鼠咬症
ハムスターやリスといった身近なペットとのふれあいの後、原因不明の発熱や関節の痛みに悩まされていませんか?その不調、もしかすると「鼠咬症(そこうしょう)」という人獣共通感染症が原因かもしれません。
鼠咬症はネズミだけでなく、家庭で飼われる動物からも感染する可能性がある病気です。しかし、発熱や関節痛といった症状が他の病気と似ているため、お医者さんでも診断が難しいのが実情です。海外の研究では、関節炎やウイルス性疾患と間違われ、治療が遅れてしまうケースも少なくありません。
治療が遅れると症状が長引いたり、体に後遺症が残ったりする危険性も。この記事では、見過ごされがちな鼠咬症の症状や原因、そして万が一の時に命を守るための大切なポイントを詳しく解説します。
鼠咬症の概要
鼠咬症(そこうしょう)とは、ネズミなどの動物からうつる感染症のことです。 「鼠咬熱(そこうねつ)」とも呼ばれ、動物から人にうつる人獣共通感染症の一つです。
主な感染の原因は、病原体を持つネズミに噛まれたり引っ掻かれたりすることです。 しかし、ペットとして人気のハムスターやリスからも感染する可能性があります。 感染経路は直接的な接触だけでなく、以下のようなケースでも起こり得ます。
- 主な感染経路
- 感染した動物に噛まれる、または引っ掻かれる
- 傷口が動物の唾液や尿などの排泄物に触れる
- 病原体で汚染された食べ物や水を口にする
鼠咬症は比較的まれな病気のため、お医者さんでも診断が難しい場合があります。 海外の研究報告によると、関節の痛みや発熱から関節炎やウイルス性疾患と間違われ、治療が遅れてしまうケースも少なくありません。 治療が遅れると症状が長引いたり、体に後遺症が残ったりすることもあります。
特に、小さなお子さんや体の抵抗力が落ちている方は重症化しやすいため注意が必要です。 感染の多くは家庭環境で起こるため、げっ歯類と接触した後に原因不明の熱や体の不調があらわれた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 その際は、医師に「動物と接触したこと」を必ず伝えることが大切です。
鼠咬症の種類
鼠咬症は、原因となる細菌の種類によって2つのタイプに分けられます。 どちらのタイプかによって症状の現れ方が異なるため、注意が必要です。
1. レンサ桿菌(れんさかんきん)型
原因菌: ストレプトバチルス・モニリホルミス菌 この菌は、鼠咬症のなかで最も一般的な原因とされています。 感染すると関節の痛みが強く出ることが多く、まれに血管の炎症と間違われることもあります。
2. らせん菌型(鼠毒:そどく)
原因菌: スピリルム・マイナス菌 らせんの形をした細菌が原因で起こるタイプです。 一度治ったはずの噛まれた傷が再び腫れたり、熱が出たり下がったりを繰り返す周期的な発熱が特徴です。
2つのタイプは、潜伏期間や症状に以下のような違いがあります。
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項目 |
レンサ桿菌型 |
らせん菌型(鼠毒) |
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原因菌 |
ストレプトバチルス・モニリホルミス菌 |
スピリルム・マイナス菌 |
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特徴 |
鼠咬症のほとんどがこのタイプ |
比較的まれなタイプ |
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潜伏期間 |
1日〜10日(通常は3〜5日と短い) |
7日〜21日(比較的長い) |
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主な症状 |
・突然の高熱 ・頭痛や筋肉痛 ・赤い発疹 ・強い関節の痛み |
・周期的な発熱 ・赤い発疹 ・リンパ節の腫れ ・関節の痛みはまれ |
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噛まれた傷 |
多くの場合、症状が出る前には治る |
一度治った後、再び腫れたり膿んだりする |
このように同じ鼠咬症でも、原因菌によって経過は大きく異なります。 特に、関節の痛みが強く出るかどうかは、2つのタイプを見分けるための重要な手がかりの一つです。
鼠咬症の原因
鼠咬症は、病気の名前からネズミだけが原因と思われがちです。 しかし、実はもっと身近な動物からもうつる可能性がある病気なのです。 この病気は「人獣共通感染症」といい、動物から人へと感染します。
主な原因となる動物
原因となる細菌は、主にネズミなどのげっ歯類の口の中や気道にいます。 そのため、ペットとして人気の動物から感染するケースも少なくありません。 海外の研究でも、感染した動物との接触が主な原因だと報告されています。
- 主な原因動物の例
- ネズミ(ドブネズミ、クマネズミなど)
- ハムスター、リス、モルモット、スナネズミ
- ネズミを捕まえたイヌやネコ、イタチなど
細菌が体に入る仕組み
鼠咬症の原因菌が人の体に入る経路は、主に以下の3つです。 気づかないうちに感染している場合もあるため、注意が必要です。
- 1. 噛まれたり、ひっかかれたりする
- 最も多い感染経路です。
- 動物に噛まれたり、ひっかかれたりした傷口から細菌が体内に侵入します。
- 2. 動物の体液や排泄物に触れる
- 感染した動物の唾液や尿、フンなどの体液に触れることでもうつります。
- 気づかないような小さな傷からも菌が入るため注意が必要です。
- 3. 汚染された食べ物や水を口にする
- まれなケースですが、細菌に汚染された食べ物や水を口にすることで、集団で感染が起きた例も報告されています。
このように、直接動物に噛まれなくても感染する可能性があります。 動物と触れ合った後や、ケージの掃除をした後は必ず手を洗いましょう。
鼠咬症の症状
鼠咬症の症状は、原因となる細菌によって少し異なります。 多くは発熱や関節痛など、かぜやインフルエンザに似た症状から始まります。 そのため、お医者さんでもすぐに診断するのが難しい病気の一つです。
海外の研究でも、はっきりしない症状から診断が遅れる例が報告されています。 原因菌は2種類あり、どちらに感染したかで症状の現れ方が変わります。
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項目 |
レンサ桿菌型 |
らせん菌型(鼠毒) |
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熱の出方 |
突然、高い熱が出る |
熱が出たり下がったりを繰り返す |
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噛まれた傷 |
症状が出る頃には治っていることが多い |
一度治った傷が、また赤く腫れたり膿んだりする |
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関節の痛み |
あちこちの関節が強く痛む(特に手足) |
ほとんど痛まない |
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皮膚の症状 |
手足に赤いブツブツや血が混じった水ぶくれができる |
全身に暗い赤色の発疹が出る |
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その他 |
頭痛や筋肉痛、だるさ |
傷の近くのリンパ節が腫れる |
治療が遅れると、細菌が血液に乗って全身に広がる可能性があります。 命に関わる重い病気を引き起こすこともあるため、注意が必要です。
- 特に注意が必要な合併症
- 心内膜炎
- 心臓の内部に細菌がすみついてしまう病気です。
- 髄膜炎
- 脳や脊髄(せきずい)を包む膜に細菌が入る病気です。
- 敗血症
- 細菌が血液の中で増え、全身に深刻な炎症が起こります。
まれに、全身の血管が炎症を起こす「血管炎」と間違われることもあります。 動物と触れ合った後に原因不明の熱や体の不調が出た場合は、必ず医師にそのことを伝えてください。
鼠咬症の検査・診断
鼠咬症の症状は、発熱や関節の痛みなど、かぜや他の病気とよく似ています。 そのため、お医者さんでもすぐに「鼠咬症だ」と見抜くのは難しい病気です。 海外の研究でも、関節の病気やウイルス感染症と間違われやすいと報告されています。
診断が遅れると治療の開始も遅れてしまうため、とても大切なのが問診です。 患者さんからのお話が、診断のための最も重要な手がかりになります。
問診で必ず伝えてほしいこと
原因不明の熱や体の痛みで病院へ行くときは、次のことを必ず伝えてください。 これらの情報は、正しい診断への近道になります。
- 伝えるべきことリスト
- いつ、どんな動物に噛まれたり引っかかれたりしたか
- ハムスターやリスなどのペットを飼っているか
- 家の周りや職場でネズミを見たことがあるか
ささいなことでも、動物との接触に関する情報は診断の大きな助けになります。
原因菌を特定するための検査
問診で鼠咬症の可能性が高いと判断された場合、原因菌を見つける検査をします。 血液や傷口の膿(うみ)などを調べて、犯人である菌を特定します。
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検査方法 |
どんな検査? |
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血液検査(血液培養) |
血液の中に菌がいないかを調べます。 特に熱が続いているときに行う基本的な検査です。 |
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培養検査 |
傷口や関節にたまった液体から菌を採取し、 それを「育てる」ことで菌の種類を特定します。 |
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遺伝子検査(PCR法) |
菌が持つ遺伝子(体の設計図)を探し出す検査です。 ごくわずかな菌でも見つけられる感度の高い方法です。 |
特にらせん菌型の原因菌は、人工的に育てることがとても難しい菌です。 そのため、血液などを検査用のマウスに注射して菌の存在を確かめることもあります。
このように、診断は患者さんからの詳しい情報と検査結果を合わせて行います。 動物と触れ合った後に体調を崩した場合は、早めに病院を受診してください。
鼠咬症の治療
鼠咬症の治療は、原因となる細菌をやっつけることが基本です。 診断がつけば、抗生物質(抗菌薬)というお薬で治療ができます。 早く正しい治療を始めることが、重症化を防ぐための最も大切なポイントです。
海外の研究報告でも、鼠咬症は症状が他の病気と似ているため診断が難しいとされています。 そのため、治療の開始が遅れないようにすることが非常に重要になります。
中心となる抗生物質での治療
治療の主役は、細菌を退治する「抗生物質」というお薬です。 お薬を飲んだり、点滴で体に入れたりして、体の中の菌を攻撃します。
- 主に使われるお薬
- ペニシリン系という種類の抗生物質がよく使われます。
- アレルギーがある場合
- ペニシリンにアレルギーがある方には、テトラサイクリン系やセフェム系といった別のお薬が有効です。
- 症状によっては、アンピシリン・スルバクタムやドキシサイクリンといったお薬が使われることもあります。
つらい症状を和らげる治療
熱や関節の痛み、皮膚の発疹など、つらい症状を和らげる治療も同時に行います。 体の炎症を抑えることで、少しでも楽に過ごせるようにするためです。
特に、関節の痛みや血管の炎症(血管炎)に似た症状が出ることがあります。 その場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが一緒に使われます。
治療を成功させる一番の近道
この病気はインフルエンザなどと症状が似ており、診断が難しいのが特徴です。 だからこそ、お医者さんに正確な情報を伝えることが治療成功のカギとなります。
- お医者さんに必ず伝えてほしいこと
- いつ頃、どんな動物と触れ合ったか
- 動物に噛まれたり、ひっかかれたりしたか
- どんな症状がいつから出ているか
これらの情報が、正しい診断と適切な治療への一番の近道になります。 動物と触れ合った後に気になる症状があれば、すぐに病院を受診してください。





