このように、無汗症が特定の医療処置によって引き起こされる可能性もあるため、これらの検査も原因特定に重要な役割を果たします。
これらの検査結果を総合的に判断することで、無汗症の正確な診断と、その根本的な原因を特定することが可能です。
無汗症の治療
無汗症の治療は、まずその原因を正確に突き止めることから始まります。原因が明らかになれば、それに応じた具体的な治療法や対処法を選択し、症状の改善を目指せるためです。
原因に対する治療・対処
無汗症は、特定の医療行為が原因で引き起こされることもあります。もし無汗症が何らかの医療行為によるものであれば、処置の見直しや中止が症状改善につながることもあります。
具体的には、肩や腕の手術で用いられる「鎖骨間ブロック」という局所麻酔の処置が挙げられます。これは、上肢の感覚や運動を支配する腕神経叢(C5-T1という神経の束)に局所麻酔薬を注入する方法です※。この麻酔薬が周囲の頸神経叢へ広がることで、一時的に自律神経の一つである交感神経の働きがブロックされ、「ホルネル症候群」(まぶたが下がる眼瞼下垂、瞳孔が小さくなる縮瞳、そして顔面の一部に汗をかかなくなる顔面無汗症の3つの症状)が生じる可能性があります※。超音波ガイド下で鎖骨間ブロックを行うことで、針の誤挿入や神経損傷といったリスクを減らせると考えられています※。
また、首のC7神経根ブロックと呼ばれる処置の後にも、顔面の一部に一時的な無汗症を伴うホルネル症候群の発生が報告されています※。これは、脊髄から腕に向かう神経の付け根(神経根)に注射する局所麻酔薬が、周囲の交感神経に影響を及ぼし、一時的に汗の分泌をコントロールする神経の働きをブロックするためです※。
対症療法:症状の緩和
原因が特定できない場合や、広範囲にわたる無汗症で熱中症などの重篤なリスクが高い場合は、症状を和らげる対症療法が治療の中心です。
特定の部位に発汗が少ないものの、他の部位の発汗が過剰であるといった症状が見られる場合、ボツリヌス毒素注射が汗の分泌をコントロールする目的で検討されることがあります。レチボツリヌム毒素Aなどのボツリヌス毒素製剤は、発汗を司る神経に作用し、汗の分泌を一時的に抑制する効果が期待できます。
この治療において、意図しない部位への影響や予期せぬ副作用を防ぐには、薬剤がどのように広がるかの特性を理解し、適切な量を正確な場所に投与することが非常に重要です※。特にレチボツリヌム毒素Aを用いた治療では、他のボツリヌス毒素製剤と同等の拡散パターンを示すことが確認されており、過剰な拡散リスクを抑えながら安全に発汗をコントロールできる選択肢として期待されています※。治療効果の指標として、無汗症が生じた領域をヨードデンプン試験で測定し、薬剤の拡散特性や副作用を評価することもあります※。
日常生活での対策
体温調節がうまくできない無汗症では、熱中症のリスクが高まります。そのため、日常生活では次のような対策を心がけることが大切です。
・涼しい環境で過ごす: 特に夏場は、エアコンや扇風機を適切に使用し、室温を快適に保ちましょう。
・こまめな水分補給: 汗をかかなくても、体からは水分が失われます。喉の渇きを感じる前に、少量ずつこまめに水分を摂るようにしましょう。
・激しい運動や暑い場所での活動を控える: 体に熱がこもりやすい状況を避け、無理のない範囲で活動することが重要です。
無汗症の治療では、医師と十分に相談し、ご自身の状態に最も適した方法をともに見つけることが大切です。





