静脈奇形

生まれつきの青あざや、皮膚のふくらみ。「いつか消えるだろう」と、そのままにしていませんか?もしかすると、それは「静脈奇形」という、血管がスポンジ状に変形してしまう生まれつきの病気かもしれません。以前は「海綿状血管腫」とも呼ばれていました。

多くの場合、痛みもなく見た目の変化だけですが、放置すると血の塊ができて痛んだり、関節が動かしにくくなったりすることもあります。特に脳や脊髄にできた場合は、けいや麻痺など深刻な症状を引き起こす可能性も否定できません。

しかし、この病気には切除手術や硬化療法など、様々な治療の選択肢があります。ある研究では、手術による治療の再発率は約2.3%と低いことも報告されています。この記事では、静脈奇形の原因から最新の治療法まで、あなたの不安を解消するための情報を詳しく解説します。

静脈奇形の概要

静脈奇形は、生まれつき血管の一部がふくらんでしまう病気です。 静脈という血液の通り道が、スポンジや袋のように変形します。 そこに血液がたまってしまい、体の表面に変化が現れます。 以前は「海綿状血管腫(かいめんじょうけっかんしゅ)」とも呼ばれていました。

多くは生まれたときや赤ちゃんの頃に、皮膚のふくらみや青あざとして見つかります。 しかし、筋肉の中など体の深い場所にできた場合は、大きくなってから気づくこともあります。

【静脈奇形の主な特徴】

  • 見た目 皮膚がふくらんだり、青紫色に見えたりします。
  • 痛み はじめは痛みがないことがほとんどです。
  • 硬さ ふくらみは軟らかく、指で押すと一時的に小さくなることがあります。

治療法には、手術で病気の部分を取り除く方法や、薬を注入して固める方法などがあります。 どの治療法が良いかは、病気の状態や場所をよく調べて慎重に判断することが大切です。 研究によると、手術で取り除く方が、病気が再び起こる可能性が低いと報告されています。 しかし、完全に取り除けるかだけでなく、治療後の生活への影響なども考える必要があります。 そのため、一人ひとりに合った最適な治療法を総合的に決めていくことが重要です。

静脈奇形の種類

静脈奇形は、体のどこに、どのくらいの深さにできるかによって、いくつかの種類に分けられます。 どこにできたかによって、症状や治療法が変わってくるため、種類を知ることはとても大切です。

できる深さによる分類

病気がある場所の深さによって、大きく2つのタイプに分けられます。

種類

特徴

体の表面に近いタイプ

(表在性静脈奇形)

皮膚のすぐ下にできます。

血管が透けて青っぽく見えたり、こぶのようにふくらんだりするため、見た目で気づきやすいのが特徴です。

体の深い場所にあるタイプ

(深在性静脈奇形)

筋肉や関節の中など、体の奥深くにできます。

外からは見えにくく、痛みや腫れといった症状が出てから気づくこともあります。

できる場所による分類と注意が必要なもの

静脈奇形は全身のどこにでもできる可能性があります。 中でも、特別な注意が必要になるものがあります。

  • 筋肉の中 筋肉の中にできると、運動したときに痛みや腫れを感じることがあります。
  • 顔やのど 顔や舌にできるタイプです。大きくなると、見た目の問題だけでなく、呼吸や食事の邪魔になることがあります。
  • 脳や脊髄 頭の中や背骨の中の神経の近くにできることもあります。
  • 脳にできた場合 けいや麻痺の原因になることがあります。治療では、手術で病気の部分を取り除く方法が、完全に治す可能性を高め、将来の出血を防ぐためにも第一の選択肢として考えられています。
  • 脊髄にできた場合 手術で病気の部分を取り除く方法が、血管の中から治療する方法に比べて成功率が高く、病気が再び起こる可能性も低いと報告されています。
  • その他の特殊なタイプ 皮膚や胃腸にたくさんできる「青色ゴムまり様母斑症候群」や、手足の先に痛みを伴う硬いしこりができる「グロムス静脈奇形」など、まれな種類も存在します。

静脈奇形の原因

静脈奇形がなぜできるのか、そのはっきりとした原因はまだわかっていません。 しかし、研究が進むにつれて、少しずつその仕組みが見えてきています。

現在では、私たちの体の設計図である「遺伝子」の異常が関係すると考えられています。 お母さんのお腹の中で体が作られる早い時期に、血管を作る遺伝子に変化が起こります。 その結果、静脈が本来とは少し違う形にできあがってしまうようです。

ただ、なぜ遺伝子に変化が起きるのかなど、原因の特定が難しいのには理由があります。

  • 病気の複雑さ 一口に血管の病気といっても、非常に種類が多く複雑です。 例えば脳や脊髄にできる血管の病気では、治療法も異なります。 手術で取り除く方が良いか、他の治療法が良いか、今も詳しく研究が続けられています。
  • 研究を進める上での課題 世界中の研究者がデータを集めていますが、その報告方法が統一されていません。 そのため、多くの研究結果を正確に比べたり、まとめて分析したりするのが難しいのです。 このことも、原因の解明に時間がかかっている一因と考えられています。

このように、遺伝的な要因が考えられてはいるものの、まだ不明な点も多く残っています。 今後の研究によって、原因がさらに詳しく明らかになることが期待されています。

静脈奇形の症状

静脈奇形の症状は、体のどこに、どのくらいの大きさでできているかによって様々です。 多くの場合、生まれたときや小さいころに皮膚の見た目の変化で気づかれます。

主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 皮膚の見た目の変化 皮膚の一部が青みがかった暗い色や、赤色に見えます。 また、やわらかい、あるいは少し硬さのあるふくらみができます。 このふくらみは、指で押したり、心臓より高い位置に上げたりすると、 たまった血液が移動するため、一時的に小さくなるのが特徴です。
  • 痛み 初めのうちは、特に痛みを感じないことがほとんどです。 しかし、病気が大きくなると、たまった血液が固まって血の塊(血栓:けっせん)や、 硬い石(静脈石:じょうみゃくせき)ができて炎症を起こし、 ズキズキとした痛みを感じるようになります。
  • 機能の問題 関節の近くにできると、関節が動かしにくくなることがあります。 また、血管の壁がもろくなっているため、少しぶつけたりしただけで、 出血しやすくなる場合もあります。

まれですが、静脈の異常が脳や脊髄など、体の深い部分にできることもあります。 脳にできた場合は、けいや脳出血を起こす可能性があり、麻痺などの症状につながります。 研究によると、手術で取り除く方が完全に治る可能性は高いとされます。 しかし、神経を傷つけるリスクもあるため、治療法の選択はとても重要です。

脊髄にできた場合も、手足の動きにくさなどが出ることがあります。 こちらも手術の方が、血管の中から治療する方法に比べて、 病気が再び起こる可能性は低いと報告されています。 気になる症状があれば、自己判断せずに専門の医療機関へ相談することが大切です。

静脈奇形の検査・診断

静脈奇形かもしれないと思ったら、まずは検査で病気の正体を詳しく調べることが大切です。 敵の姿がわからなければ、どう戦うか作戦を立てられないのと同じです。 検査で病気の場所や大きさ、性質を正確に把握することが、治療への第一歩になります。

検査には、体の内部を見る「画像検査」と、血液の状態を調べる「血液検査」があります。

主な検査方法

これらの検査を組み合わせることで、より正確な診断が可能になります。

検査の種類

どのようなことを調べるか

画像検査

超音波(エコー)検査

体の表面にゼリーを塗り、機械をあてて中の様子を見ます。

血管の形や血液の流れを確認でき、体に負担がないのが特徴です。

MRI検査

強力な磁石のトンネルに入り、体の内部を詳しく撮影します。

筋肉の中など、病気がどこまで広がっているかを正確に知るのに役立ちます。

CT検査

X線を使って体を輪切りにした画像を撮ります。

特に、静脈の中にできた石(静脈石)や、骨との関係を調べるのに有効です。

血液検査

採血をして、血液が固まる力に異常がないかを調べます。

病気の部分では血の流れがよどみやすいため、血の塊(血栓)ができていないかなどを確認します。

これらの詳しい検査がなぜ重要かというと、治療法を決めるための大切な情報になるからです。 特に、脳や脊髄のような重要な場所に病気ができた場合、治療法の選択は非常に重要です。

ある研究では、脊髄の血管の病気において、手術で取り除く治療の再発率は約2.3%でした。 一方、血管の中から薬で固める治療の再発率は約27.7%と報告されています。 このように、治療法によって結果が大きく変わるため、精密な検査で最適な方法を見極めるのです。

正確な診断は、安全で効果的な治療計画を立てるために欠かせません。 検査結果をもとに、一人ひとりに合った最善の治療法を一緒に考えていきましょう。

静脈奇形の治療

静脈奇形の治療は、病気がある場所や大きさ、症状によって作戦が変わります。 敵の様子に合わせて武器を使い分けるように、最適な方法を選びます。 どの治療法が良いかは、患者さん一人ひとりの状態をみて慎重に判断します。

主な治療法には、以下のものがあります。

治療法

どのような治療?

切除術(手術)

メスで病気の部分を直接切り取ります。

硬化療法

薬を注射して異常な血管を固めます。

放射線治療

放射線をあてて病気を小さくします。

薬物療法・保存療法

薬や圧迫で痛みなどの症状を和らげます。

切除術(手術)

病気の部分をメスで直接切り取る方法で、完全に治す力が最も高い治療法です。 そのため、多くの研究で第一の選択肢として考えられています。 ある研究報告では、脊髄の血管の病気の場合、手術後の再発率は約2.3%と非常に低い結果でした。 しかし、周りの神経などを傷つける危険性も考え、慎重に判断する必要があります。

硬化療法

手術で切り取ることが難しい場合に選ばれることが多い治療法です。 病気のある血管に細い針を刺し、「硬化剤」という薬を注入します。 この薬で異常な血管を固め、血液が流れ込まないようにして病気を小さくします。 ただ、手術と比べると再発の可能性が高くなる傾向があります。 先ほどの脊髄の病気に関する研究では、この方法の再発率は約27.7%と報告されています。

放射線治療

脳の中など、手術が特に難しい場所にできた場合に力を発揮します。 放射線をあてて病気を少しずつ小さくしていく方法です。 脳の深い場所の病気に対する放射線治療は、安全で効果が高いと考えられています。 ある研究では、この治療で病気の約65%以上が小さくなり、治療後の出血率も低いことが示されました。

薬物療法・保存療法

痛みや血の塊ができるのを防ぐために、痛み止めや血液をサラサラにする薬を使います。 最近では、「シロリムス」という飲み薬も治療の選択肢の一つになっています。 また、弾性のあるストッキングなどで患部を圧迫し、症状を和らげることも大切な治療です。

これらの治療法の中から、専門の医師が患者さんの状態に最も合った方法を提案します。 不安な点があれば、遠慮なく医師に相談しましょう。