赤外線障害

赤外線障害

こたつや太陽の光など、私たちの暮らしに欠かせない「赤外線」。ものを温める便利な性質を持っていますが、その光を浴びすぎると、気づかないうちに目や皮膚に深刻なダメージを与え、「赤外線障害」を引き起こす危険性があることをご存知でしょうか?

強い赤外線は、失明につながる可能性のある「白内障」や「網膜火傷」の原因となるだけでなく、皮膚の奥深くまで到達してしまいます。しかし、その性質は悪いことばかりではなく、ある研究では痛みを和らげる治療への応用も期待されているのです。

この記事では、赤外線障害の具体的な症状から、家庭や職場でできる対策、そして最新の治療法までを詳しく解説します。あなたの健康を守るための正しい知識を身につけましょう。

赤外線障害の概要

赤外線障害とは、強い「赤外線」を浴びすぎることで、主に目や皮膚に起こる健康被害のことです。

赤外線は太陽の光にも含まれており、ものを温める性質を持っています。そのため、普段の生活で日光を浴びる程度であれば問題はありません。しかし、溶鉱炉や産業用ヒーターなど、非常に強い赤外線を出すものを長時間浴びると、やけどのような状態になってしまうのです。

特に、以下のような高温の物質を扱う環境では注意が必要です。

  • 溶接作業
  • ガラス製造
  • 製鉄所

一方で、赤外線は悪いことばかりではありません。その温める性質をうまく利用して、医療の分野でも活用されています。

例えば、特殊な赤外線を用いた「低レベルレーザー治療」があります。ある研究では、この治療法が口の中が焼けるように痛む病気(口腔灼熱症候群)の痛みを和らげるのに有効な可能性があると報告されました。赤外線も、使い方次第では私たちの助けになってくれるのです。

赤外線障害の種類

赤外線は、目に見えない光の一種です。その光の「なみの長さ(波長)」によって、大きく2つのタイプに分けられます。性質が違うため、私たちの体に与える影響もそれぞれ異なります。

近赤外線

なみの長さが比較的短く、体の奥深くまで届きやすい性質を持っています。太陽の光にも多くふくまれているのがこの近赤外線です。

  • 目への影響 目の中にある、カメラのレンズのような部分(水晶体)に吸収されやすいです。 そのため、長く浴び続けると水晶体が白くにごってしまう「白内障」の原因になることがあります。
  • 皮膚への影響 皮膚の深い部分にある細胞まで届いてダメージを与えます。 その結果、皮膚がゴワゴワと厚くなったり、赤みが出たり、乾燥したりすることがあります。

遠赤外線

なみの長さが長く、主に皮膚の表面で吸収されるタイプの赤外線です。体を温める効果があるため、こたつなどの暖房器具にも利用されています。

  • 目への影響 目の一番奥にある、光を感じるスクリーンのような部分(網膜)を傷つけます。 強い遠赤外線を直接見ると、「網膜火傷」というやけどを起こす危険があります。
  • 皮膚への影響 皮膚の表面で熱に変わるため、普通のやけど(熱傷)を引き起こす原因となります。

このように、赤外線を浴びすぎることは危険ですが、その性質をうまく利用して治療に応用することもあります。例えば、特殊な光を利用する「低レベルレーザー治療」です。複数の研究をまとめた分析では、この治療法が口の中がヒリヒリと痛む病気(口腔灼熱症候群)の痛みを和らげるのに有効である可能性が示されています。

赤外線障害の原因

赤外線障害は、赤外線の持つ「熱エネルギー」が原因で起こります。私たちの体はタンパク質でできているため、熱に弱い性質があります。強すぎる赤外線を長く浴びると、目や皮膚の細胞がやけどのような状態になってしまうのです。

赤外線は、主に以下のような場所から発生します。

  • 太陽の光 太陽の光には、目に見えない赤外線がたくさん含まれています。 夏の強い日差しなどを、対策せずに長時間浴び続けると危険です。
  • お仕事の現場 溶鉱炉やガラス工場など、高温のものを扱う職場は要注意です。 非常に強い赤外線が出ているため、専用の保護具が欠かせません。
  • 家庭にある機械 赤外線ストーブやこたつなども、赤外線を出しています。 近づきすぎたり、同じ場所で長時間使い続けたりすることも原因になります。

赤外線は、皮膚の表面だけでなく、体の奥深くまで届く性質があります。そのため、知らないうちに体の内部がダメージを受けてしまうことがあるのです。

一方で、その力をうまく調整して治療に役立てる研究も進んでいます。例えば、ある研究では、特殊な弱い光を使った治療法が報告されました。口の中が焼けるように痛む病気の痛みを和らげる効果が期待されています。赤外線障害は、あくまで「浴びすぎ」が原因だと知ることが大切です。

赤外線障害の症状

強い赤外線を浴びすぎると、私たちの体はSOSのサインを出します。そのサインは主に「目」「皮膚」「全身」にあらわれます。どのような症状が出るのか、一緒に確認していきましょう。

目の症状

目は非常にデリケートなため、赤外線の影響を受けやすい部分です。ご自身の症状と比べてみてください。

  • 視界がかすむ、光がまぶしい 目の中のレンズ(水晶体)が、卵の白身が熱で固まるように白くにごる「赤外線白内障」のサインかもしれません。
  • 目の奥が痛む、見えにくい部分がある 虫眼鏡で光を集めると紙が焦げるように、目の奥のスクリーン(網膜)がやけどを起こしている可能性があります。
  • 目がゴロゴロする、充血する 目の表面(角膜や結膜)がダメージを受け、炎症を起こしている状態です。涙がたくさん出ることもあります。

皮膚の症状

皮膚の症状は、日焼けや通常のやけどによく似ています。

  • 赤くなる、熱っぽく感じる
  • ヒリヒリとした痛み(灼熱痛)がある
  • 皮膚がゴワゴワと厚くなる、カサカサする

特にこたつやストーブなど、それほど熱くないものに長時間あたっていると「低温やけど」になることがあるため注意が必要です。皮膚の奥深くまで、じっくりとダメージが進行してしまいます。

ちなみに、赤外線が原因で起こる「ヒリヒリとした痛み」とは少し違いますが、口の中が焼けるように痛む病気に対して、特殊な光を使った治療法の研究が進んでいます。ある研究では、この治療法が痛みを和らげる効果が期待できると報告されました。

全身の症状

強い赤外線の熱を浴び続けると、体の熱をうまく外に逃がせなくなり、熱中症とよく似た症状が出ることがあります。

  • 頭痛やめまい、吐き気
  • 体全体が重く感じる(倦怠感)
  • 大量の汗をかく

はじめは軽い目の疲れや皮膚の赤みだけでも、繰り返し赤外線を浴びることで症状が悪化する可能性があります。気になるサインがあれば、自己判断せずに医療機関へ相談しましょう。

赤外線障害の検査・診断

「赤外線障害かもしれない」と感じた場合、診断はまずお話を聞く「問診」から始まります。いつからどのような症状があるか、お仕事や生活環境で強い赤外線を浴びる機会がなかったかなどを詳しくお伺いします。

お話をお聞きしたうえで、症状に合わせて以下のような検査をおこないます。

  • 目の検査
  • 細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ) これは、目のための特別な顕微鏡検査です。 目の表面にある角膜の傷や、レンズの役割をする水晶体の濁り(白内障)がないかなどを詳しく観察します。
  • 眼底検査(がんていけんさ) 目の奥には、光を感じるスクリーンのような「網膜」があります。 この網膜の状態を調べ、赤外線によるやけどが起きていないかを確認します。
  • 皮膚の検査
  • 視診(ししん) 皮膚の赤みや熱っぽさ、腫れの状態などを医師が目で見て詳しく観察します。 皮膚がヒリヒリするような灼熱痛の程度を評価することも大切です。
  • 皮膚生検(ひふせいけん) 必要に応じて、皮膚のごく一部を採取して顕微鏡で調べます。 他の皮膚の病気ではないことを確認するために行われることがあります。

赤外線障害による皮膚のヒリヒリとした痛みは、生活の質に大きく影響します。これと似た「焼けるような痛み」の病気(口腔灼熱症候群)に対して、特殊な光を使った治療法の研究が進んでいます。複数の研究をまとめた分析では、この「低レベルレーザー治療」が痛みを和らげるのに有効である可能性が示されました。

これらの診察や検査に加えて、仕事が原因の場合は、作業環境でどれくらい強い赤外線を浴びているかを測定することもあります。

赤外線障害の治療

赤外線障害の治療で最も大切なのは、原因となる強い赤外線を浴びないようにすることです。そのうえで、出てしまった症状を和らげるための治療を行います。症状の出ている場所によって治療法が変わります。

症状別の主な治療法

  • 目の症状 炎症を抑える目薬や、目の乾燥を防ぐ目薬を使います。 赤外線の影響で目の中のレンズ(水晶体)が白くにごってしまった場合(赤外線白内障)、視力を取り戻すために、にごったレンズを新しいものに入れ替える手術を行うこともあります。
  • 皮膚の症状 皮膚の症状は一種のやけどなので、まずは冷たいタオルなどで冷やすことが重要です。 赤みや痛みが強い場合は、炎症を抑えるための塗り薬を使います。 低温やけどのように皮膚の奥深くまでダメージが及んでいる場合は、皮膚科での専門的な治療が必要です。
  • 全身の症状 熱中症と似た症状が出た場合は、水分と塩分をしっかりとりましょう。 そして、涼しい場所でゆっくりと体を休めることが大切です。 頭痛がひどいときには、痛み止めの薬が使われることもあります。

痛みを和らげるための新しいアプローチ

赤外線障害による皮膚の「焼けるようなヒリヒリした痛み」は、とてもつらい症状です。これと似た痛みを口の中に感じる病気に対して、特殊な光を使った「低レベルレーザー治療」という方法が研究されています。

複数の信頼できる研究結果を分析した報告によると、この治療法は「焼けるような痛み」を和らげるのに有効である可能性が示されました。今後の研究が、赤外線障害による痛みの治療にも役立つことが期待されています。

気になる症状があれば、自分で判断せずに必ずお医者さんに相談してください。