いつの間にかできていた、あざや内出血。多くは心配いりませんが、もしそれがなかなか消えず、じわじわと広がっているとしたら注意が必要かもしれません。それは「血管肉腫」という、非常にまれながんのサインである可能性があります。
2018年の調査では皮膚への発症は国内で年間数百人ほどと推測される希少ながんですが、進行が非常に速く、転移もしやすいという厄介な性質を持っています。特にご高齢の方の頭皮や顔にできやすく、髪に隠れて発見が遅れるケースも少なくありません。
この記事では、見過ごしがちな初期症状から原因、最新の治療法まで、血管肉腫について詳しく解説します。ご自身や大切な家族を守るためにも、ぜひご一読ください。
血管肉腫の概要
血管肉腫とは、血管の内側をおおっている「血管内皮細胞」という細胞が、がんになる病気です。 非常にまれながんであり、2018年の調査によると、皮膚に発症する方は国内で1年間に数百人ほどと推測されています。
全身のどこにでもできる可能性がありますが、特にご高齢の方の頭皮や顔に多く見られます。 髪の毛に隠れてしまい、気づくのが遅れるケースも少なくないため注意が必要です。
また、皮膚以外では肝臓や心臓、骨など、体の深い場所にできることもあります。 特に肝臓にできた血管肉腫は、似たような別の腫瘍と比べて、その後の経過があまり良くないことが研究で示唆されています。 ある研究では、60歳以上の方で肝臓に境界がはっきりしないかたまりが見つかった場合、血管肉腫の可能性が高まると報告されています。
この病気の主な特徴は以下のとおりです。
- 発生する場所 皮膚にできることが最も多く、全体の半数を占めています。 特に、ご高齢の方の頭や顔にできやすい傾向があります。
- 見た目の変化 はじめは、どこかにぶつけたあとのような、あざや内出血のように見えることが多いです。
- 進行の速さ 進行がとても速いという特徴があります。 病変がどんどん大きくなり、見た目も変化していくことがあります。
- 転移しやすさ 血管やリンパ管を通って、肺や肝臓など体のほかの場所に転移しやすい、悪性度の高いがんです。
このように血管肉腫は進行が速く、転移もしやすいため、どのような病気かを知っておくことが大切です。
血管肉腫の種類
血管肉腫と一言でいっても、実はいくつかの種類があります。 できる場所や、顕微撮で見たときの細胞の形で分類されます。 どのタイプか正確に知ることが、治療方針を決める第一歩です。
発生する場所による分類
血管肉腫は体のどこにでもできますが、場所で呼び方が変わります。
- 皮膚血管肉腫(ひふけっかんにくしゅ) 血管肉腫で最も多く、全体の約半数を占めるといわれます。 特にご高齢の方の頭や顔にできやすいのが特徴です。
- 乳房の血管肉腫 乳房のしこりは乳がんが多いですが、ごくまれに血管肉腫ができます。 ある研究では、乳房にできる悪性の「間葉系腫瘍」というグループの中で、血管肉腫が比較的多いと報告されています。 ※間葉系腫瘍:骨や筋肉、血管など体の構造を支える組織からできる腫瘍のこと。
- その他の血管肉腫 皮膚や乳房以外にも、肝臓や心臓などの内臓や、筋肉のような体の深い部分(軟部組織)にも発生します。
細胞の形(組織型)による分類
顕微鏡で見たがん細胞の形や並び方でも、種類が分かれます。
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種類
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特徴
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通常型
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最も一般的なタイプの血管肉腫です。
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上皮様血管肉腫(じょうひようけっかんにくしゅ)
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がん細胞の形が、皮膚などの表面をおおう「上皮細胞」に似ている、まれなタイプです。見た目が他の種類のがん(癌腫)と似ているため、診断が難しいことがあります。そのため、確定診断には、細胞の種類を特定する特殊な検査が重要になります。ある研究では、血管の細胞であることを示す目印(CD31など)を使って、正確に診断することの重要性が示されています。
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このように、血管肉腫にはいくつかの種類があります。 どの種類の血管肉腫かを正確につきとめることが重要です。
血管肉腫の原因
血管肉腫がなぜできてしまうのか、その原因はまだはっきりとはわかっていません。 しかし、血管の内側にある細胞ががん化してしまう「きっかけ」は、いくつか知られています。
発症のリスクを高める主な要因は、以下のとおりです。
- 長引くむくみ(リンパ浮腫) 乳がんや子宮がんなどの手術でリンパ節を取り除いたあとなどに起こる、腕や足のむくみです。 このむくみが長い期間続くと血管に負担がかかり、発症のリスクを高めることがあります。 ある研究では、乳房にできる悪性の腫瘍の中でも、血管肉腫は比較的多いと報告されています。
- 過去の放射線治療 他のがん治療のために放射線をあてた場所に、何年も経ってから発症することがあります。 放射線が、細胞の設計図である遺伝子を傷つけることが原因の一つと考えられています。
- 過去のけがや長期間の刺激 ご高齢の方の頭や顔にできる血管肉腫では、以前に負ったけがが関係することがあります。 傷が治る過程で、細胞が増える際に異常が起こるためではないかと考えられています。
- その他の要因 紫外線を長く浴びることや、病気や治療で体の抵抗力(免疫力)が落ちている状態も、リスクを高める可能性があります。
このように、血管肉腫の原因は一つだけではありません。 いくつかの要因が複雑にからみ合って発症すると考えられています。
血管肉腫の症状
血管肉腫の症状は、はじめは打ち身による「あざ」や「内出血」のように見えることがほとんどです。 多くの場合、痛みやかゆみといった自覚できる症状がないため、見過ごされがちです。 特に頭皮にできた場合は髪の毛に隠れてしまい、気づかないうちに進行してしまうケースも少なくありません。
病気が進むにつれて、見た目にもはっきりとした変化が現れます。
【血管肉腫の主な症状の変化】
- 赤色や紫色のあざ、しみのような見た目をしています。
- 痛みやかゆみはほとんど感じません。
- あざやしみがじわじわと広がり、大きくなります(斑状型)。
- 皮膚の一部がえぐれたり、じゅくじゅくしたりします(潰瘍型)。
- こぶのように盛り上がり、簡単に出血しやすくなります(結節型)。
血管肉腫は、見た目だけで他の皮膚の病気と見分けるのが難しいことがあります。 特に「上皮様血管肉腫」というまれなタイプは、診断がより複雑になります。 このタイプは、顕微鏡で細胞を調べると、皮膚の表面をおおう細胞からできる「癌腫(がんしゅ)」と、見た目が非常に似ていることがあるためです。
ある研究では、この上皮様血管肉腫の細胞が、癌腫と同じ目印(タンパク質)を持つことがあると報告されています。 そのため、正確な診断には、血管の細胞であることを示す特別な目印(CD31など)を使った検査が重要になります。
また、血管肉腫は血管を通って他の臓器へ転移しやすい性質を持っています。 特に肺へ転移することが多く、その場合は肺に穴が開き息が苦しくなる「気胸(ききょう)」などを引き起こすことがあります。 気になるあざやしこりを見つけた際は、自己判断せず、早めに皮膚科などの専門医に相談しましょう。
血管肉腫の検査・診断
血管肉腫が疑われる場合、見た目だけでの判断は困難です。 そのため、いくつかの検査を組み合わせて慎重に診断します。 主に、以下の検査が行われます。
- 病理検査(生検) 病気の部分の組織を少し切り取り、顕微鏡で詳しく調べます。 がん細胞の顔つきを確認し、診断を確定させる重要な検査です。
- 画像検査(CT、MRIなど) 体の内部を撮影し、がんの広がりや転移の有無を調べます。
- 血液検査 全身の状態を把握するための補助的な検査です。
診断を確定させるために最も大切なのが、病理検査(生検)です。 しかし、血管肉腫には診断が難しいタイプが存在します。 「上皮様血管肉腫」は、顕微鏡で見ると他のがん(癌腫)と似ているためです。
そこで、細胞の種類を特定する「免疫組織化学検査」が重要になります。 これは、細胞が持つ特別な“目印”を染め出して見つける方法です。 ある研究では、血管の細胞が持つ「CD31」という目印を確認することが、正確な診断に不可欠だと示されています。
また、がんの広がりや転移を調べるために画像検査も行います。 特に肝臓にできた血管肉腫の場合、MRI検査が診断の助けになります。 研究によると、肝臓の血管肉腫はMRI画像で特徴的な見え方をします。
具体的には、「境界がはっきりしない大きなかたまりと、その周りの小さなかたまり」として映ることが多いです。 この所見は、似たような別の病気と見分けるのに役立ちます。 60歳以上でこの特徴が見られると、血管肉腫の可能性が高まると報告されています。
これらの検査結果を総合的に判断し、最終的な診断が下されます。
血管肉腫の治療
血管肉腫は進行が速く、転移しやすい手ごわい相手です。 そのため治療は、がんの状態や患者さんの体を考え、慎重に進めます。 目に見える病変だけでなく、血管にのって全身に広がる可能性のある、がん細胞をたたくことが治療のねらいです。
現在、中心となる治療法は主に次の3つを組み合わせたものです。 これらを状況に応じて使い分け、最適な治療を目指します。
【血管肉腫の主な治療法】
- 化学療法(抗がん薬) お薬の力で、全身に散らばったがん細胞を攻撃する治療です。
- 放射線療法 がんがある場所に放射線をあて、がん細胞を狙い撃ちします。
- 手術(外科治療) がん細胞を直接切り取ります。
化学療法(抗がん薬)
お薬を点滴などで体の中に入れ、全身にいるがん細胞を攻撃します。 血管肉腫の治療では、いくつかの抗がん薬が使われます。 多くの研究で、ドキソルビシンやパクリタキセルが特に有効とされます。
パクリタキセルは、週に1回投与を3週間続け、1週間休む、という方法が一般的です。 これらの薬で効果が不十分な場合は、別の薬が検討されます。 分子標的薬のパゾパニブなども選択肢の一つです。
放射線療法
がんがある部分に絞って、強力な放射線をあてる局所的な治療です。 特に、頭や顔など皮膚にできた血管肉腫に効果が期待できます。 手術が難しい場合や、化学療法と組み合わせて効果を高める目的で行われます。
手術(外科治療)
がん細胞とその周りの組織を、直接切り取る治療法です。 以前は治療の中心でしたが、今は他の治療と組み合わせることが多いです。 血管肉腫は目に見えない範囲にも広がっていることがあるためです。
新しい治療の可能性
最近では、自分の免疫力を高めてがんと闘う「免疫療法」も注目されています。 有望な新しい治療法として期待され、研究が進められています。 しかし、どんな方に効くかを見極める方法は、まだ確立されていません。
血管肉腫はまれな病気で、その性質も多様です。 そのため、治療法はまだ発展途上な面もあります。 どの治療を選ぶかは、専門の医師としっかり話し合って決めましょう。