股部白癬

股のかゆみや輪っか状の赤い発疹。人には相談しづらいその症状、実は「いんきんたむし」、すなわち股部白癬かもしれません。これは、白癬菌というカビが原因で起こる、ありふれた皮膚感染症の一つです。

驚くべきことに、この原因菌の正体は、多くの人が悩む足の「水虫」と全く同じなのです。ご自身の足の水虫を放置していると、無意識に触った手を通じて股に感染してしまうことが、最も多い感染パターンとされています。

世界人口の約4人に1人が経験するともいわれるこの皮膚のトラブルですが、自己判断で市販薬を使うと悪化する恐れもあります。この記事では股部白癬の正しい原因と治療法を解説します。気になる症状を根本から解決しましょう。

股部白癬の概要

「いんきんたむし」とも呼ばれる股部白癬は、 カビの一種である「白癬菌(はくせんきん)」が原因の皮膚感染症です。 実は、足にできる水虫(足白癬)と同じ菌が、 股間やその周りに感染することで発症します。

白癬菌は皮膚糸状菌とも呼ばれ、 世界中で最もありふれた感染症の原因の一つです。 人に感染する白癬菌は、 少なくとも40種類以上あることがわかっています。

白癬菌は暖かく湿った環境を好む性質があります。 そのため、以下のような体の部分に感染しやすくなります。

  • 主な感染場所 太ももの付け根(股)、おしり、下腹部など
  • 感染しやすい環境 汗で蒸れやすく、下着などで締め付けられる場所

特に汗をかく夏場に多く、男性によく見られます。 しかし、最近では通気性の悪い衣類を着る機会が増え、 女性でも発症するケースは珍しくありません。

ご自身の足や爪に白癬菌がいる場合、 そこを触った手で股間を無意識に触ってしまうことで、 菌がうつってしまうことが主な感染経路です。 強いかゆみを伴い、赤く輪を描くような発疹が特徴です。 適切な治療で改善が期待できますので、 気になる症状があれば早めに医療機関へ相談しましょう。

股部白癬の種類

股部白癬は、「白癬」という大きな病気のグループの一つです。 白癬は、白癬菌というカビが体のどこに感染するかで、 以下のように呼び名が変わります。

  • 足白癬(あしはくせん) いわゆる「水虫」のことで、足の指の間や裏にできます。
  • 爪白癬(つめはくせん) 爪が白や黄色に濁り、厚くもろくなってしまいます。
  • 体部白癬(たいぶはくせん) 顔や腕、お腹など、毛のない体の皮膚にできる白癬です。 「ぜにたむし」とも呼ばれます。
  • 股部白癬(こぶはくせん) 足の付け根(股)の周りにできる白癬のことです。 「いんきんたむし」とも呼ばれます。

日本で行われた調査では、白癬の中では足白癬が最も多く、 股部白癬は4番目に多いと報告されています。 また、世界的に見ると、全人口の約25%が、 何らかの白癬菌による感染症を経験すると言われています。

これらの白癬は、そのほとんどが、 「トリコフィトン・ルブルム」という種類の菌が原因です。 つまり、足の水虫と股部白癬は、 原因となる菌の種類が同じ場合が多いのです。

そのため、足の水虫を放っておくと、 股部白癬の原因になることがあるため注意が必要です。 気になる症状があれば、放置せずに専門医に相談しましょう。

股部白癬の原因

股部白癬の主な原因は「白癬菌(はくせんきん)」です。 この菌はカビの一種で、足にできる水虫と同じ菌です。 日本や海外の研究でも、原因のほとんどは、 「トリコフィトン・ルブルム」という種類の菌だとわかっています。

白癬菌が股にうつってしまう原因は、主に次の3つです。

  • 自分自身の水虫からうつる 足や爪にいる白癬菌を触った手で、無意識に股間をかくことで、 菌が運ばれて感染します。これが最も多い感染パターンです。
  • 他の人や場所からうつる ご家族に水虫の方がいる場合、バスマットやタオルの共用で、 感染する可能性があります。また、温泉やジムの脱衣所も、 菌が潜んでいることがあるため注意が必要です。
  • ペットからうつる 数は多くありませんが、最近では犬や猫などのペットからうつる、 特殊なタイプの白癬菌による感染も報告されています。

白癬菌は、暖かくてジメジメした環境が大好きです。 そのため、汗で蒸れやすい股間は、菌にとって最高のすみかです。 特に、通気性の悪い下着やズボンを履いていると、 菌が増えやすい環境を作ってしまうので気をつけましょう。

股部白癬の症状

股部白癬は、足の付け根(股)を中心に、強いかゆみと特徴的な見た目の変化が現れます。 もしかして、と不安に感じたら、まずは症状を正しく知ることが大切です。

はじめは、太ももの付け根などに赤いポツポツとした小さな発疹ができます。 この発疹は、次第に外側へと輪を描くように広がっていくのが大きな特徴です。 まるで、菌が外へ外へと陣地を広げているようなイメージです。

【股部白癬の主な症状チェック】

  • 強いかゆみ 特に汗をかいた後やお風呂上がりなど、体が温まるとかゆみが強くなる傾向があります。
  • 輪っか状の発疹 発疹のフチの部分が赤く少し盛り上がり、活発に菌が増殖しています。 中心部は逆に炎症が治まり、少し色がうすく見えることがあります。
  • 皮膚がカサカサする 発疹の表面がカサカサし、フケのように皮膚がむけることがあります(鱗屑:りんせつ)。
  • 症状が広がる 足の付け根からおしりや太ももの内側へと、徐々に広がっていきます。
  • 痛みや水ぶくれ かきすぎて皮膚が傷つくと、ヒリヒリとした痛みを伴う場合があります。 さらに小さな水ぶくれや膿(うみ)を持つこともあります。

実は、白癬菌による皮膚の病気は非常にありふれており、世界中の約4人に1人が経験するとも言われています。 しかし、似た症状の病気もあるため、自己判断で市販薬を使うと悪化することも少なくありません。 気になる症状があれば、放置せずに専門のクリニックへご相談ください。

股部白癬の検査・診断

股のかゆみや赤い発疹は、股部白癬によくある症状です。 しかし、似たような症状の病気は他にもあります。 自己判断で市販薬を使うと、かえって悪化させる恐れがあります。 正しい治療のためには、まず専門のクリニックで正確な診断を受けましょう。

診断は主に「問診」「視診」「顕微鏡検査」の流れで行います。 まず、いつから症状があるか、かゆみの強さなどをお聞きします。 次に、発疹の形や広がり方を直接目で見て確認します。

診断の決め手となるのが、顕微鏡を使った検査です。 この検査で、症状の原因が本当に白癬菌なのかをはっきりさせます。

  • 検査の流れ
  • 1. 皮膚のかけらをやさしく採取 菌がいそうな発疹のフチなどを、ピンセットで軽くこすります。 カサカサした皮膚のかけら(鱗屑:りんせつ)を少し取るだけです。 痛みはほとんどないので、安心してください。
  • 2. 顕微鏡で菌がいるか確認 採取した皮膚のかけらを特殊な薬で溶かして、顕微鏡で観察します。 白癬菌がいれば、特徴的な糸のような形で見つけることができます。

この検査で白癬菌が見つかれば、股部白癬と診断が確定します。 2016年の日本の調査では、皮膚のカビが原因の病気のうち、 約85%が白癬菌によるものだと報告されています。 股部白癬も決して珍しい病気ではありません。

検査はすぐに結果がわかることが多く、適切な治療をすぐに始められます。 気になる症状があれば、ためらわずにご相談ください。

股部白癬の治療

股部白癬の治療は、原因である白癬菌を退治することが目的です。 治療の主役は、カビに効く「抗真菌薬」という種類の塗り薬です。 ほとんどの場合、この塗り薬を正しく使うことで改善が期待できます。

塗り薬(外用薬)での治療

治療の中心は、白癬菌の増殖を抑える成分が入った塗り薬です。 お薬には、しっとりしたクリームや、さっぱりしたローションなど、 いくつかの種類があり、皮膚の状態に合わせて医師が選びます。

最近の研究では、お薬の選択肢も広がっています。 例えば、ある研究ではクロトリマゾールという成分の粉末タイプも、 クリームタイプと同じくらい効果的だったと報告されています。 さらに、粉末は汗を抑える効果も期待できるため、 蒸れやすい股の部分には、とても使いやすいかもしれません。

また、ナフチフィンという成分のお薬は、偽の薬と比べて、 股部白癬を含むカビの感染症に、とても高い効果がありました。 安全性も確認されており、安心して使える治療選択肢の一つです。

【お薬を塗るときの3つの約束】

  • 清潔にしてから塗る お風呂上がりなど、皮膚をきれいに洗って、 タオルでやさしく拭いてから塗ると効果的です。 湿っていると菌が喜ぶので、よく乾かすのがコツです。
  • 少し広めに塗る 赤い発疹が出ている部分だけでなく、その周りまで、 指一本分くらい広めに塗りましょう。 目に見えない菌が、外側に潜んでいることがあるためです。
  • 症状が消えても続ける かゆみや赤みがなくなっても、菌はまだ残っています。 自己判断でやめると、すぐに再発してしまいます。 医師から指示された期間は、必ず塗り続けてください。

飲み薬(内服薬)での治療

塗り薬だけでは改善が難しい場合や、症状の範囲が広いときには、 体の内側から菌を退治する「飲み薬」を使うこともあります。 また、足や爪に水虫があると、そこから菌がうつり再発しやすいため、 根本的な治療として飲み薬が必要になることがあります。

股部白癬は、正しい治療を続ければ、きちんと治せる病気です。 自己判断で市販薬を使ったり、治療を中断したりせず、 まずは専門のクリニックで相談し、一緒に完治を目指しましょう。