血管腫

お子様の肌にできた赤いアザや、ご自身の体にいつの間にか現れたできもの。「これは何だろう?」と不安に思ったことはありませんか。それは「血管腫」という、血管の細胞が増えてできる良性のできものかもしれません。

「良性」と聞くと安心しがちですが、放置は禁物です。種類によっては自然に消えず、まれに再発を繰り返すもの(再発率約18.6%)や、脳にできて出血のリスクを伴うものもあります。しかし、適切な治療で将来のリスクを大幅に下げられることもわかっています。

この記事では、血管腫の様々な種類から、原因、そしてレーザーや放射線治療といった最新の治療法までを詳しく解説します。自己判断で悩む前に、まずは正しい知識を得て、適切な対処への第一歩を踏み出しましょう。

血管腫の概要

血管腫(けっかんしゅ)は、血管を作る細胞が増えてできる良性のできものです。「腫瘍」という言葉から心配されるかもしれませんが、ほとんどは良性であり、がんと直接関係するものではありません。

血管腫ができる場所は、皮膚の表面だけとは限りません。

  • 皮膚の表面 赤や紫のアザとして現れることが多く、見た目で気づきやすいです。
  • 体の内部 肝臓や脳、筋肉の中など、体の奥深くに発生することもあります。

多くは生まれつきか、生まれて間もない赤ちゃんに現れます。特に「乳児血管腫」は、成長とともに自然に小さくなることも珍しくありません。

しかし、血管腫には様々な種類があり、自然には消えずに残るものや、痛みや出血を伴うものもあります。できた場所によっては体の機能に影響をおよぼすこともあるため、正確な診断が重要です。

治療にあたっては、皮膚科や形成外科、放射線科の医師といった複数の専門家がチームを組みます。それぞれの専門家が連携し、一人ひとりの状態に合った治療計画を立てることが、良い結果につながります。

血管腫の種類

「血管腫」とひとことで言っても、実はたくさんの種類があります。 血管の細胞が増えてできるものや、血管の形が異常なものなど様々です。

代表的な血管腫の種類をいくつかご紹介します。

  • 乳児血管腫(いちご状血管腫) 生後まもなく現れる、赤ちゃんによく見られるタイプです。 皮膚が赤く盛り上がる見た目が特徴で、多くは成長とともに自然に小さくなっていきます。
  • 単純性血管腫(ポートワイン母斑) 生まれつきある平らな赤あざです。 乳児血管腫とは違い、自然に消えることは少ないといわれています。
  • 海綿状血管腫 皮膚のやや深い場所にでき、青みがかって見えることが多い血管腫です。 体の表面だけでなく、脳の中にできることもあります。 脳にできた場合、出血する可能性がありますが、ピンポイントで放射線をあてる治療によって、出血のリスクを下げることが期待できます。 ある研究では、この治療で年間の出血率が14.8%から2.3%へ低下したと報告されています。

このほかにも、血管腫と似た、少し珍しい種類のできものがあります。

  • 上皮様血管腫 まれな血管腫のひとつで、治療したあとに同じ場所にふたたびできてしまうことがあります。 ある研究では、約18.6%の患者さんで再発がみられたと報告されており、注意深い経過観察が必要です。
  • 血管平滑筋腫 血管のまわりの筋肉の細胞がふくまれる良性のできものです。 見た目が他の血管腫と似ているため、専門家による正確な診断が大切になります。

種類

見た目の特徴

自然に消えるか

乳児血管腫

赤く盛り上がる

消えることが多い

単純性血管腫

平らな赤あざ

消えにくい

海綿状血管腫

青っぽく見えることが多い

消えない

このように、血管腫にはさまざまな種類があるため、自己判断はせず、まずは専門のクリニックで相談し、どの種類なのかを正確に診断してもらうことが大切です。

血管腫の原因

血管腫ができるはっきりとした原因は、まだ完全にはわかっていません。 しかし、多くの研究からその仕組みが少しずつ明らかになっています。

血管腫は、主に血管の内側の壁を作る細胞(血管内皮細胞)が、何らかの理由で異常に増えることで発生します。 多くは、お母さんのお腹の中で体が作られる過程で起こる変化によるものです。

現在、血管腫の発生に関わると考えられている要因は、主に3つあります。

  • 遺伝子の情報 生まれつき持っている遺伝子の情報が、血管の増え方に関係していることがあります。
  • 体が作られる過程での偶然の変化 お母さんのお腹の中で体が作られていく時に、血管を作る設計図に偶然、変化が起こる場合です。
  • 他の生まれつきの病気との関連 ごくまれですが、血管腫が他の病気の一つの症状として現れることがあります。 例えば「PHACE(フェイス)症候群」という病気があります。 この病気は、顔にできる大きな血管腫とともに、脳や心臓、目の血管などに異常を伴うことがあるものです。

このように、血管腫の原因は一つではなく、いくつかの要因が複雑に関係していると考えられています。 特定の食べ物や生活習慣が直接の原因になるという証拠はなく、保護者の方のせいではありません。 原因について悩むよりも、まずは専門のクリニックで相談し、正確な診断を受けることが大切です。

血管腫の症状

血管腫の症状は、種類や大きさ、できた場所で大きく変わります。 多くの場合は見た目の変化ですが、痛みなどを伴うこともあります。

血管腫が皮膚の表面近くにできると、次のようなサインが現れます。

  • 色 赤やピンク、紫色、青みがかった色など、種類によって様々です。
  • 形 平らなアザのようなものから、いちごのように赤く盛り上がるものもあります。

見た目の変化だけでなく、次のような症状が起こることもあります。 血管腫が大きくなったり、こすれて傷ついたりすると、痛みや出血が起こります。 また、表面がじゅくじゅくした状態(潰瘍)になることもあります。

さらに、血管腫ができた場所によっては、体の機能に影響をおよぼすことがあります。

  • 顔(まぶた・鼻・口のまわり) まぶたにできると、視力の発達をじゃまする可能性があります。 鼻や口の周りでは、呼吸や食事のしにくさにつながることがあります。 ある研究では、顔にできた血管腫は他の部位に比べ、治療後にふたたびできてしまう可能性が高いと報告されています。
  • のど(喉頭) 非常にまれですが、声がかすれたり、息がしづらくなることがあります。 のどは血管がとても豊富なため、出血すると量が多くなる可能性が指摘されています。 ただし、ほとんどは良性で、悪性化することは極めてまれです。
  • 手足や関節 関節の近くにできると、動きが悪くなるなど運動機能に影響が出ることがあります。

このように症状は様々なので、気になる変化があれば早めに専門の医療機関へご相談ください。

血管腫の検査・診断

血管腫の検査は、まず医師が目で見て触ることから始まります。 色や形、硬さといった特徴から、ある程度の種類は見当がつきます。

しかし、より正確に診断するためには、詳しい検査が必要です。 体の奥深くにある血管腫や、治療方針を決める上で重要になります。

詳しい検査には、主に次の3つの方法があります。

  • 超音波(エコー)検査 音の反響を利用して、血管腫の内部を画像で見る検査です。 体の表面にゼリーを塗り、機械をあてるだけで痛みはありません。 血管腫の大きさや深さ、中の血液の流れなどを調べられます。
  • MRI検査 強力な磁石の力で、体の断面を細かく撮影する検査です。 体の奥深く、脳や内臓にできた血管腫の正確な位置がわかります。 周りの大切な組織との関係を見るのに非常に役立ちます。
  • 組織病理学的検査(生検) 診断を確定させるために、血管腫の一部を切り取り顕微鏡で調べます。 特に「上皮様血管腫」のような珍しいタイプでは、診断の決め手となります。 この検査で、治療後に再びできてしまう「再発」の可能性も予測できます。 ある研究では、珍しい血管腫の約18.6%で再発がみられたと報告されています。 顔にできたり、複数あったりすると再発しやすい傾向もわかってきました。

検査方法

目的

視診・触診

見た目の特徴(色、形、大きさ、硬さ)を確認します。

超音波検査

血管腫の深さや血流の状態を負担なく調べます。

MRI検査

体の深い部分にある血管腫の状態を詳しく見ます。

組織病理学的検査

組織を顕微鏡で観察し、種類を確定させます。

これらの検査結果を総合的に判断し、一人ひとりに合った治療計画を立てます。 不安な点があれば、遠慮なく医師にご相談ください。

血管腫の治療

血管腫の治療法は、種類や大きさ、できた場所によって様々です。 自然に消えることも多いため、必ずしもすぐに治療が必要とは限りません。 一人ひとりの状態に合わせて、最適な方法を選んでいくことが大切です。

主な治療法には、次のようなものがあります。

  • 経過観察 乳児血管腫のように、成長とともに自然に小さくなるタイプでは、 特別な治療をせず、注意深く様子を見ることがあります。
  • 薬物療法 主に乳児血管腫の治療で使われる飲み薬(β遮断薬)です。 血管が増えるのを抑え、血管腫を小さくする効果が期待できます。
  • レーザー治療 皮膚の表面にある、平らな赤い血管腫(単純性血管腫など)に有効です。 レーザー光で異常な血管だけを選んで壊す治療法です。
  • 手術(外科的切除) 他の治療で効果が不十分な場合や、見た目の問題が残る場合に行います。 特に喉(のど)など、出血のリスクが高い部位にできた血管腫では、 完全に取り除く手術が勧められることがあります。 手術の前に、血管に詰め物をして血流を減らす「塞栓術」を行うこともあります。 これは、介入放射線科と形成外科の専門家が連携し、より安全に手術を行うための工夫です。 ただし、珍しい種類の上皮様血管腫では、顔にできたり複数あったりすると、 治療後に再びできてしまうことがあります。 ある研究では、約18.6%の患者さんで再発がみられたと報告されています。 そのため、治療後の丁寧な経過観察も非常に重要になります。
  • 放射線治療 脳の中など、手術が難しい場所にできた血管腫に行われることがあります。 例えば、脳幹にできた海綿状血管腫に対して、ピンポイントで放射線をあてる 「ガンマナイフ」という治療があります。 ある研究では、この治療で将来の出血リスクが大きく下がることが報告されました。 具体的には、年間の出血率が14.8%から2.3%へ低下したとされています。

このように、治療方針を決めるには、まず正確な診断が何よりも大切です。 皮膚科や形成外科、放射線科など、複数の専門家がチームを組んで、 一人ひとりに合った最善の治療計画を立てていきます。